昨日と同じ場所で千可ちゃんと戸村くんが話し合ってます。千可ちゃんはまるまる太ったボストンバッグを戸村くんに渡しました。
「これ、全部書いて」
戸村くんはそのボストンバッグのチャックを開け、中を見ました。と、なんか不満顔です。
「これ、全部っすか?」
「うん」
この2人のやりとりを物陰から見ている人影があります。森口くんです。森口くんの表情には、なにか悲愴感があります。
「羽月さんですかぁ、あの映像潰したのは?」
その戸村くんの質問に千可ちゃんは満面の笑みをたたえ、答えました。
「うん。昨日幽体離脱…」
と、ここで千可ちゃんは何かを感じ、右手の人差指を自分の唇に重ねました。戸村くんもそれを見て、何かに気付いたようです。
「じゃあね」
「うん」
2人は別れました。
下駄箱に向かって千可ちゃんが歩いて来ます。それを物陰から森口くんが待ち構えてます。森口くんは何か言いたいことがあるようです。しかし、いつまで経っても千可ちゃんは来ません。いい加減しびれを切らした森口くんが顔を出そうとしたら、その反対側から声がしました。
「そこで何やってんの?」
森口くんが慌てて振り返ると、そこに千可ちゃんがいました。
「は、羽月さん?」
「何か私に言いたいことがあるの?」
森口くんは黙ってしまいました。
「いいよ。遠慮しないで言って」
「その…。
なんで羽月さんはあいつと付き合ってんですか!?」
「あいつって、戸村くんのこと?。そりゃあ、同じ部の仲間だもん。話したってなんの問題もないでしょ。森口くんだって、彼とうまくやってたじゃん」
「は、羽月さんはぼくの気持ちがわかってない!。
ぼくは羽月さんが好きだ!。大好きなんだ!!」
千可ちゃんはふいに下を向きました。ちょっと笑ってるようです。と、千可ちゃんはいきなり森口くんの目の前に立ちました。千可ちゃんの背丈は140cm。森口くんの背丈は160cm。20cm差を埋めるように思いっきり背伸びして、千可ちゃんは森口くんの唇にキスをしたのです。その瞬間、森口くんはかなりびっくりしたようです。
千可ちゃんはすぐに唇を離しました。千可ちゃんはちょっと上気してるようです。
「ねぇ、ぎゅっとして」
「えっ?」
「ぎゅっとしてよ」
森口くんは一瞬ためらいましたが、次の瞬間、小さな千可ちゃんの身体を強く抱き締めました。そのまま自然に千可ちゃんの方から森口くんにキス。森口くんもされるままになってましたが,その眼が急に驚きに変わりました。なんと千可ちゃんが森口くんの口の中に舌を入れてきたのです。森口くんはどうすればいいのかわかりません。とりあえず舌を絡めました。
どれくらいでしょうか,2人のキスは続きましたが,しばらくして2人は身体を離しました。千可ちゃんはさらに上気してるようです。
「ごめん。今日はこのへんで許して」
「いや、あの、ぼくは別に…」
森口くんは自分が思っていた以上の展開になって、かなり戸惑っているようです。
「ねぇ、戸村くんと仲良くやってよ」
「う,うん」
「ありがと」
千可ちゃんは下駄箱から靴を取り出しました。
「あ、今の私のファーストキスだからね!」
千可ちゃんは足早に出ていきました。森口くんはまだ茫然としてます。
今の千可ちゃんの行為は、自分でも思ってもみなかった暴走だったようです。自分でも恥ずかしくなってしまい、それで足早にここを立ち去ったようです。ちなみに,先ほども述べた通り,ファーストキスというセリフは真っ赤なウソです。
その日の夜です。千可ちゃんがベッドに寝てます。しかし、目がらんらんとしてます。千可ちゃんは右手の指で自分の唇に触れました。千可ちゃんは森口くんとのキスが頭から離れないようです。それで眠られないようです。
「あ…」
千可ちゃんはため息のようで、ため息とは違う声を発しました。
しかし、千可ちゃんは眠らないといけません。千可ちゃんは今幽体離脱しようと思ってるのですが,熟睡しないと幽体離脱できないのです。
が、千可ちゃんはついに睡眠を諦め、携帯電話を手にしました。戸村くんに電話しようとしたのです。しかし、番号が思い浮かびません。当たり前です。千可ちゃんは戸村くんの電話番号をまだ知りません。仕方がないから、目をつぶりました。テレパシーです。
