『感性創房』kansei-souboh

《修活》は脱TVによる読書を中心に、音楽・映画・SPEECH等動画、ラジオ、囲碁を少々:花雅美秀理 2020.4.7

・トヨタ自動車・豊田章男社長のSpeech(後②) ※結び

2021年08月22日 11時56分12秒 | ●脱TV❶:Speech動画

 

  経営者政治家流暢な英語

   いかがでしたか? 豊田章男社長のSpeech――。正味14分ちょっとのSpeechの中に、20数回もの「笑いと拍手」がありましたが、そのほぼ半分は「爆笑と歓呼の拍手」でしたね。

 もちろん〝Speech内容の素晴らしさ〟は言うまでもありません。加えて〝人間としての確たるポリシーと静かなる闘志〟とが、心地よく伝わって来ました。

 それに何と言っても英語の流暢さ〟であり、〝自分の言葉で自在に語り尽くす自負と責任〟とでも言うのでしょうか。そういう雰囲気が充分感じられたと思います。「Speech原稿」など、どこにもありませんでしたね。

 実は今回、この「豊田章男社長のSpeech」を採りあげたいと思った動機は、 2点 です。 

 

 第1、「国際的な企業組織トップは、〝英語Speech力秀でた人が相応しいということ。

 

 これは「海外拠点を置く企業」や、広く「海外取引先顧客を求める企業」であれば、絶対に欠かせない〝トップの条件〟と思います。

 このことは、「政治家」とりわけ「国会議員特に「海外視察」の多い議員についても同じではないでしょうか。なぜなら優れた「海外の法制度」や「行政実務の事例」等を学ぶためには、事前の情報・資料収集の段階から、それ相応の「英語力」や「Speech対応力」が必要だからです。

 これから国会議員」(注①)をめざす方の〝最低限素養〟として、ぜひ常識になって欲しいと思います。すべてを秘書やブレーンに任せたうえ、企画書や報告書まで100%作成させると言う「政治家」は問題です。

 〝本当に語り尽さなければならない、政治家としてのあるべき姿〟を、豊田章男社長のように堂々と、自分のポリシー体験を通して、流暢英語によりSpeechをして欲しい〟ものです。

 

 第2、「経営者であれば、〝自社の「製品・商品サービスコンセプト内容・性能・価値等について、徹底的熟知することが不可欠です。

 つまりは〝現場第一(※注②)に徹する〟ことの大切さを、豊田社長が自らの実践行動によって実証されたからです。

 Speechの中で話されているように、社長に就任した2009年当初、豊田社長は社内の「マスター・ドライバー」(※注②)経験者から、次のように言われています。

 『運転の仕方も分からない人に、あれこれ言われては困る。』

 そこで豊田社長は、「マスター・ドライバー」になるための訓練を52歳で挑戦し、その資格を取得しました。その目的は〝車の正しい運転方法を学ぶ〟とともに、〝エンジニアたちとのコミュニケーションを図る〟ためでした。

 「ホッケー選手」として、「モスクワ・オリンピック※注③)」の「男子日本代表」にも選ばれたという豊田社長――。そういう運動神経と共に、果敢に挑戦する〝信念と使命感〟があったからではないでしょうか。

            ★

 ここでの〝現場第一主義〟を「国会議員」にあてはめるなら、それは「国際社会全体」に対する〝愛にあふれた熟知〟であり、国際社会を構成している「個々の国家や地域」と、〝より良く調和して行く〟実践行動ではないでしょうか。

 このテーマについては、《新しいシリーズ》(仮称「行きたい国・都市において、少しずつ触れてみたいと思います。(完)

 


 

参考

 注① この「国会議員の資質問題」については、近い将来取り組む予定の女性議員を増やすために――女性議員の資質と支援態勢(シリーズ)において、詳しく触れたいと思います。

 

 注② 「マスター・ドライバー」とは、〝新型車の発売前に最終的な性能チェックをするドライバー〟とのこと。

 ◆記事 「トヨタ社長がマスタードライバーになった“逆転のクルマ”」 ――「社長室にいては分からない情報が現場にクリック

 「日刊工業新聞」2020.10.7の記事です。

  ※なお、以下の「サイト」をご参考に。

 ◆記事 「稲盛和夫 OFFICIAL SITE」(現場主義に徹する) 

  ☝ クリック!

  「京セラ」や「第二電電(現・KDD)」の創業者でもある稲盛和夫氏に、筆者は強い影響を受けました。いつか是非採りあげてみたいと思います。

 ご紹介する「OFFICIAL SITE」の中の「稲盛ライブラリー」の記事については、すべてご覧になるお気持ちでどうぞ。特に「フィロソフィー」と「経営の原点」を。

 

 ※注③ この「モスクワ・オリンピック」(1980年8月開催)は、ソ連の「アフガニスタン侵攻」(1979年)を口実に、五輪からソ連を締め出すことを決断したアメリカ合衆国等により、多くの国が参加をボイコットしました。日本、西ドイツ、中国、韓国、イラン等も同調して不参加。一方、英国、フランス、オーストラリア、ベルギー等は参加。

 そのため、当時柔道「無差別級」で出場予定の山下泰裕選手(現・JOC会長)が、その無念さを涙ながらに語っていたのがとても印象的でした。しかし、その4年後の「ロサンゼルス・オリンピック」の「無差別級」において、山下選手は1、2回戦、そして準決勝、決勝とすべて一本勝ちを収めて優勝、見事金メダルに輝きました。

 

 ◆動画 1984年「ロサンゼルス・オリンピック」での、山下泰裕選手による「無差別級」の4試合と表彰式。

 あれから37年――。あのときの感動と興奮は少しも色あせてはいません。筆者は思わず涙ぐんでいました。

 山下泰裕JOC会長に、ひとまずの労いとリスペクトを込めて

 

 


・トヨタ自動車・豊田章男社長のSpeech(後①)

2021年08月18日 01時35分05秒 | ●脱TV❶:Speech動画

  自分だけドーナツ(=感動的な歓び)見つけよう!  

 そしてここからが「第三幕」です。

 「バブソン大学」院生時代、勉強ばかりしていて「つまらない人間(boring)」となっていた豊田青年が見出した〝歓び〟は、なんと「ドーナツdonut)」でした。

 

 「アメリカのドーナツが、こんなにも美味しく歓びになるなんて思いもしませんでした。」 

 「自分だけのドーナツを見つけてください。私(豊田章男)にとってドーナツより好きなものはです。」

 そして豊田社長は、後輩の「卒業生」に向かって①~⑫の言葉を紡ぎ出すのです。

  ①「前だけを見て全てが上手くいくと考える。」

 ②「予想外の事があっても、恐れない。」

 ③「必要な時に劇的な変化起こすことができるか。」

 ④「変化から逃げるのではなく変化を受け入れる。」

 

 ……これから「不透明な厳しい現実社会」へ出ようとしている卒業生にとっては、実に的確な励ましではないでしょうか。

  そして、将来「成功した企業」のCEO(=chief executive officer 最高経営責任者)になっているであろう「後輩たち」に対して、同じCEOとして豊田章男先輩は語ります。

 

 ⑤「しくじらないでください。」

 ⑥「正しいことをやりましょうそうすればお金はついて来ます。」

 ⑦「何歳になっても、常に新しいことを学びましょう。」

 それに続けて、〝誰もが生徒になれる〟〝生徒というのは、いつだって最高の仕事〟であると。とても簡潔で納得できる表現ですね。

 ⑧「あなたに影響を与える人見つけてください。彼らからエネルギーをもらいましょう。」

 ⑨「誰かに影響を与える人なってください。」 続けて、

 ⑩「立派なグローバル市民になってください。」 

 ⑪「環境の事、地球の事世界で何が起こっているのか、いつも気にかけてください。」 そして、 

 ⑫「恰好をつけるのではなく温かい人になってください。」

 

 トヨタでは〝誠実さ、謙虚さ、尊敬〟といった価値観を「トヨタウエイ」として大切にしているとのこと。

 いよいよ終幕」です――。

 「今日という(卒業式の)日は終わりであり、始まりです。(日本では、今年2019年の)5月1日から「新しい時代」に突入し、「令和(れいわ」(=美しき調和という名前がつけられました。

 あなたの時代が「美しき調和」に囲まれて成功にあふれ、多くのドーナツで満たされることを願っています。ありがとうございました。」(Speech 終了。次回、最終回

  The American Donuts, be forever! 

    アメリカン・ドーナツよ! 永遠なれ!  

 

 

 Tea time

 まったくテレビを見ない筆者の〝お笑いタイム〟の源は、もっぱら「ネット動画」です。この「動画」も大好きな一つです。

◆動画 【爆笑】『バレエ公演』間違えてるよ!!(3分22秒)

 【TOMOAKIのバレエブログ】さんから拝借 。ウィーン(オーストリア)の著名な少女バレエ団による〝コミカル・パフォーマンス〟です。

 次回が本シリーズの「結び」すなわち「最終回(後②)」であり、私見をまとめてみたいと思います。

 

 


・トヨタ自動車・豊田章男社長のSpeech【中】

2021年08月15日 14時23分32秒 | ●脱TV❶:Speech動画

 読者へ この記事は、前回【上】の豊田章男社長の「Speech動画」についてのものであり、そのSpeech内容の説明と筆者の所見です。今回初めてこのブログをご覧の方は、まずは8月9日の【上】をご覧ください。

 

  バブソン大学優秀さを最大限実証

 豊田社長のSpeechに耳を傾ける「バブソン大学・大学院」の一部の 「卒業生」の中には、〝卒業してからの仕事の有無〟に不安を抱えている人もいたでしょう。それは「卒業生」にかぎらず、「教職員」や「卒業生の家族」の中にも同じような人々はいたはずです。

 それを豊田社長は――、

 『心配事を、まず解決しましょう。』 切り出し

 『みなさん全員にトヨタでの仕事をプレゼントしましょう。』 

 ……と豊田Speechの第一幕〟が開き、〝どっと会場が湧き、拍手と微笑〟に包まれます。筆者は初めてこの動画を観た時、〝一瞬〟驚きました。もちろん、この時点で多くの「卒業生」の「進路」は決まっていたはずです。そこですかさず、豊田社長は続けます。

『……ただ、まだ人事部からはOKをもらってないのですが、たぶん大丈夫だと思います。』

 ……とここまで、Speech開始からわずか1分50秒しか経過していません。この〝話の出だし〟すなわち〝つかみ〟は実に見事です。

 しかし、〝尾張名古屋生まれの豊田家三代目の社長は、〝トヨタ自動車の子会社・グループ企業社員のポスト〟という〝プレゼント〟だけでは終わらないのです。

 筆者が想うに、豊田章男社長の〝真の狙い〟は――、

 ――たとえ卒業生全員であっても採用します。〟つまりは、それだけここ「バブソン大学・大学院」の卒業生は〝だれもが優秀であり、信頼できる〟のですからトヨタ自動車をはじめ、600余の子会社、200のグループ企業のいずれかに、みなさんを受け入れる会社、そしてポジションがかならずあるでしょう。――。

 と言っているかのです。 言うまでもなく「卒業生・教職員・卒業生の家族」という三者に喜びと自信と誇りを与えながら、同時に「トヨタ自動車」および「トヨタの子会社・グループ企業全体」のアピールでもあるのでしょう。

 それを〝さりげなく、ユーモアをこめて〟言ってのけ、続いて、

就職活動に関する悩みは解決したと思いますのでもっと大切な話をしましょう。」 

 そして、「第二幕」が上がります。

「この記念すべき卒業式の「今夜のパーティ」で〝どれだけハジけるか〟。もっと重要なことは、そのパーティに、〝私(豊田)も参加できますか?〟」  

 と。ここで爆笑と拍手が沸き起こり、さらに続けて、

 「ただし、夜更かしはできません。なぜなら明日は『ゲーム・オブ・スローン』」の最終回だからです。」

 ……もちろん、バカ受けの拍手と爆笑があり、ここまではさきほどの1分50秒からわずか45秒後です。ということは、Speechの始まりからたったの2分35秒しか経過していません。

