kamacci映画日記 VB-III

広島の映画館で観た映画ブログです。傾向としてイジワル型。美術展も観ています。

セッション

2015年06月27日 | ★★★★☆
日時:6月26日
映画館:サロンシネマ

ただの音楽映画と思いきや、様々な話題を振りまいたおかげでヒットしている本作。広島でも公開となったが、サロンシネマでは直前にキューブリック映画祭で「フルメタル・ジャケット」を公開していたこともあり、1か月のうちに「怒鳴るオッサン」映画を2本も見ることになった。

とにかく緊張感が絶えない映画。
そりゃ、そうだ。とにかく何をやっても怒鳴られるし、主人公は絶えず「崖っぷちの男」。
その一方で、一つの道を極めようとする執念の話はやはり面白い。音楽方面の描写は門外漢なので、そこの面白さは理解できていないが、自分から声を掛けたはずの彼女を情け容赦なく切る場面なんかはある意味、爽快。

単に鬼教師との成長譚、スポ根ものみたいな話だったら、ここまで話題にならなかったろう。「努力・友情・勝利」型より「魔法使いとその弟子」のバリエーションと言った方が良い。才能を秘めた弟子を育てながらも、対立し、最後は対決となる構図は途中から予想がつくのだが、それを演奏対決ではなく、ひとひねりした決闘として見せている点がユニーク。

本作は「フルメタル・ジャケット」と比較されるが、外見は似ていても本質は違うと思う。
「フルメタルジャケット」の海兵隊は新兵の個性を封殺し、軍の共通の枠に押し込めるためにシゴキ倒すのに対し、「セッション」で罵倒されるのは、これからのびしろのある新人。
海兵隊は誰であろうと、人種差別無しに罵られる。文字通り「黒人もユダヤ人も白人も同等に価値が無い。」からだ。しかし、「セッション」では才能のない人材は元々、罵り対象にすらならない。呼ばれないか、良くて「クズで楽団の恥」として追い出されるだけだ。(ただし、罵られる場合は家庭環境といった個人情報を駆使するという反則技まで持ち出される。)

ただ、観終わっても爽快感が感じられないのは、上映中、ずっと自分に無いものを突きつけられるからだろう。
断固たる信念、野心、執念、絶えざる努力、自他を問わない厳しさ、時として衝動・・・
今の自分を省みると、そういったものを避けてきたし、見ていると自己嫌悪を覚えてしまう。この映画を見て「その通りだ」と素直に感動できる人は自分の生き方に満足できる人じゃないだろうか。

まあ、主人公も才能がある割にはツメが甘いというか、おバカさんというか、「そりゃ、自業自得だろ。」と言わざる得ない面もあるのだが。

ウチの小僧にも見て欲しい映画なのだが、こういう生き方も必要なのだと気付くのは年を食ってからなんだよな。






題名:セッション
原題:WHIPLASH
監督:デミアン・チャゼル
出演:マイルズ・テラー、J・K・シモンズ
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