「戸村くん、聞こえる?」
「あ、はい」
なんと戸村くんは千可ちゃんのテレパシーをキャッチし、返してくれました。
「ごめん、今から例のとこに行って欲しいんだけど、いいかなあ」
「こんな真夜中にですかぁ?。まぁ、いいですけど」
「あは、よろしくね」
例の女の子の家の前です。今夜もまた女の子が自転車で走り出しました。女の子の自転車は街を駆け抜け、山道に入り、そして鳥居の前に停まりました。ここはみみずく神社です。女の子は石段を駆け登り、絵馬掛けが見える場所に来ました。
「いない…」
どうやら千可ちゃんの存在を気にしてたようですが、千可ちゃんはいません。次に女の子は監視カメラを睨みました。で、偶然手元にあった脚立を持ち、監視カメラのところに行き、脚立に乗って監視カメラに黒い布を被せました。
「これでよし!」
女の子はどこからか絵馬を取り出し、絵馬掛けに向かいました。女の子は満足な顔を浮かべてます。が、その顔が一瞬で驚きの顔となりました。絵馬掛けに掛かってる絵馬のすべてが同じ文面だったのです。
ぼくが傷つけた女の子が早くよくなりますように。1年3組戸村。
それを読んだ女の子がくすくす笑い出しました。その笑い声は次第に大きくなり、最後は腹の底からの大爆笑になりました。
「わかったわよ。わかったって」
女の子はそのまま帰りました。
翌日千可ちゃんが通う高校です。まだ朝のホームルームの前のようです。例の女の子が教室で友達としゃべってます。その女の子を廊下からそーっと見てる人影があります。千可ちゃんと戸村くんです。
「やっと学校に来たわね」
「羽月さん、彼女の前に何度も幽霊になって出たけど、大丈夫なんですか?」
「ふふ、彼女、私のことなんかぜんぜん覚えてないよ」
「え?」
「彼女の脳内にちょっと細工しておいたんだ。私の顔と名前は自動的に消えるようにってね」
「そんなことできるんですか?」
「うん」
「あの~、オレ、どのタイミングで彼女に謝ったらいいんですか?…」
「それは自分で決めてよ」
千可ちゃんは意外とおませです。初体験は14歳の時に済ませてます。初体験は千可ちゃんにとっては遊びのつもりでしたが、それでもその時の衝撃は、今でも千可ちゃんの肉体に残ってます。だから千可ちゃんのお母さんが初体験の相手を呪い殺してしまった時は、千可ちゃんは耐え難き屈辱を感じました。
しかし、なんで千可ちゃんはこんなにおませなんでしょうか?。実はその原因は千可ちゃんのお母さんにありました。
千可ちゃんのお母さんのお母さんは、お母さんが小学生の時に自殺しました。お母さんが小学校でイジメられ、その原因がおばあちゃんのテレビ出演にあったことに責任を感じたからです。
実はお母さんのお父さんも失踪してました。お母さんは二親ともいなくなってしまったのです。仕方なくお母さんは父方の親戚に預けられました。別にそこでお母さんが継子扱いされたことはなかったのですが、居心地の悪さを感じ、中学卒業と同時に家を飛び出しました。しかし、15歳の少女に泊まる場所があるはずがありません。夜の街を歩いているうちに声をかけられ、お母さんは見知らぬ男に抱かれました。
一度タガが外れると、あとは野となれ山となれです。お母さんは毎晩いろんな男に抱かれました。最初お母さんは嫌々抱かれてましたが、そのうちお母さんも気持ちよくなってしまい、一度に2人や3人の男に抱かれたこともありました。
お母さんは当時も今も小柄です。顔も小さいし、肩幅も狭いし、胸もぺちゃんこです。ゆえに小学生の女の子に見えました。それがウリで男が集まって来たのです。ま、15~16の女の子と援助交際すること自体大問題だと思いますが。
しかし、こんなことずーっとうまくいくはずがありません。お母さんは気づいたら妊娠してました。お母さんは心当たりのある男性にそれを訴えましたが、相手にされるはずがありません。仕方なく自分1人で子どもを産むことを決意したのです。そして女の子が産まれました。それが千可ちゃんです。お母さんの17回目の誕生日でした。
