Think Globally, Act Regionally:『言葉の背景、カルチャーからの解放、日本人はどこへ往く』

身のまわりに見受けられるようになった「グローバル化」と生きる上での大事な「こころの健康」。さまざまな観点から考えます。

☆★第70回[欧米最新情報] 対人関係療法(IPT)の今(その5)~ IPT Basicのトレーニング)に参加して~☆★

2020-08-26 17:10:20 | メンタルヘルス

☆第70回[欧米最新情報] 対人関係療法(IPT)の今(その5)~ IPT Basicのトレーニング(シドニー、豪)に参加して~☆

前回を振り返りましょう。「アセスメント/初期フェーズ」では、「現状分析と治療方針(Interpersonal Formulation)」および「IPTサマリー」を協同で作成しました。初期フェーズの終わりには、一般的に治療上の考慮をします。たとえば、もし、クライアント(患者)に強迫観念的な症状があるとしたらCBT (認知行動療法)が適用できるかどうか、彼(女)の養育歴や慢性病の母親との関係を考えると、精神力動的療法はどうだろうか、家族療法はどうだろうか、などを考慮します。そして、クライアント(患者)の抑うつ症状の緩和には、「対人関係療法(IPT)」がより適合すると判断し、治療方針にクライアントの合意が得られたら、正式な「治療契約」を結び、中期フェーズへと進みます。ちなみに、対人関係理論における、アタッチメントとコミュニケーションの関係は、下図を参照ください。

さて、IPTについての第5回目は、前回までの「アセスメント/初期フェーズ」に続いて、「中期フェーズ」に入り、3つの対人関係問題エリア(対人関係の不和、役割の移行、悲哀と喪失)に集中することになります。

「対人関係の不和」について、「対人関係不和グラフ」を用いて、クライアント(患者)の心を見えるようにします。縦軸に「問題の大きさ」を、横軸に「関係の重要さ」(図参照)を考えます。

まず、クライアント(患者)に、不和の相手に対して、自分自身が思っている、「関係と問題」について、どのあたりにあるかをプロットしてもらいます。次に、相手が自分をどう思っているか、を推測してもらい、プロットしてもらいます。

治療者は、どこに不和があるのかについて、不和の関係にある2人の具体的な日常会話の中から、見出していきます。たとえば、クライアント本人が、そのメッセージを的確な言葉で伝えていないのではないか、あるいは、不和の相手に対して、本人の期待が非現実的ではないのか、という視点でとらえ、両者間の関係-問題のギャップを縮めるようにします。具体的なメッセージのサンプルをいろいろ提供していきます。そして、何度もロールプレイで練習させて、頭だけでなく、具体的に、その場で応用できるようにトレーニングを進めていきます。

対人関係コミュニケーションにおいては、友好的か―敵対的か、支配的か―従属的かによって、アタッチメントのスタイルが決定されることが多いですが、ここでは、その詳細にはふれずに、より効果的に相手の支援が得られるような、コミュニケーションの一般的なやり方(コミュニケーション分析)を5つあげて、「役割の移行」と「悲哀と喪失」で用いられる「タイムライン」手法へといきましょう。

効果的なコミュニケーションの方法:

  • 思いやりをもって頼む
  • 現実的なことを頼む
  • 自分が必要としていることを説明する
  • なぜそれが必要かを説明する
  • 手助けができる人に頼む

「役割の移行」とは、2つの側面があります。1つは、ライフサイクルでの役割の移行(青年期、出産、閉経期・更年期、身体能力の低下)、もう一つが、社会的な役割の移行です。就学、結婚、離婚、移転、同性愛の公表、雇用、失業、引退、移民、転勤、配置転換などなどです。

別の面からみると、

変化への適応(新しいアタッチメント、新しい社会的支援、自分自身や他人への現実的な期待)と変化についての両義性(アンビバレンツ)、つまり、感情を引き出すことが課題となります。

「対人関係の不和」でのコミュニケーション分析にあたるものが、「役割の移行」では、タイムラインでのクライアント(患者)の役割移行やナラティブ(ストーリー)の整理と感情の3S(整理整頓清掃)、新しいスキルの獲得、そして新しい社会的援助の開発・関与への治療者からの手助けとなります。

「役割の移行」と「悲哀と喪失」で共通して用いられるのが「タイムライン」です。何のきっかけで、心が不調になったのかを「見える化」するためです。クライアント(患者)の複雑なナラティブ(ストーリー)を整理して、本人に分かりやすく図式化します(下図参照)。


