西島さんは出演していないのですが、先日、BSの向田邦子作品特集で、『あ・うん』を観ました。
小林薫さんと串田和美氏、田中裕子さん、演出は久世光彦さん版です。
田中裕子さんの昭和の人妻の儚さや凄み。友人の妻と雖もこれは惚れると納得させられます。
小林さんと串田氏の、旧友同士の関係性も、本当に納得させられます。
向田さん脚本、久世さん演出の黄金コンビのドラマは、昭和の説得力が大きくて。
松本清張氏のドラマを平成版にすると無理矢理感が出るのと同様、
向田作品も平成版にすると妙な臭みが出てしまいます。
やはり昭和には昭和の世界があり、
平成には平成の世界があり、
大正、明治にもそれぞれの世界があり、
江戸以前にもそれぞれの世界があり。
大正を覚えている方はもう数が限られているでしょう。
その時代を覚えている方がもういない時代のことは、
現在まで残されてきた記録や文献から想像し、創造していくしかないのですが。
そうした中で、観る者を納得させる説得力を持たせる力量のある制作側の方々や
演者の方々が存在するお陰で、その時代の物語を味わうことができるのです。
ぼろくそに言われる作品にも、それを観た誰かに何かの影響を与えたかもしれないし、
世間から大絶賛される作品も、誰かからは「こんなののどこがいいのかわからない」と言われるかもしれない。
大勢の人間が同じ生まれ方育ち方をしていない以上、
意見が一つに統一される筈はなく。
「自分はAにはこう感じたし、Bにはこう感じる」という思考の自由がある以上、
人に対して否定すべきではないし、人から否定されるべきでもない。
いいものはいい。
※個人的な感想です。
追記
向田作品では、ドラマ『空の羊』に西島さんが出演されていました。
四姉妹の次女と恋仲になる作家志望の男の役柄でした。
出演場面は少ないのですが、
あの頃の、自己中心的な非道さの雰囲気が漂う役、いいなあ。