Think Globally, Act Regionally:『言葉の背景、カルチャーからの解放、日本人はどこへ往く』

身のまわりに見受けられるようになった「グローバル化」と生きる上での大事な「こころの健康」。さまざまな観点から考えます。

◆第49回「続 グローバル化のメリット/デメリットとは?」

2009-11-25 22:53:54 | ■日本人はどこへ往く?


 ◆第49回「続 グローバル化のメリット/デメリットとは?」 


前回第37回「グローバル化のメリットとは?」では、欧米側の経営的視点から、国際経営学のテキストを元に議論を進めた。欧米のテキストは、日本のこの種のテキストと違い、現実のグローバル企業の実証研究を調査し、それを体系化するものが一般的だ。

さて、
今回の「続 グローバル化のメリット/デメリットとは?」では、
日本の調査報告書を元に、グローバル化をどうとらえているかを考えてみたい。


◇経済産業省の見たグローバル化の実態◇

経済産業省は、2008年の通商白書(世界経済の動向および内外経済政策を分析した60回目の報告書)で、日本を取巻くグローバル化の現状をマクロ経済的に分析している。

企業の観点から見た「グローバル展開でのメリット(デメリット)」および家庭(労働者および市民)の観点から見たグローバル化のメリット/デメリットである。

企業の観点からは、

海外での証券投資の収益が増加していること、現地国への直接投資の収益が増加していることが示されている。これら海外への投資の収益を「所得収支」といい、これまで、日本の経常収支を黒字にしてきた「貿易収支」(クルマなどモノの輸出))は横ばいのままである。この所得収支の黒字の増加が、経常収支黒字の増加につながり、対外純資産の増加につながっている。これが、更なる海外投資へと好循環の輪になっている。

一方、
企業の観点でのデメリットとしては、

企業の海外進出に伴う「国内産業の空洞化」により、国内生産の低下→雇用の減少(所得格差)と連なっていく。

更に、グローバル展開をすることは、これまでの国内だけの競合企業との闘いだけでなく、全世界の競合企業との競争になるため、より過酷な状況になると言えよう。現地の商習慣、現地の社会制度・労働法などとの違い、他文化の顧客への対応など、これまでにない違った分野が出てくることになる。


次に、
労働者/市民から見た、グローバル化のメリットは何だろう。

金融サービスの面から見れば、インターネットを使って、これまでは、日本国内の金融機関のみに限られていた取引が、瞬時に、海外の金融資産に投資が可能になったことだ。海外の金利の高い金融商品に投資をして、利益を得ることが可能になった。

また、為替差益の面では、円高になればなるほど、海外旅行で日本円のメリットを享受できるばかりでなく、円高による輸入品の低下も市民の視点から見ればメリットとなる。

一方、デメリットについて
当白書では以下の指摘がなされている。

労働者の賃金が減少すること(グローバル化による労働者の交渉力の低下とITなどによる産業資本や技術の集約化が要因となる)。

また、外国人株主の保有比率が高い業種ほど、株主重視、従業員軽視で、賃金の低下が認められるとの分析もある。
さらに、国内では、スキルのある労働者とスキルのない労働者間の格差が拡大する。

海外へ行く日本人労働者や一般市民の場合、
世界語としての英語の活用が一般的であるため、現地の人たちとのコミュニケーションの取り方が至難となることが考えられる。

また、海外では、
現地の文化、社会への対応が求められるため、これまでのような国内での考え方や過ごし方では、現地社会への適応が難しくなる。
(カルチャーショックの回復法や海外でのアイデンティ・クライシスについては、第42回「日本人の自律心を育むには」を参照)

以上、白書を元に、個人の見解を加えて、
メリットおよびデメリットを考えてみた。

グローバル化と言うと、

まず、企業組織のグローバル化が頭に浮かぶが、
企業活動に伴う製品/商品のグローバル化や
技術のグローバル化は進んでいても、

ひと(労働者)のグローバル化、
金融サービスのグローバル化は、
これからの日本の大きな挑戦になる。


【参考】
経済産業省「通商白書<2008>新たな市場創造に向けた通商国家日本の挑戦」 
写真は、通商白書から使用した。


★☆第48回「自然、人間、挑戦/忍耐」~慰めから励ましへ☆★

2009-11-22 03:43:16 | ■日本人はどこへ往く?

