靴を履きかえた千可ちゃん、城島さん、森口くん、戸村くんが並んで校舎から出てきました。森口くんから千可ちゃんに質問です。
「なんか、すごいですねぇ、100人以上の人が呪い殺されたって…」
「オカルト系の雑誌ていい加減なところが多いから、全部創作かもよ」
今度は城島さんの発言です。
「でも、真実だったとしたら、私たちも呪われちゃうかも…」
その発言に千可ちゃんは心の声で答えました。
「大丈夫。どんな呪いでも私がみんなを助けるから」
4人が自転車置き場につきました。
「じゃあね」
4人が自転車でそれぞれ別の方向に走り出しました。
千可ちゃんが1人で自転車で走ってると、ふっと横から人影が現れました。自転車に乗った戸村くんです。
「あれ、戸村くん?」
「大丈夫。どんな呪いでも私がみんなを助けるから、て、さっき言ってましたよね」
「あは、私の心の声が聞こえちゃった?」
「テレパシーで聞こえてましたよ。
オレ、なんかものすごく嫌な予感がするんですよ」
「私だってするわよ。でも、大丈夫。呪いだったら私の方が上だから。あなただって知ってるでしょ?」
「あは、そうでしたね」
そうです。戸村くんは一度千可ちゃんに呪い殺されてるのです。戸村くんはちょっと納得したようです。
オカルト研究部が8時に集合と言ったら、部員は自主的に1時間早く集まってきます。朝7時ジャストに千可ちゃんが駅に着いたら、すでに全員集まってました。
「あれ、私が最後ですか?」
「さあ、行きましょうか!」
浜崎さんを先頭に、オカルト研究部の出発です。
6人が電車に乗り皆川市へ。ちなみに、切符代は浜崎さん持ちです。金持ちの浜崎さんがいなくなったらオカルト研究部の部費はどうなってしまうのでしょうか?。ちょっと心配ですね。
約2時間後、オカルト研究部の6人は皆川駅に降りました。ふつーの郊外の駅です。タクシー乗り場に行くと、6人は2台に分乗しました。このタクシー代も浜崎さんが持ってくれるようです。
「皆川西部小学校の跡地まで」
タクシーに乗った浜崎さんが行き先を告げました。すると運転手から思ってもみなかった答が返ってきました。
「あ~、あそこですか。別に行ってもいいですけど、早く帰った方がいいですよ」
「え、な、なんで?」
浜崎さんのその質問にタクシーの運転手の答は、
「さあ…」
浜崎さんと彼女に同乗してる福永さんと城島さんは、かなりけげんな顔を見せました。
2台のタクシーが片側2車線の道路を快適に走ってます。あたりはふつーの街並みです。前を走るタクシーの車中は、まったく会話がありません。このタクシーに乗ってる浜崎さんは、厳しい眼でずーっと前の方を見ています。と、浜崎さんはふいに口を開きました。
「あの~、運転手さん。山上静可て女性、知ってますか?」
「山上静可ですか?。さあ、初耳ですねぇ」
「ほんと?」
「ほんとですよ」
しかし、浜崎さんは直感的にその発言がウソだと感じました。この運転手は山上静可を知ってる。でも、なんらかの理由で話すことができない。その理由は呪い?…。
タクシーが左に曲がりました。そこからは緩い上り坂。両側はやはりふつーの住宅街です。
しばらくすると、鈍い銀色の壁が見えてきました。と同時に上り坂は終わり、道は平らになりました。壁は工事現場用の仮囲いでした。その仮囲いが始まるところでタクシーは停まりました。
「はい、こここだよ」
と、タクシーの運転手。浜崎さんたちはタクシーを降りました。その後ろでは2台目のタクシーに乗ってた千可ちゃんたちも降りています。
2台のタクシーが立ち去ります。浜崎さんは仮囲いの前に立ちました。
「まるで工事現場みたい…」
浜崎さんの横に城島さんが立ちました。
「でも、出入り口がないようです。これじゃ、工事できませんよ…」
「とりあえず、取材しましょうか」
浜崎さんのこの一言で6人が歩き始めました。この学校跡地は南側に大きな通りがあり、残り3方向は小さな道が囲っています。6人はまず南側の道を西から東へ歩きました。城島さんはふと何かに気づきました。