 Speechはさらに続きます。豊田社長は、「バブソン大学院生時代」の自分を振り返り、この当時の自分は〝時間のすべてを授業に使い、集中して取り組んでいた 〟」 。だから「〝つまらない人間(boring)〟であった」と。

 しかし、「バブソン大学院卒業後ニューヨークで働き始めると、〝学生時代に喪った時間を取り戻し夜の帝王(The king of the night )になったのです。」と……。

 もちろん爆笑と拍手ですね。 上手い!! 座布団3枚!! (続く)

 

 


・トヨタ自動車・豊田章男社長のSpeech【前】

2021年08月09日 12時30分26秒 | ●脱TV❶:Speech動画

 洗練された軽妙な話術

 この「Speech動画」もちょうど10回目となります。

 そこで今回は第1回目の「経営者Speech」として、「トヨタ自動車株式会社」の豊田章男(とよだ あきお)社長のものをお送りします。

 筆者が豊田章男社長について知っていることと言えば、後段の「wikipedia」による「トヨタ自動車(株)」の「①公式サイトjや、「②豊田社長個人」に関する記事の程度でしかありません。

 といっても「国際的な大企業」だけあって、「同社の公式サイト」は実に多彩であり、またかなりのボリュームがあります。この「サイト」だけでも飽きることがありません。

 経営や会社の組織云々以前に、〝企業とは何か〟、〝モノを作るとはどういうことか〟といったことを、さまざまな観点から考えさせられるものです。

 経営者の方に限らず、一般のサラリーマンや学生さんにいたるまで、多くの方々の共感を得ることでしょう。

 おっとっと……。余計なお喋りが始まりそうなので、最後にひと言――。

 筆者が豊田社長の「この動画」を初めて拝見したのは、昨年の春頃です。瞬時に豊田社長のフアンになり、この動画も、今回を入れて20数回目となるでしょう。迷ったり悩んだりした時に、すぐに観るようにしています。

 拝見するたびに、異なった学びや気づきがあることに驚かされ、また励まされています。

 それでは自動車メーカーとしての「総合力」において、「Volkswagen」と並ぶ世界一、二と言われる「TOYOTA」トップの、洗練された軽妙なSpeechをご堪能ください。

 

 Speech動画  豊田章男 米国バブソン大学卒業式スピーチ 「さあ、自分だけのドーナツを見つけよう」| トヨタイムズ〈14:25〉

 この動画は、2019年に「バブソン大学(Babson  College)」の設立100周年に当たる「卒業式」に、同校経営大学院修了生の豊田社長が、ゲスト・スピーカーとして招かれた際のものです。

 

■参考 wikipedia

 ●バブソン大学(Babson  College)

  米国マサチューセッツ州ウェルズリー市。起業家教育に特化した私立大学。

 ●トヨタ自動車株式会社(公式企業サイト)

 ●豊田 章男(とよだ あきお)(1956.5.3 愛知県名古屋市生まれ)

  慶應義塾大学法学部法律学科卒業。バブソン大学経営大学院修了(MBA)。 

 

 

 


・反差別の系譜(1)/米国空軍士官学校長のSpeech(下)

2020年07月08日 16時18分02秒 | ●脱TV❶:Speech動画

 

 筆者は今回を含めて、20数回このたびの動画を観ました。そして観るたびに米国における〝黒人差別〟の根深さを感じるとともに、〝差別解消〟へ向けた改革のスローモーぶりに、正直言って驚いています。

 と言えば、 米国人をはじめとする一部の方より、『何を勝手なこと』をとお叱りを受けるかもしれません。しかし、つい先日の「Fourth of July」すなわち「独立記念日」( Independence Day)について思いを巡らせていたとき、筆者の関心は、やはりアメリカ合衆国「建国の父」たちが、「独立宣言」の中に掲げたメッセージでした。

 コロナ禍によって、今年の「独立記念日」は盛り上がりに欠けたような気がしますが、この「Fourth of July」の基本的意義や歴史については、〝非米国人〟であっても関心を持っている人は世界的にみても多いようです。

 ここではこれ以上触れませんが、読者各位において1776年7月4日の「独立宣言」に到った経緯と、その〝今日的な意味〟について、今一度振り返ってお考えください。ことに中学生以上の青少年に考えて欲しいというのが筆者の願いです。ヒントは「建国の父」と、その際の「基本的メッセージ」です。

 前置きはこのくらいにして、さっそく「動画」についてお話しましょう。

                  ★   ★   ★

 

 アメリカ合衆国の偉大さを象徴するSpeech?!

 Speechの中でジェイ・シルベリア学校長(中将)も述べているように、このときの聴衆は士官学校生4,000名、教職員及び空軍関係者等1,500名、合計5,500名でした。極めて対象限定的とはいえ、まずこの数の多さに驚かされます。

  さらなる驚きは、学生以外の1,500名もの職員・監督・教官、そして空軍基地・司令本部・航空基地航空団等の首脳陣も参加していたという事実です。加えて、2人の准将や大佐なども列席しており、そういう軍関係者が一堂に会したという事実は、生半可な要因や組織体制では不可能でしょう。

 つまりはそれだけ、空軍中将ジェイ・シルベリア学校長の危機感と、それを少しでも回避しなければとの想いの強さに、筆者はまず感銘を受けました。

 しかし何と言っても最大の驚きは、やはりSpeech内容の〝強いメッセージ性〟でしょう。〝空軍すなわち軍隊本来のテーマ〟とは関係のないものであるにも関わらず、あれだけ強い調子で〝何かを吐き出すかのように淀みなく言い切ったジェイ・シルベリア学校長(中将)の想いに圧倒されるとともに、大いに勇気づけられました。

 彼は、最初の方でこう述べています。

 『(差別的な言動に対しては、)空軍兵としてではなく、人間(human being)として怒るべきだ。

 この一言に、このときのSpeechのエキスが言い尽されています。

 それにしても、何と大胆にそしてまた堂々と言い切ったことでしょうか。しかもその究極が、5回ものGet Out!』(出て行け!)というのですから……。極めて権威あるオフィシャルな場において、これ以上の表現はないと思えるほどの厳しさであり、覚悟と言えるでしょう。

 その表現を、4,000名の学生だけでなく、1,500名もの学生以外の教職員や軍関係者の前で語ったところに、このSpeechの持つ意味と価値があると思います。

 『相手が誰であろうと、私は一切妥協することなく、はっきり告げるよと、一歩も緩まず、まるで「宣戦布告」でもするかのような毅然とした態度です。

 筆者はこのように、〝自由な発想と主張で堂々と語り〟、また周囲もそれを〝当然のようにリスペクトする〟アメリカという国の〝懐の深さ〟が大好きです。まさしくトーマス・ジェファーソンをはじめとする「建国の父たち」のspiritが、脈々と流れています。

 

 power of diversity(多様なパワー)

 さらに今回のSpeechにおいて、筆者が一番惹かれた言葉が「diversity(多様性)」でした。「power of diversity(多様なパワー)」の重要性であり、さまざまな境遇・人種・背景・性別・生まれ育ち等によってバリエーション豊かに創り出されるパワーと言いたいのでしょう。

 『多様性の力があるからこそ、その分だけ強くなれる』という彼は、『狭量でとんでもない考え』よりも、その方がずっとましだと断言しています。

 昨今、〝多様性を排除する〟いくつかの大国の存在を考えるとき、この言葉の重みをひしと感じざるをえません。

                  ★ 

  ところで、今回の「動画」において、特に筆者が注目したのは、学校長(中将)のすぐ右後ろに立っている女性兵士の姿です。学校長のSpeechを〝何かに魅入られた〟かのように凝視しながら聞き入っています。途中で学校長が、教職員を前の方に移動するように促したときも、彼女一人は微動だにすることなく、これまでとまったく同じように静観したまま、右後ろに控えています。

 おそらくこのとき彼女は、学校長(というより、各Speaker)の「付添人」のような役目を果たしていたのかもしれません。ひょっとしたら、中将の秘書的な方でしょうか。学校長のSpeechに、〝心に強く響く何かを受け止めた〟言う〝覚悟ともとれる表情〟がとても印象的でした。

 カメラアングルが変わって女性兵士は映らなくなりましたが、他の女性職員をはじめ多くの教職員の表情には、学校長の強い憤りと危機感を、しっかりと受け止めたという気迫のようなものが感じられました。

               



※注:以下の[注釈」記事は、ジェイ・シルベリア学校長(中将)のSpeech内容をよりよく理解していただくための「key word」情報です。筆者において、若干の省略・修正を加えています

※注① 「シャーロッツビル事件」(白人至上主義者による暴走自動車突入の致死傷事件) 

 (※筆者注:Speechの中でジェイ・シルベリア学校長(中将)は、この「事件名」を3回繰り返しており、また学内において「この事件についての議論」がなされたことが明かされています。)

 2017年8月12日、米南部バージニア州シャーロッツビル市において、「白人極右集会」に抗議する人達に向け、「白人至上主義者」の青年が乗った自動車が突入。何度もバックと突入とを繰り返しながら暴走した結果、死者1人、負傷19人の惨事を引き起こした。これに先立ち、極右集会参加の「白人国家主義者達」と、その「抗議者達」の間で衝突が相次ぎ、少なくとも15人が負傷していた。

 同州のテリー・マコ―リフ知事(民主党)は、「白人至上主義者」に『 帰れ! お前たちは愛国者とは程遠い 』と批判。一方、トランプ米大統領(共和党)が「白人至上主義者」を特定して非難しなかったため、共和党内からも疑問視する声が上がった。またマイケル・シグナー市長は、極右行進を「憎悪と偏見と人種差別と非寛容の行進」と非難。死者が出たことに「打ちのめされている」と述べた。(記事:News Japan 2017年8月13日) 

 クリック! ■記事:米南部の極右集会に抗議、1人死亡 州知事は白人至上主義者に「帰れ」

 

※注② ファーガソン事」(白人警官による黒人少年射殺事件)

  米中西部ミズーリ州セントルイス郡ファーガソンで、2014年8月9日に郡の警察官に射殺された丸腰の黒人少年マイケル・ブラウMichael Brown)さん(18)は、コンビニエンスストアで強盗をはたらいた疑いがあったと、警察が15日明らかにした。

 ファーガソン警察の「事件報告書」では、ブラウンさんが、コンビニエンスストアからの49ドル(約5000円)の「葉巻の箱」盗難事件の犯人のように名指しされている。その約20分後、ブラウンさんは近くの通りで白昼公然と撃たれたとなっている。(※筆者注:別の報道では、ブラウンさんは無抵抗という証言がある。この証言に対して警察は、ブラウンさんが暴れて逮捕に抵抗したと主張。なお射殺した警官は、強盗事件が発生したために現場に向かい、その後被害者との職務質問上のトラブルによって発砲したとのこと)。

警察が公開した防犯カメラの映像には、ブラウンさんが着ていたのと同じTシャツ、カーキ色の半ズボンにサンダル履きの長身のがっちりした体格の黒人男性が、店員のシャツをつかんで押しのける姿が映っている。(記事:AFP・BB News2014年8月16日)

クリック! ■記事:警官に射殺された少年、コンビニ強盗の疑い

 

※注③ NFLの抗議行動」(国歌演奏時の起立拒否)

