Think Globally, Act Regionally:『言葉の背景、カルチャーからの解放、日本人はどこへ往く』

身のまわりに見受けられるようになった「グローバル化」と生きる上での大事な「こころの健康」。さまざまな観点から考えます。

★☆第86回「自信回復7つの習慣~うつ解消・ヘルスマネジメント(心とからだ)技術(その7/7)」★☆

2023-04-11 09:23:40 | メンタルヘルス

自信回復7つの習慣の最終回は、「●立ち直るための工夫をする」です。

立ち直るための工夫とは、自分を変えるための実行可能な工夫のことです。では、自分を変えるには、どうしたらうまく行くのでしょうか。

ステップごとに少しずつ自分を変えること、そして、「自分ならできる、きっとうまくいく」と思えるこころの状態(self-efficacy:自己効力感)まで自分をもっていくことです。

では、まず、自分を変える5つのステージを見てみましょう。

1つ目のステージ(S):変えようとするつもりもないし、その意識もないとき。

2つ目のステージ(S):変えようかと思っているけど、心の準備がないとき。

3つ目のステージ(S):変えようと思って、その心の準備ができているとき。

4つ目のステージ(S):変えようと取り組み始めて6ケ月以内のとき。

5つ目のステージ(S):変えようと取り組み始めて6ケ月以上のとき。

それぞれのステージ(段階)でどうやったらいいかを考えてみましょう。

1S:本人にその気がないのですから、周りや支援者が、変えようとするその分野の簡単な知識を与えたり、関連の情報、インターネットでの情報収集や、本などを読むことを勧めます。たとえば、運動不足のままでいると、将来どうなるのかを考えてもらいます。逆に、運動するとどう自分が変わるのかをイメージしてもらいます。たとえば、不健康な生活を今のように続けていると、家族や友人との関係がどうなるのかを考えてもらったりします。周りや支援者は、本人が今の行動や習慣を変えないと、将来どうなるのか、引き起こされる結果を丁寧に、でも強制しないように伝えることになります。

もし本人が、少しでも変えてみようかなと思ったとしたら、次のステージを考えてみます。

S:変えようかと思っているけど、心の準備がないときとは、本人が自分の心身の改善について、本やインターネットで情報収集したり、専門家に相談したりする段階です。たとえば、喫煙者が、禁煙しようと決心し、禁煙外来や禁煙グッズなどの利用方法や費用を調べたり、禁煙成功者の体験談を読んだりする時期です。あるいは、ストレスを感じている人が、ストレスマネジメントの方法を学ぶためにセミナーや講座に申し込んだり、本やDVDなどの教材を購入したりする段階です。この段階では、周りや支援者は、具体的な行動が取れるよう支援します。たとえば、運動不足の場合、運動教室や、身近にできる散策コースなどの紹介や、車でなくできるだけ歩いたり、エレベーターでなく階段の利用をそれとなく一緒にしたりします。

Sこの段階では具体的で達成可能な計画を作る段階です。前段階のSやこの段階では、変えるための「動機づけ」が一番大事になります。動機づけとは、自信とやる気を出させることです。動機づけに最も関係するのが、セルフエフィカシー(self-efficacy)です。これは、自己肯定感や自己肯定力と呼ばれています。「自分のことが好き」「自分は価値のある人間で、生きていく価値のある人間」「自分のことを良いところも悪いところもそのまま受け入れられる」「自分は愛される価値もあるし、愛される力もある」と思うことですが、日本の小中高生は、海外の小中高生に比べて、この自己肯定感が低いことが知られています。大人の場合も、海外にくらべて、自己肯定感が高いとは言えないようです。

自信とやる気には、結果予期と効力予期が関係しています。

結果予期(横軸)とは、「この行動を取ったらどうなるかなあ」ということです。たとえば、禁煙するという行動をとったら、自分の健康にプラスになるだろう、との推測(やる気が出る)をすることです。

効力予期(縦軸)とは、「やった方がいいと思うけど、自分にできるかな」というです。たとえば、禁煙した方がいいと分かっているけれど、実際に禁煙できるかなと自分で予測する(自信をもつ)ことで、これは「自己効力(感)」といわれるものです。人が行動を起こしやすいのは、結果予期よりも効力予期が高い方が効果的だと実証されています。

結果予期がプラス+とマイナス-、効力予期がプラス+とマイナス-で、4つの種類があります。

Ⅰ自信もやる気もある

Ⅱ自信がないがやる気はある

Ⅲ自信があるがやる気はない

Ⅳ自信もやる気もない

図には、それぞれの場合、どのような対処が効果的かが示されています。とくに、この中で、Ⅱの自己効力(感)を高めるにはどうしたらいいでしょうか。

「モデリング」、「シェイピング」、「リフレーミング」などの方法があります。

モデリングとは、自分と似たような状況で、そのような人になりたいなと思えるモデルを探し、その人の行動を取入れることや、似たような境遇をもった人の成功体験や問題解決方法をきくことです。

シェイピングとは、できない(変わりたい)行動を、やさしいものから望む行動へと、小さいステップに分けて達成していく(スモールステップ)方法や、段階的にやさしいことから難しいことにチャレンジする(ステップバイステップ)方法があります。

たとえば、子どもへの靴下のはき方をやってみましょう。最初は、こちらではかせてあげてそこから少しだけ引き上げさせます。次に、くるぶしのところまではかせて、そこから上げさせます。次は、つま先まではかせて、そこから引き上げさせます。最終的に、足元に靴下をおき、それをはけるように、小さいステップに分けて習得させます。

また、たとえば、寝たきりで歩けないときは、ベッドを〇度の状態で〇分保持できるようにする。次に、ベッドの上で上半身を起き上がらせて、〇分くらい座っていられる。そして、ベッドに手を置いて立って〇分保持する。つぎに、杖をつかんで立ってみる。そして、杖歩行にチャレンジする。。。。などのステップバイステップの方法があります。このように、自分が変えたい行動を、すぐには完全にできませんので、その行動を小さいステップに分けて達成したり(スモールステップ)、段階的にやさしいことから難しいことにチャレンジする(ステップバイステップ)方法をとれば、難しい行動も少しずつできるようになります。

 リフレーミングとは、視点を変えて、新しい意味づけをすることです。たとえば、仕事で忙しくストレスだらけになっているときに、この仕事は、自分を成長させ新しいスキルを学べるいいチャンスだと、仕事への意味づけを変える(リフレーミング)ことや、あなたを傷つけた人に怒ったときに、これは許しや思いやりを学ぶチャンスだと考えなおす(リフレーミング)ことなどがあげられます。

これらの方法を活用して、小さな達成感や成功体験を積み重ねながら、自己効力感を高め、自分を変えていきます。

S:この段階は、行動を変えることに取り組んでいる状態です。このステージにある人は、行動を変えるために具体的な方法や計画を実践していますが、まだ習慣化されていないため、逆戻りのリスクが高いです。この段階では、周囲からの言葉での励まし、手伝ってくれる人がいるかなと考えたり、一緒にやってくれる人を探したりします。また、ある程度のことができたら、自分にご褒美を与えたり、事前に、周りや家族に「これをやるよ」と宣言することも有効でしょう。運動の場合は、目立つところに運動用のシューズや用具、スポーツウェアなどをおき(刺激コントロール)、気持ちを高めることも役に立つでしょう。

S:この段階では、後戻りの防止を重点的に行います。たとえば、社会的支援(ソーシャルサポート)の強化、変える努力をしている本人へのほめ言葉も効果的です。リラクゼーションやポジティブシンキングなども並行して学んでいきます。

自信回復のための7つ目の習慣「●立ち直るための工夫をする」では、動機づけ、一人で習慣化することが難しいので、周りの家族や友人、施設の支援者の方々など、社会的な支援(ソーシャルサポート)の大切さのお話をしました。「よい習慣づくりには、よき友がだいじ」(日野原重明)です。

 

Sources:

・中央の写真は、カナダ人心理学者アルバート・バンデューラAlbert Bandura(1925年12月4日- - 2021年7月26日)。自己効力感や社会的学習理論で知られている。

「生活習慣病」がわかる本 日野原重明 ごま書房 

Self-Efficacy  Albert Bandura Stanford University 1994 

糖尿病患者のセルフマネジメント教育: エンパワメントと自己効力 安酸史子 メディカ出版

呼吸器疾患患者のセルフマネジメント支援マニュアル 日本呼吸ケア・リハビリテーション学会/日本呼吸理学療法学会/日本呼吸器学会 

・行動変容ステージモデル(厚生労働省)

 

 

 

Mental Health First Aider  (メンタルヘルス=こころの健康実践援助家)より

 


☆★第85回「自信回復7つの習慣~うつ解消・ヘルスマネジメント(心とからだ)技術(その6)」★☆

2022-07-04 12:04:29 | メンタルヘルス

☆★第85回「自信回復7つの習慣~うつ解消・ヘルスマネジメント(心とからだ)技術(その6)」★☆

 

今回の第6の習慣は、「人生あるがままに、でもちょっとだけいいことをする」、です。

人生あるがままに、ちょっとだけいいことをしよう。

Action for Happiness (英語)

あるがままには、「今、この瞬間に注意を払う」ことで、自分のこころの中で何が起こっているかを、判断を加えないで、意識的に、自分の感情や考えを観察すること(マインドフルネス)です。ちょっとだけいいことをするとは、いいことをしたとき、いい気分になることがあるでしょう。その自分の気持ちを拡げていくことです。ここでは、いい気分になることを説明します。

今は、落ちこんでいて、いい気分ではないよ、と言われるかも知れません。このこころの状態をネガティビティ*(negativity:悪い面だけをみるこころの状態)と呼んでいます。ネガティビティのこころの状態にあるときは、考えや気分・感情がそれに支配されて、目の前が先細りになり、まわりのことがなかなか見えてきません。自分との会話(セルフトーク)もなくなり、判断力も弱くなります。その状態から抜け出すことが、とても難しくなります。繰り返しくりかえしその感情や気分が出てくるのでやっかいです。

ネガティビティは、ネガティブな感情(negative emotions)を引き起こします。たとえば、怒り、無視、抑うつなどの気分・感情です。このネガティブな感情は、からだ全体に少しずつ浸透し、あなたのからだ自体を変化させてしまいます。胃の中が煮えたぎり少しずつ潰瘍が進むだけでなく、血圧が上がり、肩や首の筋肉が石のようにカチカチに硬くなります。顔もこわばりひきつります。そうなると、そんな表情や態度のひとを見ると、ほかの人はできれば避けたい気持ちになります。それだけでなく、ご自身は、あたかも目隠しをして丸一日を過ごすことになります。どこを見ても欠点ばかりが目について、腹の立つことばかりです。解決策は見えてきません。すべてに何ひとつ目新しさがなくなります。

反対に、良いことをしたり、されたり、見たり、体験したりしたときは、いい気分になります。いい気分になることを、ポジティビィティ(positivity: 良い面をみるこころの状態)といいます。ポジティビィティは、ネガティビティと違って、良い気分やよい感情をもたらします。たとえば、誰かからいいことをされたことがあるでしょう。そのときには、「感謝」をしますね。その感謝の気持ちが、ポジティビティで、ポジティブ感情の一つです。ひとや誰かに感謝すると、「いい気分」になりませんか。そのときには、悪くて暗い考えが変化して、前向きな気持ちに変わっているでしょう。気持ちだけでなく、考えかたも少し拡がった気がしませんか。

人生で小さなことを楽しもう。ある日、振り返ったら、それらが大きなことだったとわかるかもしれないから。

ロバート・ブロールト**

 

ポジティブな感情をもつと、文字どおりあなたに新しい人生観がもたらされます。すべての緑色植物の成長に、太陽光は欠かせません。植物が太陽光に向かうという向日性は、ひとにもあります。ポジティビィティは、ひとの成長にとって欠かせないものです。わたしたちはこのことを生まれながらに知っています。ひとはみな、ポジティビィティ(良い面をみるこころの状態)の方向へ向かい、自分のこころをできるだけ広げて、考え方やモノの見方を拡大しようとします(ポジティビティの拡張効果)。ただ残念なのは、ポジティビィティはデリケートで壊れやすいもので、その効果は一時的なものだということです。すぐに失われてしまう性質のものなのです。