★☆第69回[欧米最新情報] 対人関係療法(IPT)の今(その4)~ IPT Basicのトレーニング)に参加して~☆★

2020-08-25 15:20:01 | メンタルヘルス

第69回[欧米最新情報] 対人関係療法(IPT)の今(その4)~ IPT Basicのトレーニング(シドニー、豪)に参加して~

IPTの構造(IPT Structure タイトル上図)にあるように、治療プロセスは、4期に分けられます。アセスメント/初期フェーズ(1-3セッション)、中期フェーズ(4-12セッション)、終結期(1-4セッション)、および継続治療期です。

対人関係療法(IPT)の原則は、治療者(セラピスト)がIPTをクライアント(患者)に施すことではありません。その代わりに、クライアント(患者)とともに、IPTをすすめるのです。対人関係療法は、傾聴と指示のあいだの創造的な緊張を伴ったもので、クライアント(患者)に適するように仕立てるべきです。固定的で柔軟性のない治療法(セラピー)であってはいけません。

さて、「アセスメント/初期フェーズ」では、精神医学的な評価を完成すること、「対人関係調査図(Interpersonal Inventory)」と「現状分析と治療方針(Interpersonal Formulation)」および「IPTサマリー」を、クライアント(患者)と一緒に、協同作業として、作成することです。 とくに、アタッチメントの評価については、クライアント(患者)自身に直接質問をしたり、他者からの情報、共感的な、時折指示的なProbes(探索法)により行います。

「対人関係調査図(Interpersonal Inventory)」は、前々回ふれましたので、「現状分析と治療方針(Interpersonal Formulation)*」および「IPTサマリー」について説明しましょう。

対人関係フォーミュレ―ション(Interpersonal Formulation*)は、対人関係の「現状分析と治療方針」をまとめたものです。「医学モデル」ではなく、「生物心理社会/文化/スピリチュアルモデル」でまとめあげたものです(上図)。同モデルに基いて、「生物学的要因」、「社会的要因」、「心理学的要因」、「文化要因」、そして「スピリチュアル要因」ごとにまとめていきます。それぞれの中身は、図を参考にしてください。

「生物学的要因」には、年齢や性別、子供、過去の病歴などが入ります。「社会的要因」では、既婚かどうか、配偶者や両親が手助けしているかどうか、身近な人と不和がどうかなどを含みます。「心理学的要因」とは、アタッチメントスタイルはどうか、パーソナリティ面での特長などを記入します。「文化要因」では、伝統的な性別の役割、家族重視かなど文化的面を含みます。そして「スピリチュアル要因」は、宗教や人生の価値観などです。

これらの「生物心理社会/文化/スピリチュアル」面が、個人に影響を与えて、対人関係の危機が起こり、IPTでは、3つの対人関係問題エリアを設定しています。対人関係の不和、役割の移行、悲哀と死、の3エリアです。この対人関係問題エリアは、単一であるというよりも、複数のエリアが混在する場合が多いので、エリアごとに、具体的な項目をあげます。たとえば、対人関係の不和-妹、役割の移行-出産後、悲哀と死-不妊、などです。

「現状分析と治療方針(Interpersonal Formulation*)」を作成したら、初期フェーズのまとめとして、「IPTサマリー」(上図)の作成に入ります。「IPTサマリー」は、「現状分析と治療方針(Interpersonal Formulation)」を受けて、心の不調となる原因を4つほど挙げて、本人の強み(Strengths)とともに、治療計画の目標をかかげたものです。

この「IPTサマリー」をもとに、中期フェーズへと進んでいきます。中期フェーズでは、各対人関係問題エリアに適する手法、たとえば、「タイムライン」や「不和グラフ」などを活用し『心の見える化』を図り、3S(心の整理・整頓・清掃)を促したうえで、新しいアタッチメントや社会援助の方法などを考えていきます。

注)「対人関係調査図(Interpersonal Inventory)」、「現状分析と治療方針(Interpersonal Formulation)*」および「IPTサマリー」は、講義で使用された資料を一部改変して作成している。

*なお、認知行動療法(CBT)では、Formulation (フォーミュレ―ション)の訳語としては、「問題の成り立ちを説明する仮説」であり、介入方針を定めるための作業仮説となるもの、との定義がある。(「改訂版 認知行動療法」2020年放送大学教育振興会) 