★☆第48回「自然、人間、挑戦/忍耐」~慰めから励ましへ☆★

地震列島の日本では、古来から、自然への尊敬、畏怖や服従という感覚が一般的であった。これは、クルックホーン&シュトゥロットベックの「バリュー・オリエンテーション理論」トロンペナーズの「7次元文化モデル」に指摘されるまでもなく、日本人の間では共通認識となっている。

一方、欧米的考え方では、自然は征服すべきものとの信念があり、機械としての自然対象との感覚である。

日本的な考え方では、自然の驚異をそうやすやすと取り除くことは不可能であり、一度自然災害の猛威を経験すると、人間の無力感を感じる。その無力感を克服するには、「忍耐力」が最も大切な人間的対応であると考えられてきた。反対に欧米では、自然は征服すべき対象であるから、それに果敢な「挑戦」をして立ち向かうことが大事な人間的要素と考えられている。

この自然への忍耐、つまり自然への共生という習慣は、人間関係にも大きな影響を及ぼしている。人間関係でも、挑戦して相手を倒す、というよりも、耐えて、調和を持って、共生していくことが長年の日本人の知恵となっている。従って、耐えて耐える人を「慰める」ことが普通である。

欧米の文化では、どうか。自然に対しても立ち向かう。人間に対しても挑戦する。これが普通の感覚らしい。挑戦している人には、「励ます」ことが当たり前となるのだ。

さて、「第42回日本人の自律心を育むには?~エリクソンの人生8段階発達理論から」で触れたことだが、欧米人の励まし方の例をDr.Gary Chapmanのミリオンセラー(世界で300万部以上)の書物で検証してみよう。

彼は、結婚カウンセラーとして30年以上の経験をもち、まずい人間関係を克服し、より良い人間関係をつくるために「愛のコミュニケーション方法」を提唱している。愛のコミュニケーション方法とは、愛を表現するにはどうしたらいいか(愛の表現方法)というものだ。カップル向け、独身者向け、家族向けなど、いろいろな愛の方法集を刊行しているが、ここでは、カップル向けの有名な「5つの愛の伝えかた」を紹介する。

1.Words of Affirmation 「肯定的な言葉のやり取り<はい=イエス>」
2.Quality Time「二人で過ごすステキな時間をつくる」
3.Giving/Receiving Gifts「互いに贈り物を送ったり、受取ったりする」
4.Acts of Service, Acts of Help「奉仕やお手伝いをお互いに。家事育児などのシェアから自分たち以外の社会へのボランティア活動など」
5.Physical Touch「2人の触れ合いを大切に」

これら5つの基本的な愛の伝え方を、まずお互いに理解し合うことが必要。
つまり、相手はどの方法で、自分の愛を表現したがっているか、ということだ。
これは、相手の気持ちを忖度するのに長けている日本人には容易にマスターできるものだ。相手の愛の表現方法に気がついたら、それを素直に受け入れれば、自分自身の満足につながるだろう。もちろん、相手にも、自分の愛の表現を気づかせる努力も必要となる。そうすることで、お互いのコミュニケーションが良い方向へ発展し、2人の間の関係を克服できるんだ、ということになる。

こんなことを考えていたら、
たまたまNHK Worldで、「Hometowns in Focus/ハイビジョンふるさと発」 "Enduring Words ~Poet of Hiroyuki Tsutsui~"(2009年11月20日)で、歌人の笹井宏之(本名 筒井宏之)が取上げられていました。

日本人の家族(母やおばあさん)への愛の表現は

・シゲヨさん、むかしのことをはなすとき百合にならなくてもいいからね

(宏之さん本人のブログより:僕にはフィクションの歌が多いのですが、「シゲヨさん」は珍しくじっさいにいる人、祖母です。)

・冬ばってん「浜辺の唄」ば吹くけんね ばあちゃんいつもうたひよつたろ

(宏之さんの父のブログ:宏之が祖母のためにフルートで吹いてくれた「浜辺の唄」)

・葉桜を愛でゆく母がほんのりと少女を生きるひとときがある


笹井宏之の短歌より印象に残った句です。

・ひきがねをひけば小さな花束が飛びだすような明日をください

・ねむらないただ一本の樹となってあなたのワンピースに実を落とす

・風という名前をつけてあげました それから彼を見ないのですが

・えーえんとくちからえーえんとくちから永遠解く力をください  (脚注を参照)


