あるタカムラーの墓碑銘

高村薫さんの作品とキャラクターたちをとことん愛し、こよなく愛してくっちゃべります
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Q41 「森」からイメージする本は?

2005-06-12 18:01:39 | イメージが結ぶ100の言葉と100の本
森・・・と言えば、《お蘭》こと森義孝のことですか?(←違います)
ボケるのはここまでにして、気を取り直して。

照柿 (単行本版のみ講談社)

冒頭に引用された、ダンテの『神曲』 から。

人生の道半ばにして
正道を踏み外したわたくしは
目が覚めると暗い森の中にいた


***

これがこの物語の通奏低音になっている。逐一、引用は省くが、物語の締め括りにも、加納さんが合田さんへ宛てた手紙で「暗い森」について、綴られている。

ダンテを導くのはヴェルギリウスだが、君が暗い森で目覚めたときに出会った人は誰だろう。 (p497)

ところで、小生も人生の道半ばでとうの昔に暗い森に迷い込んでいるらしいが、小生のほうはまだ呼び止めるべき人の影も見えないぞ。 (p498)

・・・何だかいろいろと含むところがありすぎですねえ、義兄。
前者に限って言えば、合田さんが「導いてくれる、出会った人」は、加納さんであってほしいと思っているだろうし、後者に限って言えば、「森に迷い込んだ加納さん」を呼び止めてほしいのは、合田さんでお願いしたいでしょうから。

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Q55 「戦記」からイメージする本は?

2005-06-06 22:57:24 | イメージが結ぶ100の言葉と100の本
リヴィエラを撃て (単行本版、文庫版ともに新潮社)

日本からモナガンさんの元に届いた、手島さんを評した匿名の手紙の締めくくりから。

『手島修三の日本での十四年間は、母国語を勝ち取り、奪われた、一人の日本人の不本意きわまりない戦いの歴史でした』 (文庫下巻p407)

「戦記」とは、「戦いの記録」のこと。今回も拡大解釈しました。

***

匿名の人物は、手島さんの部下だった坂上達彦さん。奥さんの時子さんを除いて、「日本人」であった頃の手島さんの一番の理解者だったでしょう。

父は日本人、母はイギリス人の手島さん。東大とケンブリッジ大卒業後、「日本人」キャリアとして警察庁へ。その後外事一課へ出向。上司の理不尽な扱いや暴言にも耐えた手島さんでしたが、ある「事件」の顛末で、「日本人」ではいられなくなったのです。
その「事件の顛末」とは・・・。
 ネタバレ 
手酷い拷問を受けた衝撃が大きくて、「日本語」を全く喋ることが出来なくなった のです。 「日本語」を話せない「日本人」になってしまっては、もはや「日本」にもいることは出来ません。 

うーん、手島さんについて語りだすと際限がない。中途半端だけど、ここでやめておこう。(苦笑)
(空白はネタバレしています。ドラッグすると、隠し字が現れます)

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Q76 「扉」からイメージする本は?

2005-06-06 22:02:12 | イメージが結ぶ100の言葉と100の本
照柿 (単行本版のみ講談社)

合田さんが見ている夢の中で、別れた妻の貴代子さんから手ひどい言葉を投げつけられているところ。

『あなたはドアのない家みたいな人です。窓を開けて何か言い、また窓を閉めるだけのことでしょう。家の中でひとりで生きるなり死ぬなりしなさい。どうせ私には見えませんから』 (p385)

「ドア」=「扉」と解釈しました。

***

痛烈な言葉だ、貴代子さん。
レディ・ジョーカー (単行本版のみ毎日新聞社) で、死にかけて、手術から意識を取り戻した 合田さんに向かって、貴代子さんの双子の兄・加納祐介さんが放ったひと言よりも、キツイかもしれない・・・。

さすがは、加納兄妹。(←なんのこっちゃ)
 
(不自然な空白部分はネタバレなので、隠し字に。ネタバレOKな人は、ドラッグしてね)

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Q84 「手品・マジック」からイメージする本は?