  米国の「人種差別」や「黒人への警察暴力」に抗議する「ロスポーツ選手たち」と、「トランプ米大統領」が対立。黒人への暴力に抗議して試合開始前の国歌演奏時にあえて地面に膝をつくプロフットボールリーグNFL選手たちに対し、トランプ大統領が「くびにしろ」とツイート。これに反発して9月24日の各地の試合では、多くの選手が国歌演奏中に膝をつき、あらためて抗議の姿勢を示した。プロバスケットボールNBAの優勝チームも、NFL選手への支持表明を機に、予定されていたホワイトハウス表敬訪問を取りやめた。NFLでは昨年(2016年)夏コリン・キャパニック選手が警察暴力に抗議して国歌演奏時の起立を拒否し、膝をついたのを機に、複数の選手がこれに同調。9月24日はそれ以来、最も大勢の選手がこれに賛同した。(記事:News Japan 2017年9月25日

クリック! ■記事:「黒人への暴力に抗議の米NFL選手たち、トランプ氏に反発」

 

 

 

 

 

 


・反差別の系譜(1)/米国空軍士官学校長のSpeech(中)

2020年06月21日 10時46分49秒 | ●脱TV❶:Speech動画

 黒人自身による「被差別自作自演」の意味

 前回、(上)においてご紹介した米国空軍士官学校長ジェイ・シルベリア中将の 「Speech」は、その演説の中でも触れられていたように、そしてまた多くの読者も気付かれたように、「黒人差別」に端を発したものです。

 具体的には、士官学校寮内のホワイトボードに、『家に帰れ! ニガー!※注:ニガー(nigger)とは「黒人」の蔑称という「落書き」があり、それに対するジェイ・シルベリア中将の〝学生たちに反省を促す怒り〟から始まったと言えるでしょう。

 ところが、実はこの落書き」はその後、同校の「黒人学生」による自作自であることが判明したのです。当時のAFP伝によれば――、

 【2017年11月9日 AFP】米空軍士官学校の寮で今年9月に見つかった黒人を侮辱する「落書き」について、(中略)同校の広報担当者、アレン・ヘリテージ中佐は、「人種差別的な落書きの標的とみられていた士官候補生のうちの一人による自作自演である」ことが確認されたと述べ、さらに、学生自身が責任を認め、調査によってもこれが立証されたと明かした。 ※筆者注:なおAFPは最後に、「落書き」したことを認めた学生はもう同校に在籍していないと伝えた。          

                    ★   ★   ★

 

  つまり私は、以上のような「重大な事実」を伏せたまま、読者に「Speech動画」を提供したことになります。

 そこで今回は、私がなぜ「重大な事実を伏せて」まで、今回の「動画」を読者に観て欲しいと思ったのか、その理由をお話しましょう。

                   ★  

理由:1 今回のような「被差別(=差別される)」に基づく「事件の偽装」や「虚偽的な言動」は、これまでも「学校」等において、わずかながらも事例が報告されています。

 もっとも、空軍士官学校生自身の「自作自演」となれば、国家すなわち合衆国軍に関する組織そして施設での事件だけに、その持つ意味や影響は想像以上のものがあったのでしょう。

 このような「自作自演」は、何処であれ誰のものであれ、無論赦されるものではありません。報道された当時、黒人の側からも、自作自演した学生に対する非難があったのは当然であり「黒人差別反対運動」に対する背信行為とみなす人々もいたようです。

 しかし永年〝差別され続けている黒人〟にしてみれば、〝差別されているという実態〟は、一刻も早く、そして一件でも多く世に伝えたいと思うのではないでしょうか。そしてその想いは、膨大なエネルギーを秘めているような気がします。

 なぜなら、「黒人」にとって差別され続ける〟ということは、常に否応なく〝生命の危険〟が伴うからです。或るデータによれば、米国において「警察官に射殺」される「黒人少年」の数は、「白人少年」の21倍に上るそうです。

  あくまでも私個人としての意見ですが、黒人による「自作自演的な言動」には、〝やむにやまれぬ緊急避難的なニュアンス〟を感じます。

                    

理由:2 以上(1)の〝経緯〟によって、ジェイ・シルベリア校長(中将)の「Speech」が導かれたとしても、「Speech」そのものの内容や価値が揺らぐことはないと私は思います。それだからこそ、何としても読者に「動画」を観てもらいたいと強く思った次第です。

                    

理由:3  さて今一度、上記の※注:なお、「落書き」したことを認めた学生はもう同校に在籍していないという。】という一節をご覧ください。    

 問題の学生は、この時点で同校すなわち「士官学校の学生」ではないとのこと。学校側が「退学処分」にしたのか、あるいは学生自身が「自主退学」を申し出たのか、それは判りません。

 しかし、私は「この学生」について、個人的には以下のように考えるに到りました。

 それは、学校として「この黒人学生」による「自作自演の事実そのもの」をあらためて採りあげ、「そのような行為に到った原因と背景」についても、「議論の対象」にして欲しいと考えるものでした。

 その考えは、ジェイ・シルベリア校長(中将)の「Speechd動画」を観るたびに強くなり、私は心のどこかで「ジェイ・シルベリア校長(中将)」による、いわば「part:2」とも言うべき「Speech」をリクエストしたいと思ったほどです

                          ★

 私が想い描くその「Speech」とは――、

 2017年9月の「Speech」当時、「4,000人」の士官候補生と、「1,500人」の教職員や関係者「計5,500人」を前に、5回もの渾身の「Get  Out!(出て行け)」を繰り返した、あの〝反差別の魂の叫び〟に通じる……。 (続く)

 

 

 


 

 

・反差別の系譜(1)/米国空軍士官学校長のSpeech(上)

2020年06月13日 18時56分50秒 | ●脱TV❶:Speech動画

 米国警官の根深い差別意識

 それにしても、ミネソタ州での白人警官による窒息致死傷事件(※註)――。体重をかけた脚でガチガチに被害者の頭部を抑えつけた「動画」の警官の姿に衝撃を受けた。何と言っても、取り調べや尋問云々という「警察官の職務行為」には程遠い、〝常軌を逸した過剰な行為〟に唖然とするばかりだった。

 もはや「非道な所業」としか言いようがなく、およそ「人間に対する行為」という領域を完全に逸脱している。

 あたかもたった今、何人もの人命を奪った殺人犯の拳銃を奪い取って取り押さえた……と言わんばかりの映像であり、筆者の〝遣り切れなさ〟は尋常ではなかった。この歳になって、ここまで心を痛めたことも珍しい。

 今こうして原稿を綴りながらも、 《問題のシーン》 が脳裡に甦って来る。そのため、その〝遣り切れなさ〟はいっそう辛いものとなってしまった。

 しかし、つい今しがた以下のような「追加記事」を知るに及び、これまでの〝遣り切れなさ〟が一瞬にして吹き飛び、筆者はまさしく〝言葉を喪った〟。その「追加記事」とは――、

            ★  ★  ★

 

※筆者において、一部省略、字句補正。

 【(加害警官の)ショービン容疑者は約17年間、警官としての仕事がない時、ナイトクラブの前にパトカーを止めて警備(ガードマンのアルバイト)を行い、(被害者の)フロイドさん2019年に店内で警備員を務めていた。

 ナイトクラブで働いていた、フロイドさんショービン容疑者の元同僚のデビッド・ピニー氏も、2人は互いに知っていただけではなく衝突したこともあると話している

 「彼らは対立していたショービン容疑者はクラブで、客にとても攻撃になり、それが問題になっていたからだ。彼はフロイドのことを知っていた」

 さらに、「どれくらい(ショービン容疑者はフロイドさんのことを)知っていたのか?」とのインタビュワーの質問に、ピニー氏は「とてもよく知っていたと思う」と答えている

 ()上記の記事の翌日、CBSニュースは、元同僚のピニー氏が「2人は知り合いで、衝突していた」という発言を撤回したことを報じた。

                   ★  ★  ★

 動画で見た「容疑者の一連の言動」には、明らかに強い〝憎悪〟の感情に〝傷害〟の意志を持っていたことが分かる。それが次第にエスカレートし、単なる「傷害」の意志から「被害者が死んでもいい」という、いわゆる「未必の故意」に発展して行ったように感じる。

 おそらく、「※注①」や「以上のような経緯」から、フロイド氏遺族の弁護人は、ショービン容疑者に「殺害の意志あり」として「第二級殺人」から「第一級殺人」に切り替えるよう求めたのだろう。けだし、当然の措置と言える。

                 

 年間、百人ほどの警官が公務中に射殺されると言う米国。それだけに警官が自衛のために過剰な反応や行きすぎた行動に出るのはやむを得ないとする風潮が、影のように付いて回わることも歴史の事実だ。

 それと同時に、「米国憲法修正2条」は、国民が「自己の武器を保有し携帯する権利もまた連邦政府によって侵害されてはならない。」ともしている。

 毎年幾度となく取り沙汰される、米国警官による「非道な所業」は、いざとなったら「連邦政府」ですら「闘うべき相手」とする米国民のアイデンティティの裏返しなのかも知れない。……とそう考えたくもなる〝独特の精神構造〟を形成している。それだけに、われわれ「日本人」にはいっそう理解しがたい感情や意識を含み持っているに違いない。

 しかし、そうではあっても、〝そのようなアメリカ的攻守・自衛の思想や警察権力〟について、日本人にはまったく〝考える手掛かり無し〟ということでもなさそうだ。実は最近、今回のような「白人警官による黒人差別的暴虐事件」に接するたびに、真っ先に筆者の脳裡に浮かんでくるものがある。

                 ★

 それが、今回ご紹介する「Speech動画」だ。今回、筆者は「動画」の紹介だけにとどめ、コメントは次回ということに。この動画は、ことに中・高そして大学生の諸君に推奨したいと思う。友人・知人間で一緒にご覧いただき、それぞれの意見を交換する機会があれば……。

 それでは、米国空軍の士官学校校長「ジェイ・シルベリア中将」渾身の5分21秒を!

 👇 動画クリック!

 ◆ジェイ・シルベリア中将(空軍士官学校校長)のSpeech(5:21)

 


※注釈 いずれも本ブログ管理人において加筆修正

※注① [1日 ロイター] - 米ミネソタ州で黒人男性のジョージ・フロイドさんが白人警官に暴行され死亡した事件を巡り、独立検視官らは1日、遺族の要請を受けて行った検視の結果、死因は「窒息」で、殺人により死亡したと断定した。また死亡原因となるような持病も見られなかったとした。郡検視官によると、外傷性の窒息の形跡はなく、冠状動脈疾患や高血圧が死亡につながった公算が大きいとされていた

 今回検視に当たったアレシア・ウィルソン医師は「形跡から死因は機械的窒息で、殺人による死亡と判断される」と表明。検視に立ち会ったマイケル・ベーデン医師もウィルソン氏の意見に同意するとした上で「フロイド氏に死亡原因となるような持病は見られなかった」と指摘した。

※注②  米国憲法修正条項第2条」(大礒正美氏による意訳) - 連邦政府に対する潜在的抵抗権自由権)を確保する必要から、正当に組織された義勇軍は禁止されてはならず、 (したがって)義勇兵となるべき邦(州)民が、自己の武器を保有し携帯する権利もまた、連邦政府によって侵害されてはならない。

 

 


・12歳の少女セヴァン・スズキの伝説のSpeech【後編】/グレタ・トゥーンベリ嬢への道のり

2020年05月08日 20時47分05秒 | ●脱TV❶:Speech動画

 今回、私が12歳の少女のSpeech」を採り上げた理由は、次の(A)(B)(C)3点です。

(A)前回までの『世界で一番貧しい大統領の言葉/ホセ・ムヒカ(ウルグアイ)』におけるSpeech(演説)と、今回の「セヴァン嬢のSpeech」とは、共に地球サミット(世界環境会議)」(※注①)の場でなされたもの

 前者は、リオ・デジャネイロでの「第3回:リオ+20」(2012.6)であり、後者は、同じリオでの「第1回」の会議(1992.6)でした。

(B)「ムヒカ大統領」と「セヴァン嬢」の共通点は、「環境問題の内容云々」よりも、それら「問題解決」へ向けた「実際的な行動力の無さ」を厳しく問い糺すものであること。

 この「実際的な行動力の無さ」について、当時76歳のムヒカ大統領政治力」と言う言葉を使って強調し、Speechの中でその言葉を少なくとも3回使っています(※注②)。つまりは、国連加盟国による「国際的解決力のやる気の無さ」を上品に糺したのであり、言外に「国際政治力学上の障害」を示唆したといえるでしょう。

 いま私は〝障害〟と言う言葉を使いましたが、それは一国の大統領という立場に配慮し、〝国際的儀礼〟として多少抑えたつもりです。しかし、当時のムヒカ大統領の〝本音〟は、〝悪弊〟というレベルのニュアンスではなかったでしょうか。その今日的な「悪弊」の一例として、私は中国による「一帯一路」を挙げています。

 それに対して、当時12歳のセヴァン嬢は、実に端的かつシンプルに「大人たちの行動のやる気の無さ」を鋭く衝いたのです。〝憤懣やるかたない〟といった彼女流の〝心の声〟を代弁すれば、

『私達子供の未来を、満足に解決もできない各国の偉いお年寄りが、自分達には関係のないはるかに先の未来へと問題を先送りしながら、もっともらしい理屈をこねまわして、あれやこれやと議論のポーズだけはしている』

 と言った感じでしょうか。(前回の「日本語字幕」の整理編集稿を参照ください。「青太字」部分がそれを物語る指摘部分です)

 そしてこのセヴァン嬢の〝心の声〟を引き継いだとも言えるのが、前回【中編】の最後に触れたスウェーデンのグレタ・トゥーンベリ嬢でした。すなわち――、

(C)1992年6月のセ゚ヴァン嬢のSpeechから、2019年11月「国連」でのグレタ嬢の指摘(紹介peechの動画)までの27年間「世界の指導者達」の「実際的行動のやる気の無さ」は、少しも変わらないということ。

 わずか4分30秒ほどのこの「動画」において、グレタ嬢は〝大人達に期待することを諦めた〟といえるほど〝痛罵に満ちた強い言葉〟を絞り出したのです。

 そのSpeechの際の表情や言葉が、〝嫌悪感〟と〝攻撃性〟と〝絶望感〟に満ちているため、発表当初から今日まで、賛否両極端の評価を受けたことは周知のとおりです。

           * * * * * * *

 

 セ゚ヴァン➜グレタ  という〝道のり〟の意味

 この【後編】を含めた今回の3回シリーズにおいて、私がグレタ嬢よりセヴァン嬢に重きを置くのは、1992年6月のリオデジャネイロでの【あのセ゚ヴァン嬢のSpeech】があってこそのグレタ嬢の活動という厳然たる事実を、読者に再確認して欲しいと思ったからに他なりません。

 そのことは、今回アップした「グレタ嬢の2本のSpeech動画(「その1」&「その2」)」をご覧になれば理解できると思います。あくまでも「1992年6月のセ゚ヴァン嬢のSpeech」こそが、カウンターメモリの「ゼロ地点」であり、それすなわち〝カウントダウンの始まりであるということです。といっても、もちろん私が個人的にそう位置付けたにすぎませんが。

 では、それはいったい何の「カウントダウン」の「始まり」なのでしょうか? 

 もうお判りでしょう。それは「セ゚ヴァン嬢のSpeech」から今日までの28年間、地球環境上の改善改革は、未だにまともな行動に結びつかないまま、あれこれ理屈をこねまわすだけのものでしかないということでしょう。すなわち――、

常にいつの時点においてもやる気が無く、「これではいけないね」という「再認識のカウントダウン」だけが、また始まる

……ということでしょうか。要するに〝何も進んではいない〟のであり、もちろんこれからも進むことはないでしょう……と言うのが、限りなく「正解に近い」のかもしれません。

 ……ということで、これから先は読者各位において自由に考えていただきましょう。私は正直言って、これを綴ることに少々疲れたというのが本音です。あとは「グレタ嬢の2本の動画」をじっくりご覧ください。4分35秒+11分12秒=2本併せてもたったの15分47秒 ❢    それでは、これにて……。(了)

 


*上記「本文」の「※注釈」
※注①:「地球サミット」として、これまでに以下「3つの会議」が行われています。
1.第1回地球サミット=「環境と開発に関する国際連合会議(国連環境開発会議)」(1992年にブラジルのリオ・デ・ジャネイロで開催)
 まさにこのとき、12歳の少女セヴァーン・スズキの伝説のSpeechが行われたのです。
2.第2回地球サミット=「持続可能な開発に関する世界首脳会議(リオ+10)」(2002年にヨハネスブルグで開催)
3.「国連持続可能な開発会議(リオ+20)(2012年にリオ・デ・ジャネイロで開催)
 当時のウルグアイ大統領ムヒカ氏のSpeechは、この時の演説でしたね。実はこの会議において、1992年に12歳でSpeechしたセヴァーン・スズキ少女は、20年後のこの会議に参加していたのです。
※注②:4/6の【前編】の中で「青太文字」が(a)(b)(c)と3ヵ所あります


 

👇 参考「動画」クリック!

 ◆動画:洞爺湖からのメッセージ/セヴァン・スズキ(4:37) 

 この「動画」は、2008年7月に北海道の洞爺湖で開かれたG8による「洞爺湖サミット」の際に来日した27歳のセ゚ヴァン・スズキさんが、洞爺湖の畔で語ったものです。彼女はこの中で、15年前に12歳でブラジル・リオデジャネイロでの「第1回地球サミット」において〝あの伝説のSpeech〟をするに至った経緯を語っています。とても興味深い回想です。なおこの動画は、「アースキャラバン実行委員会。特別協賛:パナソニック・キッズスクール」の提供です。 

👇 「記事」クリック! 

◆セヴァン・カリス=スズキ(Wikipedia)

◆デヴィッド・スズキ(Wikipedia)

 デヴィッド・スズキ氏は、セヴァン・スズキ嬢の実父。生物学、動物学、遺伝学、環境問題を研究テーマとする学者。


 

👇「動画:その1」クリック!

◆動画:グレタさん国連・気候行動サミット演説(4:35)

 このSpreechは、2019年9月23日に米国・ニューヨークの国連本部において開かれた「気候変動サミット」での演説(ノーカット版)です。

 ■下記は、上記「動画」の日本語訳全文■ ※「動画」の字幕と多少異なっていると思います。

 私から皆さんへのメッセージ、それは「私たちはあなたたちを見ている」、ということです。私は今、この壇上にいるべきではありません。私は海の向こうで学校に行っているべきです。それなのに、あなたたちは私に希望を求めてここにきたのですか?よくそんなことができますね!
 
 あなたたちは空っぽの言葉で、私の夢そして子供時代を奪いました。それでも私はまだ恵まれている方です。
多くの人たちが苦しんでいます。多くの人たちが死んでいます。全ての生態系が破壊されています。私たちは大量絶滅の始まりにいます。
 それなのにあなたたちが話しているのは、お金のことと、経済発展がいつまでも続くというおとぎ話ばかり。恥ずかしくないんでしょうか!

 30年以上にわたって、科学ははっきりと示してきました。それに目をそむけて、ここにやって来て、自分たちはやるべきことをやっていると、どうして言えるのでしょうか。必要とされている政治や解決策はどこにも見当たりません。
 あなたたちは私たちに“耳を傾けている”、そして緊急性を理解していると言います。しかしどれだけ私が怒り悲しんでいようとも、私はそれを信じたくありません。
 なぜなら、もしあなたたちが状況を理解していながら行動を起こしていないのであれば、それはあなたたちが邪悪な人間ということになるからです。私はそれを信じたくありません。

 二酸化炭素排出量を10年で半分に減らしたとしても、地球の平均気温を1.5℃以下に抑えるという目標を達成する可能性は50%しかありません。そしてそれによる取り戻しのつかない連鎖反応を埋め合わせることは、制御不能になります。
 あなた方は50%でいいと思っているのかも知れません。しかしその数字には、ティッピング・ポイント(小さな変化が集まって、大きな変化を起こす分岐点)やフィードバックループ(フィードバックを繰り返して改善していくこと)、空気汚染に隠されたさらなる温暖化、そして環境正義や平等性などの要素は含まれていません。
 そして、私たちや私たちの子供の世代に任せっきりで、何千億トンもの二酸化炭素を吸っている。私たちは50%のリスクを受け入れられません。私たちは、結果とともに生きなければいけないのです。

 「気候変動に関する政府間パネル」が発表した、地球の温度上昇を1.5℃以下に抑える可能性を67%にするために残っている二酸化炭素の量は、2018年1月の時点で420ギガトンでした。今日、その数字はすでに350ギガトンにまで減っている。
 なぜこれまでと同じやり方で、そしていくつかの技術的な解決策があれば、この問題が解決できるかのように振舞っていられるのでしょうか。現在の排出量レベルを続ければ、残っているカーボンバジェット(温室効果ガス累積排出量の上限)は、8年半以内に使い切ってしまいます。

 しかしこの現状に沿った解決策や計画は作られないでしょう。なぜならこの数字は、とても居心地が悪いから。そしてあなたたちは、それを私たちにはっきりと言えるほど十分に成熟していない。
 あなたたちは、私たちを失望させている。しかし、若い世代はあなたたちの裏切りに気づき始めています。未来の世代の目は、あなたたちに向けられている。

 もしあなたたちが裏切ることを選ぶのであれば、私たちは決して許しません。
私たちはこのまま、あなたたちを見逃すわけにはいかない。
今この場所、この時点で一線を引きます。世界は目覚め始めています。変化が訪れようとしています。
あなたたちが望もうが望むまいが。(了)


👇参考「動画:その2」クリック!

