幻の石
「茨城県の石ころ‐1」で記載した「八溝石」なんですが、大体こういった観賞石などの場合はどなたかが詳細を取りまとめネットでUPしてあるのが普通なんですが、この八溝石はネットで調べても図書館で調べてもそういった詳細を記載したものが見当たりません。そういった意味ではある意味幻の石なのかもしれません。ということで俄石拾いとしては、「八溝石」は地元の石ということでもありますのでちょこっと調べてメモ程度に書き留めておこうかなと思い立ちました。(とはいえ地質学的な知識や観賞石の見識もそれほど持ち合わせている訳ではありませんので、ネット上のあちこちの断片的な記載や地元の伝承そしてフィールドワークなどから集めた情報にプラス推測、憶測を加えて記載しております。従って手違い、間違い、勘違いは多々あるかと思いますのでその点を踏まえて読んで頂ければ幸いです)..
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八溝石-1
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1.広義の八溝石
八溝石を産出する八溝山は不思議な山なんです。奥久慈男体山(654m)や筑波山(877m)はかなり遠方からでもその容姿をはっきり見せてくれるんですが、八溝山は茨城県の最高峰(1,022m)を誇りながら茨城県側からは容易に頂上を見せてくれません。そこそこ高い山や一定の場所からは何とかぎりぎり見えるんですが、それ以外は山容も見えません。たぶんこれはその成り立ちに秘密があるのではないかと思い調べてみました。
日本列島がまだ大陸だった1億8000万年前のジュラ紀に、海洋プレートが大陸プレートの下に沈み込み海洋プレートの表層堆積物(付加体)が大陸プレートにめくりあげられ剥ぎ取られて積み重なり陸側に付着しました。その堆積物(付加体)にプレート運動の強烈な力が加わりちぎれたり(断層)、捻じ曲げられたり(褶曲)を繰り返しながら八溝山(エリア)を形成していきました。八溝山は火山みたいに噴火物が積み上げられて出来た山ではなく地域一帯がモッコリ盛り上がり、さらにその後の浸食などにより谷が形成されて山となったようです。そういうことで全体的にべたーっと盛り上がっていることから頂上が見えずらいのではないかと思われます(たぶん)。
それはともかく八溝エリアの構成物は海底の堆積物である砂岩、泥岩、珪質頁岩、チャート、石灰岩、緑色岩などです。実際に八溝山を歩いてみるとこれらの岩が地層となっているところやレキ状に混在して積み重なったりしているところが数多くみられます。そして脆いところがかなりあって道路にボロボロと落ちた石があちこちで見られます。
ということで広義の意味の八溝石はこれらの砂岩、泥岩、珪質頁岩、チャート、石灰岩、緑色岩などということになります。八溝山の北側山麓に源流を発する久慈川には硬質の久慈川石が見られますが、これも八溝エリアから流れ出ていると考えれば広義の意味では八溝石の範疇に入るのかもしれません。さらに八溝山の西側山ろくの栃木県旧黒羽町、旧馬頭町の三蔵川、松葉川、小口川、武茂川からは梨地肌の黒い石(八溝石と呼ばれている)が採れます。これも広義の意味からすれば八溝石ということになるでしょう。
そしてこれらの石に八溝山南麓から採れる幻の石いわゆる「八溝石」を加えた八溝エリアから採れる石を、広義の意味では「八溝石」と呼ぶのかもしれません。
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八溝山エリア
2.狭義の八溝石
⓵ 八溝石の特徴
それでは狭義の「八溝石」とはどんな石なんでしょうか。私も1個だけ頂いた八溝石を持っているんですが、一言でいうと「孤高」ですかね、主張があって尖がっていてそして何となく惹きつけらてしまう不思議な感じの石です。八溝石を表す言葉には、尖っている、キンキンの質感、険しい、厳しい、荒肌などの表現がありますが、何と言っても最大の特徴は「水を飲む石」あるいは「水を吸い上げる石」ともいわれているその「吸水性」ではないでしょうか。水を引いた水盤に八溝石を置くと細かな孔や石灰岩が解けた溝を伝って石が水を吸いあげます。いわゆる毛細管現象ってヤツですね、時間がたつと石の肌がしっとり濡れてきて何とも言えない風情を醸し出します。もちろん吸い上げない八溝石もあるようですが。
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八溝石-2(ネットから拝借)
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⓶ 地質学的な八溝石
冒頭に書いた通り八溝山を形作る岩石は砂岩、泥岩、珪質頁岩、チャート、石灰岩、緑色岩などですので、八溝石もこのどれかということになります。ネットや雑誌を調べて見ると、八溝石は硬質砂岩とか原石は砂岩、頁岩などという記載が目立ちます。