反対に、ネガティビティ(悪い面だけをみるこころの状態)は、強力なもので長続きもするし、なくなりません。実は、私たちの脳は、良い面よりは、自然と悪い面に集中していく傾向があります。そこで、どうしたらいいでしょうか。

たとえば、よい気持ちになりそうななにかをしましょう。好きな音楽を聞くもよし、楽しいTVや映画をみてもよし、外に出て散策するのもよし、友だちに連絡するのもよいでしょう。ちょっとスマイルしてみましょう。部屋のなかを歩きながら、ポジティブな気分になることを言ってみましょう。ご老人がなにか困っていたら、手助けしてあげましょう。一日のうち、周囲のひとになにか小さくてもいいですから、なにか一つでも、親切なことにチャレンジしてみましょう。

ポジティビティを増やすためには、ポジティブ感情の強さや深さを増やすだけでなく、その感情を味わう回数を増やすことが有効です。ポジティブ感情は、感謝だけではありません。喜び、安らぎ、興味、希望、誇り、おかしさ、感動、畏れ敬う(おそれうやまう)、愛の合計10のポジティブ感情が発見されています。

 

 

10のポジティブ感情

10のポジティブ感情

どんなときに、どんな場所で

そのメリット

喜び joy 

安全で、見慣れた所で、うまくいっている

 いろんなスキルを得られる

感謝 gratitude

自分のために特別になにかしてくれた

 社会的なつながり、愛のスキル

安らぎ serenity

安全で、信頼できる、努力をさほど必要としない

 自分や世界の見方を変えてくれる

興味 interest

安全で、新しい、ミステリアスな(謎めいた)

 知識やエネルギーを得られる

希望 hope

悲惨な環境で

行動と発見

誇り pride

個人的な達成感

更なる達成感へ

おかしさ amusement

まじめじゃない社会的な不調和、

ともに笑う

 友人関係をつくる

感動 inspiration

素晴らしいことに立ち会う

 スキルや徳性を得られる

畏れ敬う awe

規模の大きい偉大さに接する

自分が偉大な者の一部だと感じる

愛 love

安全で、人と人との結びつき

信頼、社会的絆、共同体

ポジティブな感情を生物学的に考えてみます。

私たちのからだには、新しい細胞が古い細胞に代わる新陳代謝という働きがあります。ポジティビティは、新たな細胞の成長を促す一方、ネガティビティは、細胞の劣化を進めることが科学的に証明されています。

最後に、ポジティビティというこころの態度を習慣にするには

・オープンであること

・感謝のこころをもつこと

・好奇心をもつこと

・親切であること

・誠実であること

が必要だと言われています。

次回は、自信回復7つの習慣の最後、第7の習慣「●立ち直るための工夫をする」です。

 

【注】

*ネガティビティのときには、特別なネガティビティのメガネをかけているように、世の中のポジティブなことや明るいことが見えなくなっている(こころのフィルターmental filterがかかっている)。それだけでなく、何でもないことや良い出来事を悪い出来事にすり替えてしまうポジティビティの取上げdisqualifying the positiveや、感情による理由づけemotional reasoningがある(それぞれ認知の誤り)。感情による理由づけとは、たとえば、「私はダメ人間のように感じる。そう感じることが、ダメ人間の証拠だ」とか、「もう何の希望もないように感じる。だから、今の私の問題はまったく解決できない」といったように、今の感情を絶対化して、それを根拠に自分をマイナスに判断してしまうこと。感情は、ある意味で、とらえ方によってかわるということ。とらえ方によるとは、出会ったできごとや考え方をどう解釈するか、ということが分かれば、感情を決めつけないで、ポジティブな感情へ転換することも可能になる。

**ロバート・ブロールト(Robert Brault)(英語)50年以上にわたって、米国の一流雑誌や新聞へ寄稿しているフリーランス作家。彼の言葉はいろんなところで引用されている。

 

【参考】

Barbara Fredrickson (2009) "Positivity: Groundbreaking Research Reveals How to Embrace the Hidden Strength of Positive Emotions, Overcome Negativity, and Thrive"

「ポジティブな人だけがうまくいく3:1の法則」バーバラ・フレドリクソン

「いやな気分よ、さようなら―自分で学ぶ「抑うつ」克服法(増補改訂 第2版)」デビッド・D・バーンズ

Mental Health First Aider  (メンタルヘルス=こころの健康実践援助家)より


☆★第84回「自信回復7つの習慣~うつ解消・ヘルスマネジメント(心とからだ)技術(その5)」★☆

2022-06-23 10:48:05 | メンタルヘルス

☆★第84回「自信回復7つの習慣~うつ解消・ヘルスマネジメント(心とからだ)技術(その5)」★☆

今回は、

「第5の習慣●睡眠の法則を知ってスマートに実践する」です。とても大事な睡眠のお話しです。

 

シェークスピアは、マクベスに、眠りの重要性を語らせています。

「これ以上眠るな!マクベスは眠りを殺した」、との叫び声を聞いたような気がする。

無邪気な眠り、ほつれた不安をほぐして編みなおす眠り、一日のおわりをつげる眠り、疲れ果てたからだを洗い流してくれる眠り、傷ついたこころを慰める眠り、眠りは、自然のなかで最も大事な過程で、人生の楽しみの最大の栄養物だ、、、、

(『マクベス』第二幕第二場より)

 

睡眠には、これまで分かったいろんな法則があります。

特に、ホール博士(Jeffrey C. Hall)、 ロスバシュ博士(Michael Rosbash)、ヤング博士(Michael W. Young) の3人が発見した「体内時計の分子生理学的仕組み」が2017年10月2日にノーベル医学・生理学賞を受賞しました。「体内時計」とは、昼と夜を作り出す1日の体内リズムのことです。これは、サーカディアンリズム(概日(がいじつ)リズム)と言われていますが、バクテリアを含む全ての生物に確認されています。

そこで、睡眠の第1法則は、 

「わたしたちのからだは、24時間数十分(大体一日)周期で、夜眠り、朝起きる」(サーカディアン<概日>リズム)となります。

わたしたちの体の中には時間のリズムを刻む体内時計(生物時計)があります。体内時計は、脳(親時計。視交叉上核)だけでなく、内臓などの臓器や血液、筋肉や皮膚などあらゆる細胞(末梢組織)に子時計があることが分かっています。

体内時計は、24時間数十分周期で、夜眠り、朝起きる、という生体リズムをもっています。24時間数十分なので、概日リズム(大体一日、サーカディアンリズム)と呼ばれています。

夜になると眠くなるという体内時計は、朝・昼・夜の光の変化や食事、運動などによって影響を受けています。この生体リズムが崩れると、こころとからだへの慢性的なストレス、統合失調症、うつ、睡眠障害だけでなく、肥満、糖尿病、高血圧、癌などの発症や疲労の蓄積、肌の荒れなどが起こされていると考えられています。

とくに、光と睡眠の関係は大切で、朝の光がわたしたちの体内時計を毎日リセットする大事な役割を果たしています。また、パソコンやスマホの長時間使用などで、体内時計との不一致があると、いろいろな問題が生じてくるのです。

 

 

睡眠の第2法則、「ひとは目が覚めてから約15間ぐらい後に眠くなるです。

つまり、私たちが朝に起きた時間で、その日の夜の眠る時間が、からだ的には決まっているということです。ですから、いくら早く寝ようと思っても、すでに朝起きた時間によって、眠くなる時間が決まっているので、なかなか眠れないことがあるのです。その日に早く眠りたければ、その日の朝に、早起きしておくことが大切です。

たとえば、朝7時に起きると、眠る時間は7+15=22、午後10時になってしまいます。ですから、午後9時に眠りたければ、その日の朝6時に起きることが必要になります。

翌朝5時に早起きしたければ、その前日の朝に、少し早めに起きて準備をすることが大事です。たとえば、前日の朝6時に起きて、その日は午後9時に寝て、翌朝5時に起きるという作戦をとります。

睡眠の第2法則は、朝起きて日の光を浴びてから約15時間前後で眠りのホルモン「メラトニン」が増えてくることと、私たちの大脳が15時間以上使っていると疲れて眠くなることが原因といわれています。

 

睡眠の第3法則は、「光をうまく利用すると、よい睡眠ができる」です。

先ほど、光と睡眠の関係は大切だと言いました。適当な明るさ(照度)をみると、日中の室内で、昼が300~500ルクス、夜間が500~700ルクス程度(一般家庭の場合)になります。300ルクスは、30W蛍光灯を2灯使用したくらい(八畳間)。500~700ルクス程度は、デパートの売り場くらいの明るさです。 

朝は自然光が入るよう、カーテンを10cmくらい開けておくと、目覚めも良くなります。

蛍光灯やパソコン、スマホ、LED照明には、短い波長の青い光(ブルーライト)が多く含まれ、眠りのホルモン「メラトニン」の分泌を抑制してしまいます。
なので、夜に強い光を浴びたり、スマホやパソコンのブルーライトを見続けると、目から入った光は、体内時計に直接伝えられ、昼間と勘違いされます。体内時計が遅れると、眠くなる時刻が遅くなることが知られています。睡眠の2時間前(遅くとも1時間前)までに、スマホやパソコンを見ないようにし、部屋の照明を暗めにすると、心地よい眠りにつながります。


睡眠の第4法則は、「昼寝をするなら午後3時まで、30分以内で」です。

昼食後から午後3時までの間、30分未満の規則正しい昼寝は、夜間の睡眠に悪い影響をあたえません。それだけでなく、昼間の眠気を解消して、その後の時間をすっきりするのに役立ちます。逆に、午後3時以降の昼寝や30分以上の昼寝は、夜の睡眠に影響して、寝つきを悪くします。30分以上の昼寝は、からだと脳を眠る体制にしてしまい、しっかりとした目覚めを妨げるからです。また、夕食後の居眠りは、いつもの就寝時間に眠れなくなることもあります。

最後に、良い眠りのための方法について、参考にできるガイドラインがあります。これは、国(厚生労働省)が示した12の指針(ガイドライン)です。

 

 

次回は、第6の習慣「●人生あるがままに、でもちょっとだけいいことをする」に進みましょう。

 

【参考】

・「生物時計はなぜリズムを刻むのか」ラッセル・フォスター, レオン・クライツマン 日経BP社

・「食べる時間でこんなに変わる 時間栄養学入門 体内時計が左右する肥満、老化、生活習慣病」柴田重信 ブルーバックス 

・「睡眠と健康」 宮崎総一郎、林光緒 放送大学教育振興会

Mental Health First Aider  (メンタルヘルス=こころの健康実践援助家)より


★☆第83回「自信回復7つの習慣~うつ解消・ヘルスマネジメント(心とからだ)技術(その4)」★☆

2022-06-13 14:43:03 | メンタルヘルス

★☆第83回「自信回復7つの習慣~うつ解消・ヘルスマネジメント(心とからだ)技術(その4)」★☆

 

今回は、「第4の習慣●身体を大事に運動を習慣にする」です。

古代ギリシャの哲学者プラトン(紀元前427-347年)の言葉にあるように、子どもたちには、音楽・文芸だけでなく、体育(運動)の必要性が強調されています。これは、どんな環境の変化に出会っても、健康を保持できるだけの体力とからだを扱うための技術をもち,さらに、身体的な苦痛を伴うつらい鍛練に耐え抜く精神力をもった人間の育成につながる、と考えていたからです。

みなさんのからだと心はつながっています。からだを動かし、行動的になることは、からだの健康によいだけでなく、わたしたち皆をハッピーな気持ちにさせてくれます。運動は、気分をたやすくよくしてくれるし、うつの状態から抜けださせてくれることさえできます。

みんながマラソンをしなければならない、ということではありません。もっと、日常的に運動をすることができるでしょう。アウトドアで過ごしたり、健康な食べ物を食べたり、スマホなどのスイッチを切ったり、十分な睡眠をとったりすることで、わたしたちのウェルビーイング(Well-Being「幸せ・健康」)を高めることができます。

さて、行動的で健康になるには、実際どんな方法があるのでしょうか?

