「ヴィオルヌの犯罪」マルグリット・デュラス
1954年のフランスで実際に起こったバラバラ殺人事件。
デュラスが犯人に面談してまで追求した無動機殺人。
事件を基にはしていても、あくまでも、フィクションですが。
狂気をいかに描くか?にとことんこだわった作品。
インタビュー形式で綴られる事件の全貌。
録音という作業によって、独特の対話、沈黙が生まれる。
奇妙な緊張感。
また、録音の録音などの入れ子式のインタビューもあり、かなり複雑。
デュラスの試行錯誤が伺われる。
‘狂気’の壁にぶち当たった場合、
やはり理解など有り得ないのだと気づく。
思考回路が違うこと自体は必ずしも悪いことではないが。
殺人に至った回路が不明という異様さ。
‘狂気’においては‘こだわり’もまた異常。
繋がらない話、的を得ない語り。
聴いている者が、決して埋められない空白。
この恐ろしさが、ジワジワと伝わってくる本。