石川県立美術館の若冲展を見てきました。
東京都美術館で2016年に開催された「若冲展」も、同年の京都市美術館での生誕300年「若冲の京都 KYOTOの若冲」も行くことが出来ませんでしたので、金沢で若冲が見られるとあっては、これはもう見逃すわけにはいきません。
狩野博幸さんの「若冲」も、澤田瞳子さんの「若冲」もすでに読了して事前の知識もしこたま仕入れ、もう伊藤若冲は他人ではありません。最近再発見されたとか、絵を描くことだけに没頭した金持ちの趣味人などという陳腐な過去の知識はもうすでに廃棄処分としました。家業の青物問屋「桝源」の経営を立派に切り盛りし、40歳で家督を弟に譲ってからも、錦市場の営業認可をめぐっての幕府の小役人からの横車には死の危険さえも顧みずに先頭に立って跳ね返し、85歳(実際は83歳)まで多くの独創的な絵を描き続けた若冲。
狩野博幸さんの講演は当日の入場整理券にあぶれて聞くことが出来なかったので、日をあらためて7/2に、展示品の鑑賞だけのために石川県立美術館に行ってきました。東京の若冲展の5時間待ちなどという報道を見ていましたので、ある程度の覚悟がありましたが、待ち時間などなく、列を作ることもなく、ゆっくりと涼しく快適に鑑賞できました。ただ、若冲から想像できる色鮮やかさはあまりなく、むしろ淡彩さが目立つ展示でした。若冲ときたら「動植綵絵」と私なんかは思うのですが、そういった着色の作品がごく少なく、ほとんどが墨画だったせいですが、まあそういった作品が少なかったので、入場者が思ったほどではなく、ゆったりと鑑賞できたと有難いと思うべきなんでしょうね。堪能するところまでゆくには、やっぱり東京か京都にでも出かけるしかないということだと思いますが、今回は若冲にほんのちょっと触れたぐらい、若冲入門くらいの感じですね。
数少ない着色の鶏画の色彩の鮮明さや描写の繊細さにはさすが若冲!、私の想像していた若冲や!と思わされましたが、38点の作品をずっと鑑賞しているうちに、ほとんどすべての展示作品にある「若冲居士」という丸い落款が、頭の中でやたらに大きく印象に残ったという感じがありました。今度鑑定の依頼が来たら、きっと役立つと思うのですが、・・・そんなこと、あるはずないか!
美術館を出ましたら、一気に熱気が襲ってきました。何しろこの日は35℃もあったんです。石川県立美術館は金沢の超有名な特別名勝「兼六園」のすぐお隣の「本多の森公園」の一角にあり、国立近代美術館工芸館の移転工事も進められていて、21世紀美術館や県立歴史博物館も近いという金沢を代表する緑豊かな涼やかなところなんですが、そんな周りの雰囲気も、先ほどの若冲の余韻を感じる余裕もすっ飛び、即、駐車場の車に逃げ込みました。家に帰ってもまだ車が冷えていないくらいの暑さでした。もっとも、家まで歩いても10分くらいですから、冷える間もなかったということもあるのですが。
若冲は、また、今度ゆっくりと考えて報告させていただこうと思っています。
そうそう、この展覧会は本当は「若冲と光瑤」という展覧会です。光瑤はお隣、富山県出身の日本画家ということですが、彼に関しましてもまた次の機会にということで、それまでに勉強しておこうと思っています。