「あの~、さっきから誰も人がいないような?…」
浜崎さんの返事。
「うん、住宅街なのに、まったく人の気配がないわねぇ」
仮囲いの反対側には住宅が並んでいます。が、ところどころ更地になってます。福永さんはそれに気づき、
「ところどころ更地になってる…」
が、城島さんは更地て言葉を知らなかったようです。
「え、更地?、更地って?」
ここで森口くんが助け船。
「家を建てるために、整地された土地ですよ」
「あは、そっか」
「それだけじゃないわよ」
浜崎さんは道路を渡り、1つの家の門の前に立ちました。
「門の表札が取り外されている。この家、空き家よ」
森口くんは別の家の前に立ちました。この家のカーポートの扉が壊れたままです。
「この家もかなり前から人が住んでないようです」
千可ちゃんが路上にある庇を見上げました。
「ここは昔バス停だったんじゃ?」
福永さんはあたりを見ました。
「もしかしてここは、ゴーストタウンなの?」
それから6人は学校跡地の周りをめぐりましたが、学校に面した住宅はすべて空き家でした。
戸村くんが小声で千可ちゃんに話かけました。
「何か感じますか?」
「ううん、今悪霊はここにはいないみたい。でも、昔はいたみたいね」
「どんな悪霊がいたんですか?」
「わかんない、でも、何か恐ろしい力を持った悪霊がいたことは確かね」
戸村くんはその悪霊に勝てますか?、と質問しようとしましたが、それはやめときました。
結局6人は1度も人を見ることもなく、元の場所に帰ってきました。浜崎さんと福永さんが顔を見合わせました。
「山上静可の呪い、結局それがわからないとだめみたいね…」
「部長、近くの図書館に行ってみましょうよ」
「それはいい考えね」
浜崎さんはスマホを取り出し、さっそく電話。どうやらタクシーを呼ぶようです。タクシーが来るまで福永さんはモバイルパソコンを見てましたが、ふいに何かに気づきました。
「あれ、これは?」
福永さんはモバイルパソコンを浜崎さんに見せました。
「部長、ここ見てください」
それは地図代わりの航空写真。なぜか半分だけ壊れてる入母屋式の豪邸が写ってます。
「なに、この建物。半分だけ壊れてる?。これは行って見る価値がありそうね。
みんな、行先変更するわよ」
タクシーが2台到着しました。さっそく浜崎さんが先頭のタクシーに乗り込み、モバイルパソコンの画面を運転手に見せました。
「運転手さん、ここ、どこだかわかりますか?」
「ああ、わかるけど…。行くんですか?」
「はい」
運転手は1つ溜息をつきました。そして、
「わかりました」
2台のタクシーが走り出しました。
さきほどのタクシーの中です。運転手が横目で後部座席の浜崎さんを見ました。
「きみたちはオカルトマニアなのかな?」
「まあ、そんなもんですけど」
「実は去年の今頃、オカルトマニアのカップルをその建物に運んだことがあったんだけどねぇ。2人は翌日首なし死体で発見されたんですよ」
「ええ?…」
その話を聞いて、浜崎さん、福永さん、城島さんがびっくりしました。
「悪い事は言わん。そこは行かない方がいいですよ」
浜崎さんは一瞬ためらいました。で、福永さんと城島さんに質問しました。
「どうする?」
福永さんも城島さんも即答しました。
「私は大丈夫ですよ」
「ここで逃げ出す理由もないんじゃないですか?」
浜崎さんは横目で後ろを走るタクシーを見ました。
「後ろの3人はタクシーを降りたあとに訊くか…。
運転手さん、大丈夫です。行きます!」
「わかりました」
タクシーはそのまま目的地に向かいました。
再び浜崎さんが乗るタクシーの中です。
「ところで、運転手さん、山上静可て女性、知ってますか?」
が、運転手は無言です。浜崎さんはもう1度質問しました。
「あの~…」
浜崎さんの再質問をさえぎるように、運転手が発言しました。
「お客さん、その名前は禁句ですよ。その名前は2度と出さないでください!」
浜崎さんはあっけにとられてしまいました。
