☆★第58回「オンライン留学~海外オンライン授業はどう?」~例えば、企業コミュニケーション向けのライティング・コース。(改訂2版)★☆
Eternal Learner(終身是学生)の身なれば、時空を超えて、いつでもどこでも勉強したくなります。
2014年後半は、仕事の関係で、企業関係の効果的なコミュニケーションをとれるようなオンラインのプログラムがないかなって、Webを散策しました。デジタル時代のグローバルワークには、海外のオンライン授業が最適!
海外のオンライン授業とは?
自分の興味ある事柄で、『online, learning, elearning, certificate, program…』とググると、世界中の大学やオンライン教育機関から、たっぷりと、情報が得られました。こちらの興味はビジネス中心なので、かなり範囲が狭まりますが、アメリカだけでなく、ヨーロッパからのプログラムも盛りだくさんです。MBAのオンライン授業も10近くありました。
さて世界の高等教育機関から、自分が学びたいプログラムを見つけ、吟味して選んだら、次はadmission (入学許可)のrequirements (資格)を確認します。海外留学の時には、日本人など非英語圏の学生の場合、TOEFLやIELTSなどの英語検定試験のスコアが求められます。オンライン授業の場合も、キャンバス(通学)と同じような条件がつく場合が多いですが、大学(院)によっては、無条件で入学できる大学もあります。無条件入学の場合はついていけるかどうかは、もちろん自己責任です。
今回は、カナダ屈指の名門大学で世界的にも評価が高いトロント大学のwritingコースにチャレンジしました。このwritingコースは社会人向けクラスで、内容は、Corporate Communication (企業コミュニケーションの実際)です。講師は、カナダの犯罪小説大賞を受賞されている、現役の作家Howard Shrier氏で、メディア関係のライターとして30年以上の経歴をお持ちの作家です。トロント大学生涯教育大学院では、英語の資格は特に求められていませんでした。
コースは、10回でワンセット、週一で課題が出されます。つまり10週間(約2ケ月強)のコースになります。講師によるプレゼン資料が、テキストになります。別のコースでは、市販のテキストが指定されることもあります。オンライン授業では、テキスト以外の参考資料(本、ウェブ、スライド)も提示され、読み終わるまで一週間がすぐ過ぎてしまいます。このクラスの場合、約10名の受講者で、カナダ在住が9名、在外からは私の1名でした。
授業形態は、Webinar(講義やインタビューの動画)での授業も提供されていますが、基本は、オンライン上での情報交流で、LMS(ラーニングマネジメントシステム=先生との交流の場で、電子的な図書館、チャット、意見交換、成績評価などの機能がついてます)。
コース概要
このコース内容を概略しますと、
【1週目】
企業コミュニケーションの基本(イントロ部分。企業を取りまく関係者に対する効果的なコミュニケーションの中身、伝え方など。情報を受けとる人の立場で、何を、どう、効果的に伝えるか→これこそが、まさに今回の学ぶ目的でした!)
【2週目】
Plain language(平易な言葉)を使い、伝える。4つのレベル(単語、文章、パラグラフとページ)で相手にいかにより易しく、より受け入れやすく伝えるか。
【3週目】
ここから、架空の企業Widco社がケーススタディとして設定されます。ここは講師の作家たる所以ですね。Widco社の新工場立ち上げのニュースリリースの記事作成課題(ヘッドライン、本文、企業概略、関連写真の選定など)。
【4週目】
Widco社の社内向けのニュースレター作成。
【5週目】
Widco社長Chuck Smith氏のスピーチ作成課題。
【6週目】
社内Website向けに、Widco社の中長期戦略計画One Hundred Strongの紹介記事作成。
【7週目】
Widco社のアニュアルレポート向けの社長メッセージ作成。
【8週目】
効果的な対政府関係コミュニケーション。関連政府向けのIssue Sheet (課題/問題説明資料)の作成。
【9週目】
メディアリレーション。対メディアへのプレスリリースの書き方。
【10週目】
危機管理コミュニケーション(事故/事件が起きた時にどのように関連機関/関係者にコミュニケーションをとるか、その危機管理コミュニケーション計画の作成とその内容。
先生からの各課題へのフィードバックは、字句添削と言うよりも、欧米でのコミュニケーション・ライティングの鉄則(Plain language)を土台に、ライティングの構想、流れや相手を意識した文体へのアドバイスがありました。
毎週、フウふうの毎日でした。相手はみなネイティブ、こちらは非ネイティブ。みんなの提出した文章は、みな読むことができるし、当初は、的外れの内容で、再提出も2、3度ありました。ただ、中盤から後半部分は、それなりに苦労・ハッスルしたこともあり、思いがけずhonourableの成績(日本での『優』)をもらい、チャレンジした甲斐はあった、と思います。
論文提出の頻度は、コースにもよりますが、3~4つのAssignments(論文課題・宿題。各400~1000words)とFinal Project(最終課題。約2000~3000 words)。グループでやるTeam Assignmentsのコースもあります。成績評価は、80点以上、70~80点未満、60~70点未満までが合格となっています。なお、writingコースの場合、毎週の課題提出(約400~1000words)がありました。
本コース料金は、649カナダドル、平均のコース料金は、12週で745カナダドル。3~6コース修了して、certificateを出すプログラムもあり、専門科目の修了証書を取得して、キャリアアップをしているカナダ人も数多いと聞きました。
メリットと課題(改訂2版追加分)
オンライン授業というと、日本では通信教育のイメージがありますが、どうしてどうして、ITを使うと、キャンバス(通学)での授業とさほど変わりない感じです。Webinarであれば、友達が側にいないだけで授業に参加している気になることもあります。ただ、欧米系の授業は、ソクラテスの伝統がありますから、双方向が基本で、議論が当たり前です。オンライン授業の場合、その短所をdiscussion board、blog、ファイル交換やチャット機能によって補完している訳です。
もしかすると、対面での議論が苦手な日本人には、この文字を使ったオンライン授業の方が、生の授業よりも効果的かも知れません。ただ、キャンバス、オンラインいずれにしても、教員の負担は大変だと思います。一方向の講義よりも、資料提供や知識交流のための時間が十分に取れないと効果がないからです。双方向の場合のメリットもあります。議論中心の欧米型授業に親しんでいる方はご存じでしょうが、教師だけからでなく、同じ社会人学生との知識交流は、大きな財産になります。実際の仕事で得られた知識や知見が共有できるのは、素晴らしいことです。
オンライン・プログラムは、大学によっては、誰でも入学できるものもあるし、無料のものも提供されています。Appleをお持ちの方は、App StoreからiTunes Uをダウンロードすると、ハーバード大学やMITなど有名大学教授のレクチャーが聴けたり、Webinarで視聴したりできます。
オンライン・ラーニングは、キャンバスに通うことがムリな人や時間の自己管理をやりたいグローバルワーカーには最適だと思います。おすすめ!
☆トロント大学生涯教育大学院
School of Continuing Studies, University of Toronto
☆講師ハワード・シラー氏のHP