トロントのマイク・エバンス博士は、「健康にとって最も良い一つのことは何でしょう」、と問いかけます。

答えは、「一日のうち、座ったり寝たりする時間を23時間半に制限すること」です。

そのこころは、「一日24時間のうち、30分のウォーキングをすることだけ」です。

 

 

エバンズ博士の科学的研究の結果、30分のウォーキングをすることで、

・膝の関節炎の痛みが47%とれる

・高齢者の認知症やアルツハイマー型認知症の進行が50%防げる

・高リスクの糖尿病患者の進行が58%防げる(他のポジティブな生活習慣の変化と合わせて)

不安が48%低減する

うつの症状が30%改善する

ことが分かりました。

 

さて、別の科学的エビデンスを見てみましょう。

マイケルバブヤック他の研究**は、50歳以上のうつ病(大うつ病性障害)患者156人によって行われました。

運動グループ***、薬物療法グループ****、運動+薬物療法グループと3つのグループがランダムに分けられました。それぞれ4ケ月コースで、運動はエアロビクス、薬物療法では抗うつ薬のセルトラリンが使用されました。4ケ月の研究治療後の6ケ月で症状がどうなるか、を最終評価しています。

4ケ月の治療後は、3つのグループすべてで、重要な改善が見られた(ハミルトンうつ病スケールの少なくとも13→8へ)。しかし、10ケ月後をみると、運動グループは、薬物療法グループや運動+薬物療法グループよりも、うつ病の再発率が有意に低下し、運動によるうつ病症状の緩和効果が大きいことが分かりました(下図を参照のこと)。

このように、運動の習慣、たとえば、少なくとも一日30分以上のウォーキングなどが科学的にその有効性が認められています。

早速、今日から、ウォーキングをはじめましょう。

 次回は、第5の習慣「●睡眠の法則を知ってスマートに実践する」です。

 

【注】

タイトルの左の図は、Action for Happinessから採用した。

*マイク・エバンス博士は、リフレーム・ヘルスラボの創設者。トロント大学准教授等を経て、アップル、スタンフォード大学などの役職を歴 任。健康分野のイノベーター受賞歴多数。医師。

博士のyoutubeビデオは欧米では有名で、合計1000万回以上(運動のビデオは648万回以上)の再生実績あり。youtubeの「設定>字幕>自動翻訳>日本語」にすると、日本語の字幕でも視聴できる。

**マイケル・バビヤック他の研究は、Exercise Treatment for Major Depression: Maintenance of Therapeutic Benefit at 10 Months

***運動は、一週間に3セッション(連続16週間)のトレーナーによるエアロビクス実習。1セッションは、10分間のウォームアップ後、30分間の活発で集中的なウォーキング/ジョギング。脈拍は、最大脈拍数の70-85%以内に収まるように。その後5分間のクールダウンで終了。

****薬物療法は、(Sertraline)の服用。精神科医が、2、 6、 10、 14 そして16週目に面談後、50mgから最大200mgの投与がなされる。セルトラリンは、選択的セロトニン再取り込み阻害薬 (SSRI) と呼ばれる抗うつ薬の一つ。日本での商品名は、ジェイゾロフト。

 

 

 

Mental Health First Aider  (メンタルヘルス=こころの健康実践援助家)より 

 


★☆第82回「自信回復7つの習慣~うつ解消・ヘルスマネジメント(心とからだ)技術(その3)」★☆

2022-06-09 14:42:28 | メンタルヘルス

★☆第82回「自信回復7つの習慣~うつ解消・ヘルスマネジメント(心とからだ)技術(その3)」★☆

 

自信回復7つの習慣のうち、

「第1の習慣●ものごとを分けて、心配ごとを減らす」では、ACTなどの新世代認知行動療法を、「第2の習慣●変えることができなければ、自分が変わりなさい」では、レジリエンス・トレーニングのお話しをしました。

さて第3の習慣では、「気分をよくする食事をとる」です。

これまでは、からだやこころをコントロールするのは、脳だという時代がありましたが、近年、腸(gut)の研究が進展したおかげで、人のからだやこころは、腸と脳という軸*で理解する考え方の時代に入っています。

つまり、恐れや不安などの情動(emotion)や気分(mood)は、腸の中にある微生物(ビフィズス菌や乳酸菌などの腸内細菌)の影響が強く、その腸内細菌**が脳にも一定の強い影響を与えている、ということです。

言い換えると、からだに良い影響を与える腸内の善玉菌が増え、腸内の環境が良くなると、脳に良い影響を与え、うつ病などのこころの不調が改善して、ハッピーな気分になる、ということです。

さて、腸内環境を良くするには、5大栄養素***だけでなく、食物繊維やファイトケミカル(7大栄養素)などを摂ることで、「善玉菌」が活動しやすい腸内環境になることが科学的に証明されています。

具体的な食事療法****を行って、こころの不調が改善した例をご紹介します。

豪州メルボルンでなされたSMILES実験での食事療法は、中等症から重症のうつ病患者を対象に、修正版地中海料理を使ったものです。世界初のランダム化比較試験(RCT、質が高く根拠ある科学的研究手法)で、食事療法グループの32%は、うつ病の寛解が見られました。つまり、うつ病が完全に消失したのです!(詳細は、最後の注および文献を参照してください)

さて、実験で使われた地中海料理とは?具体的な食べものはどうなっているのでしょうか。

一つずつ、図の下の食べものから、説明しましょう。

 

【全粒穀物(全粒パン、玄米、シリアル】

食事の基本です。必要に応じて、一日5-8回。一回分は、たとえば、全粒パン一切れ、あるいは、調理済みの穀粒1/2カップ(玄米、オーツ麦、全粒パン、全粒パスタなど)、あるいは、オーツ麦1/4カップ、あるいは、ライ麦または小麦で作った薄いかりかりのクリスプ・クラッカービスケット3枚

 

【野菜と果物】

野菜は、一日6回自由に。一回分は、調理済みの野菜1/2カップ。たとえば、スイートポテト、キャベツ、ニンジン、山の芋、セロリ、玉ねぎ、あるいは、葉の多い緑色野菜1カップ、あるいは、トマト1個(75g-100g)

フレッシュな果物一日3回、。一回分は、150g、リンゴ・西洋梨・オレンジ・バナナ・メロンの中型一個。キューウィーフルーツとぶどうなど小型の果物2つ、あるいは、30gのドライフルーツ。

 

【乳製品】

一日2-3回で低脂肪のもの。一回分は、ミルク1カップ、あるいは、200gのヨーグルト、あるいは、40gのチーズ、あるいは、120gのリコッタ(イタリア産の柔らかい無塩の白チーズ)

 

【オリーブ油】

エクストラバージンオリーブオイル(オリーブの実をしぼっただけの精製されていないオイル)一日一回、テーブルスプーン(大さじ)3杯、あるいは、60ml

 

【ナッツ類】

未加工で、塩なし味付けなしを一日一回。一にぎり、あるいは、30gのナッツ(アーモンドとクルミ)、あるいは、30gの種、あるいは、30gのナッツバター(大さじ2杯)

 

【マメ科植物】

一週間に3-4回。一回分は、マメ科植物1/2カップ(ひら豆、ひよこ豆、いんげん豆)、あるいは、75gのホムス(ヒヨコマメを裏ごししてペースト状にした中東料理)、あるいは、100gの豆腐

 

【赤身の肉】

赤身のあるいは見た目で脂肪をなしの肉を一週間に3-4回。一回分は、手のひらサイズの赤身の肉、あるいは、65-100gの肉、あるいは、1/2カップのひき肉、あるいは、2つの小さなチョップ(骨付き切り身)

 

【魚】

脂っこい魚(イワシ、ニシン、サーモン、マス、サバなど)を少なくとも一週間に2回。一回分は、100gの調理ずみの魚、あるいは、95gの缶詰

 

【鳥類の家畜(鶏肉、鴨肉、七面鳥の肉)

皮なしで一週間に2-3回一回分は、手のひらサイズ、あるいは、80-100gの鶏肉、七面鳥か鴨肉

 

【卵】

一週間に6回まで一回分は、60gの卵(卵1個分)

 

【エクストラ(追加のなにか)】

一週間に3回まで。一回分は、デザート1個、あるいは、砂糖入りの飲み物で小瓶・小サイズの缶1本、あるいは、ポテトチップス小袋一個。

 

SMILESの食事療法は、栄養学の専門家とソーシャルサポート(Befriending protocol:ビフレンディング治療プログラム=食事療法と同じ訪問時間と長さで専門のビフレンダーによって実施。スポーツやニュース、音楽などのトピックを話し合ったり、カードやボードゲームを一緒にしたりと、通常の精神/心理療法ではない方法を採用)でなされたものです。このようなサポート環境にないとしても、食事療法の効果は筆者も立証ずみですので、チャレンジしてみることは大事だ、と思います。

なお、納豆や漬物、ヨーグルト、味噌、醤油といった発酵食品は、腸内環境を整える作用があります。腸内の善玉菌の増加と、悪玉菌を抑制する働きを持っています。

 

最後に、参考までに、うつの人だけでなく、万人に勧められる「健康的な食事プレート」を載せておきます。

「健康的な食事プレート」はハーバード公衆衛生大学院の栄養学専門家とハーバードヘルス出版の編集者たちによって作られたもので、健康的でバランスのとれた食事をするための手引となっています。

 

地中海料理との共通点も多くあります。

 

次回は、食事とともに、とっても大事な「第4の習慣●身体を大事に運動を習慣にする」のお話しです。

 

*腸脳軸(gut-brain axis)あるいは、腸脳連繋(gut-brain connection; 腸脳相関、脳腸相関)と呼ばれている。

**腸内細菌には「善玉菌」「悪玉菌」「日和見菌(ひよりみきん)」の3種類があり、

善玉菌は消化吸収の補助や免疫刺激など、健康維持や老化防止などへ影響がある菌で、代表的な菌にはビフィズス菌や乳酸菌がある。反対に、悪玉菌はからだに悪い影響を及ぼすとされ、代表的な菌にはウェルシュ菌・ブドウ球菌・大腸菌の有毒株があり、また日和見菌は健康なときはおとなしくしているが、からだが弱ったりすると腸内で悪い働きをする(日和見菌感染症の発症)菌のこと。

***栄養素とは、人などが栄養のために身体の外から取り入れる食品などの物質のこと。炭水化物、脂質、たんぱく質、ビタミン、ミネラルの5つが5大栄養素、植物繊維を入れて6大栄養素、ファイトケミカルを入れて7大栄養素と言われている。

第6の栄養素「食物繊維」は主に穀物(玄米、胚芽米など)、芋(さつまいも、里いも、こんにゃく)、豆(大豆、うずら豆、あずき、納豆、おから)、野菜(ごぼう、ふき、セロリ、アスパラガス、キャベツ、白菜など)、果物(みかん、グレープフルーツ、バナナなど)、きのこ(しいたけ、しめじ、えのき)、海藻(わかめ、寒天、ところ天)に含まれている。

第7の栄養素「ファイトケミカル」は、ブルーベリー、ぶどう、大豆、セロリ、パセリ、ピーマン、緑茶、果実類、カカオ、ブロッコリーやタマネギに含まれている。[ポリフェノール]。

また、ニンジン、カボチャ、トマト、ミカン、ホウレンソウ、スイカ、ブロッコリー、カボチャ、トウモロコシ、モモなど に含まれている。[カロテノイド] 

****SMILES実験は、2012年10月-2015年7月に豪州メルボルンで実施された、世界初のランダム化比較試験(RCT、質が高く根拠ある科学的研究手法)である。参加者67人のうつ病(大うつ病性障害)患者を、食事療法グループ33名と非食事療法グループ34名に分けた。介入実験の12週間後、食事療法グループは、非食事療法グループに比べて、うつ病の改善が見られた。食事療法グループの32%は、うつ病の寛解が見られた。つまり、うつ病が完全に消失した。

 

 

 

 

Mental Health First Aider  (メンタルヘルス=こころの健康実践援助家)より 

 

 