ここからは裏付けのない私の全くの想像ですが、八溝石とは八溝山を形作っている砂岩、泥岩、珪質頁岩、チャート、石灰岩、緑色岩の全部の石ではないかと考えています。ただプレートの圧力だけではあれだけの硬さは出ないような気がします。つまり1億8000万年前のジュラ紀に出来た八溝山の構成物質である海底表層堆積物(砂岩、泥岩、珪質頁岩、チャート、石灰岩、緑色岩など)に何らかの熱変成が加わって変成岩となり「八溝石」が生まれたのではないかと推測いたします。
その熱変成の原因が熱鉱床みたいなのかそれともマグマそのものなのかは判りません。後の1500万年前にこの近くのエリアで海底火山が活発化して袋田の滝や奥久慈男体山が形成されましたので、この時にマグマあるいは溶岩の作用で熱変成を受けたのかなとも考えましたが、袋田の滝近辺から八溝エリアまでは20㎞近く離れていますのでこの推測にはやや無理があるようです。
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八溝石-3(ネットから拝借)
一方八溝山地の鶏足山塊や笠間山塊、筑波山塊の花崗岩、斑れい岩の成り立ちに目を向けてみると、ここは約6000万年前に海嶺の沈み込みに伴う複数回のマグマの生成・貫入があって形成されたようです。そしてその周囲では熱変成を受けて砂岩、泥岩を原石とするホルンフェルス、すなわち変成岩も生成されていたようです。ということは同じ山地の八溝山塊の一部でも同じ時期にマグマの生成・貫入が発生して、海底表層堆積物が熱変成を受けていたとしても不思議ではないように思われます。たぶんこれが八溝石が形成された流れではないかと個人的には思っています、裏付けは全くないんですが…。
そして八溝石にはいろんな色、いろんな硬さ、いろんな肌合い、地合いのものがあると後日聞き及んだんですが、これはたぶん熱変成を受けたその母岩が砂岩、泥岩、頁岩といろいろな種類があったこと、熱変成の影響が軽度から高度まであったこと、熱変成を受けた地層が褶曲していたこと、母岩がレキ状態であったことなどが複雑に影響しているものと推測されます。
(「マグマの生成・貫入」ってよくわからないんですが、マグマが継続的にマントルから供給されれば火山になるんでしょうが、そこまでは行かずにマグマの塊りがちぎれてどこかに入り込んだ状態をいうんですかねぇ、その後は自然に冷えてしまうって感じですかね、よく判りません)
以下に続く
八溝石-2
八溝石-3
八溝石-4
八溝石‐5
八溝石-6
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「茨城県の石ころ‐1」で記載した「八溝石」なんですが、大体こういった観賞石などの場合はどなたかが詳細を取りまとめネットでUPしてあるのが普通なんですが、この八溝石はネットで調べても図書館で調べてもそういった詳細を記載したものが見当たりません。そういった意味ではある意味幻の石なのかもしれません。ということで俄石拾いとしては、「八溝石」は地元の石ということでもありますのでちょこっと調べてメモ程度に書き留めておこうかなと思い立ちました。(とはいえ地質学的な知識や観賞石の見識もそれほど持ち合わせている訳ではありませんので、ネット上のあちこちの断片的な記載や地元の伝承そしてフィールドワークなどから集めた情報にプラス推測、憶測を加えて記載しております。従って手違い、間違い、勘違いは多々あるかと思いますのでその点を踏まえて読んで頂ければ幸いです)..
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八溝石-1
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1.広義の八溝石
八溝石を産出する八溝山は不思議な山なんです。奥久慈男体山(654m)や筑波山(877m)はかなり遠方からでもその容姿をはっきり見せてくれるんですが、八溝山は茨城県の最高峰(1,022m)を誇りながら茨城県側からは容易に頂上を見せてくれません。そこそこ高い山や一定の場所からは何とかぎりぎり見えるんですが、それ以外は山容も見えません。たぶんこれはその成り立ちに秘密があるのではないかと思い調べてみました。
日本列島がまだ大陸だった1億8000万年前のジュラ紀に、海洋プレートが大陸プレートの下に沈み込み海洋プレートの表層堆積物(付加体)が大陸プレートにめくりあげられ剥ぎ取られて積み重なり陸側に付着しました。その堆積物(付加体)にプレート運動の強烈な力が加わりちぎれたり(断層)、捻じ曲げられたり(褶曲)を繰り返しながら八溝山(エリア)を形成していきました。八溝山は火山みたいに噴火物が積み上げられて出来た山ではなく地域一帯がモッコリ盛り上がり、さらにその後の浸食などにより谷が形成されて山となったようです。そういうことで全体的にべたーっと盛り上がっていることから頂上が見えずらいのではないかと思われます(たぶん)。