日本文化の優れた遺産のひとつ、短歌には、
これだけの(愛の)表現方法があるのになあ、と、
現実日本の家族や人間関係のつながりの希薄さに失望しながら、
この現代社会の有り様が、これまで耐えてきたことの代償だとしたら、
こんな不幸な国民はないでしょうに。

どうやら、
これからの人間関係では、
耐えることよりも、励ますことの方が、
なんだか得ることが多いような気がします。


◆上記の写真は、【些細】短歌というみじかい詩を書いています/笹井宏之とジェニファー・ロペス(JL)のアルバム「Brave」から。JLの歌詞や映画は、女性の強さや女性への励ましが中心コンセプトになっているものが多い。

◆(脚注)
「えーえんとくちからえーえんとくちから永遠解く力をください」  
エーエンと口から、永遠と口から、永遠解く力を下さい
(エーエンは嘆き悲しみの声)との解釈も可能。

◆参考:
Dr. Gary ChapmanのWebサイト
彼の日本語訳の書物 「愛を伝える5つの方法」は、キリスト教文化を基盤とした2人への励ましの言葉になっている。

■□第47回「世界のリーダーに見るボディランゲージ」□■

2009-11-20 07:17:23 | ■ことばの背景(英語と日本語の備忘メモ)

■□第47回「世界のリーダーに見るボディランゲージ」オバマ大統領の聡明さ□■

上記の3枚の写真を見てみよう。
オバマ大統領の3種類の握手です。

中央のオバマ大統領の天皇陛下へのお辞儀については
米国内で議論が続いていますが、
日本人の私としては
ちっとも違和感は感じません。
よっぽど、
左の首脳の写真が気になりました。

みなさんは、
どういう感じがしますか?


クロスカルチャー(交じり合う文化)コミュニケーションの
視点から分析すると、こうなります。


左「先生と生徒」
中央「日本文化を敬う姿勢」
右「一般的な欧米のハグ」

首脳同士の握手という
ボディランゲージだけで、
その人の国際度
(どれだけグローバルな環境に慣れているか)や
聡明さ
がわかるようです。

右の李明博韓国大統領との握手は見ごたえがありました。
オバマ大統領は、李大統領に対して、
鳩山首相と同じように、左手で絡みます。
李大統領も、同じように左手で、オバマ大統領の
右手に絡みます。
すると、今度は、オバマ大統領は、
より近づき、ハグ(抱擁)となります。
それに答えて、
李大統領もハグを返します。(右写真)

ちょっとしたしぐさですが
一瞬の動作で
その人の心の中が透けて見える
よい例です。


写真は、左からトムソンロイター、中央は、読売新聞、 右は、APより

★☆第46回「国内のビジネスを、どうグローバルに展開するのか」☆★

2009-11-16 05:45:44 | ■日本人はどこへ往く?

★☆第46回「国内のビジネスを、どうグローバルに展開するのか」☆★


国内でのビジネスしか経験がない。
しかし、巷では、「グローバル化」が生き残りの戦略として議論になっている。
さて今回は、グローバル展開するには、何をどうしたらいいのか、を考えてみよう。

国内でのビジネスでは、人、もの、カネ、情報、技術などの経営資源(要素)が一般的によく知られている。

グローバルなビジネスでは、この国内版経営資源に加えて、グローバル展開のための6項目の経営要素が定番となる。

つまり、グローバルになりたい会社やグローバル・リーダーには、以下の知識が必要となる。

①地域貿易協定(FTA:自由貿易協定など)および貿易実務)[貿易関連知識]
②為替レートと利益の本国送金[国際財務管理]
③進出国の法律、政策、税金関連および知的財産のレギュレーション[進出国企業関連法および規定]
④本‐海外支店間の管理/統制[国際組織管理]
⑤多文化下での人的資源管理[国際人的資源管理、iHRM]
⑥異なる文化・商習慣の下での経営管理システム[国際経営管理]

経営者ならお分かりのように、国内だけの知識では、なんとも自社のグローバル化は足元がふらついてくるのである。言い換えれば、この6項目を看過して、国内と同じ経営要素だけでグローバルな経営展開を図ろうとすると、手痛い打撃を受け、挙句は失敗して、退却戦略の採用を余儀なくされることになる。