 


★☆第81回「自信回復7つの習慣~うつ解消・ヘルスマネジメント(心とからだ)技術(その2)」★☆

2022-06-08 09:57:11 | メンタルヘルス

★☆第81回「自信回復7つの習慣~うつ解消・ヘルスマネジメント(心とからだ)技術(その2)」★☆

自信回復7つの習慣の2回目は、「第2の習慣●変えることができなければ、自分が変わりなさい」です。

わたしたちは、人生の中で、ストレスや失望、失敗などさまざまな辛い時期があります。そのような困難にどのように立ち向かったらいいのでしょう。これはわたしたちのウェルビーング(Well-Being「幸せ・健康」)に大きな課題となっています。自分に起こることをわたしたちには選ぶことができないのが普通ですが、起こることにどう対処するかは、選ぶことができます。

現実では、その対処の仕方はなかなかやさしいものではありませんが、最近のすぐれた研究知見の一つとして、レジリエンスを学ぶことができます。

レジリエンスとは、逆境をはね返す力、回復力とかの意味ですが、イメージとしては、強風にも折れることなくしなやかに耐える樹木の姿や、落ちても弾んで戻ってくるボールのイメージを思いえがくと分かりやすいかもしれません。

「第2の習慣●変えることができなければ、自分が変わりなさい」の言葉は、米のマヤ・アンジェロウ*から引用したものです。

『それが好きでないときにすべきことは、それを変えることです。もし、変えることができなければ、あなたの考え方を変えることです。不満を言ってはいけません』

また、精神科医のヴィクトール・E・フランクル**は、「生きる意味」を求めて悩み苦しむ人々を援助し続けてきました。彼は、こう言っています。

『人間からすべてのものを奪うことはできる。ただ一つのことをのぞいて。それは、人間の自由の最後のもの―与えられたどのような環境においても自分の態度を選ぶ自由、自分自身の道を選ぶ自由だ。』(夜と霧<(Man's Search for Meaning>)

いずれも、ものごとはいろんな困難があるけれども、主体的に自分を変えていくことで、それを実現するということです。

さて、逆境をはね返す力(レジリエンス)をもつ、しなやかで強い自分に変えるにはどうしたらいいのでしょう。

代表的なレジリエンストレーニングに、ポジティブ心理学のマーティン・セリグマン博士のペン・レジリエンシー・プログラム(PRP)がありますが、その情報は本や研修に譲ることとして、ここでは、レジリエンスをどう育むかについて、オーストラリアの子ども向けのプログラム***を紹介します。もともと、レジリエンスは、発達心理学を中心に発展してきたものですが、子ども向けも大人向けも基本は同じだと思います。支援する側のやり方を、大人の自分に置き換えて、どうすれば自分のレジリエンスを高めていけばいいかを、自ら考え、工夫して、セルフケアを実行することも一つの方法でしょう。

レジリエンスを考える場合、まず、苦難や逆境を避けたり、失くすことが大事だという議論があります。現実の世界を考えると、そう考えるより、苦難や逆境を経験したときに、それをどうやって克服するか、つまりレジリエンスをいかに育むか、がより重要だと考えます。

レジリエンスを育む要因として考えられるのは、本人とそれを取り巻く環境とに分けられます。本人では、本人自身の苦難や逆境に対応する力や健康的な考え方の習慣をつけること。環境面では、家庭や一定のコミュニティなど社会的要因があります。つまり、両親の効果的な育児法や兄弟姉妹などの家庭内関係や愛着を高めること。学校・隣人・友達・同僚などの一定のコミュニティ内でのポジティブな関係促進。そして、マスメディアや政治経済環境、立法、社会文化的価値などの社会的要因です。

そこで、レジリエンスの育み方の枠組みを、図に示しました。5つの鍵があります。

 

1.レジリエンス教育、2.支援関係を作り、強化し、促進する、3.自主性と責任感にフォーカスする、4. 感情をうまく処理させる、5.個人でチャレンジする機会を作る、の5つです。

以下、一つずつ分かりやすく説明します。

1.レジリエンス教育

まず、あなたがパイロットだと想定します。飛行中に、当初の予想に反して、かなり天候が悪くなりました。目的地まで安全に到着するために、どのように飛行機を操縦するかをイメージしましょう。

どのくらい悪い天候が続くのか、どのくらい長く過酷な状況が続くのか、これらの判断は、パイロットの自分だけではどうにもならないでしょう。この悪天候で、副操縦士や客室乗務員、地上クルーの支援なしでは、目的地まで安全に到着することはできません。副操縦士、客室乗務員、地上クルーは、両親や兄弟姉妹、おじおば、近隣の人・友人・同僚、親戚、学校の先生や健康支援の専門家などに当たります。

レジリエンスとは、

・自分や環境(家庭内の関係性など)とそれらの相互作用が絡んだダイナミックなプロセスを通して発展されるもの。

・時が経つにつれて変わるもの。

・現在の苦難や逆境経験を扱う、あるいは将来の苦難や逆境経験に準備できる、誰もが学ぶことができるもの。

・家族や文化的背景、幅広いコミュニティを含むさまざまな場所で、違ったように見えるもの、です。

個人がもっていたり、もたなかったりするものではありませんし、個人のスキルや能力だけに限ったものでもありません。もちろん、生まれつきのものでもありませんし、遺伝的なものでもありません。ネガティブな感情から解き放されたものでもありません。

このことを肝に銘じましょう。

さて、レジリエンスを育む日常的な方法として、4つの具体策があります。

2.支援関係を作り、強化し、促進する

・レジリエンスを育む基礎になるのは、子どもとの質の高い関係性づくりです。読書したり、映画などを見て、困難な時を経験した主人公について、「あなたならどう感じるの」、というように、エンパシー(共感)を経験する機会を与えましょう。

・ソーシャルスキルを改善するため、まだ会ってない友人・知人に会う機会をつくったり、子どもの友達と一緒にゲームをしたり、なにか一緒の課題を解決するようにセッティングしましょう。

・「これはちょっと難しいかも知れないけど、チャレンジすることはいいことよ」と、子どもがなにかにチャレンジするように、促します。 

3.自主性と責任感にフォーカスする

・当人が困難に直面しているときに、「どう対処するの、どんなやり方をするの」、と話しかけます。

・たとえば、部屋の整理をどうするかや誰かのお祝いをどうするかなど計画を立てさせ、当人自身に決めさせるようにします。

・「何か心配はないの」など積極的に子どもにたずねる。なにか課題を考え、課題を解決する機会を作って、複数の友達といろんなアイデアを出し合うようにさせます。 

4. 感情をうまく処理させる

レジリエントな人になるということは、いつも気持ちがよいことでも感情を表に出さないことでもありません。健康的でポジティブな方法で、感情をうまく処理させることができる人です。

・悩んでたり苦しんでいたりしているときに、「悲しんでいることが分かるよ、泣いてもいいよ」と、当人が抱くその時の感情を認めるようにします。

・たとえば、プレゼンテーションのことを心配しているときは、家族で、静かな所で、一緒に練習し自信をつけさせます。

・ときどき、「今日起きた最もいいことは?」「今日かなりしんどかったことは何だっけ?」と話しかけます。これは、当人の感情を認めさせたり、感情をはっきりと表現させる学びとなるだけでなく、課題解決のスキルや対処法を発展させる良い機会になります。

・マインドフルネス、呼吸法などのリラックス法を日々の生活に取り入れます。

5.個人でチャレンジする機会を作る

・「日常の」苦難、たとえば、雨の日にぬかるみを歩かせたり、やったことのない料理を作らせたり、野外でのゲーム感覚での迷路体験などがあります。

・「健全なリスク」体験を推奨します。健全なリスク体験とは、たとえば、やりたいなあと興味があるけれでもやったことのないことで、スポーツの体験、ダンス、演劇クラブへの参加やオリエンテーリング、キャンプなどへの参加があります。

これまでの自分の生活習慣を変えることはなかなか難しいですが、困難を乗り越えられる、しなやかな自分になりたいと思うなら、もう一つ踏み込んで、日常的に小さな決心を積み重ねて、新しいことにひとつずつチャレンジすれば、気分も変わって自信も取り戻し、なにか違う別の日常がみえてくるはずです。

次回は、第3の習慣「気分をよくする食事をとる」です。食事は、とても大事ですよ。

 

【注】

*マヤ・アンジェロウMaya Angelou (1928~2014)アメリカを代表する黒人女性詩人、作家、公民権運動家。

**ヴィクトール・エミール・フランクル (1905~1997)、オーストリアの精神科医、心理学者

***オーストラリアの子ども向けのプログラムは、Beyond BlueBuilding resilience in children aged 0–12: A practice guide (英語)より採用した。Beyond Blue(有限責任保証会社)は豪州の代表的なメンタルヘルス支援機関で、300万人のオーストラリア人の不安・うつ・自殺への情報や学習機会の提供を行っている。

 

Mental Health First Aider  (メンタルヘルス=こころの健康実践援助家)より 


☆☆第80 回「自信回復7つの習慣~うつ解消・ヘルスマネジメント(心とからだ)技術(その1)」★☆

2022-02-24 15:10:16 | メンタルヘルス

☆☆第80 回「自信回復7つの習慣~うつ解消・ヘルスマネジメント(心とからだ)技術(その1)」★☆

 

さて、コロナも3年目に突入しました。

もし、あなたが今落ちこんだ気持ちをもっていたら、今回以降の話はお役に立てるかもしれません。落ちこんだ気持ちやうつなどの気分や感情を追いはらいたい、こころや身体を健康に保って、心身ともにヘルシーな自分にしたいなと思った人は、ぜひお読みください。

さてヘルシーな自分にするには、どうしたらよいでしょうか。今までの習慣を、エビデンス(科学的根拠)に基づいた生活習慣に変えれば、それが可能になります。

ウェルビーイング(Well-Being「幸せ・健康」)の先進国オーストラリアのメンタルヘルス・ファーストエイド(MHFA)のセミナー*および最新の栄養理論**(Food&Mood「食べ物と気分」)、これまでの科学的エビデンスをもとに、幸せな健康生活を組み立てていきます。

 

「自信回復7つの習慣」とは、

第1の習慣●ものごとを分けて、心配ごとを減らす

第2の習慣●変えることができなければ、自分が変わりなさい

第3の習慣●気分をよくする食事をとる

第4の習慣●身体を大事に運動を習慣にする

第5の習慣●睡眠の法則を知ってスマートに実践する

第6の習慣●人生あるがままに、でもちょっとだけいいことをする

第7の習慣●立ち直るための工夫をする

です。

 

第1と第2の習慣では、心配ごとを減らす工夫を、第3と第4、第5の習慣ではこころに影響を与えている食事、運動、睡眠の最新知見を探検し、第6の習慣では、幸せの健康生活の具体的な行動を、最後の第7の習慣では、すべての習慣を無理なく続けるにはどうしたらよいかについて、さまざまな知恵を絞ります。

ではさっそく、「第一の習慣●ものごとを分けて、心配ごとを減らす」に行きましょう。

ものごとを分けるには、①自分のできることとできないことを分ける、②自分の思いをちょっと遠くから離れてながめてみる、ことです。

 

①自分のできることとできないことを分ける

タイトルの右側の絵をご覧ください。円の外側に、「自分ではどうにもコントロールできないこと'I CANNOT CONTROL'」を書きだします。

たとえば、病気・災害・コロナの流行、他人の行動や幸福、将来の予測、ガソリンの価格、この状況がどのくらい続くだろう、他人がどう反応するか、などです。これは、自分ではどうにもコントロール(調整)できません。

「自分ではどうにもコントロールできないこと」の場合、「自分はこれらのことをそのままにして、ほおっておきます。'So, I can LET GO of these things'」

つぎに、「自分でコントロールできること'I CAN CONTROL'」を書きだします。

たとえば、マスク・手洗い・3密回避、ソーシャルディスタンスを自分で保とう、テレビやSNSの利用を制限しよう、家で面白いことを見つけよう、どのように他人に接するか、などです。これは自分でコントロール(調整)しようと思えば、できます。

