Think Globally, Act Regionally:『言葉の背景、カルチャーからの解放、日本人はどこへ往く』

身のまわりに見受けられるようになった「グローバル化」と生きる上での大事な「こころの健康」。さまざまな観点から考えます。

●第14回「新聞記事のあいまいさ。~本日の日本経済新聞から」

2007-05-21 23:41:22 | ■ことばの背景(英語と日本語の備忘メモ)

●以下の記事で、
ちょっと気になる表現をクリティカル・リーディングで取り上げてみました。


『財務省はこうした改革で効率化を促したい考えだが、文部科学省や大学側の反発は必至で調整は難航しそうだ。』

まず、財務省の代弁です。
財務省は、効率化を促したいので、こうした改革をすすめたい。(財務省側の理由が述べてある)

次に、文部科学省・(不利になる)大学側の代弁です。

文部科学省や大学側の反発は必至で、(なぜ反発するのかの理由がなく、大学側とひとくくりで述べているが、交付金の増える東大や京大からの反発が必至だとは考えにくい)

調整は難航しそうだ。

財務省と文部科学省・大学側の協議を、高みの見物としましょうか。

この記事は、一見客観的なようで、実は、責任を放棄しているように思われる。

つまり、記者が事実だけを述べるのであれば、『』の文章は不用であり、読者に、財務省の改革案は、難航しそうだ、との印象を与えている。
あるいは、財務省の目的を述べるのであれば、反対側の理由も述べるべきである。

とまあ、書いたわけですが。みなさんのご意見は、いかがでしょう。

例文1:

「国立大の85%が減額交付、競争原理導入で財務省試算」

 財務省は21日、国立大学向けの補助金である運営費交付金について、競争原理に力点を置いて配分方式を見直した場合の試算をまとめた。交付金は東大や京大など13校で増える一方、全国の国立大の85%の74校が減額になり、5割以上減る大学が50校に達する。財務省はこうした改革で効率化を促したい考えだが、文部科学省や大学側の反発は必至で調整は難航しそうだ。

 新試算は21日の財政制度等審議会(財務相の諮問機関)の財政構造改革部会に提示した。今年度の予算額で約1兆2000億円の同交付金について、研究内容や成果で決まる科学研究費補助金(科研費)の2006年度の獲得実績に応じて配分した場合と想定した。現在の交付金は、教員数などを基本に一律配分している。

 試算によると、87ある国立大学のうち、東大が現在の2.1倍に増えるなど13校で交付金が増加する。減少するのは74校で、減額幅が最も大きいのは兵庫教育大で、今年度の配分予定額に比べて91%の減額になる。 (5月21日22:44)

【参考】
http://www.nikkei.co.jp/news/main/20070521AT3S2101E21052007.html

●第13回「イノベーションさもなければ死か」 イノベーション競争力:日本、世界1位の中身

2007-05-19 23:43:00 | ■日本人はどこへ往く?

●イノベーション競争力: 日本、世界1位の中身。
~EIUの調査から~

07年5月14日Economist Intelligence Unit (EIU)は、「日本が、世界で最もイノベーティブな国家。研究調査の結果で判明」とのプレス発表(白書とよんでいる)をしている。この場合の競争力とは、国の競争力というよりも、産業の競争力(ひいては、国の経済成長力)と考えた方が理解しやすい。

EIUの調査方法は2つ。
485人のグローバル上級取締役からのオンライン調査。もう一つが、世界82ヶ国の、2002-2006年のイノベーション業績(後に説明)と2011年までの予測に基づいて、ランク付けを行ったもの。

2002-2006年では、2位はスイス、3位米国、4位がスウェーデンだった。
2007-2011年の間も、このランクは変わらないと予想している。

ちなみに、2002-2006年では、5位はフィンランド、6位ドイツ、7位デンマーク、8位台湾、9位オランダ、10位イスラエル。一方、2007-2011年では、5位ドイツ、6位台湾、7位フィンランド、8位イスラエル、9位デンマーク、10位オーストリアの予想。(82ケ国中、中国は54位(2007-2011年で37位、以下同様)、香港は23位(21位)、ブラジルは52位(40位)、シンガポールは17位(11位)、インドは56位(50位)、メキシコは45位(39位)。

EIUによるイノベーションの定義は、「一義的に経済的利益や優位性を求めるために、新しく、他と異なった、普通ではない方法で、知識を応用すること。the application of knowledge in a novel way, primarily for economic benefit」(報告書3ぺージ目)となっており、企業や政府にとっての重要性が増しているとの認識だ。学界や経営者の中では、イノベーションが生き残りのコア(中核)の一つだという人が多い。

日本はなぜ、世界1位の座にいるのか?

