日時:5月1日
映画館:八丁座
第二次世界大戦中、イギリス軍が実施した「英国軍将校に見せかけた死体にニセ機密書類を持たせ、わざとドイツ軍の手に入れさせることでかく乱する」ミンスミート作戦の映画化。
第二次大戦中のイギリスの諜報戦と言えば、本作の原作となっている「ナチを欺いた死体: 英国の奇策・ミンスミート作戦の真実」とか劇中にも登場するジョン・マスターソンの著作「二重スパイ化作戦」やマジックギャングによる偽装作戦「スエズ運河を消せ」などなかかな面白い本が多い。総じてイギリス人の謀略って・・・です。とは言えまさか本作が映画化されるとは思わなかった。
この手法そのものはかなり以前から公になっていてワタシが小学生の頃に読んだスパイ本にも書かれていたと思うし、「砂漠の戦場エルアラメイン」のパンフレットにも記載されていた覚えがある。
映画前半は偽装した死体をいかに本物に仕立て上げるかの作戦編、後半はその死体をいかにナチに信じ込ませるかの実施編。まさに「スパイ大作戦」そのまんまの展開だが、「アルゴ」のように第一線の現場に出向くわけではなく、生真面目に作戦を追ってもドキュメンタリー番組にしかならないので、盛り上げるために男女のロマンスなど交えている。面倒くさい話ではあるが、映画なので目をつむろう。
割と細部にも凝っており、007の原作者イアン・フレミングの登場はもとより、二十委員会とかダブルクロスといった専門用語が頻発されて嬉しくなってしまう。アナログな作戦展開も現代の目で見ると新鮮。ちなみに原作本で一番良く覚えているのが「死体にブーツを履かせることがどうやっても出来なかった」くだりなのだが、残念ながら映画では採用されず。
キャスティング的にはこの手の映画に王道のコリン・ファースが主役だが、もはや貫禄がありすぎて作戦に不安感を覚えないのが難。むしろ現代のオタク像を投影したかのような空軍将校、マシュー・マクファデンに好感。こういったオタオタした登場人物は昔の戦争映画にはいなかったので、すごく現代的だと思う。
ジェイソン・アイザックスは作戦の最高司令官にあたるゴドフリー提督を演じているが、「他人の提案はとにかく反対」型の官僚役はこの人の伝統芸の域に達しつつあるな(笑)
タバコをプカプカふかす当時の働く女性たちも素敵です。
この映画、演出は平坦で映画としては退屈な部類に入ると思うが、素材への真面目な取り組み方は印象が良い。この手の映画の常としてエンドクレジットで作戦の評価が出るが「イギリスが行った欺瞞作戦の中では壮大なものの1つ」と過大評価していない。よくある「この作戦が何十万人の兵士の命を救った」とか「大戦の趨勢を決した」と誇大広告な言い回し、好きじゃないんですよ。そうそう、戦争の流れはそんなことでは変わらない。
あと、最後に作戦で使用された路上生活者の死体のその後についてもちゃんと言及されたあたりはちょっと涙。
地味な映画ではあるが、個人的な趣味と思い入れもあって★★★★☆。
ところで007の原作本を読んでいると当事者しか知らないようなリアルな描写が散見されて「フレミングはやはり現場の人だな」と思わせる。「死ぬのは奴らだ」のクライマックス、ボンドは海中から敵の船に磁力爆雷を貼り付けるのだが、磁力が強くて引っ張られるのを引きもどすという描写などは現場を知る人しか書けないな。
映画館:八丁座
第二次世界大戦中、イギリス軍が実施した「英国軍将校に見せかけた死体にニセ機密書類を持たせ、わざとドイツ軍の手に入れさせることでかく乱する」ミンスミート作戦の映画化。
第二次大戦中のイギリスの諜報戦と言えば、本作の原作となっている「ナチを欺いた死体: 英国の奇策・ミンスミート作戦の真実」とか劇中にも登場するジョン・マスターソンの著作「二重スパイ化作戦」やマジックギャングによる偽装作戦「スエズ運河を消せ」などなかかな面白い本が多い。総じてイギリス人の謀略って・・・です。とは言えまさか本作が映画化されるとは思わなかった。
この手法そのものはかなり以前から公になっていてワタシが小学生の頃に読んだスパイ本にも書かれていたと思うし、「砂漠の戦場エルアラメイン」のパンフレットにも記載されていた覚えがある。
映画前半は偽装した死体をいかに本物に仕立て上げるかの作戦編、後半はその死体をいかにナチに信じ込ませるかの実施編。まさに「スパイ大作戦」そのまんまの展開だが、「アルゴ」のように第一線の現場に出向くわけではなく、生真面目に作戦を追ってもドキュメンタリー番組にしかならないので、盛り上げるために男女のロマンスなど交えている。面倒くさい話ではあるが、映画なので目をつむろう。
割と細部にも凝っており、007の原作者イアン・フレミングの登場はもとより、二十委員会とかダブルクロスといった専門用語が頻発されて嬉しくなってしまう。アナログな作戦展開も現代の目で見ると新鮮。ちなみに原作本で一番良く覚えているのが「死体にブーツを履かせることがどうやっても出来なかった」くだりなのだが、残念ながら映画では採用されず。
キャスティング的にはこの手の映画に王道のコリン・ファースが主役だが、もはや貫禄がありすぎて作戦に不安感を覚えないのが難。むしろ現代のオタク像を投影したかのような空軍将校、マシュー・マクファデンに好感。こういったオタオタした登場人物は昔の戦争映画にはいなかったので、すごく現代的だと思う。
ジェイソン・アイザックスは作戦の最高司令官にあたるゴドフリー提督を演じているが、「他人の提案はとにかく反対」型の官僚役はこの人の伝統芸の域に達しつつあるな(笑)
タバコをプカプカふかす当時の働く女性たちも素敵です。
この映画、演出は平坦で映画としては退屈な部類に入ると思うが、素材への真面目な取り組み方は印象が良い。この手の映画の常としてエンドクレジットで作戦の評価が出るが「イギリスが行った欺瞞作戦の中では壮大なものの1つ」と過大評価していない。よくある「この作戦が何十万人の兵士の命を救った」とか「大戦の趨勢を決した」と誇大広告な言い回し、好きじゃないんですよ。そうそう、戦争の流れはそんなことでは変わらない。
あと、最後に作戦で使用された路上生活者の死体のその後についてもちゃんと言及されたあたりはちょっと涙。
地味な映画ではあるが、個人的な趣味と思い入れもあって★★★★☆。
ところで007の原作本を読んでいると当事者しか知らないようなリアルな描写が散見されて「フレミングはやはり現場の人だな」と思わせる。「死ぬのは奴らだ」のクライマックス、ボンドは海中から敵の船に磁力爆雷を貼り付けるのだが、磁力が強くて引っ張られるのを引きもどすという描写などは現場を知る人しか書けないな。
題名:オペレーション ミンスミート 原題:Operation Mincemeat 監督:ジョン・マッデン 出演:コリン・ファース、マシュー・マクファデン、ジェイソン・アイザックス |
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます