前回ご紹介した「JET STREAM」の「ナレーション・メッセージ」をご覧ください。「ゴシック」(太字)になっている部分が2か所あります。
「たゆみない」については、「限りない」となっているものもあるようです。「限りない」から「たゆみない」へと後に変わったものでしょう。私見ですが、「たゆみない」の方が、ぴったりしていると思います。
「限りない宇宙の営み」となれば、「時空」すなわち「時間・空間的」な「制限」あるいは「限界」といったニュアンスがありますが、「たゆみない宇宙の営み」となれば、「時間・空間」を超えた「宇宙の意思」のようなものを感じさせます。そこに「果てしない広がりや深さ」が、いっそう表現されているような気がするのですが……。
「光と影」については、「光と影の境に消えて行った遥かな地平線」が「まぶたに浮かんで……」ということですから、ここでの「影」とは、本来「陰(翳)」のことでしょう。つまりは、「光」=「光がある部分」と、「陰(翳)」=「光がない部分」との対比なのだと思います。
◇ヴァイオリンSOUND と 城氏のナレーション……奇跡のコラボ
それにしても、城達也氏のメッセージナレーションとバックの音楽が見事に調和しています。高音部中心の、ゆったりと流れるような「ヴァイオリン SOUND」がいいですね。清浄無垢な “夜の静寂(しじま)” が、余すところなく表現されています。そのため、 “果てしない宙空” への誘(いざな)いがいっそう感じられ、 “SPIRITUALな夜間飛行” が巧みに演出されているようです。
そこに、“さまざまなしがらみ” に疲れた、人それぞれの “安らぎ” もあるのでしょう。同時に、明日への希望と再生も見いだせるようです。まさに「ヴァイオリン SOUND」と「城氏のナレーション」との “絶妙なコラボレーション” といえるでしょう。いえ、“奇跡” と言うべきかもしれません。
なお「番組終了時」の「エンディング・メッセージ」は以下の通りです。
☆
夜間飛行のジェット機の翼に点滅するランプは、遠ざかるにつれ 次第に星のまたたきと区別がつかなくなります。
お送りしておりますこの音楽が、美しく、あなたの夢に溶け込んでいきますように。
※「お送りしております」には、「お聴きいただいております」というバージョンもあります。
☆ ☆ ☆
城達也氏を初代の「機長」すなわち「パーソナリティ兼ナレーター」として、現在は「五代目」の「大沢たかお」氏が担当しています。しかし、筆者は前回述べたように一度もこの『JET STREAM』を聴いたことはありません。そして、これからも聴くことはないでしょう。
それはおそらく、筆者にとっての「JET STREAM」とは、「城達也氏そのもの」であり、あの衝撃とも言える感動をもたらした「詩の朗読者」だからです。40年以上前に “LIVE” で触れたその “姿” と “肉声” を大切に “ しまっておきたい ” という気持ちが強いからでしょう。(了)
◆動画『JRT STREAM ENDING』(エンディング:夢幻飛行)[4:26][y1945yyさんの作品です]
★★★★★★★ Passenger ★★★★★★★
――JET STREAM でしょ。わァ~ 懐かしい! あたくし、ず~っと聴いてたの。城達也さんの声が甦って来るみたい……。
……夜間飛行のお伴をいたしますパイロットは、わたくし、城、達也です……って。 とってもステキ! ねえねえ。あなたが「機長」で、あたくしが「キャビン・アテンダント(CA)」って、いいと思わない? ちょっとやってみようかしら?
『……みなさまに、ご案内いたします。この飛行機は、ただいまからおよそ30分ほどで「サンフランシスコ国際空港」に到着の予定でございます。地上からの連絡によりますと、サンフランシスコのお天気は晴れ、気温は摂氏18度とのことです。
……Ladies and gentlemen, we are landing at San Francisco International Airport ……』
この英語のアナウンス、一度言ってみたかったの。憧れていたのね。
……………でも、でも……あたくし、何か違うような気がするの。ねえ、そう思うでしょ? ああ。やだ、やだ! やっぱり……そうよね~。 <あたくし>と<あなた>って、「機長」と「CA」っていうより、やっぱり「passenger(乗客)」のほうがピッタリしてるわ。絶対そう! ねっ? そうでしょ?
もう、オフシーズンみたいなものね。きっと今は、ず~っと格安よ。……ああ。ここはやっぱり、北イタリアのような気がしません? ……水の都・ヴェネチア……モードの街・ミラノ、食の都・トリノ、そして港町のジェノヴァ……。
なかでもミラノね。あなたが大好きなレオ様の『最後の晩餐』の壁画……それってミラノの……え~っと……サンタ…マリア……何とか教会……なんでしょ? ああ❢ ヴェネチアにも、すご~く、関心がおありでしょ? でもここまで来たら、あなたのお得意のルネッサンス発祥の地、中部のフィレンツェも入れなくっちゃ。
……ねえ? あたくしのお友達のお友達が、何とか旅行社にいるの。きっと、とっておきのパッケージがあると思うの。尋ねてみようかな? あたくし、お友達にも呼びかけて……あなたも大学時代のSさんなんかどうかしら?
ね~え? 聞いてる? ねえってば…… ねえ? あれっ? 眠ちゃったの?
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◆『総督(Doge)のクジ運―遥かなりヴェネチア共和国』(本ブログ:2011.6.24)
◆『法皇選挙の白い煙/続・Dogeのクジ運(2011.12.28)
◆『万能の天才――レオナルド・ダ・ヴィンチ』(2009.5.24)
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※詩のご紹介
明 日 黒田三郎
明日などはなかった
この世の汚辱のなかで 滅びるに任せようと
明日のないその日その日を送る以外に
僕にはどんな運命もありはしなかった
明日も今日のように
僕は煙草をくわえ
ビルディングの二階で エンピツを握って暮らすであろう
しかし 明日などはありゃしないのだ
腹立ちまぎれに
僕がくしゃくしゃに書類をまるめようと
僕がのんびりビールを飲んでいようと
いつのまにか有能な課長になっていようと
しかし明日などは ありゃしないのだ
風のように気まぐれな少女よ
そのとき僕はあなたの眼のなかによんだのだ
その言葉を
「明日はある
信じなさい 明日はある」
気まぐれな少女よ
もしもそのとき僕が
あなたに賭けさえしなかったら!