彼ら(著者:Nick Valery and Laza Kekic)のイノベーション業績評価項目(アウトプット)を見よう。

‐イノベーションの尺度としての人口100万人当たりの年間特許件数
‐人口100万人当たりの科学技術ジャーナルからの引用回数(US National   Science Foundation and Thomson ISI's Science Citation Index)
‐UNIDO(国連工業開発機関)から導き出した、2つの比率の平均値:一国の製造 アウトプットでの中クラス―先端クラスの技術を使った製品のシェア、そして全 製造輸出品の中での中クラス―先端クラスの技術輸出品のシェア。この2つの平 均値。
‐World Economic Forum国際競争力報告書2006年からの調査質問の結果(新技術を 吸収できた、または精通した125ヶ国にある会社を評価したもの)が挙げられて いる。

一方、イノベーションのインプットを見る。

これは、上記のアウトプットとこれから述べるインプットの差異を分析して、イノベーションの効率を図ろうとするもの。

「イノベーションを直接牽引するインプット」としては、Business Environment
Rankings (BER)と呼ばれる、幅広いインデックスから次のような項目が選択されている。(各項目の重み付けなし)
日本は、この直接インプットでは11位(2007-2011年では12位)

‐GDPに占めるR&D費の割合
‐地方の研究インフラの質 
‐仕事場での教育研修
‐仕事場でのテクニカル・スキル
‐ITと通信インフラの質
‐ブロードバンドの浸透度

次に、「イノベーションを間接的に牽引する(あるいは阻害する)インプット」として、経済、社会、政治要因と幅広いインデックスからなる。次の12要因だ。(*印が若干、他項目よりも重み付けしてある)

日本は、このインプットでは、23位(2007-2011年では25位)

‐政治の安定度*
‐マクロ経済の安定度
‐制度的フレームワーク*
‐政府の規制環境*
‐税制度・体制
‐労働マーケットの柔軟性(固定化されていない)
‐海外からの投資への国内経済の開放性
‐海外労働者の雇用が容易かどうか
‐海外からの影響力に対する国の文化の開放性
‐投資ファイナンスに対してのアクセス度
‐知的所有権への保護度
‐科学の発展へ対しての大衆の態度

まあ、よくもこれだけ、評価項目(要因)を挙げたものだと思いますが、それだけ、正確な結果(差異)がでると思われます。重みづけは、直接が70%、間接が30%だそうです。

さてこれから、彼らのデータベースを駆使しての分析が始まります。

日本は、直接インプットのランクは世界11位なのに、アウトプットは世界1位。ということは、極めて「イノベーションの効率が良い」ということになります。
一方、中国は、「イノベーションの非効率」が指摘されています。つまり、直接インプットが42位(2007-2011年は37位)なのに、アウトプットは17つ下の59位(同54位)なのです、等々。

結論として、EIU白書は、
「よりイノベーティブになる最善の方法は何か?この報告書で明らかなように、一つだけの、正しい方法というものはない。イノベーションはもちろん、西欧社会の領分だけであるはずがない。日本のポジションをよく見てください。ランキング・トップですよ。同様に、中国の台頭は言うまでもなく、台湾やシンガポールの強さを見ましょう。全員が強調していることは、イノベーションを強力に支えているのは、その国の政策と大多数の科学者やエンジニアを育てる教育システムなのですよ」と。

今回のイノベーション調査は、「2020年を展望する(Foresight 2020)」(2006年3月EIU報告書)から出て来たもので、3種類の調査モノの1つとなっている。3種類とは、「パーソナライぜーション」、「コラボレーション」、そしてこの「イノベーション」から成る。これらは、主要な産業の今後の展望と会社活動に深い影響を与えるものとの前提がなされている。でも、他の2つも結構興味が引かれるテーマですね。

ところで、
報告書の補遺(Appendix C: Survey results)の中で、485人のグローバル上級取締役の回答は、なかなか興味をそそらせるものがある。

例えば、こういった質問への回答である:
最も成功したイノベーションの源は?、どの分野で?、どういうやり方でイノベーションを主導していったか?、などなど。

その中で、「従業員にどのようなインセンティブを?」の質問には、

会社リーダによる周知(対外への告知)38%、
賞(プレゼント)33%、
会社リソースへのアクセス特権27% (これは何でしょうか。トレードシークレットなどのことでしょうか?)、
「規定の仕事から解放しイノベーションのための休暇」と「昇給」がそれぞれ22%となっていました。

また、「あなたの組織では、長期的な成功のために、イノベーションはどのくらい重要ですか?」との質問には、
当然のごとく、
非常に重要47%、重要40%、幾分重要12%、重要ではない1%との回答が述べられている。

以上、日本の強みは、アウトプット(イノベーション業績)にあることが分かりましたが、
弱みは何でしょうか。
お分かりのように、そのインプットにあります。

「イノベーションに最適な場所はどこか」との問いに、40%の回答者がアメリカを、インドが12%、イギリスが6%。一方、日本は2%となっている。

これをどう解釈するか、ということです。

イノベーションの環境(間接インプットのこと)が日本の場合、2002-2006年で82ヶ国中23位、2007-2011年で25位と示されているけれども、「最適な場所でない」理由として、報告書は、「言語のバイアス(偏見)かも知れない。この報告書は英語のみでなされたものだから。疑いもなく、日本はイノベーションをするのに最も快適な場所ではないというのが、回答者の上級取締役の共通見解である」と言う。

