木のぼり男爵の生涯と意見

いい加減な映画鑑賞術と行き当たりばったりな読書によって導かれる雑多な世界。

『探偵ムーディー、営業中』

2013-04-05 13:25:10 | 日記


「探偵ムーディー、営業中」スティーヴ・オリヴァー


このタイトルの狙い、何ですかー?
そしてこの表紙…
何を期待すればいいんだ?
マイアミ・バイス?
というかドン・ジョンソンかマーク・ハーモンだな、と予想。
確認の為、購入。

戦争の後遺症により精神病院から退院したばかりのムーディー。
夜はタクシードライバーをしつつ、念願の探偵デビューも果たす。
失踪した夫の行方を探す依頼を受けるが…

設定は1978年。
“あいだの離れたグレーの目、角張った顎、何度も折られたような鼻。
人によってはハンサムだと言うが、荒々しい顔だ。”
(って、こらこら。
ハンサム自慢に、ちょっと引く。。。)

“「いつ探偵になりたいと思ったんだ?」
「病院に居るときに幻覚でハンフリー・ボガードとよく話をしてたときだ」”
(っておいおい。あまり聞かないねぇ、この理由…
ツッコんでいいんだか、聞き流すべきか?
とりあえず、更に引く。。。)

“俗物やいかがわしい人間の大勢いる不潔で敵意に満ちた地獄のような大都会だと、
私のようにすねた人間もその他大勢になってしまう。が、ここでならユニークでいられる。”
分かったよーな分からんような…
いじけてても、強気。やさぐれ系ハードボイルドか?

タクシーの乗客を通して見えてくる生活。
不動産業や弁護士、ヒッピー、元カノが登場。
全員、隠し事ありそうな雰囲気。
ムーディーの別れた妻と幼い娘の描写が温かいのがいい。
けど、かなりメソメソしてるムーディー。
探偵に向いてないな、お前、と言われる始末。
殺人はあるが、凄惨さは無し。
緊迫感はほどほど、どちらかというと事件よりも人物描写が中心。
底辺に生きる人々を描くのが上手く味わい深い。

独特のトーン、ニヒル度は低い。
思わずニヤリとさせられる、ユーモアを感じる文章。
“六時頃、関節炎にかかったプレッツェルにでもなったような気分で目が覚めた。”
“着ているのは、歩くとからだにぴったり張りつくタイトなラベンダー色のドレス。
悪趣味なのが私だけでないことがわかって安心した。”
“私は、でん粉が入った皿と同じくらい感じやすい”

その鼻どうしたの?と必ず聞かれるムーディー。
オーウェン・ウィルソンが適役か?
デヴィッド・ストラザーンの渋さをプラスすれば完璧なのだが…

原題:MOODY GETS THE BLUES