☆第68回[欧米最新情報] 対人関係療法(IPT)の今(その3)~ IPT Basicのトレーニングに参加して~☆

2020-08-24 15:04:23 | メンタルヘルス

 

☆第68回[欧米最新情報] 対人関係療法(IPT)の今(その3)~ IPT Basicのトレーニング(シドニー、豪)に参加して~☆

前回の続きです。

今回は、IPTを支持する中核理論の「アタッチメント(愛着)理論」です。

ジョン・ボウルビィ(John Bowlby、1907年2月26日-1990年9月2日)が確立したもので、メアリー・D・エインスワース(Mary Dinsmore Salter Ainsworth、1913年12月1日-1999年3月21日)らが発展させた理論です。幼児と母親とのアタッチメント(愛着)行動の研究調査から始まり、現在では成人のアタッチメント(愛着)スタイルの理論が揃っています。Scott Stuart博士の講義では、バーソロミュー・ホロビッツの4象限モデル(参照:タイトルの右図)を使っての説明がなされました。臨床現場で有効だと立証されている、ということです。

横軸に『自己評価』(I'm OK.「自分は大丈夫」⇔I’m NOT OK.「自分は大丈夫でない)、縦軸が『他人への評価』(You’re OK.「あなたはOK」.⇔You’re NOT OK。「あなたはOKでない」)。4象限で4つのアタッチメントスタイルになります。

タイトルの右図のように、左上から時計回りに、「安全・安心型」、「不安・心配型」、「恐れ・不信型」そして「拒絶・回避型」です。治療者(セラピスト)は、安全・安心型のポジションで、クライアント(患者)がその他の3つのスタイルが一般的です。アタッチメントスタイルは、継続しやすい傾向がありますが、固定化はしない、と説明がありました。

講義では、実際の面談ビデオを視聴しながら、治療者とクライアント(患者)の一挙手一投足をprobe(観察)することになります。区切りのいいところで、講師Scott博士から受講生へ質問が投げかけられます。たとえば、「クライアント(患者)の感情は?」「クライアントのアタッチメントはどうですか?」などなど。受講生からは、積極的な反応がなされました。

「アタッチメント(愛着)理論」が幅広い、マクロな社会的文脈で記述するのに対して、「対人関係論」(Kiesler DJ, Benjamin LS, Horowitz LM) は、個人間でのミクロなコミュニケーションを記述します。両理論は密接な関係があり、対人関係論は、クライアント(患者)の不適応なコミュニケーションパターンが、「今-ここ」での対人関係の困難を引き起こすと考えます。「社会理論」(Henderson S et al, Brown GW et al) は、社会的援助のインパクトを理解するのに有効な方法ですが、上記2理論と比較すると重要性は小さくなります。

次回は、「現状分析と治療方針(Interpersonal Formulation)」と合わせて「IPTサマリー(治療計画)」の説明に入ります。

注1)バーソロミュー・ホロビッツの4象限モデル

Kim Bartholomew & Leonard M. Horowitz (1991) “Attachment Styles Among Young Adults: A Test of a Four-Category Model”

注2)タイトル左図は、「人工代理母親への子ザル実験」(米心理学者ハーロウ H.F.Harlow、1905年10月31日-1981年12月6日による)。アカゲザルの赤ちゃんは、ミルクの出る針金の冷たい代理母よりも,ミルクの出ない肌触りの良い毛布の人工代理母に長い間しがみついていた。写真は、Atkinson & Hilgard’s “Introduction to Psychology (14th Edition)” p90から引用した。©Martin Rogers/Stock Boston

 


第67回[欧米最新情報] 対人関係療法(IPT)の今(その2)~ IPT Basicのトレーニングに参加して~

2020-08-23 14:33:19 | メンタルヘルス
 
 
第67回[欧米最新情報] 対人関係療法(IPT)の今(その2)~ IPT Basicのトレーニング(シドニー、豪)に参加して~
 
前回の続きです。
 
「医学モデル」では、症状の背後にある病気を診断し、診断に基づいて有効な治療法を選択し、病気を治療しようとします。言いかえれば、うつなどの症状は、患者が抱えている病気(障害)から直線的に引き起こされるものであり、医師等が個別的に治療をする、というモデル(考え方)です。多くの身体的な疾患ではこのモデルは有効に機能している、と言われています。
 