道路の脇にタクシーが停まりました。タクシーから福永さん、城島さん、そして浜崎さんが降りました。浜崎さんが降りてるとき、なにか不思議な感覚が襲いました。道路の反対側に広大な邸宅の土地が見えます。鬱蒼とした土地。浜崎さんが2人に話しかけました。
「あそこね。きっと何かあるわね…」
福永さんが横目で後ろを見ました。そこには壊れた家の門が。
「どうやらここもゴーストタウンのようですね」
ここで2台目のタクシーが到着しました。浜崎さんが見てる前で千可ちゃん、森口くん、戸村くんが降りました。さっそく浜崎さんが声をかけました。
「3人とも、話があるんだけど…」
千可ちゃんが即答です。
「タクシーの運転手に何か言われたんですか?」
続いて、戸村くん。
「実はオレたちも言われたんですよ。ここには来ない方がいいって」
最後に森口くん。
「ここでたくさんの死体が発見されたと言われました。だから、行くなって」
浜崎さんはちょっと苦笑して、
「そっちのタクシーでも言われてたんだ。
で、どうするの?」
代表して戸村くんが返答しました。
「もちろん、部長について行きますよ」
「わかった」
浜崎さんはちょこっと笑いました。6人は道路を横断しました。
6人が門柱の前に立ちました。門柱はありますが、門は壊れてます。6人はそれぞれ顔を見合わせ、そしてうなずき、中に入りました。
中はかなり大きな土地です。門から家は見えません。また、ずーっと手入れしてないのか、中の植木はみんな大木になってます。これも門から家が見えない理由の1つです。
と、2番目を歩く福永さんが、左側に小さな平家を見つけました。
「あそこに家が?」
が、先頭を歩く浜崎さんは、それには無関心です。
「それはあとにしましょ」
が、戸村くんの眼はその家に釘づけになりました。なんと、その家の前には3体の幽霊が立ってるのです。第二次大戦中のパイロットと思われる男性、ちょっと古い看護師の女性、古い学生服の男性の3人です。城島さんがその戸村くんに気づき、
「あれ、戸村くん、どうしたの?」
「な、なんでもないっすよ」
戸村くんは再び歩き出しました。と、千可ちゃんに小声で話しかけました。
「今、あの家の前に3人の幽霊がいましたよ」
「うん。あれはたぶん先祖霊だと思う。きっとあの家の中にだれか居て、その人を守ってんじゃないかな」
「相手は山上静可?」
「私の霊視能力じゃ、そこまではわからないよ」
と、ふと千可ちゃんは何かを感じ振り返りました。なんとそこに、さきほどの3人の幽霊がいるのです。
「ついて来てる?」
「見えた!」
これは浜崎さんの声。やっと邸宅が見えたようです。半分壊れた豪邸。重機で壊したあとがありますが、重機はありません。工事途中で放棄されたようです。浜崎さんは感嘆な声を挙げました。
「すごい、半分壊れてるのに、私の家より大きい!」
そうです。浜崎さんの家も豪邸ですが、それよりも大きな豪邸なのです。城島さんがその家に駆け寄りました。
「なんで放棄されたのかなぁ?」
城島さんは窓から中をのぞこうとしてます。
「中はどうなってるんだろ?」
と、その窓ガラスにビシッと小さなひびが入りました。その瞬間、千可ちゃんの身体に悪寒が走りました。
「ダメ!、行かないで!」
「えっ?」
次の瞬間、窓ガラスがバリーンと割れました。その破片が城島さんを襲いました。びっくりする城島さん。
「ええっ?」
と、大きなガラス片の1つが城島さんの左目を直撃。それを見ていた5人に衝撃が走りました。
「城島さん!」
「城島さん!」
「城島さーん!」
5人は倒れてる城島さんのところに慌てて駆け寄りました。浜崎さんは城島さんの上半身を抱きかかえました。
「城島さん!!」
城島さんの左目には窓ガラスの破片が刺さったままです。また、右目にもガラス片が見えます。
「な、なんてことを…」
千可ちゃんはあたりを見回しました。
「山上静可がどっかにいる…」
5人はとりあえず城島さんの身体を門の外に運び出しました。間もなく救急車がやってきました。
「なんか、すごいですねぇ、100人以上の人が呪い殺されたって…」
「オカルト系の雑誌ていい加減なところが多いから、全部創作かもよ」
今度は城島さんの発言です。
「でも、真実だったとしたら、私たちも呪われちゃうかも…」
その発言に千可ちゃんは心の声で答えました。
「大丈夫。どんな呪いでも私がみんなを助けるから」
4人が自転車置き場につきました。
「じゃあね」
4人が自転車でそれぞれ別の方向に走り出しました。
千可ちゃんが1人で自転車で走ってると、ふっと横から人影が現れました。自転車に乗った戸村くんです。
「あれ、戸村くん?」
「大丈夫。どんな呪いでも私がみんなを助けるから、て、さっき言ってましたよね」
「あは、私の心の声が聞こえちゃった?」
「テレパシーで聞こえてましたよ。
オレ、なんかものすごく嫌な予感がするんですよ」
「私だってするわよ。でも、大丈夫。呪いだったら私の方が上だから。あなただって知ってるでしょ?」
「あは、そうでしたね」
そうです。戸村くんは一度千可ちゃんに呪い殺されてるのです。戸村くんはちょっと納得したようです。
オカルト研究部が8時に集合と言ったら、部員は自主的に1時間早く集まってきます。朝7時ジャストに千可ちゃんが駅に着いたら、すでに全員集まってました。
「あれ、私が最後ですか?」
「さあ、行きましょうか!」
浜崎さんを先頭に、オカルト研究部の出発です。
6人が電車に乗り皆川市へ。ちなみに、切符代は浜崎さん持ちです。金持ちの浜崎さんがいなくなったらオカルト研究部の部費はどうなってしまうのでしょうか?。ちょっと心配ですね。
約2時間後、オカルト研究部の6人は皆川駅に降りました。ふつーの郊外の駅です。タクシー乗り場に行くと、6人は2台に分乗しました。このタクシー代も浜崎さんが持ってくれるようです。
「皆川西部小学校の跡地まで」
タクシーに乗った浜崎さんが行き先を告げました。すると運転手から思ってもみなかった答が返ってきました。
「あ~、あそこですか。別に行ってもいいですけど、早く帰った方がいいですよ」
「え、な、なんで?」
浜崎さんのその質問にタクシーの運転手の答は、
「さあ…」
浜崎さんと彼女に同乗してる福永さんと城島さんは、かなりけげんな顔を見せました。
2台のタクシーが片側2車線の道路を快適に走ってます。あたりはふつーの街並みです。前を走るタクシーの車中は、まったく会話がありません。このタクシーに乗ってる浜崎さんは、厳しい眼でずーっと前の方を見ています。と、浜崎さんはふいに口を開きました。
「あの~、運転手さん。山上静可て女性、知ってますか?」
「山上静可ですか?。さあ、初耳ですねぇ」
「ほんと?」
「ほんとですよ」
しかし、浜崎さんは直感的にその発言がウソだと感じました。この運転手は山上静可を知ってる。でも、なんらかの理由で話すことができない。その理由は呪い?…。
タクシーが左に曲がりました。そこからは緩い上り坂。両側はやはりふつーの住宅街です。
しばらくすると、鈍い銀色の壁が見えてきました。と同時に上り坂は終わり、道は平らになりました。壁は工事現場用の仮囲いでした。その仮囲いが始まるところでタクシーは停まりました。
「はい、こここだよ」
と、タクシーの運転手。浜崎さんたちはタクシーを降りました。その後ろでは2台目のタクシーに乗ってた千可ちゃんたちも降りています。
2台のタクシーが立ち去ります。浜崎さんは仮囲いの前に立ちました。
「まるで工事現場みたい…」
浜崎さんの横に城島さんが立ちました。
「でも、出入り口がないようです。これじゃ、工事できませんよ…」
「とりあえず、取材しましょうか」
浜崎さんのこの一言で6人が歩き始めました。この学校跡地は南側に大きな通りがあり、残り3方向は小さな道が囲っています。6人はまず南側の道を西から東へ歩きました。城島さんはふと何かに気づきました。
「あの~、さっきから誰も人がいないような?…」
浜崎さんの返事。