賢明な経営者であれば、
「ああ、そうなのか。これらグローバルな経営要素を勉強して(させて)、今までの国内での経営経験を活かしていけば、面白いグローバル展開になりそうだ。これは、自社の今後の世界発展への可能性となりそうだ」と、考えるだろう。

◆グローバル展開するための自社のビジネスモデルを確認する。

まず、世界へ船出するには、自社の足元を確認することから始めなければいけない。それは、自社のビジネスモデルが世界に通用するかどうかを見極めることに他ならない。

ビジネスモデルとは、儲けを生み出すビジネスの具体的な仕組みとか、競合する他社に対して、自社のもつ強みなどといわれている。後者の意味では、競争優位(コンペティティブ・アドバンテージ)をいかに確保していくかということが、企業の事業戦略および現代の経営学のメインテーマであり続けている。

競争優位については、古典的なM・ポーターの5フォーシズ(5つの競争要因)とジェネリック(一般基本)理論が、そしてポーターを乗り越えようとするRBV(リソースベース理論)などが激しい議論を展開し、これら両理論の前提ともなっているシュムペーターの創造的破壊・イノベーション理論などがある。海外での競合企業は、必ずと言っていいほど、この理論に基づいて、グローバル展開を検討している。
(参考 第32回「グローバルな競争優位を築くには~M・ポーター、RBVと両者の統合理論」および第38回「グローバル・ジャパンという方法

◆グローバル展開を行うプロセス

実証的な理論を基に戦略的に物事を考えるのが、欧米企業の常識となっている。日本の企業もグローバル展開を考えるに当たっては、戦略的に次のステップを取る方が成功への近道となる。

まず、グローバル展開をするかどうかのラフな意思決定の段階。
グローバル展開をしたいという希望から、するという意思決定の段階。
これには、自社の競争優位の確認がまず必要になる。ジェネリック理論に従えば、国内で自社の戦略的ポジションがどこにあるのか、なぜ国内で成功しているのかなどを確認する。

次に、それでは、どの地域、どの国へ展開したらよいか。

その後、いかに展開したらよいか。つまり、海外展開のモード(方法、様式)である。

ステップごとに説明をしよう。

1.展開するかどうかを決める(展開のタイミング)

自社の競争優位の源泉を確認する。低コストでの優位なのか、製品・サービスでの差別化なのか、はたまた、コスト集中か差別化集中か。更に、SWOT分析を進めてみる。とくに、S(自社の強み)の中のコア・コンピタンス(自社がもつ独自の能力)の抽出が大事となる。

つまり、自社の技術が世界を席巻する、世界を変えていく、革新的技術・サービスだとの自負がある場合や、自社の技術・サービスが想定国にまだ存在しないか、まだまだ適応できる余地があるという確認ができたら、グローバル展開を積極的に考えてみることだ。

2.進出先を選ぶ

● 国・地域の魅力度

進出先を選ぶには色々なアプローチがあるが、ここでは代表的な選定プロセスを紹介する。

まず、
「いろんな国・地域の魅力度」をおおまかに検討し、「事前選定」を考える。次に、「絞込み」の段階を経て、「本格選定」となる。

魅力度の要因として、自社製品・サービスの潜在マーケット度、そのマーケットの成長率、環境要因(気候・温度など物理的な要因、文化、政治・規制、経済、競合他社など)。

この基礎調査には、民間のコンサルティング会社、商社(貿易や総合商社)や政府系のJETRO(日本貿易振興機構)などへの相談が有効であらう。

民間のコンサルティングやリサーチ会社では、公開資料や有料のデータベースを駆使して、マクロおよびミクロ分析を経て、魅力度を推定する。マクロ分析とは、一国全体としての投資や消費などの考え方を用いて経済活動を分析することで、ミクロ分析とは、家計の消費活動や企業の生産活動など、個別の経済主体の活動を分析することにより、経済全体の分析に進む方法である。

国内の市場調査(マーケティング調査)では、コンサルティング会社、総合研究所、中小企業診断士などのコンサルタントが得意とする分野であるが、グローバル展開の場合、まだまだ、国内コンサルティング業界では経験不足があり、注意を要するところである。

グローバル展開する上で、現在魅力的なマーケットとして、一般的には、BRICs(ブラジル、ロシア、インド、中国)やBEMs(新興市場:ASEAN諸国、中国・香港・台湾、インド、韓国、メキシコ、ブラジル、アルゼンチン、南アフリカ、ポーランド、トルコなど)、NEXT11(新興経済発展国家群のことで、イラン、インドネシア、エジプト、韓国、トルコ、ナイジェリア、パキスタン、バングラデシュ、フィリピン、ベトナム、メキシコ)が挙げられることが多い。