当初のIPT(講師Scott博士は、「classic IPT」と表現されていました)では、「医学モデル」に沿って、患者に、「病者の役割」を与えていました。つまり、医学的に病気なのだから、しばらくの間、患者は人生の責任から免除され、変化の責任を引き受ける前に他人に許可された上で回復するように治療されるべきだ、と患者には指示されます。患者が「病者の役割」に同意しようがしまいがお構いなしでした。患者の経験についての協同的な理解を進めていくよりも、むしろ単純に「病者の役割」を押しつけただけでした。
 
この時代遅れの生物学的疾患モデル(医学モデル)によって、少なからずの問題が生じます。多くの臨床家が認めているように、医学分野は全体として、病気や機能障害についてより幅広い見解をとってきています。たとえば、糖尿病は、もはや単に『生物学的疾患』としては見られていません。そのかわり、心理学的、社会的機能、文化的、スピリチュアル的要因の文脈で理解されています。特に2型糖尿病は、飲食行動を引き起こす心理学的要因や治療にかかわる文化的影響が病気の発生や継続に、非常に重要なことが知られています。
 
精神医学的な病気も同じです。糖尿病のように、うつ病や他の精神疾患も生物学的基盤は疑いないことですが、と同時に、社会的・文化的文脈の中に組み込まれていて、心理学的・スピリチュアル的な意味に満たされています。患者に対して、制限された時代遅れの「病者の役割」を押しつけることは、患者自身のユニークな個人的経験を無視し、「害」とも言えます。より危険なことは、病者の役割をもつことで、治療を「座って待つ」ことを強い、彼(女)自身の社会的環境内での変革や対人関係の変化を促す責任をとることが難しくなることです。患者自身がその回復に積極的になるというエビデンスに、「病者の役割」は相反しています。そこで、「生物心理社会/文化/スピリチュアルモデル」へと進化したわけです。なお、講師Scott 博士は、患者とクライアントの用語を半々で使っておられました。
 
説明が長くなったので、他の重要な「アタッチメント(愛着)理論」へ行く前に、最初の演習について話しましょう。
 
インテ-ク(初回面接)のときに、「対人関係調査図(Interpersonal Inventory)」を作成してもらいます。対人関係調査図は、対人関係の焦点の置き換えが脅かされたときに、対人関係療法の治療プロセスを照らし出してくれる灯台のようなものです(タイトルの上図)。クライアント(患者)の社会的なネットワークの概略図で、「対人関係サークル図(Interpersonal Circle)」を使用します。同心円を2つ書いた図で、◎の大きい図です(参照:タイトルの下図)。
 
中心の円に最重要人物=最も身近にサポート(援助)してくれる人の名前(間柄)を、中心円の外側の円に密接にサポート(援助)してくれる人物を記入します。円外には、密接ではないですが、やはりサポートしてくれる人(拡張援助者。家族など)を書きます。あくまでも、クライアント(患者)が、誰を、どの円に記入するかを決定します。この対人関係調査図の記入に際しては、対人関係問題、コミュニケーション、ナラティブ、アタッチメントスタイルなどを参考にしてもらいます。ナラティブとは、クライアント(患者)自身を人生の専門家と位置づけ、個人の語り(ナラティブ)こそ現実、とみなして重視することです。アタッチメントスタイルについては、次回説明します。
 
演習ではまず、講師のScott博士が、自身が作成したご自身のInterpersonal Inventoryを提示し説明されました。その後、2人x14組(合計28人、講師含む)に分かれ、それぞれ、治療者とクライアント(患者)の役割で、面談をしながら、各自のInventoryを作成します。その後、立場を変えてトレーニングが進められました。Inventory作成時の話の引き出し方なども具体的質問方法などがアドバイスされました。
 
次回は、IPTの理論的支柱である、「アタッチメント(愛着)理論」、「対人関係論」、「社会理論」の概略を説明していきましょう。
 
注)タイトル上図の「対人関係調査図(Interpersonal Inventory)」と「対人関係療法(IPT)」との関連さし絵(IPTのガイド役としての対人関係調査図)は、Scott Stuart & Michael Robertson (2015) Interpersonal Psychotherapy A Clinician's Guide 2nd Edition p75から引用した。