2005-05-22 16:22:38 | イメージが結ぶ100の言葉と100の本
照柿 (単行本版のみ講談社) 

花札のイカサマのネタをバラしている《又三郎》こと有沢三郎さんと、合田さんとのやり取りから。

現実的な高村薫作品からすると、最も遠いキーワードではありますが(苦笑)
「拡大解釈してもいい」という作成者さんたちからの「お願い」がありましたので、「拡大解釈」しました。

***

「花札」は小学生5~6年の時と、高校の修学旅行の時にやったきりです。
・・・今思うと、なんという小学生だったんでしょうか、私たち(笑) でも一時期、流行ったんですよね~。休み時間や昼休みに、男女問わずやってました。ルールも札の名前も、今ではすっかり忘れてしまいましたが。
今なら考えられないでしょうけど、先生も「やめなさい」とは、言わなかったですしね。大らかな、懐の深い良い先生でした。

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Q48 「連続殺人」からイメージする本は?

2005-04-03 20:21:00 | イメージが結ぶ100の言葉と100の本
マークスの山 (単行本版・早川書店 文庫版・講談社)

ノーコメント。
・・・って、ネタバレになっているような、なっていないような・・・ 

すみません、今回に限り見逃して下さい。

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Q42 「さくら」からイメージする本は?

2005-03-01 22:11:55 | イメージが結ぶ100の言葉と100の本
李歐 (文庫版のみ講談社) 

誰が何と言おうと、これっきゃない!!
だって毎年一千本ずつ、五千本の桜 ですよ? スケールが違う! さすが李歐!

***

しかしホントは『リヴィエラを撃て』と迷った・・・。手島さんが見た桜が、悲しくて、哀しくて・・・。
 ネタバレ 
この時見た桜が、まるで「日本人としての最後の手島さん」の象徴のような気がするんだもの・・・。 

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Q79 「クリスマス」からイメージする本は?

2005-02-27 18:12:36 | イメージが結ぶ100の言葉と100の本
レディ・ジョーカー (単行本版のみ毎日新聞社)

正確に言うと、クリスマスイブなんですけどねー(苦笑) ま、日本ではイブもクリスマスもごちゃまぜになっているというか、どうでもいいというか、クリスマスよりも、イブの方に重点が置かれているというか・・・。

***

引用しようかと思いましたが、敢えて止めておきます(笑) しかしあるタカムラーにとっては、深い意味のある場面・・・。
事実、「イブ? クリスマス? そんなものはよ!」(苦笑)と思っていた私には、この時期が近づくと、ついつい義兄弟に想いをめぐらせることになってしまう。・・・自分でも呆れるくらいだ・・・ 

これ以上は、あえて何も書かない。読んだ方だけ、解る方だけ解って下さい。

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Q83 「紅茶」からイメージする本は?

2005-02-24 00:13:34 | イメージが結ぶ100の言葉と100の本
リヴィエラを撃て (単行本版、文庫版ともに新潮社)

ダーラム侯の台詞から。
「僕は濃いアールグレイに、熱いミルクを半分」 (単行本p257、文庫上巻p416)

***

もしかすると、唯一の紅茶が出てくる場面かも? だってみんな無類の酒飲みなんだもん(笑)

余談ですが、私は紅茶は大好き。しかしダーラム侯のように、アールグレイにミルクをいれる飲み方は出来ません。アールグレイは、できるならストレートがいい。本音を言うと、アールグレイはあまり好きな紅茶ではありません(苦笑)
いえ、ダーラム侯が好きじゃないから、アールグレイも好きじゃないというわけではなくて  本を読む前からあまり好きではないんです、アールグレイは。そこのところ、誤解なさらないように、ダーラム侯ファンの方々。

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Q38 「光」からイメージする本は?

2005-02-20 20:35:08 | イメージが結ぶ100の言葉と100の本
黄金を抱いて翔べ (単行本版、文庫版ともに新潮社) 

金庫にたどり着いた幸田さんと北川兄が、金の地金を見た場面から。

これが金の地金か。
二人とも、本物を見たのは初めてだった。
 (中略) ただ、やたらにきれいなものだと思った。実に、きれいだ……。
闇が輝き出したかと思うほどの輝きだった。黄金という色は、他に比べるものがないから黄金なのだろう。濃密で厚みがあり、無数の微小な屈折の集まった、光の中の光だ。
 (文庫p334)

***

二人が見たのは、
段組みは、横十列、縦五列、百二十段。計六千枚。六トン。百十四億円分。 (文庫p334)
の、金地金だそうです。(金1gあたり、1900円の時代)
一度でいいから、目がクラクラに眩むほどのそれらを見てみたいものですわ。

ちなみに私は地道にコツコツと、純金積立をやっています(笑) 1kgの地金には、まだまだ程遠い・・・。

取り上げるのを迷ったのは、『リヴィエラを撃て』 のシンクレアさんの演奏のクライマックスから。 Q73の回答の1. と同じ場面になるので、あっさり却下(笑)

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Q91 「眠る」からイメージする本は?