「自分でコントロールできること」ですので、「自分はこれらのことに集中します。'I will focus on these things」

自分でコントロールできることとできないことを分けて、できることに専念すると、心配ごとが減ってきます。

 

②自分の思いをちょっと離れてながめてみる

何かに失敗して、「自分はダメだ」と思うことがあるでしょう。そのときに、「自分はダメだと本当に信じてますか?」と自分に問いかけます。そうすると、「そうでもないね、他人が言ってるだけじゃない?」、「今はダメかもしれないけど、ダメでなかったときもあるよ」、もしかしたら「自分はダメだと思ってるだけ」かもしれない。

そうです。わたしたちは、しばしば、「自分の(ダメだという)思い」と「自分が直接経験してきた世界」をくっつけて、混同してしまいがちです。生れてから、少しづつ言葉を学んできて、直接経験した世界とは別の世界、つまり「言葉の世界」にとらわれてしまいます。「自分の思い」と「直接経験してきた世界」の差があまりなくなってしまい、疑問ももたず、自動的に、「自分はダメ」な人間だと思ってしまうのです。

そこで、こう考えます。

「自分がダメだと思っている」んだなあ。いいや、「自分がダメだと思っている自分がいるんだなあ」と、自分を遠くからはなれてみる自分に気づくことができるでしょう。

 

具体的な方法としては、「言葉のくりかえし」や「葉っぱに思いをのせて流す」などがあります。

「言葉のくりかえし」は、たとえば、「自分はダメだ」という言葉に、身体やこころが異常反応する場合、「ダメ、ダメ、ダメ、ダメ、、、、、」と早口で声に出したり、わざとゆっくり「ダ~メ、ダ~メ、ダ~メ、、、、、」と大きな声で繰り返します。つぎに、「ダメ」の当て字を漢字で考えたり、ダジャレを言います。たとえば、「駄飴(だあめ)」とか「だあ~れ?」など、すこしふざけて、ダメという言葉に自分を慣れさせます。いろいろな言葉を口にだして、笑いがでてきたらこちらのものです。

「葉っぱに思いをのせて流す」は、座ってもいいしベッドに横になってもいいし、リラックスした姿勢をとります。そして、目を閉じます。小さい頃に遊んだ川があれば、その川原に座って川を眺める自分をイメージします。その川に葉っぱが流れてきます。一枚、二枚、三枚と。自分が今考えていることや感じていることを、その流れてくる葉っぱにのせます。幸せなことでも悲しいことでも、ポジティブなことでもネガティブなことでも、その思いをその葉っぱにのせます。いろいろな思いを葉っぱにのせ続けます。もし、その川を流れる葉っぱのイメージが途切れたり、いろんな思いが乱されたり、思いが出てこなくなったりしたときは、最初のリラックスした状態に戻り、初めからやり直します。

たとえば、「自分はダメな人間だ」→葉っぱにのせる、「どうしてなんだろう」→葉っぱにのせる、「でもそんなに駄目じゃないよな」→葉っぱにのせる、「何でこんなこと考えてるんだろう」→葉っぱにのせる、「無駄じゃないの」→葉っぱにのせる、、、、、、。

5分前後やってみるのがいいでしょう。川の自然な流れに、葉っぱが流れていくのをただ眺めます。

すこしこころが軽くなりませんか。

次回は、「第二の習慣●変えることができなければ、自分が変わりなさい」です。

 

【Note注】

*メンタルヘルス・ファーストエイド(MHFA)のセミナー*(2021年10月8日開催facilitated by Dr. Michael Carr-Gregg)

** 最新の栄養理論(Food&Mood「食べ物と気分」)は、

The Food & Mood Centre at Deakin University(英語) 

【参考】

Russell Harris (2006), Embracing Your Demons: an Overview of Acceptance and 

 Commitment Therapy, Psychotherapy in Australia, Vol.12 No4, pp.2-8

Russell Harris (2011), The Confidence Gap: A Guide to Overcoming Fear and Self-Doubt,  Trumpeter

ラス・ハリス(2021)『自信がなくても行動すれば自信はあとからついてくる ――マインドフルネスと心理療法ACTで人生が変わる』筑摩書房

Mental Health First Aider (メンタルヘルス=こころの健康実践援助家)より


☆☆第79回「自信をなくした人へ~心理療法で実際に回復したお話(その3)」★☆

2021-01-02 16:37:14 | メンタルヘルス

☆☆第79回「自信をなくした人へ~心理療法で実際に回復したお話(その3)」★☆

 

前回の2番目の方法では、小さい頃から形作られた自分、将来、周囲への否定的な考え方のことをスキーマ(抑うつ/不安スキーマ)と呼びました。この深層にある思い込み(抑うつ/不安スキーマ)が、大人になったときに、その思い込みと同じような出来事に出くわすとその深層の思い込み(スキーマ)が刺激され、活性化されて、自信をなくし、うつや不安に陥るとの考え方(領域一致の仮説)を解説しました。

たとえば、小さいときから、「自分は出来が悪い」というスキーマをもった人が、大人になって失敗すると、そのスキーマが活性化され、「やっぱり自分はそうなんだ」と自信をなくし、うつや不安になる、ことが知られています。

 

さて、このスキーマをより詳しく調べていきましょう。

18のスキーマをここでは、すべてを解説はしませんが、「自信」と関係ありそうなスキーマをピックアップしましょう。

 

「C他者への追従」、「D過剰警戒と抑制」と「E制約の欠如」が関係ありそうです。

 

「C他者への追従」とは、自分の欲求よりも他人の欲求を満たそうとすることで、自分よりも他人を重視します。こどもの頃から、自分の中に自然と生じる欲求に従うのではなく、親の愛情や承認を得るために、自分の中にある大切な面を抑えてきた人たちです。とくに、他人から評価されたり、承認されたり、注目されたりすることに、過度にとらわれており、しっかりした自己感覚を育ててこなかった人々です。地位、外見、経済力、業績にひどくこだわり、「評価と承認の希求スキーマ」をもつことになります。

 

「D過剰警戒と抑制」とは、自分自身の行いに対して厳格なルールをもっている人たちです。厳格で、抑圧的な家庭に育ち、自然な感情、幸福感やリラックス、健康といったことを犠牲にして、ルールを守るために日々の生活、仕事を行っている人たちです。子どもの頃、遊びを楽しむことなく、始終警戒し注意深くしていた人たちです。完璧主義や業績を上げることに没頭したり、厳格な基準と”~すべき”ことを求める、「厳密な基準/過度の批判スキーマ」をもつ人たちです。また、失敗した人は厳しく罰せられるべきであるという信念をもち、自分の期待や基準に見合わない人に対して、イライラしたり、怒りを感じたり、罰を与えるべきと考えます。自分の失敗も他人の過失も許すことができず、他者の気持ちに共感することができないタイプです。これは「罰スキーマ」となります。

 

Dのスキーマとは真逆なのが、「E制約の欠如」です。

小さい頃に甘やかされた家庭に育ち、自己中心的で、無責任で、自己愛的な人たちです。他人の権利を尊重したり、他者と協力したり、約束を守ることができない人々です。子供のとき、誰もが従うべきルールを守ったり、他人を配慮することがなく、自己制御についてのしつけを受けていません。自分が他人より優れており、特権と名誉を与えられていると信じている人たちです。成功者、著名人になることやお金持ちの人間になることに過剰な関心を抱いている人たちで、「権利要求/尊大スキーマ」をもつことになります。

 

これらの深層の思い込み(スキーマ)が幼少期に形成され、大人になってからも、そのスキーマに服従したり、回避したり、過剰補償したりして、自分の生活を生き抜いてきたのです。

 

服従とは、そのスキーマを真実であると認め、スキーマのいいなりになることで、たとえば、「評価と承認の希求スキーマ」では、自分のことを相手に印象付けるためにもっぱら振る舞うことで、「厳密な基準/過度の批判スキーマ」では、多くの時間を割いて完璧であろうとし、「権利要求/尊大スキーマ」では、自分の業績を自慢することなどがあげられます。

 

回避とは、そのようなスキーマがあたかもないように振る舞い、自らそのスキーマに気づかないように、注意深く生活し、スキーマが活性化しないように無意識的に生きていきます。たとえば、「評価と承認の希求スキーマ」では、この人に良く思われたいという人たちとの交流をさける。「厳密な基準/過度の批判スキーマ」では、成果が評価されるような場面を避け、「権利要求/尊大スキーマ」では、自分が優位性を発揮できない状況や自分が普通の人となる状況を避ける、ことになります。

過剰補償とは、そのスキーマと正反対のことをしてスキーマと闘うことで、たとえば、「評価と承認の希求スキーマ」では、できるだけ目立たないようにしたり、他人から批判されそうなことばかりし、「厳密な基準/過度の批判スキーマ」では、規範を無視したり不注意にあるいは大急ぎで取り組みます。「権利要求/尊大スキーマ」では、極端に下手にでたり、他人の要求に応じてばかりすることになります。

 

自分の胸に手を当ててみると、そうそうだ、といったことが思い当るかもしれません。

 

これらの深層の思い込み(スキーマ)は、そのとき、つまり、幼少期や思春期にはそれなりの意味があったはずです。そのときに、生きるために必要なことでもあったわけです。ところが、大人になって、周りの状況も環境も変わっているのに、深層の思い込み(スキーマ)は、当時のままで、なかなか気づかないまま、ここまで来てしまったのです。

 

今、自信がなくなったことと、幼少期からもっていて、今まで気づかなかった深層の思い込み(スキーマ)との関連を考えます。そうすると、自信喪失の深~い理由が、絡まった糸をほぐすように、すこしずつ分かってきます。

深層の思い込み(スキーマ)が分かっただけでも、自信喪失のひとつの原因が分かり、そこから生じてくる、表面的な考え方(表層ビリーフ、自動思考、不合理な考え方、否定的な考え方)の間違いが分かり、それに気づくことで、自分でその間違いを修正することができます。

 

[注γ]

【参考】スキーマ療法 (ジェフリー・E・ヤング)

Mental Health First Aider (メンタルヘルス=こころの健康実践援助家)より


☆☆第78回「自信をなくした人へ~心理療法で実際に回復したお話(その2)」★☆

2021-01-02 16:26:25 | メンタルヘルス

☆☆第78回「自信をなくした人へ~心理療法で実際に回復したお話(その2)」★☆

さて、前回の方法では、まだまだ自信が回復しないよ、という方々には、2つ目の方法を検討してみましょう。

 

はっきりしたきっかけがないか、いろいろなきっかけが混ざり合ってはっきりしないけれども、自分自身、自分を取り巻く世界(経験)や自分の将来について、否定的なビリーフ(考え方、解釈の仕方、意味づけ、認知の仕方)が現れる場合です。これは、自分は不完全で、人から拒絶されていると思ったり、自分を取り巻く世界には克服できない障害があると思ったり、今後、困難や苦悩はずっと続いていくので、自分はきっと失敗するだろう、と考えるもので、このようなネガティブな考え方によって、自信を失うというものです。

 

否定的な考え方(ビリーフ)は、前回[α]で取り上げた「不合理なビリーフ」に似たところがありますが、この方法では、ビリーフを表層と深層の2層に分けて考えます。表面的なビリーフと深く自分のこころに巣くっているビリーフの2種類です。表面的なビリーフとは、失敗した(きっかけ)⇒この仕事・課題は難しい、自分には無理だ、といったように、あるきっかけで頭の中に浮かぶ考えやイメージのことで、深く考えるまでもなく半ば自動的に起きるビリーフです。

 

2つ目のビリーフは、1番目のビリーフを形作っているもので、深く自分のこころに巣くっていて、普段の生活ではなかなか見つからないビリーフのことで、深層にある思い込みで、「スキーマ」といいます。小さい頃から形作られた自分、将来、周囲への否定的な考え方(ビリーフ)のことです。この深層にある思い込み(スキーマ)が、大人になったときに、その思い込みと同じような出来事に出くわすとその深層の思い込み(スキーマ)が刺激され、活性化されて、自信をなくし、うつや不安に陥ることが知られています。

 