◆動画:環境活動家グレタ ・トゥーンベリ:「TEDxStockholm」プレゼンテーション(11:12)
 
👉「記事」クリック! ◆グレタ・トゥーンベリ(Wikipedia)

 


・12歳の少女セヴァーン・スズキの伝説のSpeech【中編】/1992年6月:地球サミット

2020年04月30日 14時23分11秒 | ●脱TV❶:Speech動画

 ひとごとのようにしか語ることのできない大人達

 【前編】の「セヴァーン・スズキ嬢のSpeech動画」、いかがでしたか。個人的な感想を言えば、大人達に対する12歳の少女の不信感……もっと言えばひとごとのようにしか語ることのできない大人達に対する絶望感のようなものを感じました。

 このときの彼女は、「地球サミット」会議最後(若しくはそれに近い順番)のスピーカーかも知れません。そう思った根拠は、会議の様子をとらえた別の動画では、他のスピーカーのSpeechの場合の座席が〝満席〟となっていたからです。しかし、セヴァーン・スズキ嬢のときは、ご覧のように座席はガラガラでしたね。

 ところで筆者の推測ですが、おそらく彼女は前々日、前日そしてこの日の3日間、他のスピーカーのSpeechを「オブザーバー」的な立場で聴いていたような気がします。いえ、主催責任者は、むしろ「他のスピーカー」のSpeechを参考にするよう促したのではないでしょうか。

 そういう意味では、この無名の12歳と13歳の4人の少年少女に「参加とSpeech」の機会を与えた担当事務局の配慮にも、賞賛の拍手を送りたいと思います。その結果、私達はこうして素晴らしいSpeech動画を視聴できるわけですから。

 もしこのとき、主催事務局のトップに特定国との不透明な関係や忖度があれば、この少年少女達は、それこそ「Who are you?」と上から目線で追い返されたかもしれないのです。

           *  *  *

 正味6分30秒の動画には、一貫して少女の〝抑えがたい純真な心情〟がよく表れていました。時折り語調が強くなり、問い糺すような視線を向けていましたね。聴衆たる「各国の会議参加者」や演壇右手の「会議主催者側の人々」は、おそらく彼女の心の底からふつふつと湧き上がる叱責を感じたことでしょう。

 明らかに大人達への〝不満そして怒り〟であり、〝満足な成果〟を残し得なかった大人達の〝やる気の無さ無責任さ〟に彼女は呆れたことでしょう。Speechが進むにつれて、筆者は自分が叱責されているような気がして来ました。

 それはおそらく、子供に対する〝大人としての虚飾や狡さ〟が頭の片隅を掠めていたからかも知れません。同じように感じた方は、多いのではないでしょうか。

 あの動画には、聴衆としての「各国代表者の表情」が映し出されるシーンが20回ほどあります。時間が経つにつれて、彼等の表情に〝事の重大さに気づかされたかのような真剣さが加わり〟さらにその後、まるで蛇に睨まれた蛙のごとく、〝その場に射すくめられたかのような表情〟に変わって行きましたね。

           *  *  *

 

 大人を当てにしない少女の闘い

 12歳の少女は、初めの方で明確に宣言しています。下段「日本語字幕(b)」の「赤文字」をご覧ください。

 この演説には、本音も建て前もありません。

 何の〝(てら)いも駆け引き〟もなく、ただ〝素直に単純明快に〟日頃から自然に感じ、また疑問に思って来たことを、包み隠さず言葉にしたのです。

 彼女が訴えることは、本来、実に〝容易に想像できる単純明快なもの〟であり、それはまた〝誰であれ、どこの国であれ〟、本気でやろうと思えば〝容易に実行できる〟ものです。そうであればこそ彼女は、同じ(b)において次にように言い切ることが出来たのでしょう。

 私は自分の未来のために闘っています。

 筆者はこの一節に、懸命に抑えた彼女の峻烈な「アイロニー」とともに、居ても立っても居られないという「堅い決意」を感じました。

 そのことは、今回の【日本語字幕】編集版をご覧になれば一目瞭然でしょう。特に (d)(e)(p)(q)(r)(s)青太字部分にご注目ください。

 そしてこの12歳のセヴァーン・スズキ嬢の「アイロニー」と「堅い決意」を、20数年の時を経て甦えらせた乙女こそ、いま話題のスウェーデンの環境活動家グレタ ・トゥーンベリ嬢その人と言ってよいでしょう。(続く)

 


【日本語字幕】 ※注 以下は【前編】の「日本語字幕」に、「コメント」や「注釈」のための「太字、色文字、下線」等の編集を加えたものです。

 12歳の少女セヴァーン・スズキの伝説のSpeech(1992年6月:地球サミット)

 (a)  「子ども環境協会(=The Environmental Children's Organization.)」(以下、「ECO(エコ)」)のセヴァーン・スズキです。ECOメンバーは、世界を変えたい12歳と13歳の子どもたち――ヴァネッサ・サティ、モーガン・ガイスラー、ミシェル・クイッグそして私です。私達は募ったお金で5000マイル(約8000㎞)の旅をしてここまで来て、大人の皆さんに訴えに来ました。

(b)   この演説には、本音も建て前もありません私は自分の未来のために闘っています。自分の未来を失うということは、議席や株の儲けを失うのとは違います。これからの世代のために私は訴えます。人知れず泣いている世界の飢えた子供達や行き場を失い死んでいく地球の無数の動物達のためにです。

(c)   オゾン層の穴のせいで、日光を浴びるのが怖くなりました。化学物質が心配で、息をするのも怖いです。地元のバンクーバーで、以前は父と釣りをしました。でも数年前、魚から発ガン性び物質が見つかりました。動物や植物が、毎日絶滅していることを耳にします。

(d)   私の夢は、野生動物の大群や鳥や蝶の舞うジャングルや熱帯雨林を見ることです。でも子供の私達が、将来それらを見られるか心配です。大人のみなさんは子供の頃、そんな心配をしましたか? この現実を目の当たりにしていながら、みなさんは時間も解決法もあるかのように振舞っています

(e)   子供の私には、解決法は分かりませんが、みなさんと同じだと気づいてください。オゾン層の穴をなくす方法も知らないし、汚れた川に鮭を呼び戻す方法も、絶滅した動物を生き返らせる術も知りません。砂漠になった森は元に戻らないのです。 直し方を知らないなら、壊すのはもうやめてください。

(f)   あなたがたは政府の代表かも知れません。企業や団体の代表あるいは記者や政治家かも。でも同時にみなさんは母親や父親です。兄弟や姉妹、おばさんやおじさんかも。そして皆、誰かの子供です。

(g)   私たちは50億人以上の人間や3000万種以上の生き物から成る大家族の一員だと、子供の私でも知っています。国境も政府も、その事実を変えられません。子供の私でも、これは皆に関わる問題であって、全世界が一つの目標に向けて行動すべきだと知っています。

(h)   怒っていても、私の眼は見えています。恐れていても、堂々と自分の気持ちを伝えます。

(i)   私の国では、多くのものを無駄にしています。買っては捨てることを繰り返しているのです。でも先進国は、困っている国と分かち合う気はありません。必要以上に持っているのに、分かち合うのが怖いのです。豊かさの一部すら手放せないのです。

(j)   カナダでは、食べ物も水も家もある恵まれた暮らしができます。腕時計も自動車も、パソコンもテレビもあります。その数を数えるのに2日はかかります。

(k)   2日前にブラジルのストリート・チルドレン(※注と話し、ショックを受けました。その一人がこう言いました。

『お金持ちだったら、ストリート・チルドレン全員に贈り物がしたいんだ。食べ物、服、薬、家そして愛を贈りたい。』

(l)   何も持たない彼らが快く分かち合うのに、何もかも持っている私たちょは、なぜこんなに欲深いのでしょうか? 

(m)   彼らは私と同じ歳の子供ですが、生まれた場所のせいで私とは大きく違う生活をしています。私がリオの貧民街に住んでいてもおかしくありません。ソマリアで飢え苦しんでいても。中東の戦争の犠牲者やインドの物乞いになっていてもです。

(n)   子供ですが知っています。戦争に費やすお金で、環境や貧困問題を解決し、平和条約が結べたら地球はどんなに素晴らしい場所になるかを。

(o)   学校や幼稚園で、大人は子供に良い行いを教えます。例えば、

 ケンカせずに仲直りしろとか、相手を敬えとか、散らかすなとか、生き物をいじめるなとか。独り占めするななどです。

(p)   子供に〝するな〟ということを、なぜ大人はするのですか? この会議に来た意味や誰のための会議かを忘れないでください。私たちはみなさんの子供です。私達が大人になった時の世界を、あなた方が決めています。 

(q)   親たちは子供を〝なだめよう〟として、こう言います。
 『大丈夫。世界はまだ終わらないよ。できることはやっている。』
 でも、もう言い訳は通用しません。私たちのことを少しでも考えていますか?

(r)   『言葉よりも行動に人の心は表れる。』 それが父の口癖です。

(s)  みなさんの行動に心が痛みます私たちを〝愛している〟と言うのなら、どうか行動で示してくださいありがとうございました(了)。

 

*上記再掲「日本語字幕」(編集後)の「※注釈

※注①:「ストリート・チルドレン」とは、「路上生活者」すなわち「ホームレス」のことです。なお参考までに――、

👉記事クリック! ◆ストリート・チルドレン(Wikipedua)


 

👇参考 動画クリック!(Special  Speech)

◆動画 テドロス博士(WHO事務局長)への公開メッセージ(4:22)

 世界保健機関(WHO)のテドロス事務局長が、「台湾から人種差別的な中傷を受けた」などと記者会見で訴えたことに対して、台湾の捜査当局や蔡英文総統らが「根拠がない」と反論、台湾でWHOに対する不信感と反発が広がっている。       

 こうした中、英国で学ぶ台湾人女子医学生が、動画投稿サイトで「私たちはあなたの民族、文化、あるいは肌の色に基づいて疑問を呈したことはない」などとテドロス事務局長を糾すメッセージを公開。動画をYouTube上に投稿した女子医学生は、台湾・宜蘭出身のVivi Lin(ヴィヴィ・リン=林薇)さん(21)。オランダに続き、現在は伝染病について学ぶため英スコットランドに留学中。複数のSNS上で多数のフォロワーを持っている。

【読者へ】上記「動画」画面の下に、「日本語の訳文」が付けられています。

※注 2021.1.28 上記動画の「日本語の訳文」が、いつの間にか「中国語」に変更されているようです。その場合は「動画」の「画面の右下」の「設定の訳語」を「日本語」に変更してください。


・12歳の少女セヴァーン・スズキの伝説のSpeech【前編】/1992年6月:地球サミット

2020年04月24日 12時21分07秒 | ●脱TV❶:Speech動画

●読者へ● 今回より始まる12歳の少女セヴァーン・スズキの伝説のSpeech【前編】/1992年6月:地球サミット(全3回予定)は、前回までの世界で一番貧しい大統領の言葉/ホセ・ムヒカ(4/6・4/13・4/20記事アップの【前・中・後編】)と深く関わっています。そこで、まだ「後者」をごらんになっていない方は、ぜひこちらを先に     


 

 今回はまず下記の動画(☟動画クリック!)をごらんください。全体で8分27秒ですが、少女のスピーチ(演説)部分は、ほぼ 0:53~7:23 までの正味6分30秒ほどです。

 この「動画」は、特に「小・中・高校生のみなさん」にお奨めしたいと思います。筆者が200本以上の「Speech動画」から選出した『世界のSpeech動画BEST10』に入る秀逸なスピーチです(※前回のムヒカ大統領のスピーチも「BEST10」に入っています)

 それでは、12歳の少女〝渾身の6分30秒〟をどうぞ!

           


👇動画クリック! 

