東京昆虫記

東京の自然環境に棲む昆虫たちの生態写真
.My Real Insects Photo Style in Tokyo.

ヤゴって面白い 11

2025年01月29日 | ヤゴ
久しぶりのヤゴネタ。
東京都に生息するトンボの成虫だけでは物足りないく、各種ヤゴの姿と生態を知りたいと思い、
コツコツ地道に採集し、一時的に飼育しているヤゴを紹介。今回は昆虫少年に大人気なギンヤンマ。

ギンヤンマのヤゴ集団

マイルームを飼育部屋としている為、成長を促さない様にこの冬は寒々な暖房厳禁生活中。
複数を一緒に飼育する場合は、同じサイズ毎に揃えると、比較的、共喰いのリスクを回避できる事がわかった。それでも脱皮の最中には狙われやすい。その脱皮の時も観たいと思っているが、いつの間にか行われていてまだ観察が叶わない。また、羽化はフィールドで観察する事に拘っている為、それ以外の中齢〜終齢幼虫の飼育方法を改めて別の機会に書く予定。ヤゴは観察、撮影後に採集場所へリリース。

ギンヤンマの三兄弟

同じギンヤンマのヤゴでも体色には個体差があり不思議で面白い。何故、体色が違うのかと言うと、棲んでいる水辺の色、水中に在る枯葉などの植物に合わせた擬態色を持つ事で、天敵からの捕食のリスクを回避していると考えられる。

ギンヤンマのヤゴのオスメス

ギンヤンマだけではなくヤンマ科のヤゴは腹面、尾部の中央、少し上にトゲ(成虫時に必要な産卵管)を持つのがメスで無しがオス。特に終齢幼虫だと分かりやすい。

ギンヤンマとクロスジギンヤンマのヤゴ

観察をする中、ギンヤンマの終齢幼虫だけでも個体の経過により特徴に微妙な違いが観られる事が解った。ギンヤンマとクロスジギンヤンマのヤゴを並べて撮影。意地悪かもしれないが外見の違いでは見分けられないので参考にしないように。これらも観察を続けて自分なりの分析を楽しみたい。

画像は全てNikon D300S+AF-S DX Micro NIKKOR 40mm f/2.8G

10月下旬のヤゴ調べ

2024年10月29日 | ヤゴ
前回、ミズカマキリを観察できた事が嬉しく、再びヤゴを含めた水生昆虫の調査を楽しんだ。

水辺環境


Nikon D810+AF-S Nikkor 20mm f/1.8G ED
どちらも隣接して水深が異なる水辺をガサガサしてチェック。

すると...

ギンヤンマの終齢幼虫

Nikon D810+AF-S Micro NIKKOR 60mm f/2.8G ED
今の時期の終齢幼虫は来年の春に羽化。ギンヤンマのヤゴは獰猛。
小型を襲う習性を持つので共喰いを避けるため同サイズ毎に分けて容器に入れるよう心掛けている。
飼育時も同様で毎日エサを与えている状況下では今のところ共喰いは見られない。

Nikon D810+AF-S Micro NIKKOR 60mm f/2.8G ED
隠れる場所がないので姿をオープンにされるのを嫌がり仲間同士しがみつく様子が見られていた。
特にマルタンヤンマのヤゴは臆病で警戒心が強く、即座に身を隠す習性を持つことが観察から伺えた。

マルタンヤンマとギンヤンマの比較

Nikon D810+AF-S Micro NIKKOR 60mm f/2.8G ED
大きさは2cm程の個体。マルタンヤンマはギョロ目で枯葉色。ギンヤンマは抽水植物に擬態した体色。違いは一目瞭然。前回、運よく捕れたミズカマキリはまぐれだったようで、ギンヤンマとマルタンヤンマのヤゴが無限に捕れる一方、ヤゴ以外の水生昆虫は少なくヒメガムシ、マツモムシ、その他にヌマエビ、アメリカザリガニ。それから3mm程の極小型ゲンゴロウの仲間を捕獲したものの種類の特定は次回に持ち越し。ヤゴは撮影用に多少持ち帰っているのでじっくり撮る予定。

撮影日10月26日

秋のヤゴ調べ

2024年10月09日 | ヤゴ
ここは7月にカトリヤンマの棲家の記事で掲載した水辺環境。その時よりもだいぶ減水が見られ晩秋には渇水に至るシステム。渇水する前が最大のチャンスで、この時期は何が捕れるのか調査を楽しんだ。

Nikon D810+AF-S Nikkor 20mm f/1.8G ED
水深が浅い溜まりを網でガサガサ。すると...


