喫煙を考える

「喫煙」という行為について共に考えましょう。
タバコで苦しむのは、喫煙者本人だけではありません。

俳優にとって声とは何か ~十代目・坂東三津五郎の死を考える~

2015-02-23 18:36:54 | 喫煙を考える

歌舞伎俳優の十代目・坂東三津五郎(以下、敬称略)が21日に亡くなりました。
すい臓がんだったということです。

2月22日(日)20時5分配信のスポーツ報知を要約すると
2013年9月に約4時間にわたるすい臓がんの手術を受け
すい体尾部(すい臓の中央より十二指腸から離れた部分)と脾(ひ)臓を摘出。
10月に行われた会見では「今後も勇気をふるって、病に打ち勝つ努力を続けていきたいと思います」
と力強く決意を語っていた。
手術後は治療と休養に専念。
2014年3月に行われた会見では、酒、タバコを断ち、毎朝ラジオ体操で始まるなど生活の変化や
セブ島でシュノーケリング、沖縄でゴルフなど療養生活の内容を明かし
「“リゾート療法”で体調は大変いい。生かされていることに感謝」と回復ぶりをアピール。
4月の「壽靱猿(ことぶきうつぼざる」で舞台復帰した。
だが同年9月、12月に上演予定だった主演舞台「芭蕉通夜舟」を
医師から「加療の必要あり」と診断されたため降板。
がんの再発や転移ではないと説明し
「しっかりと体をケアし、再び良い舞台をお見せできるよう努力して参りたいと存じます」と語っていたが
復帰はかなわなかった。
という経過だったようです(赤字は荻野が強調のために用いました)。
スポーツ報知ではない媒体によると
2014年9月には肺にがんが転移していた、と報じているものもあります。


昨夜、ネットのニュースでこの事実を知り
私は、十二代目・市川団十郎十八代目・中村勘三郎が亡くなった時の衝撃より
さらに強い衝撃と落胆を味わいました。
三津五郎の上品で知的な雰囲気と、物腰柔らかな語り口とたたずまいは
他の歌舞伎役者の追随を許さないところでしょう。
私の好きな歌舞伎役者である十五代目・片岡仁左衛門も、多少そういう雰囲気を持っていますが
仁左衛門の場合は、ニヒルさが主たる雰囲気だと考えています。
また、三津五郎は、今は亡き往年の映画俳優・市川雷蔵を彷彿させます。
そしてなんといっても、三津五郎の着物姿の線の美しさ
舞踊の型の決まり方は、右に出る者はいないでしょう。 


歌舞伎の世界では、「一声、二顔、三姿」とか「一声、二顔、三男」という言葉があるそうです。
いちばん大切なのは「声」で、2番目に「顔」、3番目が「姿」
「男」というのは男振り、見目麗しく姿の良いことや、立ち振る舞いが美しいことも言うのでしょう。
三津五郎はそれらをすべて兼ね備えていた歌舞伎俳優だと言っても過言ではないと思います。
それにしても、歌舞伎の世界でいちばん大切なのは「声」だと言われているのだとしたら
タバコを吸っていたのでは、声を大切にしているとは思えません。
病気になって、慌ててタバコをやめても、手遅れであることが多いのです。
もちろん、吸い続けるより、やめた方が良いことは確かですが
喫煙していた何十年の間に、病魔は確実に喫煙者の体を蝕み続けているのです。
歌舞伎俳優のみならず、俳優にとって、「声」とは何でしょう。
俳優にとって「声」とは、表現するための「道具」の一つであると思います。
俳優だけでなく、漫才師・噺家・謡・狂言師・歌手・声優など
声を使わなければ成り立たない職業があります。
その大切な声を、タバコは奪うのです。
七代目・立川談志が、病魔によって声を奪われた時、話ができないことをとても悔しがっていたそうです。
談志は、噺家です。
噺家にせよ俳優にせよ、声を使ってなんぼ、の商売なのに
タバコを吸っていて、プロと言えるのでしょうか。


声を使って人様に芸を披露したり、声を使って何かを表現することによって糧を得ている喫煙者の方は
タバコを吸うことを恥ずかしいことと思い、今すぐタバコをやめてほしいと思います。
プロなら、できるはずです。


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2 コメント

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Unknown (Unknown)
2015-03-12 22:46:38
アメリカのアンティークショップで、
「タバコの煙で肺を殺菌して健康な体に!」という戦前の広告ポスターをみたことがあります。
当時はタバコを薬として売っていたそうです。
コーラや、放射性物質入りのドリンクまで薬として売っていたそうで、
昔はそういうものが体に悪いとは思ってなかったそうだよ、と店員さんは言っていました。
談志さんもそうですが、お年寄りの価値観は人間が無知であったが故の時代背景もあるので、亡くなった方を責めるのは少し酷な気がします。
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喫煙者は被害者です (荻野寿美子)
2015-03-14 09:18:27
無名さん、コメントをいただき、ありがとうございます。
たしかに、死者に対してものを申すというのは、反論の機会がない状態でしているわけですから、その点においては酷でしょう。
しかし、存命中でも死後であっても、その人間がした行為に変化はないと私は考えます。無名さんがどう感じられたかわかりませんが、記事中で談志師匠に関しても三津五郎さんに関しても、矮小も誇張もしておりませんが。
死者を責めているのではなく、生者に対してのメッセージだと受け取ってもらえなかったことは、私の筆力がいたらないせいでしょう。精進します。

また、お年寄りの価値観は人間が無知であったが故の時代背景もあるとのことですが、お年寄りの価値観は変化しないのでしょうか。
人間の価値観は、何かのきっかけがあればお年寄りであっても変化すると私は考えます。
仮にタバコの吸い始めは薬だと思っていても、ずっと薬だと思って吸っている人がいるのでしょうか。
日本でタバコの害を説いたのは『養生訓』の貝原益軒が有名ですが、それは1712年のこと。タバコのパッケージに警告表示がなされたのは、1972年からです。コロムビアライト師匠が喉頭がんで声帯を摘出したのは、1991年のことです。
たとえ吸い始めが無知ゆえのことであっても、価値観の変化を促す事象は、このほかにもたくさんあると思います。

なのになぜ吸い続けるのか、それは喫煙者が悪いのではなく、喫煙者はだまされて「吸わされ続けている」被害者だからです。

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