◆動画◆ 12歳の少女セヴァーン・スズキの伝説のSpeech/国連環境開発会議(地球サミット:1992年6月)(8:27)

補足説明】 この動画は、1993年に国連(Unuted Nation)が編集作成したものです。

 世に〝伝説のスピーチ〟なるものは数多くありますが、この「動画」や前回の「ムヒカ大統領のスピーチ動画」は、間違いなく10年、20年いや50年、100年後においても〝本物のスピーチ〟として語り継がれるでしょう。             


 

読者へ● 下記は上記「動画」の「日本語字幕」です。当管理人において、読みやすいように適度な段落を設け、「対訳」の便宜を考えて「(a)(b)(c)等の整理記号」を付けました。しかし、いつものような「太字・下線・拡大フォント・色文字」等の編集作業は控えています。読者各位の〝自由な受け止め方〟を尊重してのものです。

 それでも数か所、「てにをは」を中心に補正しています。なお次回【中編】は、「コメント」や「注釈付記」のため、従来の編集作業を加えた「日本語字幕」を再掲します。

         


【日本語字幕】 

 『12歳の少女・セヴァーン・スズキの伝説のSpeech』(1992年6月:地球サミット)

 

(a)  「子ども環境協会(=The Environmental Children's Organization.)」(以下、「ECO(エコ)」)のセヴァーン・スズキです。ECOメンバーは、世界を変えたい12歳と13歳の子ども達――ヴァネッサ・サティ、モーガン・ガイスラー、ミシェル・クイッグそして私です。私達は募ったお金で5000マイル(約8000㎞)の旅をしてここまで来て、大人の皆さんに訴えに来ました。

(b)   この演説には、本音も建て前もありません。私は自分の未来のために闘っています。自分の未来を失うということは、議席や株の儲けを失うのとは違います。これからの世代のために私は訴えます。人知れず泣いている世界の飢えた子供達や、行き場を失って死んでいく地球の無数の動物達のためにです。

(c)   オゾン層の穴のせいで、日光を浴びるのが怖くなりました。化学物質が心配で、息をするのも怖いのです。地元のバンクーバーで、以前は父と釣りをしました。でも数年前、魚から発ガン性の物質が見つかりました。動物や植物が、毎日絶滅していることを耳にします。

(d)   私の夢は、野生動物の大群や鳥や蝶の舞うジャングルや熱帯雨林を見ることです。でも子供の私達が、将来それらを見られるかどうか心配です。大人のみなさんは子供の頃、そんな心配をしましたか? この現実を目の当たりにしていながら、みなさんは時間も解決法もあるかのように振舞っています。

(e)   子供の私には、解決法は分かりませんが、みなさんと同じだと気づいてください。オゾン層の穴をなくす方法も知らないし、汚れた川に鮭を呼び戻す方法も、絶滅した動物を生き返らせる術も知りません。砂漠になった森は元に戻らないのです。 直し方を知らないなら、壊すのはもうやめてください。

(f)    あなたがたは政府の代表かも知れません。企業や団体の代表あるいは記者や政治家かも。でも同時にみなさんは母親や父親です。兄弟や姉妹、おばさんやおじさんかも。そして皆、誰かの子供です。

(g)   私達は50億人以上の人間や3000万種以上の生き物から成る大家族の一員だと、子供の私でも知っています。国境も政府も、その事実を変えられません。子供の私でも、これは皆に関わる問題であって、全世界が一つの目標に向けて行動すべきだと知っています。

(h)   怒っていても、私の眼は見えています。恐れていても、堂々と自分の気持ちを伝えます。

(i)    私の国では、多くのものを無駄にしています。買っては捨てることを繰り返しているのです。でも先進国は、困っている国と分かち合う気はありません。必要以上に持っているのに、分かち合うのが怖いのです。豊かさの一部すら手放せないのです。

(j)    カナダでは、食べ物も水も家もある恵まれた暮らしができます。腕時計も自動車も、パソコンもテレビもあります。その数を数えるのに2日はかかります。

(k)   2日前にブラジルのストリート・チルドレンと話をし、ショックを受けました。その一人がこう言いました。

 『お金持ちだったら、ストリート・チルドレン全員に贈り物がしたいんだ。食べ物、服、薬、家そして愛を贈りたい。』

(l)    何も持たない彼らが快く分かち合うのに、何もかも持っている私達は、なぜこんなに欲深いのでしょうか? 

(m)    彼らは私と同じ歳の子供ですが、生まれた場所のせいで私とは大きく違う生活をしています。私がリオの貧民街に住んでいてもおかしくありません。ソマリアで飢え苦しんでいても。中東の戦争の犠牲者やインドの物乞いになっていてもです。

(n)   子供ですが知っています。戦争に費やすお金で、環境や貧困問題を解決し、平和条約が結べたら、地球はどんなに素晴らしい場所になるかを。

(o)   学校や幼稚園で、大人は子供に良い行いを教えます。例えば、

 ケンカせずに仲直りしろとか、相手を敬えとか、散らかすなとか、生き物をいじめるなとか。独り占めするななどです。

(p)   子供に〝するな〟ということを、なぜ大人はするのですか? この会議に来た意味や、誰のための会議かを忘れないでください。私達はみなさんの子供です。私達が大人になった時の世界を、あなた方が決めています。 

(q)   親達は子供を〝なだめよう〟として、こう言います。

 『大丈夫。世界はまだ終わらないよ。できることはやっている。』

 でももう言い訳は通用しません。私達のことを少しでも考えていますか?

(r)   『言葉よりも行動に人の心は表れる。』 それが父の口癖です。

(s)   みなさんの行動に心が痛みます。私達を〝愛している〟と言うのなら、どうか行動で示してください。ありがとうございました(了)。

 


英語原稿実際の「スピーチ」(日本語字幕の表現)では、この「原稿」とは若干異なった表現も見られます。

(a)   Hello, I'm Severn Suzuki speaking for E.C.O. - The Environmental Children's organization.
 We are a group of twelve and thirteen-year-olds from Canada trying to make a difference: Vanessa Suttie, Morgan Geisler, Michelle Quigg and me. We raised all the money ourselves to come six thousand miles to tell you adults you must change your ways.

(b)   Coming here today, I have no hidden agenda. I am fighting for my future. Losing my future is not like losing an election or a few points on the stock market. I am here to speak for all generations to come. I am here to speak on behalf of the starving children around the world whose cries go unheard. I am here to speak for the countless animals dying across this planet because they have nowhere left to go. We cannot afford to be not heard.

 (c)   I am afraid to go out in the sun now because of the holes in the ozone. I am afraid to breathe the air because I don't know what chemicals are in it.
    I used to go fishing in Vancouver with my dad until just a few years ago we found the fish full of cancers. And now we hear about animals and plants going extinct every day - vanishing forever.

(d)   In my life, I have dreamt of seeing the great herds of wild animals, jungles and rainforests full of birds and butterflies, but now I wonder if they will even exist for my children to see.  Did you have to worry about these little things when you were my age? All this is happening before our eyes and yet we act as if we have all the time we want and all the solutions.

(e)   I'm only a child and I don't have all the solutions, but I want you to realize, neither do you!   You don't know how to fix the holes in our ozone layer. You don't know how to bring salmon back up a dead stream. You don't know how to bring back an animal now extinct. And you can't bring back forests that once grew where there is now desert. If you don't know how to fix it, please stop breaking it!

(f)   Here, you may be delegates of your governments, business people, organizers, reporters or politicians - but really you are mothers and fathers, brothers and sister, aunts and uncles - and all of you are somebody's child.

(g)   I'm only a child yet I know we are all part of a family, five billion strong, in fact, 30 million species strong and we all share the same air, water and soil - borders and governments will never change that.  I'm only a child yet I know we are all in this together and should act as one single world towards one single goal.

(h)   In my anger, I am not blind, and in my fear, I am not afraid to tell the world how I feel.

(i)   In my country, we make so much waste, we buy and throw away, buy and throw away, and yet northern countries will not share with the needy. Even when we have more than enough, we are afraid to lose some of our wealth, afraid to share.

(j)    In Canada, we live the privileged life, with plenty of food, water and shelter - we have watches, bicycles, computers and television sets.

(k)   Two days ago here in Brazil, we were shocked when we spent some time with some children living on the streets. And this is what one child told us:

   "I wish I was rich and if I were, I would give all the street children food, clothes, medicine, shelter and love and affection."

(l)   If a child on the street who has nothing, is willing to share, why are we who have everything still so greedy?

(m)   I can't stop thinking that these children are my age, that it makes a tremendous difference where you are born, that I could be one of those children living in the Favellas of Rio; I could be a child starving in Somalia; a victim of war in the Middle East or a beggar in India.

(n)   I'm only a child yet I know if all the money spent on war was spent on ending poverty and finding environmental answers, what a wonderful place this earth would be!

(o)   At school, even in kindergarten, you teach us to behave in the world. You teach us:
    not to fight with others,     to work things out,    to respect others,
    to clean up our mess,    not to hurt other creatures     to share - not be greedy

(p)   Then why do you go out and do the things you tell us not to do?   Do not forget why you're attending these conferences, who you're doing this for - we are your own children.
You are deciding what kind of world we will grow up in.

(q)   Parents should be able to comfort their children by saying "everything's going to be alright', "we're doing the best we can" and "it's not the end of the world".
   But I don't think you can say that to us anymore. Are we even on your list of priorities?

(r)   My father always says "You are what you do, not what you say."

(s)   Well, what you do makes me cry at night. you grown ups say you love us. I challenge you, please make your actions reflect your words. 
   Thank you for listening. 

 


 


・世界で一番貧しい大統領の言葉【後編】/ホセ・ムヒカ(ウルグアイ)

2020年04月20日 19時46分23秒 | ●脱TV❶:Speech動画

 前回【中編】の復習をしましょう。以下の記述【 】内でした(原文)。

           *  *  *

 【:「貧しいとは、少ししかものを持っていない人ではなく、もっともっとと、いくらあっても満足しないのことだ」と。】

 そして「以上の一文」のずっとあとの方で、筆者は次のコメントを加えていました。 

 【この「」で注目すべきは、貧しい人」を「一人の人間」という意味に限定してはならないということです。すなわちこの「貧しい人」には「国家」が含まれる……というより、ムヒカ氏は本来、貧しい」そして「満足しない」に向けて言いたかったのです。】

           *  *  *

 中国の〝一帯一路〟にみる〝貪欲さ〟の行きつく先

 考えてみましょう。「貧しい国」=「満足しない国」の問題は、「当該国」だけの問題として片づけられるでしょうか。いえ、決してそうではありません。そういう「貪欲な国」は、発展途上国を中心に各国を巻き込み、自国とそれらの国々の〝もっともっと〟という欲求を煽りながら、際限もなく貪り続けるでしょう。そしてその〝貪欲さ〟の行き着く先は、巧みにそれらの国々を《債務の罠(わな)》によって取り込むというやりかたです。

 それは「グローバル化」の〝最悪の負〟の一面であり、経済面での圧倒的優位が、〝実質的に他国を支配する〟という論理です。具体的に言えば、世界経済大国の第1・2位を占める「米国・中国」ことに、中国のやり方にほかなりません。それは――、

 ①中国が壮大な規模と資金力で進める巨大経済圏構想一帯一路》(※注⑤、注⑥)をもとにした、

 ②中国企業の〝世界進出の急速な拡大〟であり、

 ③同国が「債権国」として、「債務国」へのインフラ整備や貿易拡大のための融資・経済投資・工事等によって実質的にその国を支配する。

 という手法です。もちろん、ムヒカ氏が演説をした2012年6月時点では、《一帯一路》構想は実質的に存在しなかったのですが(構想発表は2014年11月)、中国による融資や投資は遥かそれ以前より始まっていました。

 現実問題として、中国の《一帯一路》構想によって融資を受けた数か国が、債務不履行に陥り、また多数の発展途上国のインフラ整備計画がいくつも挫折し、〝対中債務〟に起因する自国の社会・経済の崩壊が現実化しています。これこそ《債務の罠》を生み出す大問題となっています。

 この問題が関係各国にとって深刻であるのは、この《債務の罠》が〝その国一国の経済問題〟にとどまらず、周辺国そしてひいては世界各国に対する〝国家の安全保障〟を脅かすからです(※注⑦、注⑧)。

 

 テドロス事務局長問題の根にあるもの

 事のついでに、ひとこと付け加えておきたいと思います。現在、「世界保健機関(WHO)」のテドロス事務局長に対する謝罪や辞任要求が、世界的な広がりを見せ始めています。しかし、肝心なことは〝同氏一人を云々する〟ことではなく、彼の母国エチオピアと中国との濃密な関係を冷静に見つめなければならないということです。この問題も、もちろん《一帯一路》と絡んでいます。

 ここで一つ、月刊『文藝春秋』4月号の記事からテドロス事務局長の「緊急事態宣言」の遅れに関係する記事をご紹介します。記事内容は『なぜ中国がいつも「感染源」なのか』:喜田宏(北海道大学人獣共通感染症リサーチセンター特別招聘教授)という方の一部抜粋です。一字一句見逃すことなくご覧ください。記事は〝原文のまま〟。

           *  *  *

 (私=喜田は)1月22日から23日にかけて、世界保健機関(WHO)が開いた専門家による緊急会議に電話で参加した。中国武漢での新型コロナウイルスによる感染拡大を受けて開かれたもので、WHOとして「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態」を宣言するかどうかが注目された節目の会議だった。

