
「おれこ、こまっちゃうの」
おれこが好きなおやつは、さつまいもにささみを巻いたもの。
これをあげると、くわえて、うれしそうに、あっちこっち移動して、
食べる場所を決めようとするのだが、あそこでもないここでもない、
というような感じで、移動し、落ち着かない。
その間に、ちょっと、よだれなんかが出てしまうことがある。
食べる場所が決まらないからか、
「くーん、くーん」
などと、かわいらしい声で鳴いたりもする。
もしかしたら、穴掘って、埋めて、あとで食べたいのかもしれない。
それができなくて、くーん、くーん、なのかもしれない。
昔飼っていた犬は、なにかいいものをもらうと、必ず、
庭のどこか、自分がいいと思った場所に穴掘りし、そこに宝物を埋めたものだった。
(掘り出したのを見たことはないので多分忘れちゃったんだろう)
そう考えると、ささみおいも巻きはおれこにとって、
かなり『大切なもの』なのだということがわかる。
ほかのおやつも大好きなものがいくつかあるけれど、
『くーんくーん』が出るのは、このおやつだけなのだ。
犬の言葉を理解できる機械があるというが、
そんなものではなくて、本当に言葉がわかるようになったらいいなと思う。
そうしたらもっと面白いんだろうな。
電話で話しができたら、楽しいだろうな。
「あ、もしもし、おれこちゃん。おみやげ何がいいかしら?」
「ささみまきまき!」
なんてね。