深層にある思い込み(スキーマ)からは、いろいろな先入観(推論の誤り、認知の誤謬)が作用し、表面的な考え(表層ビリーフ。自動思考)に大きく影響を与えます。

 

いろいろな先入観(推論の誤り)とは、たとえば、

・成功か失敗か、つまり、成功しなければ、自分は失敗者だという「全か無かの考え方」

・現実的にありそうな可能性を見ずに、否定的な予想をして、「私はこんなに自信をなくしている。今後も、物事がうまくいくことはないだろう」といった、「運命の先読み(破局観)」、

・業績を悪化させた。自分はダメ人間だという「誤ったレッテル貼り」

・自分の短所や失敗を拡大ししたり、逆に自分の長所や成功を過小評価する「拡大視・微小視」

・この仕事でうまくいかなかったから、結局自分には仕事をうまくやることができないといった「過度の一般化」

・自分が何かへまをしたから、上司の態度が変わったんだと、理由もなく、他のありそうな見方を考えずに、自分のせいだと思いこむ「自己関連付け」

・こんなに評価が低いということは、自分の仕事全体がどうしようもなくひどかった、というように、良いことも悪いことも実際は起きているのに、否定的な面だけを取り上げる「心のフィルター(選択的抽出)」

・ミスをしてしまった。自分は常にベストを尽くさなくてならないのに、という「ねばならない思考」、などなど、

自分自身では気がつかないけれど、現実の仕事や生活で、知らず知らず思い込んでいる、間違った判断の枠組みのことです。

 

実際にこの方法をどう活用したらよいでしょうか。

 

まず、どんな状況がいつ自分に問題になっているか、そしてその時に頭にある考えは、何だろうか?、その時の気分は?、と表面的な考え(表層ビリーフ。自動思考)をモニタリング(観察・記録)します。表面的な考え(自動思考)は、本当に、自動的に一瞬に通り過ぎていくものですから、しっかり、モニタリングします。

つぎに、その表面的な考えが正しいと思う根拠や理由を探します。同時に、その表面的な考えについて、もしかしたら間違っているかもしれない根拠や、見逃しているかも知れない事実を挙げてみます。

 

たとえば、

表面的な考え(表層ビリーフ、自動思考)が、「この仕事・課題は難しい、自分には無理だ」と考えた場合、それが正しいと思う根拠や理由を考えます。

たとえば「この仕事は、今までやったことがない、これまで、上司がやっていた仕事で、自分には経験も知識もないから、無理だ」とか、いうことです。そのことを考えると、不安になってしまい、現在やっている仕事もままならない、などです。

一方、もしかしたら間違っているかもしれない根拠や見逃しているかもしれない事実というと、「いや、今までやったことがないというが、これまでも、新しい事業にチャレンジしてどうにか上手くこなしてきたではないか、経験や知識がないときでも、同僚や上司のオンザジョブトレーニング(OJT)やいろんな研修を受けて、すこしづつでも習得してきたんじゃないの」といった考えのことです。

 

表面的な考え(自動思考)が見逃しているかも知れない事実を判断する場合、最悪の事態ではなく、最良の事態を想像してみる、自分の同僚や友人が同じ状況に置かれたときに、もし自分だったらどうアドバイスするか、相手の身になって考えてみる(これはなかなか難しいですが)、自分の能力や責任以外の事柄を考える、などがあります。

 

このように、表面的な考え(自動思考)の前提となっている「深層にある思い込み」(スキーマ)から出ている先入観(推論の誤り)を明らかにしたり、表面的な考え(自動思考)が見逃している事実を見直し、別の考え方を取ったりして、なくなった自信のもととなる考えを変え、自信を取り戻していこうという方法です。

 

次回は、この「深層にある思い込み」(スキーマ)に焦点を当て、より深掘りした方法をとりあげ、どう自信を取り戻すかを考えてみましょう。

[注β]

【参考】認知療法実践ガイド基礎から応用まで (ジュディス・S・ベック)

    心理療法ハンドブック (乾吉佑 他)

Mental Health First Aider (メンタルヘルス=こころの健康実践援助家)より

 


☆☆第77回「自信をなくした人へ~心理療法で実際に回復したお話(その1)」★☆

2020-12-29 16:35:58 | メンタルヘルス

☆☆第77回「自信をなくした人へ~心理療法で実際に回復したお話(その1)」★☆

これまで自信があったのに、「あること」がきっかけで、自信がなくなってしまい、どうしたらここから抜け出したらいいんだろう、とお悩みの人のためのお話です。

きっかけになる「あること」(ライフイベント)とは、たとえば、試験に不合格になった、仕事で業績が悪くなった、昇進した、家庭内での不和や職場での対人関係でうまく行かなくなった、病気になった、近親者の死亡、引越しなどなどです。

自分が知らない間に、自信がなくなっていると気づくと、ゆううつな気分になり、自分の能力を疑い、活動する意欲がなくなり、将来に対する不安も出てきます。気がつくと、言葉や笑いも少なくなり、人によっては、食欲がなくなったり、眠りも浅くなったり、からだも重く感じられることもあります。

今まで自信をもって、生活、仕事をやってきたのに、なぜ、こんなにゆううつな気分になり、自信喪失になり、自分に対する価値がなくなり、もともとあった自尊心が崩されてなくなっているんだろう、と考えてしまいます。

自信の積み重ねで、自尊心が育まれ、自分にはこのようなことがうまくできるといった自己効力感が出てきます。ところが、ゆううつな状態になると、つぎのときにも、またうまくいかないのではないのか、また失敗するのではないか、といった漠然とした将来への不安がつきまといます。そうすると、今までの積極的な取り組みがなくなって、悪循環に陥ってしまいます。

この悪循環の鎖を断ち切る方法に「心理療法」とよばれるものがあります。

心理療法とは、特定の心理/精神理論を作った創始者や学派に基づいて、セラピスト(心理療法の実践者)とクライエント(サポートを受ける人)が一緒にこころの不安や不調を和らげたりして、クライエントの問題を解決していく方法です。現在では、一つの理論や技法を用いるというよりも、複数の理論や技法を組みあわせて、多元的に活用する統合アプローチやクライエントに最適の技法選択を導き出す折衷アプローチが一般的になっています。

とくに、近年では、科学的に検証され、効果が上がっている心理療法が、エビデンスベーストアプローチ(EBA)としてあげられており、CBT(認知行動療法)やIPT(対人関係療法)などが代表的です。

EBAで効果があるという心理療法をどのように進めるのか、これから見ていきましょう。

1つ目の方法は、自分のものごとへの考え方、受け取り方、意味づけに焦点をおくやり方です。このものごとへの考え方/受け取り方や意味づけのことを「ビリーフBelief」と呼んでいます。

自信がなくなって、不安になっている状況を考えてみましょう。なんらかの「きっかけ」を思い起こします。たとえば、試験に不合格になった、仕事で業績が悪くなった、という出来事がありました。

この出来事が、直接、自信喪失や不安に直結する、つまり、原因(きっかけ)があって、結果(自信喪失や不安)が起きた、と考えないわけです。これはどういうことかというと、

きっかけと結果の間に、自分の受け取り方/考え方(意味づけ)があって、「きっかけ」⇒「ビリーフ」⇒「結果」と考えるわけです。

このビリーフには、合理的なものと不合理的なものがある、と考えます。

不合理的な考え方に染まっていると、仕事の業績が悪くなった(きっかけ)⇒自分の立場では、業績を達成しなければならない、もちろん仕事はチームでやっているけれども、責任は自分にあり、その責任をとるべきである。業績を達成できなかった自分は、無能であり、価値がない(不合理なビリーフ)⇒自信喪失や不安(結果)、となります。

では、反対に、合理的な考え方では、どうなるでしょうか。このような考え方もできそうです。

仕事の業績が悪くなった(きっかけ)⇒自分の立場では、業績目標があるけれども、当社を取り巻く環境(マーケット)の落ち込みもあるし、自分としてはチームの中で精いっぱい業績向上に努めてきた。その努力は、上司も認めてくれるだろう。だから、達成できない自分が、即無能とばかりは言えないだろう。業績が達成されなくても、会社がつぶれることはないだろうし、心機一転、上司に相談しながら、来期に向けて目標を設定しよう。(合理的なビリーフ)⇒業績未達成は悔しいけれども、反省をしながら、今後も前向きに仕事に取り組もう(結果)、となります。

この考え方では、実際にどのように使っていくのでしょう。

最初の不合理な考え方に自分を直面させて、それを合理的(論理的、現実的かつ有効的=役立つかどうか)に問い詰めて、自分自身を納得させていきます。

たとえば、不合理なビリーフに対して、

・業績を達成しなければならない⇒できるなら、業績を達成出来ることになるといい。

・責任は自分にあり、その責任をとるべきである⇒責任は自分にあるが、その責任を全面的にとるということではなく、チームの一員としてしかるべき責任はあるので、今後にその回復のために尽力する。

・無能であり、価値がない⇒これまで実績を積んできたので、必ずしも自分は無能ではなく、価値がないとは思わない。

 

このように、悪循環に陥る不合理的な考え方に巻き込まれないように、合理的に考えることで、今までの自信を回復させ、生き抜いていけるようになります。

この方法ではまだまだ自信回復しないよ、という方のために、次回以降、2つ目、3つ目と、別の進化した心理療法を検討していきましょう。

[α]

【参考】論理療法―自己説得のサイコセラピイ(アルバート・エリス) 

    認知臨床心理学入門  (ウィンディ・ドライデン)

    ガイドブック心理療法  (ステファン・パルマー)

    カウンセリング/心理療法の4つの源流と比較 (ウィンディ・ドライデン、 ジル・ミットン) 他

 

Mental Health First Aider (メンタルヘルス=こころの健康実践援助家)より


☆★第76回「ヘロンHeronの援助アプローチ6つ~問題解決のための心理的援助(介入)」★☆

2020-12-29 16:03:15 | 心理・精神療法

☆★第76回「ヘロンHeronの援助アプローチ6つ~問題解決のための心理的援助(介入)」★☆

 

欧米でスタンダードとなっている、心理的援助(介入)の代表的アプローチを紹介しましょう。

ヘロン(John Heron, 1928- )の援助アプローチ(介入)は、大きく分けて2つ、合計6つになります。医療分野の実践的研究から生まれたもので、現在は、ビジネス分野(リーダーシップ論)でも幅広く活用されています。

【ヘロンの援助アプローチ】

  • 権威的介入 (Authoritative Intervention)

1 指示的介入:クライエントの行動を指示する。通常は、治療者-クライエント関係の外側での行動を指示すること。

2 情報提供的介入:クライエントに知識、情報、意味を伝える。

3 直面的介入:クライエントが比較的気づいていない、制限された態度や行動について、クライエントの意識を向上させる。

  • 促進的介入(Facilitative Intervention)

4  浄化作用的介入:クライエントのもっている苦痛のある感情、主に悲哀、恐怖、怒りを吐き出させ、解放する。

5 触媒的介入:クライエントの生活、学習、問題解決を自己で発見し、自分で指示できるように引き出す。

6 支持的介入:クライエントがもつ、人間性、才能、態度、行動の価値や重要性を支持する。

権威的介入と呼ばれるのは、上記3つの介入がより階層的になっているからです。治療家は、クライエントに代わって、あるいは彼らのために、責任を負っているわけです。だから、彼(女)の行動を導き、指示をして、彼らの意識を向上していくわけです。

促進的介入といわれているのは、それらがむしろ、より階層構造になっていないからです。つまり、治療家は、クライエントがより自律的になってほしいし、よりクライエントに責任をもってほしいからです。

権威的介入は、促進的介入よりも、有効で価値あるものである場合もあるし、ない場合もあります。それは、実践家の役割やクライエントの特別なニーズや介入の内容や焦点が何かによって変わってくるからです。

しかし、いくらかの幅広い文化的所見があります。伝統的な教育やトレーニングが、むしろ権威的介入によって過度に行われてきたときは、しばしば促進的介入が完全に省かれてきました。これは、多くの伝統的なセラピー(療法)でも同様です。でもこのことは、権威的介入それ自体が悪いということではなく、悪くみえるようだということです。促進的介入を排除しようとするときに、権威的介入は衰退するからです。