それはともかく八溝エリアの構成物は海底の堆積物である砂岩、泥岩、珪質頁岩、チャート、石灰岩、緑色岩などです。実際に八溝山を歩いてみるとこれらの岩が地層となっているところやレキ状に混在して積み重なったりしているところが数多くみられます。そして脆いところがかなりあって道路にボロボロと落ちた石があちこちで見られます。
ということで広義の意味の八溝石はこれらの砂岩、泥岩、珪質頁岩、チャート、石灰岩、緑色岩などということになります。八溝山の北側山麓に源流を発する久慈川には硬質の久慈川石が見られますが、これも八溝エリアから流れ出ていると考えれば広義の意味では八溝石の範疇に入るのかもしれません。さらに八溝山の西側山ろくの栃木県旧黒羽町、旧馬頭町の三蔵川、松葉川、小口川、武茂川からは梨地肌の黒い石(八溝石と呼ばれている)が採れます。これも広義の意味からすれば八溝石ということになるでしょう。
そしてこれらの石に八溝山南麓から採れる幻の石いわゆる「八溝石」を加えた八溝エリアから採れる石を、広義の意味では「八溝石」と呼ぶのかもしれません。
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八溝山エリア
2.狭義の八溝石
⓵ 八溝石の特徴
それでは狭義の「八溝石」とはどんな石なんでしょうか。私も1個だけ頂いた八溝石を持っているんですが、一言でいうと「孤高」ですかね、主張があって尖がっていてそして何となく惹きつけらてしまう不思議な感じの石です。八溝石を表す言葉には、尖っている、キンキンの質感、険しい、厳しい、荒肌などの表現がありますが、何と言っても最大の特徴は「水を飲む石」あるいは「水を吸い上げる石」ともいわれているその「吸水性」ではないでしょうか。水を引いた水盤に八溝石を置くと細かな孔や石灰岩が解けた溝を伝って石が水を吸いあげます。いわゆる毛細管現象ってヤツですね、時間がたつと石の肌がしっとり濡れてきて何とも言えない風情を醸し出します。もちろん吸い上げない八溝石もあるようですが。
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八溝石-2(ネットから拝借)
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⓶ 地質学的な八溝石
冒頭に書いた通り八溝山を形作る岩石は砂岩、泥岩、珪質頁岩、チャート、石灰岩、緑色岩などですので、八溝石もこのどれかということになります。ネットや雑誌を調べて見ると、八溝石は硬質砂岩とか原石は砂岩、頁岩などという記載が目立ちます。
ここからは裏付けのない私の全くの想像ですが、八溝石とは八溝山を形作っている砂岩、泥岩、珪質頁岩、チャート、石灰岩、緑色岩の全部の石ではないかと考えています。ただプレートの圧力だけではあれだけの硬さは出ないような気がします。つまり1億8000万年前のジュラ紀に出来た八溝山の構成物質である海底表層堆積物(砂岩、泥岩、珪質頁岩、チャート、石灰岩、緑色岩など)に何らかの熱変成が加わって変成岩となり「八溝石」が生まれたのではないかと推測いたします。
その熱変成の原因が熱鉱床みたいなのかそれともマグマそのものなのかは判りません。後の1500万年前にこの近くのエリアで海底火山が活発化して袋田の滝や奥久慈男体山が形成されましたので、この時にマグマあるいは溶岩の作用で熱変成を受けたのかなとも考えましたが、袋田の滝近辺から八溝エリアまでは20㎞近く離れていますのでこの推測にはやや無理があるようです。
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八溝石-3(ネットから拝借)
一方八溝山地の鶏足山塊や笠間山塊、筑波山塊の花崗岩、斑れい岩の成り立ちに目を向けてみると、ここは約6000万年前に海嶺の沈み込みに伴う複数回のマグマの生成・貫入があって形成されたようです。そしてその周囲では熱変成を受けて砂岩、泥岩を原石とするホルンフェルス、すなわち変成岩も生成されていたようです。ということは同じ山地の八溝山塊の一部でも同じ時期にマグマの生成・貫入が発生して、海底表層堆積物が熱変成を受けていたとしても不思議ではないように思われます。たぶんこれが八溝石が形成された流れではないかと個人的には思っています、裏付けは全くないんですが…。
そして八溝石にはいろんな色、いろんな硬さ、いろんな肌合い、地合いのものがあると後日聞き及んだんですが、これはたぶん熱変成を受けたその母岩が砂岩、泥岩、頁岩といろいろな種類があったこと、熱変成の影響が軽度から高度まであったこと、熱変成を受けた地層が褶曲していたこと、母岩がレキ状態であったことなどが複雑に影響しているものと推測されます。
(「マグマの生成・貫入」ってよくわからないんですが、マグマが継続的にマントルから供給されれば火山になるんでしょうが、そこまでは行かずにマグマの塊りがちぎれてどこかに入り込んだ状態をいうんですかねぇ、その後は自然に冷えてしまうって感じですかね、よく判りません)
以下に続く
八溝石-2
八溝石-3
八溝石-4
八溝石‐5
八溝石-6
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