
走ることの効能が、様々な実験や観測データによって裏づけられています。
走ることだけではなく、運動全般について、要は心拍数を上げることによって生じる効果について。
科学的な証明方法の詳細が記述されていますが、細かいことは覚えきれません。
私が知りたかったのは、なぜ走ると頭がスッキリするのか?
大雑把に言うとこういうことでした。
人の脳は、サバンナで獣に襲われる危険に晒されていたときから進化していない。
そんな人にとって大事なことは、何より生き続けることであり、そのためには食べ物を確保しなければならなかった。
生存の必要性に迫られて、安全な場所からも離れて食べ物を得て帰ってくるために、何ができれば有利なのか?
できるだけ長く移動できることです。
日が暮れる前に帰ってきたいなら、走った方がより有利。
より長く走れるために、人の体からは毛が減った。
体温が上がっても下げられるように、汗を流すことができるために。
そして、走った後、脳は「よくやった!」とご褒美をあげる。ついでに「また頑張ってね」と励ます。
ご褒美とは、ストレスや不安に強くなることであり(コルチゾールを抑制)、幸せ物質であるセロトニンの降雨。
励ましとは、集中力の増加(ドーパミンによるノイズの消去)、脳内での細胞同士の新たな結びつき(ひらめき!)、記憶力の強化(海馬や前頭葉が大きくなる)、ついでに学力もアップ。
どれも私が実感してきたことです。
東日本大地震がきっかけで走り始めた私にとって、人の生存にとってランは必須だったという理由は腑に落ちて余りあります。
震災をきっかけに、私はより本来の姿に近づいた、ということでしょうか。
走った後、小説に取り組むのが私にとって黄金のルーティーンです。その時間が一番集中できて、創造力も高まるから。
思えば、喫煙もいつの間にかやめてました。ステレオから音楽をかけっぱなしにする必要もなくなりました。
読んで走って書いていれば、私は生きて、前進できている感覚をつかめるようになっていました。
どれくらい走ればいいのかと言えば、週3回、1回は30分以上。
効果はずっと持続するわけではないので、定期的な運動が必要です。
私にとっては、やはり月に80キロから100キロといったところでしょうか。
走れなくても、歩くだけでも脳に良い効果はあります。
1日1万歩というのは合理的な指針になるようです。
そもそも、なんで脳はあるのでしょう?
この問いも興味深かった。
木には脳がないですよね。
でも、小さな虫には脳細胞がある。
答えは、「動くため」。
なぜ動くのかは、サバンナにいた人たちと同じ理由です。植物たちは、光合成ができますから。
とにかく動くことなのでした。動かなければ、当然弱っていきます。病気にもなります。
大学生のとき、うつ病にかかって寝込みがちだったとき、よく父が散歩に連れていったことを思い出しました。
車で父の好きな河原へも連れていってくれました。
父は、この本を読まずとも、本能的に「動く必要がある」と感じていたのかもしれません。そしてその対応は正解でした。
父と二人並んで、星の見えない夜空を見上げながら、背筋を伸ばして深呼吸も繰り返した。
息をすること。歩くこと。
私にとって走ることは、その土台の上にあります。
走ることは、うつ病の改善・予防だけでなく、ADHD(注意欠陥多動性障害)にも効果があるそうです。
でも、走り過ぎは禁物です。疲れすぎても何もする気は起きません。怪我をしたら尚のこと。
交通事故も気をつけなければ。先日も、突然右折するおばちゃんのママチャリとぶつかりそうになったり、小型犬にいきなり吠えられたり、いろいろ起こりますからね。
最後に、最も興味深かったこと。
人類は、私たちホモ・サピエンスが生き残ったわけですが、他にもライバルの人類は、少なくとも6種いたそうです。その一つはネアンデルタール人。
ネアンデルタール人は、ホモ・サピエンスよりも脳が大きかったという。ではなぜネアンデルタール人は絶滅してしまったのか?
生き残りを決めた要因は、脳の周りを覆う皮質(大脳皮質)の差にあった。
大脳皮質の成長を促す遺伝子がホモ・サピエンスにはあり、その遺伝子は、細胞のコピーミスから生まれたという。
ミスによって生まれた遺伝子が引き継がれることで、私たちは生き延びてきた。
一方で、地球を破壊できてしまうほどの力も持ってしまった。
人同士の殺し合いも、止まるところを知りません。
ああ、それはやっぱりコピーミスだったのかと、『風の谷のナウシカ』の世界観を思い出したりもします。
でも、だからこそ、走って(運動して)、かつてなかった世界に接近する。
脳内には1000億もの細胞があり、そのつながりの数は100兆にもなるそうです。
運動することで、新たなつながりを生み出すことができる。それこそが創造。
持続可能な仕組みを作っていくこと。
一人でも多くの人が、その人のしあわせを実現していくこと。
私は私で、最高の仕事を果たし、生涯発達していくこと。
そのために、ランニングはもう私の一部になっています。
そして、改めて思いました。
走ることが目的じゃない、と。
走ることに助けられながら、よりよく書くこと(生きること)が、私にとって最も大切なことなのだ、と。
アンデシュ・ハンセン 著/御舩由美子 訳/サンマーク出版/2022
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