★☆第83回「自信回復7つの習慣~うつ解消・ヘルスマネジメント(心とからだ)技術(その4)」★☆
今回は、「第4の習慣●身体を大事に運動を習慣にする」です。
古代ギリシャの哲学者プラトン(紀元前427-347年)の言葉にあるように、子どもたちには、音楽・文芸だけでなく、体育(運動)の必要性が強調されています。これは、どんな環境の変化に出会っても、健康を保持できるだけの体力とからだを扱うための技術をもち,さらに、身体的な苦痛を伴うつらい鍛練に耐え抜く精神力をもった人間の育成につながる、と考えていたからです。
みなさんのからだと心はつながっています。からだを動かし、行動的になることは、からだの健康によいだけでなく、わたしたち皆をハッピーな気持ちにさせてくれます。運動は、気分をたやすくよくしてくれるし、うつの状態から抜けださせてくれることさえできます。
みんながマラソンをしなければならない、ということではありません。もっと、日常的に運動をすることができるでしょう。アウトドアで過ごしたり、健康な食べ物を食べたり、スマホなどのスイッチを切ったり、十分な睡眠をとったりすることで、わたしたちのウェルビーイング(Well-Being「幸せ・健康」)を高めることができます。
さて、行動的で健康になるには、実際どんな方法があるのでしょうか?
トロントのマイク・エバンス博士*は、「健康にとって最も良い一つのことは何でしょう」、と問いかけます。
答えは、「一日のうち、座ったり寝たりする時間を23時間半に制限すること」です。
そのこころは、「一日24時間のうち、30分のウォーキングをすることだけ」です。
エバンズ博士の科学的研究の結果、30分のウォーキングをすることで、
・膝の関節炎の痛みが47%とれる
・高齢者の認知症やアルツハイマー型認知症の進行が50%防げる
・高リスクの糖尿病患者の進行が58%防げる(他のポジティブな生活習慣の変化と合わせて)
・不安が48%低減する
・うつの症状が30%改善する
ことが分かりました。
さて、別の科学的エビデンスを見てみましょう。
マイケルバブヤック他の研究**は、50歳以上のうつ病(大うつ病性障害)患者156人によって行われました。
運動グループ***、薬物療法グループ****、運動+薬物療法グループと3つのグループがランダムに分けられました。それぞれ4ケ月コースで、運動はエアロビクス、薬物療法では抗うつ薬のセルトラリンが使用されました。4ケ月の研究治療後の6ケ月で症状がどうなるか、を最終評価しています。
4ケ月の治療後は、3つのグループすべてで、重要な改善が見られた(ハミルトンうつ病スケールの少なくとも13→8へ)。しかし、10ケ月後をみると、運動グループは、薬物療法グループや運動+薬物療法グループよりも、うつ病の再発率が有意に低下し、運動によるうつ病症状の緩和効果が大きいことが分かりました(下図を参照のこと)。
このように、運動の習慣、たとえば、少なくとも一日30分以上のウォーキングなどが科学的にその有効性が認められています。
早速、今日から、ウォーキングをはじめましょう。
次回は、第5の習慣「●睡眠の法則を知ってスマートに実践する」です。
【注】
タイトルの左の図は、Action for Happinessから採用した。
*マイク・エバンス博士は、リフレーム・ヘルスラボの創設者。トロント大学准教授等を経て、アップル、スタンフォード大学などの役職を歴 任。健康分野のイノベーター受賞歴多数。医師。
博士のyoutubeビデオは欧米では有名で、合計1000万回以上(運動のビデオは648万回以上)の再生実績あり。youtubeの「設定>字幕>自動翻訳>日本語」にすると、日本語の字幕でも視聴できる。
**マイケル・バビヤック他の研究は、Exercise Treatment for Major Depression: Maintenance of Therapeutic Benefit at 10 Months。
***運動は、一週間に3セッション(連続16週間)のトレーナーによるエアロビクス実習。1セッションは、10分間のウォームアップ後、30分間の活発で集中的なウォーキング/ジョギング。脈拍は、最大脈拍数の70-85%以内に収まるように。その後5分間のクールダウンで終了。
****薬物療法は、(Sertraline)の服用。精神科医が、2、 6、 10、 14 そして16週目に面談後、50mgから最大200mgの投与がなされる。セルトラリンは、選択的セロトニン再取り込み阻害薬 (SSRI) と呼ばれる抗うつ薬の一つ。日本での商品名は、ジェイゾロフト。
Mental Health First Aider (メンタルヘルス=こころの健康実践援助家)より