これだけのインベーション環境の不利な状況から、最大の効果(イノベーション業績)を出している日本は、今後、この環境を変えていけば、よりもっと、効果があげられると考えた方がいいのだろうか、それとも、このまま、これまでのように、日本人だけで、「イノベーション、さもなければ死か」を胸に、生きていくのだろうか。。。

P.S.
さて、国際競争力の格付けでは、上のイノベーション分野とは違って、IT(情報技術)分野の国際競争力を扱うWorld Economic Forum(世界経済フォーラムWTF。ダボス会議)の「世界IT報告書」や総合的な国の競争力を測定しているIMD(スイスの国際経営開発研究所)の「世界競争力年鑑World Competitiveness Yearbook」が有名ですが、今日はこの辺で。

※ EIUは、英経済誌The Economist (エコノミスト)の調査部門、エコノミスト・インテリジェンス・ユニット(EIU)のこと。

※※ 調査方法は、2006年11月、オンラインでのサーベイ。対象は、485人のグローバル上級取締役。大半は財務サービス産業で、その次にIT・技術産業、専門サービス業、製造業、健康管理業、製薬業、バイオテクノロジー産業と続く。回答者の48%が年間売上高5億US$までの会社に働き、26%が50億US$以上の売上げ。地域的に
は、欧州・中近東の会社が56%、25%がアメリカ、20%がアジア・オセアニア地域(%
は切上げのため、101%になっている)。

【参考】

Innovation: Transforming the way business creates includes a global ranking of countries(報告書本文PDF 44ページ)by The Economic Intelligence Unit (EIU)


時事ドットコム「技術革新度、日本が世界トップ=資源乏しく生命線-英社番付」(2007/05/17)

●第12回「品(ひん)についての考察  (日英 国家の品格)」

2007-05-01 00:23:17 | ■ことばの背景(英語と日本語の備忘メモ)

●2005年11月に発刊された「国家の品格」(The Dignity of a State)以降、
SNSでも、品(ひん)についての議論が盛んだ。

そこで、品についての言葉を考えたみた。

日本語で品(ひん)とは、
ひとやモノにそなわる(好ましい)様子、風格、くらい、人がら。(広辞苑)

また、「しな」【品・科・階】で、地位・身分。
人・物の品格・品質、とある。
科は、愛嬌。嬌態。
漢字源によると、人の等級や人がら。

気品とは、どことなく感じられる上品さ。けだかい品位。
上品とは、ひんのよいこと。気品のあるさま。
品格とは、品位、気品。
また、「しなやかさ」とは、上品なさま、ひんのよいこと、気品のあるさま、たおやか。

仏教用語では、上品(じょうぽん)、と読む。
極楽浄土に往生する者の階位を上品・中品・下品(げぼん)に三分した、その最上位)。それぞれ上生・中生・下生(げしょう)の三等があり、九品(くほん)という。

英語では、
grace (丁寧でここちよい所作)
dignity (真面目でフォーマル、尊敬すべき性質)
elegance (非常に美しくスムースかつ魅力的な所作、あるいはスムースな魅力的な形)
aroma (芸術品などのもつ気品、風格、えも言われぬ雰囲気)
couth (洗練、優雅)
decorous (ある特定のときに正しい身なりや所作をする)
distinction (普通ではない 良いという性質)
style (自信のある魅力的な性質で、賞賛され、身なりや所作などに用いられる)

さて、英国ジャーナリストと「国家の品格」の著者との、英日の会話(論理)の進め方の違いを観察してみよう。

FT東京支局長デビッド・ピリングは、そのヒューモアとシニカルな持ち味を存分に活かして、論理(記事)を進める。
片や、藤原氏は論理だけではなく、感情をないまぜにした持論を進める。

この支局長と藤原氏との会話のすれちがいや支局長のcritical readingによる質問と彼の応答もなかなか面白い。論理的でなくなると、どうも欧米人には、日本人の言っていることが理解できないようだ。(当然かもしれない。それが、また、不思議を呼ぶ?)

また、日本人としては、論理だけで来る人間に対しては、「理屈っぽい」とか「理屈をこねる」と言い、現実を無視した物事の道理と判断し、それを言い張る人物に対しては、(特に、理屈っぽい欧米人は、)感情的に毛嫌いされる。
理屈とは、理のつまる所を意味する。

さて、これは、感情の問題、感性の問題、ということで、済まされるのだろうか。

それとも、

感情と論理を超えた、なにかがあるのだろうか。


☆女は品良く (ミクシー・コミュニティ)
http://mixi.jp/view_community.pl?id=183312
■ファイナンシャルタイムズと昼食を:藤原正彦さんと(Mar 09, 2007英語原文)
http://search.ft.com/ftArticle?queryText=fujiwara&y=6&aje=true&x=12&id=070309007956
(日本語訳2007年3月23日)
http://news.goo.ne.jp/article/ft/life/ft-20070323-01.html
http://news.goo.ne.jp/article/ft/life/ft-20070323-02.html
http://news.goo.ne.jp/article/ft/life/ft-20070323-03.html

(参考・電子辞書)
広辞苑第五版
ジーニアス和英辞典第2版
ジーニアス大英和インデックス
ロングマン現代アメリカ英語辞典(2000年)