神奈川絵美の「えみごのみ」

蓋物の語らい

週明け、新宿へ出かけたついでに

京懐石 柿傳の地下にある柿傳ギャラリーに
お邪魔しました。

富山で活動中の陶芸家、
釋永(しゃくなが)由紀夫さん、陽さん親子展の最終日。
私は詳しく存じ上げなかったのですが
たまたま柿傳のサイトを見て、
こちらの蓋物にとても惹かれ
   ↓

陽さんの作品。藁灰釉の明るいグレーが
お料理を引き立ててくれるよう。
そして蓋はわざと、釉薬がランダムになっていて
どれ一つとして同じものがない、味わいある模様が。


この、つるんとした見込みがラブリー
野趣に富んだ蓋部分とのギャップは、わざと狙いました。
(器と蓋はそれぞれ、ばらばらに選べたので)

というのも……

この日、お父様の由紀夫さんが在廊していて
「僕だったら、下は白っぽいものを選んで、上(蓋)は個性の強いものを
選ぶかな」とおっしゃったので。
なるほど……!と、私もならった次第

「色が白っぽくなるか、茶色っぽくなるかは、窯のどこにあったかに
よるんです。茶色は割と手前で、火を直接受けているものが多い。
(よく焼ける、ということでしょうか)
白っぽいものは奥の方にいて、手前で火を受けている器の陰で直火を避けている
んです。」

―でも、どちらが高品質、ということはなく、耐久性などの実用面もどちらが優れている
ということはないんです。
あくまで好みで選んでいい、ということです。—

3日半、窯の中で焼くそうですが、本格的に温度を上げるのは最後の1日だけ。
1300℃にもなるそうす。

ギャラリーでしばらく、いくつかの候補からうーん、うーんと決めあぐねていた私に
さらに釋永さんはこんなアドバイスも。

「45度斜め上から見て選ぶと良いですよ。それが普段、食卓で一番よく
見える角度ですから」

なるほど……!

「富山は、お水がいいですよね。お水がいいと、焼き物もいいものが
できますよね」
そんな話をしたら、とても嬉しそうにしてくださいました。

お父様、御年67歳とのことですが、スーツをお召しになった姿は
どこぞやの金融系のCEOのようにしゅっとしてスマート、落ち着いた物腰で
一般に抱きがちな陶芸家のイメージとはかなり違うタイプのルックスでした。
後からプロフィールを見たら、スティーブ・ジョブズからも制作依頼を受けているそうで
なるほど洗練された作風は、尖った感性を持つ層にも好評なのかな、と
思ったり。

「どんな料理を盛り付けたいと思っていますか?」
そんな問いに
「秋になったら、根野菜の煮物や炊き込みご飯を、と思って」
と私。
やっぱり料理あっての器。
「娘(陽さん)がね、作品の皿におにぎりを盛っているんです」と
嬉しそうにスマホ画面を見せてくださったりして、
何かと緊張感の高いこんな時期に、ほっと心がなごむひとときを
過ごすことができました。

コメント一覧

kanagawa_emi
原田さん、こんにちは!
器は使ってこそ器、と私も思います。まあ私の場合
惜しくなるほど高価なものは持っていませんが^^;
野々村仁清の染付とか、使ってみたーい^^

確かに、(あまり一括りにしてしまっては
いけないのですが、)お若い方の中には
着物にしろ陶芸にしろシック好みの方もいて、
無難すぎるかなあと思うことも。生活になじみやすい
というのはあるかも知れませんが・・・。
原田
柿傳ギャラリーと言うと、川端康成さんの「新宿で大人の道草を」というあそこですね。私も『目の眼』や『小さな蕾』などは、長く定期購読をしていましたので、おおよその事はわかります。

ただ、私の場合は色絵皿や染付型物鉢などそこそこの品でも、自分の身近に置いて惜しげもなく使うため、家族には叱られてばかりですw

これらの品々は飾っておくだけではダメで、実際に使ってみるほど楽しくなります。今以上に昔の人の智慧は深く、遊び心とともに生活を楽しむ術を知っていたと言う事でしょうね。

昨今は、若い伊万里が氾濫し、平凡すぎる小皿が納得できないような価格で店頭に並んでいることもありますが、こちらももっと勉強すべきですね。

私などは過去を反省するために、以前本歌とかいって掴まされたコピーを今でも使っていますw


本当の 自分をみんな 持ち寄りて 煮込んでみたい ブログ鍋なり
kanagawa_emi
まるたけさん、こんにちは!
私、蓋物を持っておらず、こちらが初めて。
両方使えて、便利ですよね。
見込みは、柄が入っていたりするとオシャレですが
こうした均一なつやのある一色も、いいものです^^
白い釉薬は確かに砂糖菓子のよう。手触りもつるんと
厚みがあって、ちょっと嬉しくなりますよね。
まるたけ
交わされた会話、耳をそばだてて??聞きました。
「見込み」って?茶碗の各部分の名称を調べちゃったりして。
私も蓋つきの茶碗に目がありません。
釉薬の落ち具合がまるで砂糖が溶けているようで美味しそう、
と思っちゃいました。
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