kamacci映画日記 VB-III

広島の映画館で観た映画ブログです。傾向としてイジワル型。美術展も観ています。

レジェンド 狂気の美学

2016年08月10日 | ★★★☆☆
日時:7月31日
映画館:サロンシネマ

1950年代のイギリス、実在の双子のギャング、クレイ兄弟をトム・ハーディーが1人2役で演じる。

このクレイ兄弟、1990年に「ザ・クレイズ 冷血の絆」というタイトルで映画化されており、日本でも劇場公開された。原作のノンフィクションは邦訳もされ、早川書房から出版もされている。何とも景気のいい時代。
(ちなみに、本作でもこの原作が下敷きになっている。)

先の映画の方はスパンダー・バレエのケンプ兄弟がクレイ兄弟が演じていたが、双子という設定なのに全然似ていない!ギャング映画なのに、全然面白くなかった覚えがある。

【以下ネタばれあり】

原作ノンフィクションも読んでいるのだが、ワタシが映画的に面白いと思う箇所と今回の映画製作者との視点の違いがあったなという感じ。

クレイ兄弟は仲良しの双子で、小さい頃から腕っぷしが強くボクシングでならし、やがて小さな犯罪から大きな犯罪に乗り出していく。

史実面で面白いのは、双子の利点を活かして、お互いの窮地には入れ替わることで難を逃れていく点なのだが、映画ではそういう悪知恵が一切描かれない。描きようによっては軽い犯罪コメディみたいになるのだが、彼らが犯罪者としてのし上がる重要な一面だと思う。(双子の多い欧米と日本人との感覚の違いもあるのかも知れない。)

もう一つは精神を病む弟ロニーの描写。彼は軍隊にいた頃、上官に反抗するため、精神異常を装っていたのだが、やがてそれが現実になっていく。この経緯が一切省かれ、登場早々、すでに精神病院に入っている。

双子が犯罪者として成功する過程が独特で、そこがクレイ兄弟の物語の面白さだと思っていたが、映画ではそこが描かれていないので、普通のクライムストーリーの枠に収まっている。

映画では双子と兄レジーの妻フランシスとの三角関係とも言える張り詰めた関係に焦点が当てられている。(弟ロニーはゲイだったので、男女関係ではない。)弟ロニーは病気の影響で破天荒な行為を繰り返し、犯罪ビジネスを危険にさらし、実業家としての手腕を持つ兄レジーは弟を御しつつ、組織の面倒を見て、妻との関係が悪化する。

その双子をトム・ハーディーが一人二役で毒々しさ一杯に演じるのは、それはそれで楽しいし、別人にしか見えないところはトム・ハーディーのなせる技か。ただ、ドラマの中で双子である必要性が希薄になってしまったのは残念。トムのトムによるのトムのための映画になってしまったきらいがあるな。

ところで、この手の犯罪実録物を観て思うのが、どこの世界でも成功するのはエネルギッシュで真面目な人間だな。(笑)






題名:レジェンド 狂気の美学
原題:Legend
監督:ブライアン・ヘルゲランド
出演:トム・ハーディー、エミリー・ブラウニング
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