 会議では、誰かが発言するたびに中国側が意見を挟んでくるので、とても長引いた。緊急事態宣言については、半分の参加者が賛成し、残り半分は時期尚早との意見で、最終的にはテドロス・アダノム事務局長の判断で宣言は見送られた

 私自身、あの時点では広がりを証明する情報が不足していると感じたので、妥当だったと思っている。宣言を出そうにも根拠となる情報が少なすぎた(※注⑨)(「同誌115ページ」より)(太字、下線、色文字等は筆者)

           *  *  *

 今回は、筆者のコメントを控えてこのまま終了します。わずかな分量の記事ですが、実にいろいろ〝考えさせられる問題点〟を含んでいます。この「WHO問題」は、別の機会に採り上げてみたいと思います。

           *  *  *

 最後にもう一つお勧めの記事をご紹介します。それは『文藝春秋』5月号の記事です。本号は「総力特集:コロナ戦争/日本の英知で「疫病」に打ち克つ」として、13本の特集記事を掲載しています。その中で筆者が一番読みたいと思ったのが、武漢市中央病院の救急課主任アイ・フェン医師(女性)」の手記でした。

 これによると2019年12月16日、同院の救急科に原因不明の高熱が続く一人の患者が運び込まれる。6日後の12月22日、『コロナウイルス』との検査結果が口頭で報告された。事の発端はここにあった。同医師は、仲間の医師など一緒にきわめて危険な兆候として情報を流しめる。

 そして12月30日午後4時、アイ・フェン医師は同僚から、「SARSコロナウイルス、緑膿菌、四六種口腔・気道常在菌」と書かれたカルテを見せられ、その中の『このウイルスの主な感染は近距離の飛沫感染で、患者の気道分泌物に接触することにより明確な感染症を帯び、多くの臓器系に及ぶ特殊な肺炎を引き起こす。SARS型肺炎。』という注記を確認。

 しかし、同日(12月30日)午後10時20分、武漢市衛生健康委員会の通知が送られて来る。それには「市民のパニックを避けるため、肺炎について勝手に外部に情報を流すな」とし、「勝手な情報によりパニックを引き起こした場合、責任を追及する」というもの。これこそ情報隠蔽の始まりでした。

 同医師は、怖くなってその旨の通知を同期生に転送。年が明けた1月1日、同医師は病院の観察課(中国共産党規律検査委員会の行政監察担当部門)の課長より「翌朝、出頭せよ」との指示を受ける。

 そして承知のように、WHOが【中華人民共和国湖北省武漢市における新型コロナウイルス関連肺炎に関する世界保健機関(WHO)の緊急事態宣言】を発表したのが今年の1月31日でした。

 すなわち中国は「1か月間」隠蔽することによって、「自国の態勢を整う時間を稼いだ」ことになります。したがって、筆者個人としては、テドロス事務局長の個人攻撃は(決して無意味ではありませんが)有効ではないと思います。やはり第一に責めるべきは「中国」であり、第二に、中国の言いなりとなるしかなかった「エチオピア」です。そうでなければ、それこそ中国の〝思うつぼ〟となるでしょう。

           *  *  * 

 いずれ真相は必ず明らかにされる。いやぜひそうあって欲しいし、またそうでなければならない問題です。

 


※注解(【前編】および【中編】分)
注①リオ+20(リオプラストゥエンティー)
 2012年6月に開催された「国連持続可能な開発会議」(「リオ+20」)は、1992年開催の「国連環境開発会議」(「地球サミット」)」から20年後に、同じブラジル・リオデジャネイロで改めて私たちが望む世界について議論したフォローアップ会議です。「地球サミット」では、「環境と開発に関するリオ宣言」とそれを実現するための行動計画「アジェンダ21」が採択され、さらに「気候変動枠組条約」や「生物多様性条約」の署名が開始されるなど大きな成果を上げ、現在に至る「地球環境保全」や「持続可能な開発」の考え方のベースが作られました。
 それから20年後、エネルギーや資源の有限性など「地球の限界」が明確化し、国際社会では環境保全と経済成長の両立を目指す「グリーン経済」への移行がますます喫緊の課題になっています。BRICsなど新興国の著しい経済成長も過去20年間の大きな変化です。またスマトラ沖大地震及びインド洋津波,東日本大震災などの経験を通じて、様々な大災害が持続可能な成長の大きな阻害要因となるとの認識も深まってきました。 【出典/外務省:2012年9月12日 わかる!国際情勢】

※以下の「※注②、③、④」は、前回の【中編】でご紹介した、《👉超おすすめ動画 ◆1/映画の予告編『世界で一番貧しい大統領』―愛と闘争の男、ホセ・ムヒカ(2:18)》の掲載文をもとに整理編集。 

注②ホセ・ムヒカ氏(José Alberto Mujica Cordano,:1935.5.20~)84歳。 バスク系ウルグアイ人。大統領在任期間は、2010.3.1~2015.3.1。報酬の大部分を財団に寄付し、月額1,000ドル強で生計を維持。その質素な暮らしぶりから〝世界でもっとも貧しい大統領〟と呼ばれた。大統領の任期中、本来なら大統領公邸に住むべき4階建て30人もの使用人という環境を避け、本来の農村部の自邸にて上院議員の夫人と共に住み続けた。大統領職の合間に、トラクターに乘って農作業を行うこともあったという。
 60~70年代に都市ゲリラのメンバーとなり、武装闘争に携わる。4回の投獄、脱獄2回、銃撃戦で6発打たれて重傷を負う。14年間の獄中生活中10年間を独房で過ごす。この独房時代の生活こそが、「世界一貧しい大統領」の原点になったという。【他の断片的な諸情報を本ブログ管理者においてまとめたもの】

注③ルシア・トポランスキー氏(Lucía Topolansky:1944.9.25~‘)75歳。ムヒカ氏夫人。国立共和国大学で学んだ後、学生運動、市民運動を経てゲリラ組織トゥパマロスに参加。治安部隊いから逃れる非合法活動時代にホセ・ムヒカを出会うが、1971年にそれぞれ別に逮捕、合計で13年に及ぶ投獄生活を送る。1985年に恩赦によって解放されムヒカと再会、二人はモンテビデオ郊外に畑を購入、土を耕しながら政治活動を続け、2005年から2017年まで上院議員、2017年9月から2019年11月まで副大統領を、2020年3月から再び上院議員を務める。 ★前回「動画◆1」の記述のまま。

注④エミール・クストリッツア監督(Emir Kusturica:1954.11.24~)65歳。旧ユーゴスラビアのサラエボ(現ボスニア・ヘルツェゴビナ)出身。セルビア人の父とモスレム人の母の元に生まれ裕福な幼少期を過ごす。「ボスニア紛争」により自宅の略奪や父の死を経験したクストリッツァは自国の状況を世界に訴えるため『アンダーグラウンド』を制作、2度目のカンヌ国際映画祭パルム・ドールに輝く。 ★前回「動画◆1」を一部抜粋。

今回【後編】分の注解

注⑤2014年11月10日に中華人民共和国北京市で開催されたアジア太平洋経済協力首脳会議で、習近平総書記が提唱した広域経済圏構想。中国からユーラシア大陸を経由してヨーロッパにつながる陸路の「シルクロード経済ベルト」(一帯)と、中国沿岸部から東南アジア、南アジア、アラビア半島、アフリカ東岸を結ぶ海路の「21世紀海上シルクロード」(一路)の二つの地域で、インフラストラクチャー整備、貿易促進、資金の往来を促進する。 

注⑥:読者のみなさん。ネット検索をまず「一帯一路」から始め、そこから派生するさまざまな〝関連ワード〟をご覧になり、じっくりお考えください。緊急事態宣言の状況下、ご家族みなさんで語り合うことをお勧めします。お子さんやお孫さんなど、たとえ「小学低学年」であっても、物事をちゃんと考えるお子さんであれば、子供なりに自分の意見を持っています。いえ、容易に持つようになるでしょう。

注⑦:全土の通信網の整備等のインフラ投資を「中国」から受け、経済成長率で世界1位も記録。前大統領(ムラトゥ・テショメ)は中国留学歴もあります。エチオピアは「アフリカの中国として、「一帯一路」のモデル国家とされるも、債務額は国内総生産の59%にも及び、その大半は中国からの融資とみられています。―「中国」の〝言いなり〟にならざるをえないのは必定です。 ★Wikipediaを筆者において大幅に加筆修正。

注⑧:中国を「債権国」とする各国(特にアフリカ)は、「中国」に対する巨額の債務を抱え、「主要な資産の支配権」を中国に譲らざるを得ない状態となっています。スリランカは、主要な港2カ所の運営権を期限付きで中国に譲渡。地図を見ると一目瞭然です。まさに中国嫌いの「インド」の「喉元」に位置し、ここに中国海軍の艦艇が出入りしています。それは当然、米英等の艦艇の往来について睨みを効かせることでもあるのです。

注⑨:つまりは「隠蔽されていた」からにほかなりません。このことは極めて重要です。私見ですが、この時点では、おそらくテドロス事務局長も知らなかったのではないでしょうか。   

 

 


・世界で一番貧しい大統領の言葉【中編】/ホセ・ムヒカ(ウルグアイ)

2020年04月13日 18時17分02秒 | ●脱TV❶:Speech動画

 ムヒカ氏(前大統領)が本当に言いたかったこと

 いかがでしたか。4月6日に記事をアップした【前編】の「講演動画」と、それに若干の編集を加えた「講演原稿」――。前者は「正味9分50秒」のメッセージであり、後者は「5分」ほどで読み終えることが出来る編集済みの「原稿」でした。

 「動画」をご覧になった方は、気づかれたことでしょう。speechが進むにつれて、開始早々は紳士的かつ穏やかに語り始めた当時のムヒカ大統領(以下、「ムヒカ氏」と表記)が、次第に熱を帯びて左右の手を何十回となく動かしたり振り下ろしたり、またしきりに左右を向いて見つめるような眼差しに変わって行ったことに。

           *  *  *

 さて、【前編】(4月6日アップ)にて「ひときわ大きな色文字」で示した部分が、「A・B2ヵ所ありました。

:「もし、ドイツ人が一世帯ごとに持っているほどの車を、インド人も持つとしたら、この地球はどうなってしまうのでしょうか」

:「貧しいとは、少ししかものを持っていない人ではなくもっともっとと、いくらあっても満足しないのことだ」と。

 言うまでもなく「A・B」ことに「」こそが、この講演におけるムヒカ氏の〝究極の主張〟であり、氏を貫く揺るぎない〝実践哲学〟といえるでしょう。

 まず「」における「ドイツ」とは、言うまでもなく「第一次・第二次」両世界大戦の敗戦国であり、短期間に工業・経済面で著しい成長・復興を遂げた国です。そして今や「EU」どころか「G20」(※注)の中心的なメンバーとして、多少の問題をかかえながらも、国際政治における存在感を増しています。 (※注)リオデジャネイロでこの講演が行われた2012年6月当時、ドイツは「G7」加盟国。

 

 貧しい人とは…

 そのいわば最先進国「ドイツ」の工業生産力の象徴とも言うべき「」を持ち出し、それを人口13億数千万人を抱える「インド」と対比させたのです。ちなみにドイツの人口は8,300万人(2019年)。

 国家の先進性や生産性の象徴ともいえる「」。それは移動ツールであると同時に国民所得の指標であり、同時に「モノ」に対する「物質欲の指標」とも言えるでしょう。「市場経済」を代表する工業製品として、車ほど「排出ガス規制」や「地球温暖化問題」に直結する「身近なモノ」はないでしょう。ムヒカ氏はまずそのことを〝ほのめかし〟ながらも、それがいわば「地球人」として「解決すべき問題の本質」ではないことを衝こうとしたのです。そしてその主張のための〝伏線〟として「」を持ち出しのでしょう。