第66回 [欧米最新情報] 対人関係療法(IPT)の今 ~IPT Basicのトレーニングに参加して~

2020-08-20 15:11:25 | メンタルヘルス
 
第66回[欧米最新情報] 対人関係療法(IPT)の今 ~ IPT Basicのトレーニング(シドニー、豪)に参加して~
 
ライアン・ニーミック博士(Ryan Niemiec, Psy.D. 米国オハイオの非営利団体VIA Institute on Character所長)の「ポジティブ心理学ニュース」サイトで恒例の、2019年版のポジティブ・ムービーがなかなか発表されない(別の研究に忙しいらしい)ので、別の話題を。
 
最近興味をもっているのが、メンタルヘルス(心の健康、精神的健康、精神保健などと呼ばれます)で、その流れで、ポジティブ心理学の本を数十冊読み込みました。精神疾患を治すことよりも、個人などの強みや長所を研究する心理学の分野で、創設者のマーティン・セリグマン(Martin E. P. Seligman、1942年8月12日- )は、うつ病と異常心理学に関する世界的権威であることはよく知られています。
 
さて一方で、コンサルタントの業務をやっていると、どうも、メンタルヘルス的に変調をきたしているようだな、と思える経営者(会社員)にも出会います。そこで、彼らに何もしてやれないよりも、少しこの分野を研究し、何らかのサポートをしようと思い立ちました。
 
海外では、「対人関係療法(IPT)」がうつやストレスに効果があると知り、国内で出版されている「対人関係療法(IPT)」の本を数十冊(なぜか創元社の本が多い)読んでいたら、知人のオーストラリア人から、「IPTに興味あるんなら、オンラインでやっている大学があるよ」との情報を得て、シドニー大学生涯教育センターにたどり着きました。シドニ―大学は、豪州で最古(1850年設立)の大学で、医学や健康科学にも実績があるようです。
 
コロナの影響で、キャンパスとオンラインの両方でIPTコースが開講しているということで、これはラッキーだと思い、まず、センター事務局に受講資格をたずねると、精神科医や臨床心理学者でなくても、興味のある方がたに幅広くオープンにしており、歓迎します、との返答があり、早速、受講登録をしました。
 
講師は、IPT Institute (対人関係療法研究所、IPTの国際的認定機関)の所長、Scott Stuart, MD 氏で、テキストは、Interpersonal Psychotherapy A Clinician's Guide 2nd Editionでした。
 
コースは、Level A:Basic (入門編)で、3分の2が講義で、残りが演習形式でした。
 
参加者は27名で、大まかですが、半数がSW(ソーシャルワーカー)、精神科医と臨床心理学者が数名ずつ、残りは、看護師や医療関係者とその他(私)といった感じで、シドニー在住者がほとんど。アジア系が少なくとも5~6名いたようでした。
 
コースは、7月11日からスタート。初回は、全員の自己紹介を経て、IPTの理論編の講義から始まりました。
 
IPT2.0(最新版)の特長を箇条書きで書くと、
  1. IPTは固定的な療法ではなく、実証的な研究方法で日々進化している。
  2. 「医学モデル」(古典的IPT)から、「生物心理社会/文化/スピリチュアルモデル」へと変革している。
  3. 理論的支柱は、「アタッチメント理論」、「対人関係論」、「社会理論」から来ている。
  4. IPTの手法(tactics)として、「対人関係調査図(Interpersonal Inventory)」、「対人関係問題エリア(対人関係の不和、役割の移行、悲哀と死[喪失]、対人関係過敏/欠如)」、「現状分析と治療方針(Interpersonal Formulation」、「IPTの構造(短期間時間制限の療法。10-20セッションと継続療法その他)」がある。
  5. IPTの技法としては、「共通的な面接技法(カール・ロジャーズ(1902〜1987) のように暖かく、共感的で、正直誠実な、無条件のポジテイブな心遣い)」、「コミュニケーション分析技法」、「具体的不和の会話分析(Interpersonal Incidents)」、「問題解決(Problem Solving)」、「ロールプレイング」がある。
特に、病者の役割(sick role)のデメリットを克服するべき、2.「医学モデル」から、「生物心理社会/文化/スピリチュアルモデル」へと進化したこと。アタッチメントスタイル(ボウルビィ3象限➡バーソロミュー・ホロビッツの4象限モデル)の重要性とコミュミケーション戦略との関わりあいを強調されていました。
 
次回以降、演習(スーパーバイジング)を含む、詳細内容に進んで行きます。