それを機にお母さんが真面目になったかと思えば、まったくそうではなく、10日もしないうちに援助交際再開。ただ、必ずコンドームを使うようになりました。お母さんはいつしかオーラを見てその人の性格を計る能力を身に着けてました。コンドームを拒否するような男は、コンドームを着ける着けると言っておきながら土壇場までコンドームを装着せず、結局中出ししてしまいますが、そのような男は事前に拒否するようになったのです。
お母さんの援助交際の相手に羽月という男がいました。11歳も年上の男性です。その男は何回もお母さんを買いました。お母さんもいつしかこの男に恋愛感情を抱くようになり、ついにゴールイン。千可ちゃんは9歳でやっと人並みの生活がおくれるようになりました。
それから3年後、中学入学を控えた千可ちゃんにお母さんは正直に千可ちゃんの出生の秘密を教えました。それを聞いた千可ちゃんは、母親を恨むこともなく、顔さえ見たこともない実の父親を恨むこともしませんでした。ただ、自分の母親がハマってしまったセックスに興味をもってしまったのです。私も早くセックスしたい。男の人に抱かれたい…、
そんな感情が14歳の初体験となりました。が、すぐにお母さんにそれがバレてしまい、千可ちゃんに往復ビンタ。挙句に初体験の相手を呪い殺してしまったのです。その日から千可ちゃんは引っ込み思案になってしまいました。でも、オカルト研究部がそんな千可ちゃんを元の明るい女の子に戻してくれたようです。
年が明け、3学期となりました。他の部では3年生は2学期で退部しますが、オカルト研究部の浜崎部長はまだオカルト研究部にいます。浜崎さんは最後に一発功名を上げたい気分のようです。
そんなとき、浜崎さんは気になる古雑誌を古本屋で見つけました。月刊ジオカルト。20年以上前に発行されたこの雑誌が20冊ほど束になって売ってたのです。浜崎さんはその雑誌を購入すると、翌日オカルト研究部の部室に持ち込みました。さっそく部員全員で回し読みです。と、城島さんが何か気になる記事を見つけたようです。
「山上静可の呪い、ついに死者100人突破。なんか、これ、すごい記事ですねぇ…」
他の部員はその発言を聞いて一様に城島さんを見ました。と、まず福永さんがその本をのぞき込みました。
「山上静可の呪い。なに、それ?」
その記事は今月のトピックスというページのトップに載ってました。1ページの1/3のスペースです。浜崎さんはその雑誌を手にすると、さっそくその記事を読みました。
「先月お伝えした皆川市X小学校で起きてる呪いですが、ついに死者が100人を超えました。あまりにもたくさんの連続不審死に警察も乗り出しましたが、その警官も交通事故で4人が死亡。小学校に通ってる児童や保護者は、さらに恐れおののいてます…」
浜崎さんは顔を上げ、
「ねぇ、みんな、山上静可て知ってる?」
「いいえ」
「ぜんぜん」
全員知らないようです。
「いったいなんなの、山上静可の呪いって?…。そういえば、先月お伝えしたって書いてあるな。1つ前の号を見れば…」
浜崎さんはその雑誌の表紙を見ました。
「21年前の5月号…。
ねぇ、21年前の4月号はないの?」
さっそくみんなでその号を探しましたが、ありません。そればかりか、6月号以降も見当たらないのです。浜崎さんが5月号を再びめくると、さらに気になる記事がありました。
「小誌編集部の三浦志郎と川内洋二が永眠しました…。もしかしてこの雑誌の編集部も呪われてたんじゃ?…」
浜崎さんがパソコンの前に座ると、さっそくこの雑誌を検索しました。すると、やはり21年前の5月号で廃刊になってました。
「やっぱりこの雑誌も呪われたんだ。なんて呪いなの?。この小学校でいったい何があったというの?。
そうだ!」
浜崎さんは今度はネット上で地図を開きました。
「皆川市てーところまではわかってるんだから、小学校を片っ端から当たれば…」
と、浜崎さんのマウスを握る手がふいに止まりました。なんと町の1区画が丸ごと空いてる場所があったのです。
「なんなの、ここ?」
浜崎さんは30年前の航空写真を呼び出しました。すると、なんとそこには小学校がありました。名前は皆川西部小学校。
「ここの空地はもともと小学校だったんだ。もしかしてX小学校はここ?」
浜崎さんは振り返り、みんなを見ました。
「みんな、明日行く場所が見つかったわよ。朝8時に駅に集合!」