Nikon D810+AF-S Micro NIKKOR 60mm f/2.8G ED
ギンヤンマのヤゴの天下。その他の水生昆虫はマツモムシ、キベリヒメクロゲンゴロウ。それと、どう言う経路で侵入するのかが気になる、ここでは珍しいアメリカザリガニの幼体も。1匹でもアメリカザリガニがいたら生息数は100匹以上と言う説があるけれど、それは残念な都心部の公園池。ここに今100匹以上いるのはギンヤンマのヤゴ。
また、ギンヤンマの終齢幼虫ならこのサイズのアメリカザリガニを捕食できるはず。本当にギンヤンマのヤゴがアメリカザリガニを食べるのかを見たいので実験用に持ち帰った。

これだけ多数のヤゴが生息しているのであれば、希少な水生昆虫がいても不思議では無いと思い、
もう一箇所、似たような環境下で気になっていた水辺に入ってガサガサした。すると、お!いた。

ミズカマキリとギンヤンマの終齢幼虫

Nikon D810+AF-S Micro NIKKOR 60mm f/2.8G ED
比較用にギンヤンマの終齢幼虫を入れたけれどヤゴ以外で大型の水生昆虫のミズカマキリに出会えるとは最高に嬉しい。ミズカマキリが生息すると言う事は近縁種のタイコウチ、コオイムシ、東京都絶滅とされているタガメの可能性にも期待できるかも知れない。雨でも来た甲斐あり。冬場に水が無くなる事により外来種の繁殖が断たれる。そんな数少ない水辺こそが在来水生昆虫の棲家。ただ、彼らの外敵は水中に棲む外来種だけでは無い。

野生動物の足跡

Nikon D810+AF-S Micro NIKKOR 60mm f/2.8G ED
岸辺には渇水を待ち望んでいる魔の手の存在あり。アライグマやイタチ等の野生動物の足跡が点在していた。飛翔移動可能なミズカマキリ、キベリヒメクロゲンゴロウ、マツモムシ以外のヤゴ達の運命は...残念ながら野鳥や雑食性野生動物の餌食になってしまうだろう。助けてあげたいけれど、自然の摂理に手出ししてはいけない。

※ フィールドでヤゴを撮影する場合は予め白いトレーとペットボトルに水道水を入れ持参して使用しているが、ここは水質がクリアだったので水辺の水を使用した。トレーに入ったゴミはスポイトで取り除いている。また、晴れているとトレーの周りとヤゴの下に影が多く出てしまい映えないので、天気が悪い日の楽しみにしている。

撮影日:10月6日

ヤゴって面白い 10

2024年09月02日 | ヤゴ
ギンヤンマ 雄(終齢羽化直前)

Nikon D300S+AF-S Micro NIKKOR 60mm f/2.8G ED ※クリックして拡大
7月下旬に採れたギンヤンマのヤゴの飼育を続けたところ終齢羽化前までに成長。中身が透けて見える美しい時を撮影。胸部は黄緑色で腹部はピンク色。特に注目したのは翅の部分。扇子折りのように小さく収縮されているところが非常に素晴らしい。すぐに羽化しそうな様子だったので失敗なく羽化できるように、娘が夏休みの観察用に学校から持ち帰ったバケツの田んぼに移動。流石に台風の影響による荒天時に羽化はしないだろうと思っていたら、無事に羽化して飛んで行ったと娘から連絡があった。観たかったのに残念。真夏の気温が高い条件であれば例え荒天でも羽化する事を知るきっかにもなった。

ヤゴって面白い 9

2024年08月30日 | ヤゴ
ホソミオツネントンボ(左)とオツネントンボ(右)

Nikon D300S+AF-S Micro NIKKOR 60mm f/2.8G ED ※クリックして拡大
越冬トンボ三種のヤゴの比較写真。三種類とも終齢羽化前で揃えた。違いは一目瞭然。ホソミオツネントンボは茶褐色タイプも存在するけれど今回はグリーンタイプを選択。オツネントンボは大きく立派な尾鰓を持つ。

ホソミイトトンボ

Nikon D300S+AF-S Micro NIKKOR 60mm f/2.8G ED ※クリックして拡大
ホソミイトトンボはアジアイトトンボや前記事のアオモンイトトンボにも似ているけれど、より小型。特にホソミイトトンボは同士の争い等で尾鰓が欠損しやすい為、管理するのに苦労した。尾鰓(しっぽ)が欠損しても成虫の身体の一部にはならないので特に問題は無く、尾鰓は呼吸器官でもありトカゲのしっぽと同じ役割を持つ。イトトンボのヤゴを眺めていると、一定のテンポで尾鰓を左右に振る行動が観られる。あれはいったい何をしているのだろうか、気になるところ。