国の魅力度を調べる場合の情報源として、OECDやWTOなどの国際機関のWebサイトや、BERI、EIU(Economic Intelligent Unit)、Transparency International, World Bank Counrty Data, Euromonitor GMID (Global Marketing Information Database. この30年以上の歴史をもつ、強力な国別マーケティング・データベースは、欧米のコンサルティング会社の定番ソースとなっており、有用である)、Business International Market Reportなどが有効な情報源となる。

世界マーケットの中での魅力度のラフな測定の次は、ある地域・国に当たりをつけて、「事前選定」を行う。

(以降、「事前選定での検討事項」→「絞込み」→「本格選定」→「最終決定」へと進む)


※上記の写真は、零目的のブログ(上海・左)と、地球の歩き方「旅スケ」(インド・右上)およびEuromonitor GMID(ロゴ・右下)のウェブページより転載した。


【参 考】

★グローバル展開を行うプロセス

■事前選定
See Albaum, G., Duerr, E. and Strandskov, J. (2005), Market Entry Strategies, in International Marketing and Export Management, 5th Edition, Ch.6, pp.246-279, Prentice Hall

■本格選定の段階
See Pacek, N. and Thorniley, D. (2004), Market Entry Preparation, in Emerging Markets: Lessons for Business Success and the Outlook for Different Markets, Ch.3, pp.18-27, Profile Books

■財務面の税金関係では、財務省の「国際課税に関する資料」に詳しい

■日本と外国(地域)の自由貿易協定(FTA)
外務省の経済分野に詳述されている。
 
■JETRO(日本貿易振興機構)のホームページ(JETROの企業サポートについては、ドイツと同様に国際的な評価が高い)


☆★第41回(欧州追加版)☆オバマ大統領のエネルギー革命は本物か~グリーン・ニューディール構想の姿~

2009-11-05 01:11:21 | ■日本人はどこへ往く?

☆★第41回(欧州追加版)☆オバマ大統領のエネルギー革命は本物か?
~グリーン・ニューディール構想の姿~

(欧州追加版)
最下の参考「欧州スーパーグリッド構想」に関連して、
BBCは11月2日、
「デザートテック・インダストリアル・イニシアティブ」が
2050年までの欧州のエネルギー需要量の15%の供給を目的として、
4000億ドル(約40兆円)の新規開発事業にサインした、
ことを伝えている。
このコンソーシアムは、ミュンヘンに本拠地を置き、
太陽光発電により、2015年までに欧州へエネルギーの供給を開始する予定。
ドイツ銀行、ジーメンス、E.On(エーオン。ドイツの大手エネルギー会社)
が含まれている。
【参考】
BBC News
"Sahara Sun 'to help power Europe'"
2 November, 2009


☆ ☆ ☆
☆★第41回☆オバマ大統領のエネルギー革命は本物か?
~グリーン・ニューディール構想の姿~
(2009年3月1日オリジナル版)

世界の潮流として知られている
第3の波が「情報化社会」で、
その次の波は、「コンセプチュアル社会」
なのか、
「次世代エネルギー社会」なのか?

さて、その手がかりは、
オバマ政権のグリーン・ニューディール、
つまり、クリーン・エネルギー革命から読み取れる。
どこが、エネルギー革命なのか?
当分野の2大書物(パーニック/ワイルダーとT.L.フリードマン)を中心に、
あるべき姿と構想内容をひも解きたい。

エネルギー革命の柱は、
次の4つだ。

1.クリーンであること:
 ビルや家庭では、太陽や風力発電など自然エネルギー(再生可能エネルギー)を使い、
 従来の石油など化石燃料を使用せず、二酸化炭素を出さない(地球温暖化対策と石油エネルギーからの自立)。

2.自律・分散型のエネルギー・システムであること:
 従来の集中型から、地域や自宅でも、ネットワークを介しても、
 自由にエネルギーが使えること。
 「どこでもエネルギー」(停電対策、電力セキュリティの確保)

3.エネルギーの流れが双方向であること:
 Energy Internet (T.L.フリードマン)とも呼ばれているように、
 電気が電力会社からの一方向ではなくて、電力会社への双方向(電気の売買)であること。 
 電気だけでなく、電気使用情報も双方向化される。