逆に、教育やセラピー分野では、革新的で現代的なアプローチが、権威的介入を除外した形で、促進的介入にあまりにも依存してきたこともあります。

権威的介入と促進的介入のバランスが、適切な力の行使のすべてだと言えるでしょう。つまり、クライエントへの実践家の力、実践家とクライエントとともに分担される力、そしてクライエント自身のなかにある自律的力の3つが、互いに必要とされ、健康を保つことに資することになるでしょう。

 

注1)Helping The Client A Creative Practical Guide Fifth Ed. by John Heron より

注2)John Heronのホームページ(英語)

 

Mental Health First Aider (メンタルヘルス=こころの健康実践援助家)より


☆☆第75回「大麻とメンタルヘルス・リテラシーのお話」

2020-11-16 16:39:52 | メンタルヘルス

☆☆第75回「大麻とメンタルヘルス・リテラシーのお話」

大麻など薬物(アルコール)使用事件が続いています。ファンである芸能人の人たち、沢尻エリカ、伊勢谷友介氏など有名人による使用が増えています。

薬物・アルコール使用でどのようなことが身体、こころに起こり、どう変わっていくかを知っておくことは大事なことです。そして、もっと大切なことは、そのような人に対して、身近な人が、どう接するか、どのように応急処置をするか、です。

もちろん、薬やアルコールを使用しているひとがすべて、問題を起こすということではありません。アルコールや他の薬物使用のレベル次第で、心身の不調(障害)を引き起こす、ということです。

薬物・アルコール障害になると、その人の生活に有害で多大な影響がでてきます。

・自分が思っているよりも、しばしば量が多くなり、長い期間、摂(と)るようになります。

・使用をやめたいけれども、なかなかやめることが難しいと分かります。

・薬物・アルコールの使用は長期間続き、その影響から回復するのに、また長期間かかります。

・薬物・アルコールの使用を激しく求める(たとえば、せきたてられるような強い衝動で)

・繰り返しの使用は、仕事、学校、家での責任能力に影響を与えます。たとえば、欠勤、仕事の処理能力の低下、こどもたちや家事へのニグレクト(無視)。

・口論や暴力など他人へ引き続き問題を起こしても、使用を繰り返します。

・そのほかの大事な活動を無視するようになります。

・薬物に対する抵抗力が増すため、同じ量では満足せず、とる量をもっと増やしてしまう。

・使用をやめた時に、離脱(禁断)症状が起こるので、その症状を避けようと、また使用する、という悪循環に陥ってしまいます。

 

アルコールの適量とは

アルコールについて確認しておきましょう。一日平均20g以下が、「節度ある適度な飲酒」(厚生労働省「健康日本21」スライド#68, 76-78)となっています。

20gとは、生ビール中グラス(アルコール度数2.7%で425ml)で約2杯、缶ビール(3.5%で375ml)で約2本、ビール中ビン(5%で500ml)で1本、清酒(15%で1合180ml)1本弱、酎ハイ(7%で350ml)1缶、ウイスキー・ブランディ(43%でダブル60ml)で1杯、ワイン(13.3%で100ml)グラス2杯、というところでしょうか。

オーストラリアなど海外では、毎日20g以下、一回の飲酒で40g以下が、健康に害になるリスクを下げるとされ、推奨されています。

  

アルコール依存症のリスクとは

【短期的なアルコール問題】

・身体を傷つけやすくなる。交通事故への主要要因はもちろんのこと、よろめいたり、倒れたり、はっきりしない会話などは、よく見る光景です。

・攻撃的、反社会的行動をとる。犯罪に関与するリスクが多々あります。

・性的なリスクテイキング(危険を承知で行う)と無計画な性的接触。酔っぱらってないときには同意しないだろう、性的行為につい進んでしまいます。望まない妊娠や性的感染症へのリスクが大きくなります。

犯罪の犠牲者になります。アルコールや他の薬物に影響され、暴行や性暴力の犠牲者になるリスクが高まります。

・自殺や自傷行為。アルコール依存症のひとは、自殺の考えや自傷行為(自分の身体を傷つける、リストカットなど)をしやすくなります。

 

【長期的なアルコール問題】

・アルコール使用障害(依存症)。一日20g以上のアルコールを定期的にとっている人、特に、年齢が若いときから飲みはじめた人は、依存症になるリスクが高くなります。

・他の薬物関連障害になりやすいです。

・過度のアルコール依存は、うつと不安障害のリスクを増加させます。

・社会的問題-過度のアルコール依存は、家族との不和、学校からの逃避、仕事が見つからない(非雇用)、社会的孤立、法的問題を起こします。

・長期的に過度な飲酒を続けると、身体的な悪影響をもたらします。肝機能障害、脳障害、心臓疾患、がん、糖尿病、筋力の低下、膵炎、潰瘍、胃腸内出血、手足の神経系疾患、体重増、胎児へのリスクなどが報告されています。

 

さて、本題へもどりましょう。

大麻など薬物へのリスク要因は、アルコール依存症に述べたことと似たようなものがあります。

 

ここでは、薬物依存症の人が身近にいた場合、どう対処したらいいか、を説明しましょう。

 

【薬物の症状】

◇刺激効果:コカインや覚せい剤のアンフェタミンは、人をエネルギッシュに、自信を強めます。より急性の依存症のサインは、欲求不満になる、怒り出す、心臓がドキドキする、体温異常(高温)、脱水症状。

◆うつ効果:大麻やトランキライザーは、疲れたようにみえる、ろれつが回らない、反応が遅いなど、うつ症状を示します。より急性のサインは、移動・動きが困難、嘔吐(モノを吐く)、意識をうしなう。

 

【どのように援助するか】

  • 静かに、自分のこころを落ちつける。
  • 相手を尊重して、簡単な、はっきりした言葉で問いかける。

「どうしたんだ。心配しているよ」「何がほしい?」「どうしたらいい?」

相手が理解できないようであれば、簡単な要望と指示を繰りかえす。怒ったり、笑ったり、茶化したり、相手を怒らせてはだめですよ。

  • 症状がみられるとき、リスクのある行動(モノを壊すとか運転する)を取っているかもしれません。そのときは、まず、相手や自分、周りにいる人が安全であるかを確認してください。
  • 相手の安全を確保してください。一人にしないで、相手と一緒にいるようにしてください。機械や乗り物など動くものは近くにないか、危険なモノから遠ざけてください。たとえば、運転したいと考えているときは、本人も同乗者にもリスクがあるからと、やめさせるように説得します。
  • 救急車を呼ぶか、その場の状況が安全でなければ、警察に電話をします。

 

【救助の方法】

◇意識のない人を見つけたら、その人の身体を横向きにして、救急車を待ちましょう。

◇もし、室内で、攻撃的な(あるいはそう思える)薬物・アルコール依存症の相手に接するときは、自分自身は、出口を背にし、でも出口をふさがず、肩幅に両足を少し広げます。肩の力を抜いてリラックスします(相手が興奮しているときは、こちらも動揺してなかなかできませんが)。

相手の正面に立ってはだめで、すこし斜めの位置に、利き足を前に出し、両手はお腹の所において合わせます。

そして、【どのように援助するか】で述べた、アプローチをします。

 

 アルコールの国際基準は、アルコール10gを飲酒量1として計算される。

  タイトルの写真左は、オーストラリア政府「飲酒量について健康リスクを減らすために」

  のガイドラインから引用した。海外のブックレットは分かりやすい。

  タイトル写真右上は「パッチギ!」2005年の画面から、タイトル写真右下は、NHKドラマスペシャル「白洲次郎」2009年から。

※※「メンタルヘルス・リテラシー」とは、1997年に豪メルボルン大学教授のA.F. Jormらにより提唱されたもので、「こころの不調を認識し、管理し、防止する手助けをするための知識とBeliefs考え方」としている。その構成要素は、 a)特定のこころの不調やいろいろなタイプのこころの苦悩を認識する能力、b)そのリスク要因や原因についての知識や考え方、c)セルフヘルプの介入についての知識と考え方、d) 役に立つ専門的支援についての知識と考え方、e) メンタルヘルス(こころの健康)についての認識を促進し、適切な援助手段を提供する態度、f)メンタルヘルスについての情報をいかに求めるかの情報、と説明しています。

A.F.Jorm (2000) Mental health literacy: Public knowledge and beliefs about mental disorders. British Jornal of Psychiary, 177, 396-401

これは、1993年にシドニー大学教授Don Nutbeamらが、「ヘルスリテラシー」を「健康を維持、促進していくための情報に、アクセスし、理解し、そして活用する能力」と定義したものに、呼応したものです。

もともと、リテラシーとは、「読み書き能力」からはじまり、IT時代には、「情報リテラシー」という用語が、情報を収集、分析・活用するための知識や技能のことと意味づけられています。

 

Mental Health First Aider (メンタルヘルス=こころの健康実践援助家)より

 

 


☆☆[コロナと共に]第74回「セルフケア~落ちこんだときの気分転換50の手法」

2020-11-11 15:23:58 | メンタルヘルス

 

 

☆☆[コロナと共に]第74回「セルフケア~落ちこんだときの気分転換50の手法」

 

気が重くなったり、こころが晴れなかったり、落ちこんでしまいそうになったり、こんなとき、セルフケア(自分で自分の健康をしっかりと守ること)が必要になります。

メンタルヘルス(こころの健康)だけでなく、身体、情緒の健康も、以下の50のセルフケア手法を試してみてください。シーン別に、まとめてみました。

 

家で

●お風呂にはいる

●音楽を聴く

●うたた寝(仮眠)

●ロウソクに明かりをつける

●壁に足をもたれ休む

●ため息をつく

●手紙を書く

●ゆっくりと普通のスピードの半分で動く

●「静かに」食事する

●自分だけのコーヒーブレイクを作る

●すべての電気を消してみる

●クレヨンをつかって色を塗る

●作曲にチャレンジ

●絵を鑑賞する

●詩作にふけってみる

●詩を読む

【エクササイズ】

●お腹で深呼吸

●瞑想する

●自分のからだに注意集中、こころを留める

●ゆっくりしたストレッチをする

屋外活動

●凧をあげよう

●あてもなく街をぶらつく

●ウォーキング

●走る

●自転車に乗る

●広い公園へ行こう

●農園の直売所へ行く

●木に登る

●紙じゃなくて他のモノに絵を描く

●どこか新しいところへドライブする

 

 

【自然に親しむ】

●広い水辺(海、湖、湾)へ行こう

●星をみよう

●雲をながめよう

●自然の中ですわってみる

そのほかには

●友達に電話をする

●日記をかく

●花を買う

●リラックスできる香水をみつける

●ふさふさした毛の動物をなでる

●ありふれたモノを新鮮な眼で吟味する

●面白く笑えるような、番組を見たり、本を読む

●何かを手から放すことをしてみる

●音楽をかけダンスを見てもらう

●誰かを許す

●小さな親切をしてみる

●「ありがとう」と感謝をしめす

どうでしょう? この中に、今まで自分でやっていたことも、たくさんあると思います。

別の方法もみつけて、コロナ時代を乗り切っていきましょうネ。

Mental Health First Aider (メンタルヘルス=こころの健康実践援助家)より

 

注)タイトルの写真は、Karen Horneffer-Ginter (ウエスタン ミシガン大学心理学博士)から入手した。


☆[緊急]第73回「かけがえのない人を失う前に(自殺のサインに気づき、どう寄り添うか)」☆

2020-11-10 15:49:01 | メンタルヘルス

☆[緊急]第73回「かけがえのない人を失う前に(自殺のサインに気づき、どう寄り添うか)」☆

 

三浦春馬さん(30)から、芦名星さん(36)、ファンだった竹内結子さん(40)と津野米咲さん(29)と、自ら命をたつ芸能人がいます。この一連のことで、以前、大学卒業後に、大切な友人を失くしたことも思いおこされました。どうして気づかなかったんだろうと。

 

さて、メンタルヘルス(こころの健康)の分野では、エビデンス・ベースト・メディスン(Evidence-Based Medicine: EBM 「科学的根拠に基づく医療」)が進展しており、うつ病などから自殺につらなる対処法がさまざまな医療機関から、発表されています。