「うん、住宅街なのに、まったく人の気配がないわねぇ」
仮囲いの反対側には住宅が並んでいます。が、ところどころ更地になってます。福永さんはそれに気づき、
「ところどころ更地になってる…」
が、城島さんは更地て言葉を知らなかったようです。
「え、更地?、更地って?」
ここで森口くんが助け船。
「家を建てるために、整地された土地ですよ」
「あは、そっか」
「それだけじゃないわよ」
浜崎さんは道路を渡り、1つの家の門の前に立ちました。
「門の表札が取り外されている。この家、空き家よ」
森口くんは別の家の前に立ちました。この家のカーポートの扉が壊れたままです。
「この家もかなり前から人が住んでないようです」
千可ちゃんが路上にある庇を見上げました。
「ここは昔バス停だったんじゃ?」
福永さんはあたりを見ました。
「もしかしてここは、ゴーストタウンなの?」
それから6人は学校跡地の周りをめぐりましたが、学校に面した住宅はすべて空き家でした。
戸村くんが小声で千可ちゃんに話かけました。
「何か感じますか?」
「ううん、今悪霊はここにはいないみたい。でも、昔はいたみたいね」
「どんな悪霊がいたんですか?」
「わかんない、でも、何か恐ろしい力を持った悪霊がいたことは確かね」
戸村くんはその悪霊に勝てますか?、と質問しようとしましたが、それはやめときました。
結局6人は1度も人を見ることもなく、元の場所に帰ってきました。浜崎さんと福永さんが顔を見合わせました。
「山上静可の呪い、結局それがわからないとだめみたいね…」
「部長、近くの図書館に行ってみましょうよ」
「それはいい考えね」
浜崎さんはスマホを取り出し、さっそく電話。どうやらタクシーを呼ぶようです。タクシーが来るまで福永さんはモバイルパソコンを見てましたが、ふいに何かに気づきました。
「あれ、これは?」
福永さんはモバイルパソコンを浜崎さんに見せました。
「部長、ここ見てください」
それは地図代わりの航空写真。なぜか半分だけ壊れてる入母屋式の豪邸が写ってます。
「なに、この建物。半分だけ壊れてる?。これは行って見る価値がありそうね。
みんな、行先変更するわよ」
タクシーが2台到着しました。さっそく浜崎さんが先頭のタクシーに乗り込み、モバイルパソコンの画面を運転手に見せました。
「運転手さん、ここ、どこだかわかりますか?」
「ああ、わかるけど…。行くんですか?」
「はい」
運転手は1つ溜息をつきました。そして、
「わかりました」
2台のタクシーが走り出しました。
さきほどのタクシーの中です。運転手が横目で後部座席の浜崎さんを見ました。
「きみたちはオカルトマニアなのかな?」
「まあ、そんなもんですけど」
「実は去年の今頃、オカルトマニアのカップルをその建物に運んだことがあったんだけどねぇ。2人は翌日首なし死体で発見されたんですよ」
「ええ?…」
その話を聞いて、浜崎さん、福永さん、城島さんがびっくりしました。
「悪い事は言わん。そこは行かない方がいいですよ」
浜崎さんは一瞬ためらいました。で、福永さんと城島さんに質問しました。
「どうする?」
福永さんも城島さんも即答しました。
「私は大丈夫ですよ」
「ここで逃げ出す理由もないんじゃないですか?」
浜崎さんは横目で後ろを走るタクシーを見ました。
「後ろの3人はタクシーを降りたあとに訊くか…。
運転手さん、大丈夫です。行きます!」
「わかりました」
タクシーはそのまま目的地に向かいました。
再び浜崎さんが乗るタクシーの中です。
「ところで、運転手さん、山上静可て女性、知ってますか?」
が、運転手は無言です。浜崎さんはもう1度質問しました。
「あの~…」
浜崎さんの再質問をさえぎるように、運転手が発言しました。
「お客さん、その名前は禁句ですよ。その名前は2度と出さないでください!」
浜崎さんはあっけにとられてしまいました。