 この「」で注目すべきは、貧しい人」を「一人の人間」という意味に限定してはならないということです。すなわちこの「貧しい人」には「国家」が含まれる……というより、ムヒカ氏は本来、「貧しい」そして「満足しない」に向けて言いたかったのです。

 そう考えると、ムヒカ氏の「9分50秒の講演」が、ストンと読者の心に降りて来ることでしょう。次回【後編】では、この「貧しい」と「満足しない」を中心に、さらに問題を掘り下げてみたいと思います。

           *  *  *

 以下のムヒカ氏のメッセージは、2016年4月7日に東京外国語大学で行われた講演会での一節です。『世界一貧しい大統領』と言われることに対するご自身の想いを伝えるものです。

私のことを貧しいと言いますが、私は貧しいわけではありません。質素なだけです。以前は「慎ましい」(austerity)と言いましたが、「austerity」はヨーロッパの緊縮政策と結び付けられるので、今は好きではありません。私は単に質素が好きなだけです。私にとって重要な「モノ」さえあれば、十分なのです質素であるほうが、本当にしたいことができる時間があるからです』。

           *  *  *

 「ペペ」という愛称で呼ばれるムヒカ氏。実は〝壮絶無比〟ともいえる経歴の持主です。今回、下段にご紹介する映画『世界で一番貧しい大統領ー愛と闘争の男、ホセ・ムヒカ』(2:17)の「予告編動画」の中で、次のような紹介メッセージが流れます。

           *  *  *

 『人生も終盤だ。もうお金は必要ない』(彼の言葉)。収入の大半を貧しい人々に寄付し、大統領職の合間に農作業に勤しむ……。

 ペペとは、愛と政治闘争という理想を生きて来た』(ルシア夫人の言葉)

 『片脚を13ヵ所、腹を12ヵ所撃たれた。人は苦痛や逆境から多くを学ぶ』(本人の言葉)。

 風変りだけど自然体。その波乱万丈の人生とは?

           *  *  *

 上記「予告編」の最後で、彼はこう言っています――。

 『政治の世界で探すべきは、大きな心と小さな財布の人物です』

 2度の「ノーベル平和賞」にノミネートされた(2013・14年)彼が、「予告編」の中で、『誰よりも忠実な閣僚だ』と答えた人物は、おそらく夫人のルシア・トポランスキー氏のことでしょう。彼女は上院議員であるとともに、ムヒカ大統領の任期中の一時期、その副大統領を務めた政治家でもあるのです。

       * * * * * * *

 


👉 超おすすめ動画 クリック! ◆1/映画の予告編『世界で一番貧しい大統領』―愛と闘争の男、ホセ・ムヒカ(2:18) 

 わずか「2分18秒」のミール・クストリッツア監督による映画の予告編。お見逃しなく! 今回の「緊急事態宣言」が出る前に観に行くことはできたのですが、自主的に泣く泣く控えました。 【前編】において、この映画に触れなかったのはそのためです。

👉動画クリック! ◆2/2016.4.7 「東京外国語大学」ホセ・ムヒカ前ウルグアイ大統領講演会の動画

同時通訳付。1時間47分05秒。本動画は、ムヒカ氏がルシア夫人と共に講演会場の「東京外国語大学」に車で到着する様子から始まっています。

②そのあとルシア夫人の挨拶、ムヒカ氏の関連絵本を刊行した「汐文社」代表及び「東京外国語大学」の立石学長の挨拶が続きます。

③ムヒカ氏の講演は、15分40秒前~1時間12分ちょっと前までの正味57分程度、そのあと数人との「質疑応答」(25分ほど)があります。

 ※ワンポイント・アドバイス 同時通訳であるため、「逐次訳」に要する「時間」と〝行きつ戻りつする〟翻訳言葉の〝まどろっこしさ〟により、ときに非常に聞き取りにくく、また理解しがたい箇所が出て来ると思います。しかし、「一つの言葉」や「表現の細部」にこだわらず、ムヒカ氏の「主張のポイント」を〝大づかみ〟するだけで充分です。特に「難しい言葉」を使っているわけでもなく、また小難しい哲学やイデオロギーを展開しているわけでもありません。

👉記事クリック! ◆3/ムヒカ前ウルグアイ大統領が4/7に本学で講演しました(東京外国語大学)

 これは東京外国語大学のサイトです。関係写真と共に、当日の様子について詳細なコメントが付けられています。ルシア夫人の写真もあります。


 


・世界で一番貧しい大統領の言葉【前編】/ホセ・ムヒカ(ウルグアイ)

2020年04月06日 21時44分36秒 | ●脱TV❶:Speech動画

 国連持続可能な開発会議にて

 今回ご紹介する「動画」は、2012年6月にブラジルのリオデジャネイロで開催された【リオ+20】(=国連持続可能な開発会議(※注①)における、ウルグアイのホセ・ムヒカ大統領(当時。※注②)の演説です。

 今からほぼ8年前に大きな反響を呼び、同大統領はその後来日されました。各局のテレビに出演され、何回かの講演もされたようです。当時、テレビでご覧になった方もいらっしゃると思います。絵本になったり、関連の書籍も刊行されました。

 「動画」は全体で12分3秒ですが、同大統領の実際の「演説時間」は10分足らずです。どうか最後までご覧ください。アフレコでお馴染みの羽佐間道夫さんが、同大統領の日本語訳の声を担当されており、素朴で情感豊かな口調が素直に耳に残るのではないでしょうか。

 今回、筆者は動画のご紹介だけにとどめ、1週間ほどのちに「後編」として「コメント」をさせていただく所存です。それでは……。

◆世界で一番貧しい大統領の言葉(12:03) 👈クリック 


 本ブログ管理者の編集注:以下の「翻訳文」は、打村明(うちむら あきら)さんという方が翻訳されたものです。「使用許可不要」とおっしゃるそのサイトから、本ブログ管理者(筆者:花雅美)において、若干の字句の修正と見出し・太文字・下線・カッコ等の編集作業を加えております。

       *  *  *  *  *  *  *

●ホセ・ムヒカ大統領(ウルグアイ)のspeech

 会場にお越しの政府や代表のみなさま、ありがとうございます。
 ご招待いただいたブラジルとディルマ・ルセフ大統領に感謝いたします。私の前に演説された快きプレゼンテーターのみなさまにも感謝いたします。国を代表する者同士、人類が必要とする国同士の決議をしなければならない素直な志を、ここで表現されたのだと思います。

 しかし、私の頭の中にある厳しい疑問を声に出させてください。午後よりずっと話されていたことは《持続可能な発展》と世界の貧困をなくすことでした。私たちの〝本音〟は何なのでしょうか? 現在の裕福な国々の発展と消費モデルを真似することでしょうか

 質問をさせてください:

 「もし、ドイツ人が一世帯ごとに持っているほどの車を、

  インド人も持つとしたら、この地球はどうなってしまうのでしょうか。」

 息するための酸素がどれくらい残るのでしょうか。同じ質問を別の言い方ですると、西洋の富裕社会が持つ同じ傲慢な消費を、世界の70億〜80億人の人ができるほどの資源がこの地球にあるのでしょうか? 可能ですか? それとも別の議論をしなければならないのでしょうか?

 なぜ私たちはこのような社会を作ってしまったのですか?
 マーケットエコノミーの子供、資本主義の子供たち即ち私たちが間違いなくこの無限の消費と発展を求める社会を作って来たのです。マーケット経済がマーケット社会を造り、このグローバリゼーションが世界のあちこちまで原料を探し求める社会にしたのではないでしょうか。

  私たちがグローバリゼーションをコントロールしていますか? グローバリゼーションが私たちをコントロールしているのではないでしょうか

 このような残酷な競争で成り立つ消費主義社会で「みんなの世界を良くしていこう」というような共存共栄な議論はできるのでしょうか? どこまでが仲間でどこからがライバルなのですか?
 このようなことを言うのはこのイベントの重要性を批判するためのものではありません。その逆です。我々の前に立つ巨大な危機問題は環境危機ではありません、政治的な危機問題(a)なのです

 現代に至っては、人類が作ったこの大きな勢力をコントロールしきれていません。逆に、人類がこの消費社会にコントロールされているのです。私たちは発展するために生まれてきているわけではありません。幸せになるためにこの地球にやってきたのです。人生は短いし、すぐ目の前を過ぎてしまいます。命よりも高価なものは存在しません。

 ハイパー消費が世界を壊しているのにも関わらず、高価な商品やライフスタイルのために人生を放り出しているのです。消費が社会のモーターの世界では、私たちは消費をひたすら早く多くしなくてはなりません。消費が止まれば経済が麻痺し、経済が麻痺すれば不況のお化けがみんなの前に現れるのです。

 このハイパー消費を続けるためには商品の寿命を縮め、できるだけ多く売らなければなりません。ということは、10万時間持つ電球を作れるのに、1000時間しか持たない電球しか売ってはいけない社会にいるのです!そんな長く持つ電球はマーケットに良くないので作ってはいけないのです。

 人がもっと働くため、もっと売るために「使い捨ての社会」を続けなければならないのです。悪循環の中にいるのにお気づきでしょうか。これはまぎれも無く政治問題(b)ですし、この問題を別の解決の道に私たち首脳は世界を導かなければなりません。

 石器時代に戻れとは言っていません。マーケット(市場)をまたコントロールしなければならないと言っているのです。私の謙虚な考え方では、これは政治問題(c)です。
 昔の賢明な方々、エピクロス、セネカやアイマラ民族までこんなことを言っています。

 貧しい人とは、少ししかものを持っていない人ではなく、

  もっともっとと、いくらあっても満足しない人のことだ」と。

 これは、この議論にとって文化的なキーポイントだと思います。国の代表者として「リオ会議」の決議や会合にそういう気持ちで参加しています。私のスピーチの中には耳が痛くなるような言葉がけっこうあると思いますが、みなさんには水源危機と環境危機が問題源でない(d)ことを分かってほしいのです
 根本的な問題私たちが実行した社会モデルなのです。そして、改めて見直さなければならないのは私たちの生活スタイルだということ。

 私は環境資源に恵まれている小さな国の代表です。私の国には300万人ほどの国民しかいません。でも、世界でもっとも美味しい1300万頭の牛が私の国にはあります。羊も800万から1000万頭ほどいます。私の国は食べ物の輸出国です。こんな小さい国なのに領土の90%が資源豊富なのです。

 私の同志である労働者たちは、8時間労働を成立させるために戦いました。そして今では、6時間労働を獲得した人もいます。しかしながら、6時間労働になった人たちは別の仕事もしており、結局は以前よりも長時間働いています。なぜか? バイク、車、などのリポ払いやローンを支払わないといけないのです。毎月2倍働き、ローンを払って行ったら、いつの間にか私のような老人になっているのです。私と同じく、幸福な人生が目の前を一瞬で過ぎてしまいます。

 そして自分にこんな質問を投げかけます:これが人類の運命なのか? 私の言っていることはとてもシンプルなものですよ:発展は幸福を阻害するものであってはいけないのです。発展は人類に幸福をもたらすものでなくてはなりません。愛情や人間関係、子どもを育てること、友達を持つこと、そして必要最低限のものを持つこと。これらをもたらすべきなのです。

 幸福が私たちのもっとも大切なものだからです。環境のために戦うのであれば、人類の幸福こそが環境の一番大切な要素であるということを覚えておかなくてはなりません。
 ありがとうございました。

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※「注釈」は、次回「後編」においてまとめていたします。