 

今回は、コロナ禍の緊急状況ではないかと考え、オーストラリアでスタートし、今では全世界に普及している「メンタルヘルス・ファーストエイド(こころの応急処置マニュアル)第4版2018年発刊」を参考にしながら、そのサインにどう気づき、どう寄り添ったらいいかを考えてみましょう。

 

【自殺が思い当たる人に、言ってはいけないこと、やってはいけないこと】

  • 思い当たる人と「自殺の考え」について議論をすること
  • 自殺が良いか、悪いかについて議論すること
  • 自殺をしないように、罪悪感をもたせたり脅したりすること。たとえば、「地獄に行くよ」とか「もし死んだら、家族などの生活が壊されちゃうよ」
  • 自殺願望者の問題を、軽く扱うこと
  • 安心させるために、表面的なことばでなぐさめること。たとえば、「心配ないよ」、「がんばれ」、「すべてがうまく行くって」
  • あなた自身の話で、相手の話をさえぎること
  • 身振りや表情で興味ないよとか、ネガティブな態度でコミュニケーションをとること
  • 彼(女)の話を、はったりだと思って、「じゃ、やってみたら」と言うこと
  • あなたは、こころの病なんだから、と病気の診断をくだすように言うこと

 

自殺願望者の重要なサインは、つぎのようなことが言われています。

☆ 自分を傷つけようとしたり、自殺しようとする兆候が見える。

★ 自殺する方法を探しだす:たとえば、薬とか自殺の具体的な方法

☆ 死、自殺やそれについて話したり、書いたりする。

★ 希望がなくなる。絶望する。

☆ 激しい怒りや復讐にかられる。

★ なんの考えもなしに、むちゃをやったり、危険なことにかかわる。

☆ 出口が見えず、活路がふさがれたように、何かにハマって身動きできないように感じる。

★ アルコールやくすりの量が増える。

☆ 友達、家族、社会から離れてひきこもる。

★ 不安、イライラ、眠れないか四六時中起きている。

☆ 気分が急に、大きく変化する(たとえば、うつの気分が突然改善するなど)

★ 生きる理由をなくす、人生の目的意識がなくなる。

 

【どう寄り添うか?】

では、どのように寄り添ったらいいのでしょうか。

まず、どうアプローチするか、です。

もし、誰かが自殺を考えているようだと思ったら、すぐに行動を起こしてください。

たとえ、「自殺なのかどうかな?」と疑問に思ったとしても。

 

「ちょっと心配しているんだ」と近づいて話を始めましょう。

 

あなたが気になった、彼(女)の行動について、話してみましょう。

でも、もし相手が、あなたと話したくない、と言ったら、それ以上ムリに話は進めずに、誰か身近にいるほかの人を探して、手助けを願った方がいいです。

 

自殺を考えているような相手には、はっきりとそのことを聞くことが防止に効果があります。

相手が黙っていても、そのことを知るには、自殺を考えているか、聞くことです。

「自殺のことを考えていますか?」

「自殺したいと思っていますか?」と。

大事なのは、あなたが、相手のことを心にかけていることを、言葉でちゃんと聞くことです。

 

ゆめゆめ、

「あなたは、そんなバカなことを考えていないでしょうね」と批判的な、指導するような話し方をしてはいけません。

 

直接自殺について聞くことは、そういった考えを吹き込むことになるんじゃないかと思って、気が進まないと思うかもしれません。

それは正しくありません。

 

ハッキリ聞いた方が、自殺のリスクが低減するというEBM*があります。

聞いた方が、逆に、彼(女)の抱えている問題について、話しはじめるチャンスにもなるし、こちらが相手を支援をしますよと示すことにもなるからです。

◎◎軽症うつ病発見の簡易テスト東邦大学医学部心療内科方式による自動判定サイト)

支援情報サイトの検索(厚生労働省)

 

※ メンタルヘルス・ファーストエイド(MHFA)の援助者MHFAiderは、全世界400万人(豪州で100万人)以上。

こころの不調をもっている人たちは、自分からそのことを人に話したり、相談に行くことが難しいため、身近な、周りの人たち(援助者)がその人たちを支援して、初期の段階に早期発見し、専門家への治療へつなげていこうとの考えで、2000年オーストラリアの Betty Kitchener (メンタルヘルス教育家)と Anthony Jorm(メルボルン大学教授、メンタルヘルスリテラシーの提唱者)によって設立されました。

 

注1)タイトルの写真は、

[左]Standard Mental Health First Aidのテキスト表紙(「メンタルヘルス・ファーストエイド(こころの応急処置マニュアル)第4版2018年発刊」) 

[中上] メンタルヘルス・ファーストエイド(MHFA)の実践基本ステップ

ALGEE (A: その人にアプローチをして、回復と悪化の分かれ目(crisis)の評価と支援をします L: 判断せずに、聞くことでコミュニケーションをとります G: 援助と情報を提供します E: 適切な専門的手助けが得られるように励まします E:そのほかのサポートで元気づけます(セルフケアや家族・友人・知人からのサポート)

[中下]

メンタルヘルス・ファーストエイド(MHFA)の適用範囲

<<-(予防)-早期発見・支援―(早期介入・治療)->> 専門家による治療へ

MHFAiderは、医者でもセラピスト(治療者)でもありません。支援をすることを中心に考えます。

[右上]竹内結子(イノセント・デイズの画面から)[右下]津野米咲https://natalie.mu/music/news/97237より

注2)エビデンスの論文*は、Harris KM, Goh MT-T. Is suicide assessment harmful to participants? Findings from a randomized controlled trial. International Journal of Mental Health Nursing 2016

 

#自殺 #メンタルヘルス #ファーストエイド


☆第72回「ポジティブ心理学の自己診断(アセスメントツール)の紹介」(追補版)★

2020-09-01 16:04:32 | メンタルヘルス

 

☆第72回「ポジティブ心理学の自己診断(アセスメントツール)の紹介」(追補版)★

 

アンジェラ・ダックワーク博士のGRIT (やり抜く力)では、

才能x努力=スキル   

スキルx努力=達成(👉成功、👉幸せ)の理論を展開されています。

 

その最初の段階の、あなたの「才能」をみなさんは、どれだけご自身でお分かりになっているのでしょうか。

 

その才能を知るために、世界にはいろいろな自己性格診断オンライン・ツールが出ています。

 

たとえば、

1.VIA強み診断 (非営利団体 米VIA強み研究所)

 「強みとしての徳目」(人生での行動原則)6つの領域と具体的な強みが24種類に分けられています。

6つの領域とは、「知恵」「勇気」「人間性」「正義」「節制」「超越性」です。

24種類の強みは、

[知恵] 創造性、好奇心、向学心、柔軟性と大局観。

[勇気] 誠実さ、勇敢さ、忍耐力と熱意。

[人間性] 親切心、愛情と社会的知能。

[正義] 公平さ、リーダーシップとチームワーク。

[節制] 寛容さ、慎み深さ、思慮深さと自己規律。

[超越性] 審美眼、感謝、希望、ユーモア、スピリチュアリティ。

診断結果のトップ5の強みが、「とっておきの自分の強み(Signature Strength)」とされています。

※上記「VIA強み診断」のホームページへ行き、トップページの左上に「Language(言語を選択)」ボタンがありますので、クリックして日本語を選べば、日本語での回答が可能です。

ちなみに、わたしのとっておきの強みは、1.創造性、2.審美眼、3.慎み深さ、4.誠実さ、5.好奇心、でした。

 

2ビッグファイブ性格テスト(Truity Psychometrics LLC 英語)

ビッグファイブという5つの要因は、「開放性」、「誠実性」、「外向性」、「協調性」、「神経症的傾向」です。1990年代、心理学者のルイスゴールドバーグ氏が提唱。特性5因子モデルとも呼ばれ、パーソナリティ検査の中では、心理学の主流となっているものです。

「開放性」は、経験を積極的に求め、楽しもうとする傾向や馴染みにないものを気にしない傾向があるのかどうか。

「誠実性」とは、責任感や集中力、持久力があり、自制心をもっているかどうか。

「外向性」は、対人関係が幅広く、活動的であるかどうか。

「協調性」は、同情や信頼、敵意や冷たさといった対人関係への態度を示します。

「神経症的傾向」とは、情緒的に不安定か安定しているか、心配性かどうかを知ることができます。

 

簡易版は、googleで探せば、日本語サイトがたくさん出てきます。

ちなみに、わたしの場合は、1.開放性(92%)、2.誠実性(81%)、3.神経症的傾向(62.5%)でした。

 

3.  エゴグラム性格診断 (Egogram)

 エゴグラムとは、アメリカの精神科医エリック・バーン(Berne, E.)が考え出した交流分析理論を基に、バーンの弟子、ジョン・M・デュセイ(Dusay, J.M.)が考案した5つの自我状態(エゴ)のエネルギー量をグラフで表し、性格特性と行動パターンをみるものです。

 5つの自我状態とは、「CP (Critical Parent: 批判的な親)」、「NP (Nurturing Parent: 養育的な親)」、「A (Adult: 大人の自分)」、「FC (Free Child: 自由な子ども)」、「AC (Adapted Child: 順応した子ども)」です。

「CP (Critical Parent: 批判的な親)」は、責任感が強い、厳格である、理想をかかげる、といった特徴があり、

「NP (Nurturing Parent: 養育的な親)」とは、思いやりがある、世話好き、受容的である。

「A (Adult: 大人の自分)」は、現実的である、冷静沈着である、客観性を重んじる、といった特徴です。

「FC (Free Child: 自由な子ども)」は、感情をストレートに表現する、明朗快活である、創造的である特徴をもち、

「AC (Adapted Child: 順応した子ども)」は、他者を優先する、遠慮がちである、人の評価を気にする、という自我状態です。

無料日本語サイト:

 ●ダイレクトコミュニケーション

 ●エコグラムによる性格診断

本格的エゴグラム心理検査オンライン(有料・日本語)

 ●TEG3(東大式エゴグラム第3版)

自分の性格に気づき、自己改善をはかるきっかけや、他者との違いに気づいたり、周囲とのコミュニケーションスタイルを見直すきっかけとして活用できます。
実際に日本国内では人気があり、医療、産業、教育などの分野で利用されています。

 

上記3つは無料ですが、以下は有料、英語あるいは日本語で、オンライン・アセスメントを手軽に、瞬時に獲得できます。

 

4Strengths Profile (Cappfinity CEOのAlex Linley ポジティブ心理学者により2005年に開発。英語)

 こちらの強みは、60種類。4つの分野で、自分の強みの活用を分析してくれます。

「活用している強み(トップ7まで)」、「活用してない強み(未実現の強み)(トップ7まで)」、「学習した行動で、まだ活用してない強み(トップ4まで)」、「あなたの弱み(トップ3まで)」の4種類です。

 

ちなみに、わたしのトップの強みは、「活用している強み」➡『プランナー(計画性)』、「活用してない強み(未実現の強み)➡『思いやり』(来年から、この強みを活用した仕事を計画中です)、「学習した行動で、まだ活用してない強み」➡情動知能の自覚(他人の感情への気づき)。なんだか、天職さがしや将来の仕事に役立ちそうです。

 

5.Clifton Strengths (旧ストレングス・ファインダー。調査会社ギャラップ社gallupの最古で有名な性格自己診断ツール。本を買うとオンライン診断ができる。1999年ドナルド・O・クリフトンが設計した。彼は「強み心理学の父」と言われている)。

4つの領域、34の資質(強みプロフィール)から、あなたの強みを発見して、的確な職業を選び出す仕組みになっています。

[思考力] 分析思考、原点思考、未来志向、着想、収集心、内省、学習欲と戦略性

[人間関係力] 適応性、運命思考、成長促進、共感性、調和性、包含、個別化、ポジティブと親密性

[影響力] 活発性、指令性、コミュニケーション、競争性、最上志向、自己確信、自我と社交性

[実行力] 達成欲、アレンジ、信念、公平性、慎重さ、規律性、目標志向、責任感と回復志向