日々のメモ帳

日常生活での、ちょっと気になった事や、面白かった事などメモしていきます。

日本の製造業 品質管理 / 物を見る力の養成が急務

2018-03-16 13:04:50 | 品質管理
今週の日経朝刊で『きしむ日本の品質』として3回連載されているが、『組織が出来ていない』『トップダウンでなかった』さらには『過剰品質、オーバースペックが問題』と表面的な議論しかなされておらず、『品質管理をする人間がいない』『作業標準書がない』と問題点を経営の課題として言い訳としか思えない記事となっている。

最終の結論で『人手不足を解消しながら、製造現場で働く人材をどう育て技術伝承していくか。日本のメーカーに突きつけられた重い課題だ』と記載されているが、もっと肝心な事があるのではなかろうか。

今世界は、そして日本はコンピューターを使ったIT産業や車の自動運転など、最先端の技術に押し流されているが、それらを構成する機械や、その部品を作るのは製造業であり、ここに携わるのは人間である。
この物を作る、製造業に係る人間の感性が、製品を支え、高品質で安全安心な製品を担保しているという事を今一度思い起こす必要があるかと思う。
この心が日本の製造業を弱くしているのではと常々思っており、この前のブログで『製造業/TPM活動が品質をダメにする』、や『新幹線台車亀裂問題/原点に返った調査が必要』と少し過激なメモを残したが、この日経記事を見て、なおさらその気持ちが強くなった。

日本の製造業での品質を含めた開発力を上げるためには、教育を含め、これからを支える若い人たちが『物を作る楽しみ』を味わう事が出来ない限り、現場力があがり、ここから生まれてくる品質に対する感受性が上がらないのではと感じている。

例えば、45年の会社生活の中で、いつの時代からモンキー(モンキレンチ)が使えない新入社員増えだした。今はメガねレンチを使う事がマニュアルでは必須となっているが、モンキーでボルトを締めさせると、くわえ口の使い方を反対に使う若者がいた。聞いてみると、会社へ入るまでは一度も使った事が無く、作用点の原理すら聞いたことがないとの事であった。我々の時代は、親から教わり、理屈は技術の時間に教わったかと思うが、いまはこのような物作りの原点すら失われている。
化学会社へ勤務していた際、滴定分析の機器が故障し、大卒社員へビュレットで滴定分析を要請したが、活栓の取り扱いを間違い、滴定中に栓を抜いてしまうような事もあったが、これも『活栓は反対側から操作』という事が教育されておらず、安全の原理原則が伝わっていない事が要因であった。

世の中では『教育のゆとり』が叫ばれているが、やはり時間だけの問題であろうか。
会社内も含め、原点に立ち帰った教育が出来ているかという事が心配である。
一時期東京に転勤時、私立大学の実験室での事故が多く、『企業人として安全監査をしてほしい』との要望があり、定年後の生業にでもできないかと考えていたが、今の大学の先生方や、それを支えるスタッフの技術力、さらには安全に対する感性のあまりの低さに、一歩引いてしまった事を思い起こした。

この一つの要因が年代にあるような気もしている。
特に、平成の初めに入社の世代が会社を牽引する事が多くなっているが、この世代はバブルがはじけ、会社と言う組織も海外展開などで大きく変わって行く世代であり、何か『昔の知恵』がうまく伝承されなかったと感じている。
バブル前の景気が上向き加減になって来た時代ではあり、この世代を教育して来た会社組織はどうであっただろうか。
高度成長期で、品質や安全課題を解決し支えて来た団塊の世代は、管理社員でも中堅幹部として部長や課長となり、実際の指導は、平成50年前後の石油ショックで採用を絞った時期の社員が、主任クラスとなり担当したかと思うが、安全や品質での感性(マインド)がきっちり受け継げたであろうか。
この時代はQC活動が一段落し、安全活動も事故が激減したこともあり、ヒヤリハット活動も形骸化し、本来業務を優先した時期ではなかったかと記憶している。このため、平成始めに入社の世代は『ゆとりの世代』と言われたのかもしれない。
このあと、この平成初期世代は、バブル崩壊後管理社員となり、業績向上のための業務管理や、品質管理ではTPM活動が採用される中で、管理目標に対してコミットするだけの世代となってしまったような気もする。