「これ、全部書いて」
戸村くんはそのボストンバッグのチャックを開け、中を見ました。と、なんか不満顔です。
「これ、全部っすか?」
「うん」
この2人のやりとりを物陰から見ている人影があります。森口くんです。森口くんの表情には、なにか悲愴感があります。
「羽月さんですかぁ、あの映像潰したのは?」
その戸村くんの質問に千可ちゃんは満面の笑みをたたえ、答えました。
「うん。昨日幽体離脱…」
と、ここで千可ちゃんは何かを感じ、右手の人差指を自分の唇に重ねました。戸村くんもそれを見て、何かに気付いたようです。
「じゃあね」
「うん」
2人は別れました。
下駄箱に向かって千可ちゃんが歩いて来ます。それを物陰から森口くんが待ち構えてます。森口くんは何か言いたいことがあるようです。しかし、いつまで経っても千可ちゃんは来ません。いい加減しびれを切らした森口くんが顔を出そうとしたら、その反対側から声がしました。
「そこで何やってんの?」
森口くんが慌てて振り返ると、そこに千可ちゃんがいました。
「は、羽月さん?」
「何か私に言いたいことがあるの?」
森口くんは黙ってしまいました。
「いいよ。遠慮しないで言って」
「その…。
なんで羽月さんはあいつと付き合ってんですか!?」
「あいつって、戸村くんのこと?。そりゃあ、同じ部の仲間だもん。話したってなんの問題もないでしょ。森口くんだって、彼とうまくやってたじゃん」
「は、羽月さんはぼくの気持ちがわかってない!。
ぼくは羽月さんが好きだ!。大好きなんだ!!」
千可ちゃんはふいに下を向きました。ちょっと笑ってるようです。と、千可ちゃんはいきなり森口くんの目の前に立ちました。千可ちゃんの背丈は140cm。森口くんの背丈は160cm。20cm差を埋めるように思いっきり背伸びして、千可ちゃんは森口くんの唇にキスをしたのです。その瞬間、森口くんはかなりびっくりしたようです。
千可ちゃんはすぐに唇を離しました。千可ちゃんはちょっと上気してるようです。
「ねぇ、ぎゅっとして」
「えっ?」
「ぎゅっとしてよ」
森口くんは一瞬ためらいましたが、次の瞬間、小さな千可ちゃんの身体を強く抱き締めました。そのまま自然に千可ちゃんの方から森口くんにキス。森口くんもされるままになってましたが,その眼が急に驚きに変わりました。なんと千可ちゃんが森口くんの口の中に舌を入れてきたのです。森口くんはどうすればいいのかわかりません。とりあえず舌を絡めました。
どれくらいでしょうか,2人のキスは続きましたが,しばらくして2人は身体を離しました。千可ちゃんはさらに上気してるようです。
「ごめん。今日はこのへんで許して」
「いや、あの、ぼくは別に…」
森口くんは自分が思っていた以上の展開になって、かなり戸惑っているようです。
「ねぇ、戸村くんと仲良くやってよ」
「う,うん」
「ありがと」
千可ちゃんは下駄箱から靴を取り出しました。
「あ、今の私のファーストキスだからね!」
千可ちゃんは足早に出ていきました。森口くんはまだ茫然としてます。
今の千可ちゃんの行為は、自分でも思ってもみなかった暴走だったようです。自分でも恥ずかしくなってしまい、それで足早にここを立ち去ったようです。ちなみに,先ほども述べた通り,ファーストキスというセリフは真っ赤なウソです。
その日の夜です。千可ちゃんがベッドに寝てます。しかし、目がらんらんとしてます。千可ちゃんは右手の指で自分の唇に触れました。千可ちゃんは森口くんとのキスが頭から離れないようです。それで眠られないようです。
「あ…」
千可ちゃんはため息のようで、ため息とは違う声を発しました。
しかし、千可ちゃんは眠らないといけません。千可ちゃんは今幽体離脱しようと思ってるのですが,熟睡しないと幽体離脱できないのです。
が、千可ちゃんはついに睡眠を諦め、携帯電話を手にしました。戸村くんに電話しようとしたのです。しかし、番号が思い浮かびません。当たり前です。千可ちゃんは戸村くんの電話番号をまだ知りません。仕方がないから、目をつぶりました。テレパシーです。
「戸村くん、聞こえる?」
「あ、はい」
なんと戸村くんは千可ちゃんのテレパシーをキャッチし、返してくれました。