道路の脇にタクシーが停まりました。タクシーから福永さん、城島さん、そして浜崎さんが降りました。浜崎さんが降りてるとき、なにか不思議な感覚が襲いました。道路の反対側に広大な邸宅の土地が見えます。鬱蒼とした土地。浜崎さんが2人に話しかけました。
「あそこね。きっと何かあるわね…」
福永さんが横目で後ろを見ました。そこには壊れた家の門が。
「どうやらここもゴーストタウンのようですね」
ここで2台目のタクシーが到着しました。浜崎さんが見てる前で千可ちゃん、森口くん、戸村くんが降りました。さっそく浜崎さんが声をかけました。
「3人とも、話があるんだけど…」
千可ちゃんが即答です。
「タクシーの運転手に何か言われたんですか?」
続いて、戸村くん。
「実はオレたちも言われたんですよ。ここには来ない方がいいって」
最後に森口くん。
「ここでたくさんの死体が発見されたと言われました。だから、行くなって」
浜崎さんはちょっと苦笑して、
「そっちのタクシーでも言われてたんだ。
で、どうするの?」
代表して戸村くんが返答しました。
「もちろん、部長について行きますよ」
「わかった」
浜崎さんはちょこっと笑いました。6人は道路を横断しました。
6人が門柱の前に立ちました。門柱はありますが、門は壊れてます。6人はそれぞれ顔を見合わせ、そしてうなずき、中に入りました。
中はかなり大きな土地です。門から家は見えません。また、ずーっと手入れしてないのか、中の植木はみんな大木になってます。これも門から家が見えない理由の1つです。
と、2番目を歩く福永さんが、左側に小さな平家を見つけました。
「あそこに家が?」
が、先頭を歩く浜崎さんは、それには無関心です。
「それはあとにしましょ」
が、戸村くんの眼はその家に釘づけになりました。なんと、その家の前には3体の幽霊が立ってるのです。第二次大戦中のパイロットと思われる男性、ちょっと古い看護師の女性、古い学生服の男性の3人です。城島さんがその戸村くんに気づき、
「あれ、戸村くん、どうしたの?」
「な、なんでもないっすよ」
戸村くんは再び歩き出しました。と、千可ちゃんに小声で話しかけました。
「今、あの家の前に3人の幽霊がいましたよ」
「うん。あれはたぶん先祖霊だと思う。きっとあの家の中にだれか居て、その人を守ってんじゃないかな」
「相手は山上静可?」
「私の霊視能力じゃ、そこまではわからないよ」
と、ふと千可ちゃんは何かを感じ振り返りました。なんとそこに、さきほどの3人の幽霊がいるのです。
「ついて来てる?」
「見えた!」
これは浜崎さんの声。やっと邸宅が見えたようです。半分壊れた豪邸。重機で壊したあとがありますが、重機はありません。工事途中で放棄されたようです。浜崎さんは感嘆な声を挙げました。
「すごい、半分壊れてるのに、私の家より大きい!」
そうです。浜崎さんの家も豪邸ですが、それよりも大きな豪邸なのです。城島さんがその家に駆け寄りました。
「なんで放棄されたのかなぁ?」
城島さんは窓から中をのぞこうとしてます。
「中はどうなってるんだろ?」
と、その窓ガラスにビシッと小さなひびが入りました。その瞬間、千可ちゃんの身体に悪寒が走りました。
「ダメ!、行かないで!」
「えっ?」
次の瞬間、窓ガラスがバリーンと割れました。その破片が城島さんを襲いました。びっくりする城島さん。
「ええっ?」
と、大きなガラス片の1つが城島さんの左目を直撃。それを見ていた5人に衝撃が走りました。
「城島さん!」
「城島さん!」
「城島さーん!」
5人は倒れてる城島さんのところに慌てて駆け寄りました。浜崎さんは城島さんの上半身を抱きかかえました。
「城島さん!!」
城島さんの左目には窓ガラスの破片が刺さったままです。また、右目にもガラス片が見えます。
「な、なんてことを…」
千可ちゃんはあたりを見回しました。
「山上静可がどっかにいる…」
5人はとりあえず城島さんの身体を門の外に運び出しました。間もなく救急車がやってきました。
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