60種の木が紹介されています。
木の特徴を解説するとともに人として学べるところが取り出されています。
例えば、最初に登場するイロハモミジ。「最初から美しいもの、なんてない」という題で、忍耐の大切さを教えてくれる。冬の厳しい山で、イロハモミジは急いで枝を伸ばしはしない。じっくりと日の当たる場所を見極めて少しずつ伸びて葉を茂らせ、不要になった場所は枯らせてしまう。ただ待つだけでなく、じっくりと着実に成長する。その結果があの美しい姿なのだと。
次のイチイも着実さの重要性を教えます。広範囲に根を張り、幹や枝に傷を負っても地下が支える。2000年も生きることができるのは、少しずつしか成長しないから。成長がゆっくりだからこそ、細胞は緻密になり腐りにくくなる。
オリーブやアサイーは栄養価の高い実を提供することで他の生き物との共存を実現している。与えることの豊かさを教えてくれます。
共存ということで言えば、ハンノキで出てくる根粒菌とダグラスモミの菌根菌(キンコンキン)。
根粒菌は窒素からアンモニアを生成し植物へ供給し、植物から光合成産物を得て共生していました。菌根菌はリンを吸収して植物に供給し、植物から光合成産物を得ている。知りませんでした。土の中のカビが植物と手を結び、そんなにいい仕事をしているとは。
知らないことだらけなのですが、一番驚いたのはコルクガシでしょうか。あのワインの栓になっているコルクの原料は、コルクガシの皮なのでした。実際の写真を見るとかなり衝撃なのですが、ぐるっと身包みを剥がされてしまいます。でも、コルクガシはくよくよしない。どんどん皮を再生していく。通常より二酸化炭素をより多く吸収するというからあっぱれです。「木の王様」とも言われ、原産国のポルトガルでは大事にされています。元々、コルクガシの皮が柔軟なのは、適度に空気を含むことで断熱効果を生み、山火事から身を守るためと言われています。コルクガシの題は「立ち止まらずに、立ち直ろう」。
もう一つ挙げるならアカシアでしょうか。アカシアは葉を食べられるとエチレンガスを発生させます。そして他のアカシアに危険を知らせ、草食動物には毒にもなる苦いタンニンを生成する。「ひとりで無理せず、助け合おう」 本当に、見習いたいことばかりです。
私という木は、どれだけ成長できたのでしょうか。小説という実がやっと成りましたが、まだまだこれからです。一つできたとしても継続が力になります。
読書することで地下に根を張り、強風を凌ぐ柔軟さを心身に持つように努め、辛抱強く日の当たる場所へ枝を伸ばし、自分の芯を着実に緻密にし、微生物や昆虫や鳥や花たち、書店で本とお客さんと仲間とともに。走ることで自分を守り。休むときはしっかり休み。
木々とは、これからも、ますます親密に付き合っていく相手になりそうです。
名前をなかなか覚えられないから、少しずつ、何度も確かめて。
今はやっと涼しくなりましたが、夏の酷暑では木陰のありがたさを実感します。
紙もまた木がなければ生まれない。神社も大木があってこその神社です。
木のない生活は考えられません。
木のことを知るために、きっかけになる一冊です。
アニー・デービッドソン 絵/リズ・マーヴィン 文/栗田佳代 訳/文響社/2022
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