「ごめん、今から例のとこに行って欲しいんだけど、いいかなあ」
「こんな真夜中にですかぁ?。まぁ、いいですけど」
「あは、よろしくね」
例の女の子の家の前です。今夜もまた女の子が自転車で走り出しました。女の子の自転車は街を駆け抜け、山道に入り、そして鳥居の前に停まりました。ここはみみずく神社です。女の子は石段を駆け登り、絵馬掛けが見える場所に来ました。
「いない…」
どうやら千可ちゃんの存在を気にしてたようですが、千可ちゃんはいません。次に女の子は監視カメラを睨みました。で、偶然手元にあった脚立を持ち、監視カメラのところに行き、脚立に乗って監視カメラに黒い布を被せました。
「これでよし!」
女の子はどこからか絵馬を取り出し、絵馬掛けに向かいました。女の子は満足な顔を浮かべてます。が、その顔が一瞬で驚きの顔となりました。絵馬掛けに掛かってる絵馬のすべてが同じ文面だったのです。
ぼくが傷つけた女の子が早くよくなりますように。1年3組戸村。
それを読んだ女の子がくすくす笑い出しました。その笑い声は次第に大きくなり、最後は腹の底からの大爆笑になりました。
「わかったわよ。わかったって」
女の子はそのまま帰りました。
翌日千可ちゃんが通う高校です。まだ朝のホームルームの前のようです。例の女の子が教室で友達としゃべってます。その女の子を廊下からそーっと見てる人影があります。千可ちゃんと戸村くんです。
「やっと学校に来たわね」
「羽月さん、彼女の前に何度も幽霊になって出たけど、大丈夫なんですか?」
「ふふ、彼女、私のことなんかぜんぜん覚えてないよ」
「え?」
「彼女の脳内にちょっと細工しておいたんだ。私の顔と名前は自動的に消えるようにってね」
「そんなことできるんですか?」
「うん」
「あの~、オレ、どのタイミングで彼女に謝ったらいいんですか?…」
「それは自分で決めてよ」
千可ちゃんは意外とおませです。初体験は14歳の時に済ませてます。初体験は千可ちゃんにとっては遊びのつもりでしたが、それでもその時の衝撃は、今でも千可ちゃんの肉体に残ってます。だから千可ちゃんのお母さんが初体験の相手を呪い殺してしまった時は、千可ちゃんは耐え難き屈辱を感じました。
しかし、なんで千可ちゃんはこんなにおませなんでしょうか?。実はその原因は千可ちゃんのお母さんにありました。
千可ちゃんのお母さんのお母さんは、お母さんが小学生の時に自殺しました。お母さんが小学校でイジメられ、その原因がおばあちゃんのテレビ出演にあったことに責任を感じたからです。
実はお母さんのお父さんも失踪してました。お母さんは二親ともいなくなってしまったのです。仕方なくお母さんは父方の親戚に預けられました。別にそこでお母さんが継子扱いされたことはなかったのですが、居心地の悪さを感じ、中学卒業と同時に家を飛び出しました。しかし、15歳の少女に泊まる場所があるはずがありません。夜の街を歩いているうちに声をかけられ、お母さんは見知らぬ男に抱かれました。
一度タガが外れると、あとは野となれ山となれです。お母さんは毎晩いろんな男に抱かれました。最初お母さんは嫌々抱かれてましたが、そのうちお母さんも気持ちよくなってしまい、一度に2人や3人の男に抱かれたこともありました。
お母さんは当時も今も小柄です。顔も小さいし、肩幅も狭いし、胸もぺちゃんこです。ゆえに小学生の女の子に見えました。それがウリで男が集まって来たのです。ま、15~16の女の子と援助交際すること自体大問題だと思いますが。
しかし、こんなことずーっとうまくいくはずがありません。お母さんは気づいたら妊娠してました。お母さんは心当たりのある男性にそれを訴えましたが、相手にされるはずがありません。仕方なく自分1人で子どもを産むことを決意したのです。そして女の子が産まれました。それが千可ちゃんです。お母さんの17回目の誕生日でした。
それを機にお母さんが真面目になったかと思えば、まったくそうではなく、10日もしないうちに援助交際再開。ただ、必ずコンドームを使うようになりました。お母さんはいつしかオーラを見てその人の性格を計る能力を身に着けてました。コンドームを拒否するような男は、コンドームを着ける着けると言っておきながら土壇場までコンドームを装着せず、結局中出ししてしまいますが、そのような男は事前に拒否するようになったのです。
