木のぼり男爵の生涯と意見

いい加減な映画鑑賞術と行き当たりばったりな読書によって導かれる雑多な世界。

マタハリ

2012-11-04 01:02:45 | 日記


『マタハリ』M・グリッランディ

女スパイの代名詞。

元お嬢様、妖艶なダンサー、要人の愛人。
そして、スパ~イ。
いったい…

ワガママなお嬢様育ち、贅沢好き、軍服への憧れ、溢れる冒険心。
世界を虜にした官能美(というか裸体)、エキゾチックな(クネクネ)踊り。
この中のどれか一つでも欠けていたら、違う人生を送っていただろう。

まだまだ謎は多いものの、今で言うセレブな雰囲気が漂うマタハリ。
己の魅力の絶大なる自信の故か、どうにかなるだろうという、生来の楽天家の故か。
報酬に惹かれた事実、軍人好きが災いして、スパイに。
しかもドイツのスパイなのに、フランス政府との間をフラフラとしたり。
突然、自信に満ちて強気になるかと思えば、不安にかられて衝動的に行動。
戦時中の不安定な状況を、そのまま生きたと言えそう。

確かに、公平な裁判とはほど遠いが、スパイだったのも事実。
見限られたり、見捨てられたり、絶望を味わいつつも。
銃殺刑には、毅然と望んだという…
全てのタイミングが、歯車が、破滅へと向かう恐ろしさ。


『王妃に別れをつげて』シャンタル・トマ
史実をフィクションで描いたヴェルサイユ宮殿、最後の3日間。
マリー・アントワネットと宮廷人達の姿が活き活きと浮かび上がる。
宮殿内の生活描写がとても丁寧。
使用人と貴族、それぞれの姿が楽しめる。
パリから離れていた為、なかなか状況が把握出来ない様子。
宮殿に逃げてくる人々と、宮殿から逃げようとしている人たち。
この混乱ぶり!
それぞれの人生が、その時々の決断にかかっている緊張感。


『狂王ルートヴィヒ 夢の王国の黄昏』ジャン・デ・カール
バイエルン国王のルートヴィヒ二世。
美貌の青年が見る影もなくなる痛々しさ。
こう写真で見せられると、大ショック…

ワーグナーに対する熱烈な支持。
崇拝してるとは言え、注文もつけるし、口も出す王。
歌手のルックスにこだわる王が笑える。
ワーグナーのせこさもなかなか捨てがたい面白さ。

そして城の建設。
熱に浮かされたように築城に夢中。
ルイ14世を理想とし、自分だけのヴェルサイユ宮殿を建てようとした王。
この散財に、政府も黙ってられないのは、ごもっとも。

歴史は繰り返す─いや、ホントに。
祖父ルートヴィヒ一世は美貌の踊り子ローラ・モンテスに夢中になり、散財。
国民の反感を買い、退位せざるを得なくなった過去あり。

込み入ったヨーロッパの国際情勢を背景に。
意外と上手に立ち回ったルートヴィヒ二世。
(実際、どこまで見通してたかは疑問も残るけど)
おかげで、バイエルン王国は持ちこたえる。
そして、国民の王に対する支持と信頼は絶大なものに。

弟が発狂したり、
突然の婚約、そして婚約破棄。
しかも相手はシシことエリザベト皇后の妹ゾフィ!
それは、マズいと思うぞ。
まぁ、自らの美青年好きを自覚しての結果なので仕方ないか…

どうも、被害者なんだか加害者なんだかよく解らない人ではある。
気に入った俳優を拉致して城に連れ込んだり。
人嫌いが高じて、夜中に散歩するのを習慣にしたり。
優柔不断で逃避癖があり。
戦争嫌い、絶対王制への憧れ。
エキセントリックな芸術家肌。
明らかに、理解者は少なかろう。

この状況で穏便に終わるハズもなく。
政府の陰謀で狂人のレッテルを貼られ、退位を迫られ。
そして、湖での謎の死。


本日のご教訓:ワガママと散財は身を滅ぼすかも・・・よ?