2005-02-17 23:51:23 | イメージが結ぶ100の言葉と100の本
黄金を抱いて翔べ (単行本版、文庫版ともに新潮社) 

眠るといえば、幸田さんかな。改めて眺めると、寝ている(フリの)場面や、眠りに関する記述が多いぞ。

1.眠ったふりをしている幸田さんに、春樹が囁く場面。
2.うつぶせに寝る国島を見て、嫌悪を覚えた幸田さん。
3.寝不足なまま春樹のバイクの後ろに乗って、ずり落ちた幸田さん。
4.モモさんを引越しさせた後、二人で畳の上で寝た場面。
5.モモさんが「十五時間、寝てた」と笑った場面。
6.逃げ込んだ教会で、モモさんと眠った場面。

・・・何だ、この多さは・・・(呆) 他にもありそうな気がするが、思い出したのはこれくらいかな。 

***

1.「幸田さん……。寝たのかい?」
幸田は返事をしなかった。
 (中略) 春樹はもう一度名前を呼んだ。それから、裸の肩に置いていた手を二、三度ゆっくりと上下させ、ぐずぐすと下ろした。 (文庫p105)
ここでの主役は、春樹でしょう。一部で物議をかもした、春樹の手の動きが謎(苦笑)

2.幸田は、いい歳をしてうつぶせに寝る男を何人か知っていたが、どの男にも嫌悪を感じた。 (文庫p151)
好みの問題、と言ってしまえばそれだけのことなんだが、どうして嫌悪してしまうのかが、気になるところです。幸田さん、過去に何かあったの?
余談だが、昔読んだ某少女漫画(タイトル・作者ともに失念)で
 「誰かが言っていた うつぶせに寝るのは 恋をしている証拠だと」
という台詞があった・・・。これは女性に当てはまるのだろうか?

3.「だから、寝るなって何度も言ったろ……」
「寝てないぞ、俺は……」
「だったら、何で落ちたんだよ?」
「知るか。地球の引力のせいだろ、糞っ……」

 (中略)
「俺の後ろで寝るなんて最低だ。寝るくらいなら、乗せてくれなんて言うなよな……」
「寝てないって……」
 (文庫p170)
「寝た」と言い張る春樹と、「寝てない」と言い切る幸田さん。どちらを信じるかは、読み手次第(笑)

4.モモはそう言うと、包みを枕にして、何もない六畳間に横たわった。幸田は、ひしゃげたスポーツバックを枕にした。 (文庫p216)
問題は、これまた物議をかもした次の記述ですな。
目の前に、モモの足の、穴の開いた白いコットンの靴下があった。
 (文庫p216)
かつてモモさんの笑顔を 自分の足に貼りついた魚の目 (文庫p54) と不思議なたとえをした幸田さん・・・。足関連に、こだわりがあるのでしょうか?

5.幸田は眠りに眠った。 (中略) やっと起き上がったら、夜だった。モモが、「十五時間、寝てた」と笑った。 (文庫p269)
ここまで眠ることになった理由は、本を読んでいただくことにして、幸田さんにとっては、安心して眠れる場所が出来たのかな? と推測される場面でもありますね。

6.モモはもう、ベンチの背にもたれて目を閉じていた。その肩に左腕を回し、抱き寄せて、幸田もまた眠りに落ちた。 (文庫p298)
決行前夜、二人のほのぼの場面と言えないこともないのですが、実はその直前、最大の緊迫した場面が・・・。(かなりのネタバレになるので書きません)

ここまで綴って、私も眠くなってきましたわ。お風呂入って、眠りましょ。 

***

(2005.2.20追記) この後、『黄金を抱いて翔べ』 をパラパラ読み返していたら、漏れていた場面を発見! 登場順に並べてるので、3と4の間に、3’ として追記。

3’.北川兄弟の会話と笑い声を聞きながら、眠くなってしまう幸田さん。

3’.幸田さんはよく寝るんだ、という春樹の声が聞こえた。何があっても、すやすや寝ちまうんだ……。
昔からさ、と北川の声が言った。学生の頃、こいつに座布団一枚渡しときゃ、いるのかいないのか分からねえっていうんで、有名だったんだ。
座布団?
半分に折って、枕にするのさ。
寝顔がすごく穏やかだ……。
ああ。ろくでもねえことを考えてやがるくせにな……。
 (文庫p177)
この北川兄弟の会話が、全てを物語っているでしょう。それくらい良く眠るんですな、幸田弘之さんという人は!