お母さんの援助交際の相手に羽月という男がいました。11歳も年上の男性です。その男は何回もお母さんを買いました。お母さんもいつしかこの男に恋愛感情を抱くようになり、ついにゴールイン。千可ちゃんは9歳でやっと人並みの生活がおくれるようになりました。
それから3年後、中学入学を控えた千可ちゃんにお母さんは正直に千可ちゃんの出生の秘密を教えました。それを聞いた千可ちゃんは、母親を恨むこともなく、顔さえ見たこともない実の父親を恨むこともしませんでした。ただ、自分の母親がハマってしまったセックスに興味をもってしまったのです。私も早くセックスしたい。男の人に抱かれたい…、
そんな感情が14歳の初体験となりました。が、すぐにお母さんにそれがバレてしまい、千可ちゃんに往復ビンタ。挙句に初体験の相手を呪い殺してしまったのです。その日から千可ちゃんは引っ込み思案になってしまいました。でも、オカルト研究部がそんな千可ちゃんを元の明るい女の子に戻してくれたようです。
年が明け、3学期となりました。他の部では3年生は2学期で退部しますが、オカルト研究部の浜崎部長はまだオカルト研究部にいます。浜崎さんは最後に一発功名を上げたい気分のようです。
そんなとき、浜崎さんは気になる古雑誌を古本屋で見つけました。月刊ジオカルト。20年以上前に発行されたこの雑誌が20冊ほど束になって売ってたのです。浜崎さんはその雑誌を購入すると、翌日オカルト研究部の部室に持ち込みました。さっそく部員全員で回し読みです。と、城島さんが何か気になる記事を見つけたようです。
「山上静可の呪い、ついに死者100人突破。なんか、これ、すごい記事ですねぇ…」
他の部員はその発言を聞いて一様に城島さんを見ました。と、まず福永さんがその本をのぞき込みました。
「山上静可の呪い。なに、それ?」
その記事は今月のトピックスというページのトップに載ってました。1ページの1/3のスペースです。浜崎さんはその雑誌を手にすると、さっそくその記事を読みました。
「先月お伝えした皆川市X小学校で起きてる呪いですが、ついに死者が100人を超えました。あまりにもたくさんの連続不審死に警察も乗り出しましたが、その警官も交通事故で4人が死亡。小学校に通ってる児童や保護者は、さらに恐れおののいてます…」
浜崎さんは顔を上げ、
「ねぇ、みんな、山上静可て知ってる?」
「いいえ」
「ぜんぜん」
全員知らないようです。
「いったいなんなの、山上静可の呪いって?…。そういえば、先月お伝えしたって書いてあるな。1つ前の号を見れば…」
浜崎さんはその雑誌の表紙を見ました。
「21年前の5月号…。
ねぇ、21年前の4月号はないの?」
さっそくみんなでその号を探しましたが、ありません。そればかりか、6月号以降も見当たらないのです。浜崎さんが5月号を再びめくると、さらに気になる記事がありました。
「小誌編集部の三浦志郎と川内洋二が永眠しました…。もしかしてこの雑誌の編集部も呪われてたんじゃ?…」
浜崎さんがパソコンの前に座ると、さっそくこの雑誌を検索しました。すると、やはり21年前の5月号で廃刊になってました。
「やっぱりこの雑誌も呪われたんだ。なんて呪いなの?。この小学校でいったい何があったというの?。
そうだ!」
浜崎さんは今度はネット上で地図を開きました。
「皆川市てーところまではわかってるんだから、小学校を片っ端から当たれば…」
と、浜崎さんのマウスを握る手がふいに止まりました。なんと町の1区画が丸ごと空いてる場所があったのです。
「なんなの、ここ?」
浜崎さんは30年前の航空写真を呼び出しました。すると、なんとそこには小学校がありました。名前は皆川西部小学校。
「ここの空地はもともと小学校だったんだ。もしかしてX小学校はここ?」
浜崎さんは振り返り、みんなを見ました。
「みんな、明日行く場所が見つかったわよ。朝8時に駅に集合!」
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