荻窪鮫

元ハングマン。下町で隠遁暮らしのオジサンが躁鬱病になりました。
それでも、望みはミニマリストになる事です。

船戸与一の巻。

2015年04月26日 | 枯渇した生活に豊潤な読書を



直木三十五賞作家・船戸与一が亡くなりました。

白川道に続いての小説家の訃報です。

ニッポンを代表するエンターテイメント作家が続いて亡くなるなんて、まことに残念。

さて、僕の印象ですと、白川道は90年代の作家で、船戸与一は80年代の作家ってイメージがあります。

80年代は船戸与一以外にもエンターテイメント作品界に逢坂剛・北方ラーメン謙三・佐々木譲・藤田宜永等錚々たる顔ぶれが登場した黄金期です。

文芸もさぞかし景気が良かったでしょう。

まぁ、白川道は80年代はナカに入っていたんでしょうけど。



あの近辺の作家で最初に触れたのは、逢坂剛だったと記憶しております。

そのせいでスペインまで行っちゃいましたから。

過去の記事。
スペインの巻。
スペインの巻、ふたたび。

そうこうしているうちに、船戸与一に辿り着くのは当然かも知れません。

『逢坂剛に比べるとエグいなぁ』というのが最初の感想でした。

なんせ登場人物がほとんど死んじゃいますからね。

それに比べると逢坂剛はお洒落だなぁ、と。

船戸作品でもっとも好きなのは【猛き箱舟】です。

文庫本で全4冊。

実に読みごたえがありました。

友だちと『シャリシャリ心臓食っちゃうよ~』なんて言ってたものです。

壮大なスケールの中で繰り広げられる殺戮は、唯一無二のインパクト。

ヘラヘラした主人公が最後、孤独な復讐者に変貌を遂げた描写が今でも忘れられません。



ここ数年は船戸作品を読んでいませんでした。

正直、食指が動かなかったんです。

最後に読んだのは、確か【夢は荒れ地を】あたりかなぁ。

読み手も歳を食いますと、だんだん作家の好みが変化しますからね。

作家自身の作風も、もちろん変化しますし。



享年71歳。

先日、亡くなった白川道は享年69歳。

生死を問わず、ひょっとしたらエンターテイメント作家の限界って、その辺の年齢かも知れません。

今年68歳になる、北方ラーメン謙三もすっかりエンターテイメント作品を書かなくなっちゃったし。

ご冥福をお祈りします。