泉を聴く

徹底的に、個性にこだわります。銘々の個が、普遍に至ることを信じて。

空と水と太陽

2020-01-29 22:02:17 | 写真
 久々に晴れて、充分に(24キロ)走り込みました。

 先日、ある人に言われました。
「菊田さんだけの体じゃないのだから」と。
 走っていると、たまに応援される。
 走っているだけで、すれ違う人になんらかの良い影響を与えているから。
 こうやって書くこともそう。
 全く個人的に始めたブログが、文章が、私の手から離れ、多くの人たちに読まれるようになってきた。
 小説という作品も、公のもの、みんなのもの。そこに私がいることはむしろ邪魔だ。
 私は、気配を消すことが上手だ。透明になって、作品だけ残ればいい。
 それでも、私はここにいる。
 公であることと個人であること。この区別が、ときに混乱する。
 プロとしての倫理、というものも問われてきたのだろうか。
 思えば、不思議なものです。
 誰だって文章は書く。だけど、プロになったら、その文章でお金をいただく。
 その差は何なのだろう?

 多摩湖に映る空と雲と太陽。とても美しかった。
 人の心も、水面のようなもの。
 あたたかい太陽は、他者から継続的に照らしてもらうことで、この水面のように内側に取り込まれる。
 雲がその反対なら、それらもまた心に吸収される。
 でも、空が変わるように心も変わる。
 不変なのは、私という意識だけ。

 透明な存在になれる私は、あらゆる感情や思いや理想像を投げ込まれる。
 カウンセリングの専門用語を使うと、良さげな思い込みを「陽性転移」、悪そうな思い込みを「陰性転移」という。
 転移は、その人の歴史の中の未解決な問題から生まれている。
 過去の重要な人物との間の親愛、信頼、好ましさなど(陽性)と、敵意、憎悪、軽蔑など(陰性)を現在に移し換えること。
 この転移が、日常のあらゆる場面で散りばめられている。
 それらが、人の観る目を狂わせると言ってもいいのではないでしょうか。
 私の思い込みを定着させようとしてレッテル貼りが行われる。
 それは、私だけの正しさを押し付けることでもあります。
 カウンセラーの仕事の一つは、この複雑な転移から派生する様々な誤解を一つずつ解していくこと。
 巻き込まれ、共に苦しんで、一歩ずつ前進し、何とか解決に至る。
 そのとき、人は確実に成長している。それまでとは違う自分になっている。

 カウンセラーではなく小説家として、私が今取り組んでいるのも、上述したような仕事だと感じています。
 最近、私自身の誤解(陽性転移)に気づかされた。身近な人の話(物語)もじっくり聴く機会があった。
 美しい空と水と太陽を写真に収めて。こんなことが思い浮かぶ。

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