4.スマートな電力・電気管理であること:
 送配電網でのロスを低減化。
 ビルや家庭の電気をIT活用で、省エネへ向けて効率的な電力管理。

言い換えれば、
エネルギー革命の核は、
19世紀後半から今まで続いている従来の電力システムから、
21世紀型の次世代電力ネットワーク(スマート・グリッド)システムを構築しようとすることで、
発電ー送配電ーユーザまでの、電力インフラ(電力基盤)と電気利用のシステムを、
革新的に変えようとする壮大な挑戦になっている。

発電はクリーンな自然エネルギーで、
送配電は超伝導高電圧直流送電で、
家庭/ビルの利用者はIT化された「スマートメータ」で、電力エネルギーをスマート(賢く)にマネージし、電気は蓄電され、エコカー(電気カー)にも利用しようというものだ。
送配電は、ウエスティングハウスにより標準化された従来の交流送電から、
当初エジソンが提案していた直流送電に転換し、長距離の送電ロスを大幅に低減する。
なお、この直流送電の構想は、米国だけでなく、欧州でも進められており、北アフリカのサハラ砂漠と欧州を結ぶ「欧州スーパーグリッド」のアイデアもある。

電力ネットワークシステム全体のビジネスモデルの一新を図るだけでなく、
利用者(米国民)のエネルギー(電気)まわりの意識からライフスタイルまでを大転換しようというものだ。

ここが、エネルギー革命と呼ばれる所以だ。

インターネット以前と以後のライフスタイルの変化を思い起こせば、
この来るべき革命についても想像できるかも知れない。

オバマ政権は、
グリーン・エネルギー(再生可能エネルギー)の開発体制として、
ホワイトハウスに新設した「エネルギー・気候変動担当補佐官」にキャロル・ ブラウナー女史(元環境保護局長官)を据え、関連の政府機関全体の調整役としてリーダーシップが取れる機能にしている。エネルギー関連省庁のヘッドには、エネルギー庁長官にスティーブン・チュー氏(元ローレンス・バークレー国立研究所所長、ノーベル物理学賞受賞者)、環境保護局長官にリサ・ ジャクソン氏(元ニュージャージー州環境保護局長)、商務長官にゲーリー・ロック氏(前ワシントン州知事)を指名、年間150億ドル(10年間で1500億ドル)の予算をつけることになる。
そして、IT革命に続くエネルギー革命も、プロトコルの標準化(デファクト・スタンダード)やクリーンエネルギー関連商品の開発を通じて、米国が世界を主導していきたいとの決意を示している。

新しいビジネスモデル(あるべきビジネスの姿)を基に開発を進めようとしている米国に対して、
日本はどのような体制、構想をもっているのか(いないのか)。

次回は、日本のグリーン・ニューディールの内容と日本企業の実力を見てみよう。


※スマートグリッドを視覚的に理解しやすいのは、GE(ゼネラルエレクトリック社)のWebページだ。
上図左は、GEのSmart Gridのイメージ。中央は、欧州スーパーグリッド構想(黄丸が太陽光、青色が風力、緑がバイオマス)。右図は、T.L. Friedman (2008), "Hot, Flat, and Crowded"の表紙カバーとなっている、ヒエロニムス・ボス作「快楽の園」(http://www.thebeckoning.com/art/bosch/bosch-garden.htmlより使用した)。

【参 考】

Ron Pernick, Clint Wilder (2007), "The Clean Tech Revolution: The Next Big Growth and Investment Opportunity," Collins Business
ロン・パーニック/クリント・ワイルダー(2008)「クリーンテック革命~第三の巨大ビジネスチャンス」ファーストプレス

T.L. Friedman (2008), "Hot, Flat, and Crowded: Why We Need a Green Revolution--and How It Can Renew America," Farrar Straus & Giroux

◆Smart Grid(スマートグリッド<スマートな送配電力ネットワーク>)の定義:米エネルギー省(英語)
Smart GridのIntroduction (スマートグリッド紹介):エネルギー省の冊子(英語)

欧州委員会共同研究センター・エネルギー研究所(IE of JRC)の欧州スーパーグリッド構想(英語)

畑良輔(2008年)「GENESIS 計画と高温超電導直流ケーブル~究極の持続可能な『新エネルギー』の活用について~」(日本語)

