故郷の美術館にて
67歳でブレイクしたフランスの彫刻家
フランソワ・ポンポンのほかにもう一人
非常に感銘と刺激を受けた芸術家がいました。
それは
?
畳に置かれた人の頭ほどの大きさの彫刻
てかっていたり、すり減っているようなものも。
これらは
地元出身のアーティスト 三輪途道(みちよ)さんの作品。
私と学年がおそらく一緒の1966年生まれで
芸大を卒業後彫刻を中心に、精力的に活動していたのですが
今から数年前、病気のために失明。
それからはおもに、視覚障害のある人も触って楽しめる
彫刻作品に力を入れているそう。
視覚にこだわる(と私は思っている)芸術家が
中途失明することに対しどう受け止め、乗り越えたのか
私だったら……絶望してしまうかも知れない。でも彼女は
「目の見えない彫刻家は、私くらいなもの」と、唯一の存在であることを
強みとすらしてしまう、とてもアグレッシブ(いい意味で)な方で
世の中に「それまでになかった価値」を生みだすべく
活動を続けるバイタリティにただただ圧倒されました。
その一つが、地元のご当地かるたのアレンジ。
カルタといえば当然ながら紙の札が一般的で、
そこに描かれた絵が見えなければ遊べません。
それを彼女は
例えばこんな風に、絵札を簡略化し
触ってわかるよう立体化し
かるたとしても遊べるし、同じ絵札が2枚ずつになるようにして
トランプの神経衰弱のような遊びもできるようにしたり
これを地元の、視覚障害を持つ人とその支援者の団体との
コラボでつくりあげました。
私もレプリカを触ってみます。
えっと……
中央の、裸体の女性の札は中学生男子に人気(当時)の
四万温泉。
右は水上、でも左は……?
関東道と信越道が交わる、高崎なんだそうです。
これは見ても触ってもわからないなあ……
あと、
同じような十字架の札!
左が内村鑑三、右が新島襄だそうです。
これも事前学習しないと、きっと間違えちゃう。
このかるた自体は、子どものころさんざん遊んだので
札を見ると昔が懐かしく思い出され、
ああこうして今も親しまれているんだなあと感慨深く思いました。
ここで自分を引き合いに出すのは
三輪さんに失礼と思いながらも、
私も左眼が弱視で、年々見えなくなっていて
(というのは少し語弊があり、弱視というのは視神経が
育っていないので、脳が左側を認識するのを拒否している感覚。
年を重ねるごとに右眼でカバーできなくなっているせいもあり
生活上、不安に思うことが多くなってきています)
見えにくくなることを前提に、いかに仕事を続けていくかを
考えていたところだったので、
彼女のこうした前向きさ、パッション、発想力に
背中を押されたような気がしました。
見えなくなっても、頭さえはっきりしていれば
音声入力機能を使って、口述で文章はつくれるしね。
AIで推敲もできるようになるだろうし。
同年代であることが一層、私を勇気づけてくれました。
自宅からはかなり離れたところにあるのだけれど、故郷の美術館、
行って良かったです。
コメント一覧
最新の画像もっと見る
最近の「美術展・工芸展レポート」カテゴリーもっと見る
最近の記事
カテゴリー
バックナンバー
2009年
2008年
人気記事