***

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Q39 「闇」からイメージする本は?

2005-02-13 20:34:45 | イメージが結ぶ100の言葉と100の本
リヴィエラを撃て (単行本版、文庫版ともに新潮社)

1.大塚の監察医務院を出た手島さんが、歩いていく時の描写から。

2.ダーラム侯と口論した後、ハイド・パークを歩いているシンクレアさんの描写から。

***

1.まずは引用。珍しく(?)、単行本・文庫が一致している。
死者の声。姿のない殺人者の気配。尾行者の靴音。それらを吸い込んでいく街の闇は途方もなく深かった。 (単行本p416、文庫下巻p201)

Q74で回答 した場面の後に続くのですが、この時の手島さんの沸々とした静かな怒りが、直接的な表現でないにしろ、感じることが出来る。ついつい同じ刑事という職業に就いている合田さんと比べてしまいたくなるんですが、合田さんならとっくにキレてることでしょうなあ・・・。

2.これも引用。文庫の表現の方が秀逸なので、そちらを。
先をゆくシンクレアは振り向かなかった。芝生に落ちた雨の粒が一面の銀色に輝いていた。空は暗く、広がる樹影はさらに深い漆黒だが、そうして歩いていく地面はいっせいに発行しているのだった。闇は光るものだと初めて知ったウィーンの幼年時代の記憶が、一足ごとに輝く芝生の上で翻るように感じられた。後ろから追ってくる者さえいなければ、足を止めて眺めていたいところだった。 (文庫上巻p390)

「追ってくる者」とは、ダーラム侯のこと。ま、怒らせるようなことを言ったあなたが悪いんですが。(ダーラム侯が×な私は、彼にはかなり辛辣で手厳しいと、自覚してます。ファンの方すみません、と一言添えておく)
この従兄弟二人の長年に渡る愛憎と確執も、『リヴィエラを撃て』 の読みどころの一つですが、この後にダーラム侯は、自分の全く知らないシンクレアさんという男の本質を、垣間見てしまうことに・・・。

***

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Q74 「義理と人情」からイメージする本は?

2005-02-13 20:27:49 | イメージが結ぶ100の言葉と100の本
リヴィエラを撃て (文庫版 新潮社)

どちらかと言えば「人情」が当てはまるんですが、許していただこう。
ある一件をとある人物に依頼した手島さん。その彼が自殺に見せかけて殺されたことを知り、遺体と対面した場面から。文庫版で新たに加えられた描写です。

灰色の目だけが、何かを見据えるように見開かれており、その目に自分が見つめられているように感じたとたん、手島はあらためて、自分は開けてはならない箱を開けたのだと納得した。一週間前に自分の目がもう少し開いていたならと思うと、自然に涙が溢れてきた。死者の冷たい手を取って、自分の唇に押し当て、それが精一杯で、手島は部屋を出た。後ろから追ってくる大使館員が、「もう少し話を……」と言ったが、手島はもう応えなかった。 (文庫下巻p200)

ああ、私もこんな風に手島さんに哀悼をされてみたいものです・・・。この世に未練を残すことなく、心置きなくあの世へ旅立てそうだ(←ホンマかいな)

***

もうもうもう、この時の手島さんてばーっ! 「手を取って、自分の唇に押し当て」 なんて、他の人がやったら気障もいいところなんだけど、手島さんがすると、人柄の良さが滲み出ていて、痛切な想いが伝わってくるんですよね~。
「こんな心優しい人が、村キャラにもいたなんて!」と私が初認識した人物でもある手島さん。つまるところ、他のキャラがひと癖もふた癖もあ(りすぎ)ると・・・?

テッシーファンの私の贔屓目かもしれませんが、手島さんって、他の村キャラ(主役クラスで)とは、ちょっと違う気がするんですよね。他人に、この上もなく優しい気持ちを持てる方だ。他のキャラには、それがない。皆無と言い切ってもいいくらいだろう。
哀悼の意を示すのも、理不尽な行為・言動で怒りを示すのも、あくまで物静かで穏やかだ。その穏やかな表情に隠され秘められ抑えられた想いが、いつ、どういう形で噴き出されたのか。それはラストを読まねば、判りますまい。

・・・手島さんについて語りだすと、止まらないんです、私。唯一、高村薫作品を読むと、感情移入してしまうキャラクターだからかな。そろそろブレーキかけないと(苦笑)

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Q99 「読めないってこんなの!」からイメージする本は?