◆◇第45回「Assertive(堂々と主張する)とSubmissive(従順な)のあいだで」◇◆

2009-11-02 06:39:46 | ■ことばの背景(英語と日本語の備忘メモ)

◆◇第45回「Assertive(堂々と主張する)とSubmissive(従順な)のあいだで」◇◆


Global Japanese(グローバルに通用する日本人)の条件を、2つの英単語の間で考えてみた。

西欧での面接試験の資格要件に、Assertiveという評価項目があった。

日本の辞書には、
Assertive:
1.断言的な、断定的な 2.積極的な、強引な、有無を言わせない;独断的な (ランダムハウス英和大辞典)

断定的な、独断的な;自己主張の強い;自分に自信を持った;我の強い (ジーニアス英和大辞典)
と、

意味的には、マイナス・イメージの多い日本語訳になっている。


オックスフォード現代英英辞典(2005年第7版)を調べると、

Assertive: expressing opinions or desires strongly and with confidence, so that people take notice.
(「自信を持って、意見や望むことを強く主張する。そのことで人々の関心が集まる」)
となっている。

個性を大事にする西欧文化では、マイナスどころか、プラスのイメージである。

一方、Assertiveの反対語は、
Submissiveである。

Submissiveの日本語訳は、

1.(人が)(・・・に)服従する、従順な、おとなしい
2.(行為などが)服従的な、素直な(ランダムハウス英和大辞典)
-服従的な、従順な(ジーニアス英和大辞典)

同上のオックスフォード現代英英辞典では、
too willing to accept sb else's authority and willing to obey them without questioning anything they want you to do.
(「他人の権威をたやすく受け入れ、彼らがあなたにしてほしいことについて、疑問をもたず、たやすく従う」)

また、オックスフォード米語辞典(2005年第2版)では、
ready to conform to the authority or will of others; meekly obedient or passive.
(権威や他人の意思にたやすく従う;黙って、自己主張せずに、言われたことに従う)
となっている。

これは、西欧文化では、マイナス・イメージが強い。

海外で働くとき、
日本では価値の高い、
「謙虚さ」(Modesty, Humility)が
ややもすると(多くの場合)、
Submissiveとして理解されることが多い。

時には、この謙虚らしい態度が、
卑屈な(obsequious, servile)態度につながり、若い日本人でさえも、
『えへへ』と言った言葉や態度、笑いで、その場をとりつくろうことがある。
この態度は、Assertiveの対極に立つもので、西欧人からの評判はよくない。
また、卑屈さの正反対の「傲慢な、横柄な」(haughty, arrogant)態度になることも日本人にはよくあることだ。

グローバル日本人としては、
卑屈にならず、傲慢にもならない、
「堂々と主張する態度」の学習を進めることが必須になるでしょう。


さて、
大学院のクラスで、中国からのクラスメート(上海出身の政府機関の女性)に、日頃感心していることをぶつけてみた。

「中国人の報道官って、みなさん、堂々と意見を主張してますよね。なんだか、中国人って、アメリカ人と性格が似ている印象をもっていますよ」(わたし)
「ええ?あれは、外向きの訓練を受けているんですよ。海外へ報道するときは、はっきりと主張するのが彼らの役割なんです。ああいう態度を、国内で取ったら、みんなから嫌われますよ」(彼女)
「ええっ、ほんとですか~?てっきり、アメリカ人と同じ性格かと思っていました」(わたし)

日本の外務省は、内向きも外向きも同じようです。
クリティカル・シンキングや海外との交渉の訓練さえも、
受けていないようです。

というのは、NHK Worldで「ミャンマーの民主化」(Asian Voices 10月24日放送)を見た時に、日本人ゲストのプレゼンス(存在感)の希薄さに失望したものです。
NHKの伝統的な演出(国内、海外向け共に)は、司会者の隣に、(日本人)ゲストを据え、討論のまとめをするという構成になっています。

英語の討論能力以前に、海外ゲストの情報収集能力や多角的な分析とのギャップの大きさ、分析能力の貧弱さやプレゼンテーションのスキルのなさなど、
ああこれが日本で最高と言われている優秀な官僚の限界なんだなと、感心したのでした。


写真は、Asian Voicesと中国報道官の写真を使用した。


【参考】
Asian Voices (Oct. 24, Sat."MYANMAR: DEMOCRATIZATION")