「あ、ピーター」
おれこはテレビ好き。
家にいるといっても、殆ど仕事しているので、おれこはひとりぼっち。
つまらない。
時々、パソコンから手を離し、のび、なんかしたスキに、
「ねえねえ、あそぶ?あそばない?」
てな感じに目をらんらんと輝かせて、ハリーちゃんや、ペンちゃんをくわえて、走ってやってくる。
・・・ごめんにょー。
かーさん、まだ仕事おわんないんだわー。
がっかり、とぼとぼ、きた道を帰るおれこであった。
てーのが、かわいそうなので、テレビをつけておくことがある。
オレコのスキなのは・・・動物が出てるテレビ。
でもアニマルプラネットはディープすぎて、時々吼える。
アニメの「ピーターラビット」とか、警察犬が出てるサスペンスドラマとか、そういうのをつけておく。
(あ、「結婚できない男」というドラマも、よく見てる。あれも犬が出てくるもんね。)
そうすると、じーっと、テレビ見てるのだ。
話がわかってるかどうかはわからないけど。
でも、さんぽに誘うと、いく、という。
それはそれ、これはこれ。
「おとうさん」
仕事が遅くなって、散歩の時間も遅くなると、おれこは「るんるん」する。
町は人も車も少なくなって、とても静かだし、おれこが好きな環境になるから。
それだけじゃない。遅いとおとうさんが帰ってくるかもしれないから。
「あのひとそうかな?」
何度か、示し合わせて、お父さんの帰宅タイムにあわせて散歩したら、それから、
「遅い時間の散歩はお父さんが帰ってくるかもしれないもの」
と思うようになったみたい。
以前は「さあかえろうね」といったら、一緒に帰っていたのに、
「かえろうね」といっても、帰らなくなってしまった。
ロータリーでたたずんで、あっちへうろうろ、こっちへうろうろ。
駅のほうから歩いてくる大きな黒い服の人や、うちの車と似たような車に向かって、
うれしそうに、しっぽを振って、近づくのだ。
あるとき、やっぱり間違えて、
若い男の人にうれしそうに近づいていって、
にっかにかの笑顔でしっぽを振って、前にいって顔をみたら、違う人だった。
おれこはがっかりしていたんだけど、その男の人は、にこにこしてた。
「こら、お父さんじゃないんだよ、すみません」
って私がいったら、もっとにこにこにこにこー、さ~。
なんかこっちまでうれしくなるようなにこにこだったのよー。
動物、きらいな人もいるから、あんまり喜んでばかりもいられないけどもね。
やさしそうな人だった。
でも一番にこにこしているのは、あとからこのハナシを聞いた「お父さん」である。
「おれこいのち」の人だから。
なんともいえない、顔をしていた。
あんな顔ははじめてみたといってもいいくらいの顔。
20年近くの付きあいになるけれども。
あんな顔を持っているとはしらなんだ。
一番面倒みてくれるお母さんが一番好き、と、いうのは、ある程度どこのうちも仕方ないことなのかもしれないけども。
お父さんというのは、いつも一緒にいられないからこその存在感がある。
こういう話を聞くと、本当に、うれしそうなんだよね。
そういえば、もうすぐ父の日だなあ。
「・・・おとうさん、だいきらい」
ねこは、おもいどおりにはなりませんもんねー。