2005-02-09 23:53:57 | イメージが結ぶ100の言葉と100の本
リヴィエラ

第2回日本推理サスペンス大賞の、最終選考に残った作品。『リヴィエラを撃て』 の大本になった。
余談だが、第2回日本推理サスペンス大賞を受賞したのが、宮部みゆきさんの『魔術はささやく』

***

新潮社の編集者さんたちと、選考委員の人たちしか読んでない(はず)だもん。ズルイよー、私も読みたいよおおおっ。出来れば生きているうちに。原稿、処分しちゃったんだろうか? それはもったいないよおっ!

シンクレアさんやジャックの描写や人物造詣が、どれだけ違うのか知りたい。知りたいけれど、知るのも怖い気がしないでもない(苦笑) 既に定着している、『リヴィエラを撃て』 のイメージが、壊れることはないとは思うけれど。
話の内容も展開も、かなり違うようですしね・・・って、全て推測するしかないのが、辛いところではあります。

雑誌版『黄金を抱いて翔べ』 を読んだ時も、単行本や文庫とちょこちょこした違いがあって、面白かったしね。

「これ↑、何じゃ?」とお思いの皆様、これは第3回日本推理サスペンス大賞を受賞した時に、雑誌に掲載された『黄金を抱いて翔べ』のことです。
事実上のデビュー作なのに、実は高村さんは掲載前にも手直ししたらしい、と言われています。更には、雑誌版から単行本で出版する時にも、加筆修正しています。私は文庫→単行本→雑誌と読んだので、読み比べてみると違いがそこかしこあって、面白いですよ。

しかし高村薫さんは、デビュー当初から高村薫さんだったのか・・・。ご自身が満足するまでは、決して妥協はしない、加筆修正する労を厭わない方なのですね。

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Q43 「猫」からイメージする本は?

2005-02-03 22:32:49 | イメージが結ぶ100の言葉と100の本
マークスの山 (単行本版・早川書店)

過去に、ある事件の地どり中の合田さん、訪問中のある家で、飼われている猫に飛びかかられ、その拍子に玄関に置かれていたマイセンの花瓶を割ってしまうという、単行本版にしかないエピソードから。

ある種の人間には好かれる合田さんではありますが、猫は敏感なのか(?)、どうやら嫌われるようですね・・・(苦笑)

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迷ったのが、リヴィエラを撃て (単行本版、文庫版ともに新潮社)
ダーラム侯が拾った猫に、「こいつを跡取りにして、財産をくれてやる」 (下巻p416) と、のたもうたところ。

・・・そんなにもレディ・アンがお嫌いか、ダーラム侯(苦笑) 

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Q34 「月」からイメージする本は?

2005-01-27 22:43:50 | イメージが結ぶ100の言葉と100の本
わが手に拳銃を (単行本版のみ講談社)

エピローグのラストシーンから。
これを引用するとネタバレになるんじゃ・・・? とも思ったのだが、別にミステリじゃないし、トリックや種明かしなんてないし(←そういう問題か?)、未読の方が読んでも、「?」かと思われるので、省略しつつ引用。

夜は高く月は上がり、その白磁の光に照らされると、リ・オウは腹の虫が騒いで踊り出し、一彰は未だ見ぬ密林の月を思った。 (・・・略・・・)
もう何も考えなかった。自分が置き去りにしたもののすべてが、長い月の影になって足元に延びていた。頭を挙げるとその影はもはやなく、燦然と輝く闇がただ身震いするほど美しいだけだった。 (・・・略・・・)
この美しさに札束の夢と蒼白の月。このリ・オウの晴朗な狂気。
男ひとり狂うのに、これ以上何が要るか、と一彰は思った。
 (単行本p348~349)

***

『わが手に拳銃を』ではリ・オウ『李歐』では李歐と表記されています。(『わが手~』でも、最低1か所は李歐と表記されていましたが)
『わが手~』を文庫に改めて書き下ろししたのが、『李歐』。しかし同一人物と思ってはいけません。私はリ・オウと李歐を語る時は、「二人は別人」として判断して語ります。それくらい、似て非なるもの。未だに「リ・オウと李歐のどちらが好きか? どちらがいいか?」 と論争(?)するくらい、根強い人気を誇るキャラクターでもありますから。

この二作品に関しては、他のキャラクターもまったくの別人と思っておかないと混乱すること必至。「こっちでは生きてるのに、あっちでは死んでる!」というキャラクターが、何人かいますので(苦笑)

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