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『マタハリ』M・グリッランディ
女スパイの代名詞。
元お嬢様、妖艶なダンサー、要人の愛人。
そして、スパ~イ。
いったい…
ワガママなお嬢様育ち、贅沢好き、軍服への憧れ、溢れる冒険心。
世界を虜にした官能美(というか裸体)、エキゾチックな(クネクネ)踊り。
この中のどれか一つでも欠けていたら、違う人生を送っていただろう。
まだまだ謎は多いものの、今で言うセレブな雰囲気が漂うマタハリ。
己の魅力の絶大なる自信の故か、どうにかなるだろうという、生来の楽天家の故か。
報酬に惹かれた事実、軍人好きが災いして、スパイに。
しかもドイツのスパイなのに、フランス政府との間をフラフラとしたり。
突然、自信に満ちて強気になるかと思えば、不安にかられて衝動的に行動。
戦時中の不安定な状況を、そのまま生きたと言えそう。
確かに、公平な裁判とはほど遠いが、スパイだったのも事実。
見限られたり、見捨てられたり、絶望を味わいつつも。
銃殺刑には、毅然と望んだという…
全てのタイミングが、歯車が、破滅へと向かう恐ろしさ。
『王妃に別れをつげて』シャンタル・トマ
史実をフィクションで描いたヴェルサイユ宮殿、最後の3日間。
マリー・アントワネットと宮廷人達の姿が活き活きと浮かび上がる。
宮殿内の生活描写がとても丁寧。
使用人と貴族、それぞれの姿が楽しめる。
パリから離れていた為、なかなか状況が把握出来ない様子。
宮殿に逃げてくる人々と、宮殿から逃げようとしている人たち。
この混乱ぶり!
それぞれの人生が、その時々の決断にかかっている緊張感。
『狂王ルートヴィヒ 夢の王国の黄昏』ジャン・デ・カール
バイエルン国王のルートヴィヒ二世。
美貌の青年が見る影もなくなる痛々しさ。
こう写真で見せられると、大ショック…
ワーグナーに対する熱烈な支持。
崇拝してるとは言え、注文もつけるし、口も出す王。
歌手のルックスにこだわる王が笑える。
ワーグナーのせこさもなかなか捨てがたい面白さ。
そして城の建設。
熱に浮かされたように築城に夢中。
ルイ14世を理想とし、自分だけのヴェルサイユ宮殿を建てようとした王。
この散財に、政府も黙ってられないのは、ごもっとも。
歴史は繰り返す─いや、ホントに。
祖父ルートヴィヒ一世は美貌の踊り子ローラ・モンテスに夢中になり、散財。
国民の反感を買い、退位せざるを得なくなった過去あり。
込み入ったヨーロッパの国際情勢を背景に。
意外と上手に立ち回ったルートヴィヒ二世。
(実際、どこまで見通してたかは疑問も残るけど)
おかげで、バイエルン王国は持ちこたえる。
そして、国民の王に対する支持と信頼は絶大なものに。
弟が発狂したり、
突然の婚約、そして婚約破棄。
しかも相手はシシことエリザベト皇后の妹ゾフィ!
それは、マズいと思うぞ。
まぁ、自らの美青年好きを自覚しての結果なので仕方ないか…
どうも、被害者なんだか加害者なんだかよく解らない人ではある。
気に入った俳優を拉致して城に連れ込んだり。
人嫌いが高じて、夜中に散歩するのを習慣にしたり。
優柔不断で逃避癖があり。
戦争嫌い、絶対王制への憧れ。
エキセントリックな芸術家肌。
明らかに、理解者は少なかろう。
この状況で穏便に終わるハズもなく。
政府の陰謀で狂人のレッテルを貼られ、退位を迫られ。
そして、湖での謎の死。
本日のご教訓:ワガママと散財は身を滅ぼすかも・・・よ?