先のモンキーの使い方が判らない世代が、管理目標だけに沿って色々な事を行う。なかなか新しい発想や、探求心を活かしての事が失われた世代かもしれないが、この時代の新入社員を教育したのは、我々、今定年を迎えた世代であり、反省も必要なのではと感じている。我々世代が、もう少し物作りの原点。本質を突くことを教えていれば、この時代ギャップが生まれず、感性の高い会社幹部として成長してくれたのかもしれない。

ここまでは反省であるが、今後はどうすればいいのか。
まずは品質については『現場主義』に戻る事かと考える。

この一つの手法が『なぜなぜ問答』の復活である。
昨今労働時間管理の厳格化が望まれ、昨夜の『残業時間管理』を皮肉ったような警察組織対応のサスペンス番組もあったが、就業時間内でのこれ以上の活動対応は難しいかもしれない。
しかし、今感性を上げることが出来なければ、日本の技術はますます沈没する可能性がある。中小企業の廃業問題と共に、企業でもベテランの定年退社が終盤となり『今しかない』と言う時期に来ているかと思われる。

先のブログで新幹線の台車問題で川崎重工やJR側での原因究明結果が報告されているが、現場力として、こんなメモ(仮に書いてみた)を基に打ち合わせができていれば、削る事だけの問題なのか、さらには、なぜ溶接する必要があるのか、溶接以外の方法は・・と議論が進められたと感じている。



TPM活動では『見える化』と言う言葉で、写真などを使いピンポイントで問題点を決め、解析を行なう事が多いが、現場から毎日上がってくる、3無(『ムダ』『ムリ』『ムラ』)などのメモをもっと見つめなおす必要があるのではないか。
このような、『問題点』『キー』を示すことが出来る事も訓練なのかもしれない。
物を見つめ、感受性を上げる、そこから『危険を危険と感じる』事を教育するのは難しい。
さらには、TPM活動の指示で、写真できれいに。電子保存。共有化・・などとお題目が増えれば、すぐにはやりたく無いかもしれない。

でも安全は待ってくれない。品質も次の工程でなにが起こるか判らない。
このために、『感性を上げる』『ものを見る目を高める』事が重要である。
このための教育として、写真では無くて『ポンチ絵』が良いかと思っているが、これを誰が教え込むかも喫緊の課題なのかもしれない。

話はまた飛んでしまうが、品質偽装問題でデーターが改竄されないようにするため、保管をサーバー等に入れ、抜き出せないようにするとの事であったが、これにも一つ問題点がある。

品質管理で得られるデーターは、確かに品質保証の為のデーターと、製造の安定化を判断するためのデーターとで意味合いで大きく異なってくる。
この点で、今回の『品質データー偽装問題』が疑問である。
一つは『品質保証している数値を妥当化するために書き換えた』という事であり、もう一点は『特採』という品質幅の拡大解釈であるが、この問題が起こったのは現場の責任でとしか、トップの謝罪会見では出てきていない。
今の国会でのゴタゴタデハないが、まさしく『しっぽ切り』の事態であり、なぜこのような事を行う必然性が出て来たのかの釈明がなされていないのは、JRの台車事故と同じなのかもしれない。
品質が管理幅から外れた要因は、あまり言いたくないのかもしれないが、『合理化の一環として製法や原料を変更した』事なのか、たまたまの人的ミスなのかの説明もなく、『改竄』した事や『未報告』だけが表面化して来るだけである。
多分現場的には、品質トレンドから異常を察知し、その中での判断かもしれないが、そのトレンドがどうであったかの解析、『なぜなぜ問答』が重要である。
このためにも、品質データーは、品質保証分は鍵をかける必要があるが、トレンドデーターはオープンにしていかないと、物作りと言う点では弱くなると思われる。

今、QCから上がってくるデーターは、グラフなどでパラメーター毎に一目で見れるが、品質での異常時、相関関係を解析するためには、簡単に取り出せない場合もある。
TPM活動では、『ロスゼロ』で、管理幅や、限界点のデーター管理が主流となっているが、物づくりと言う点で、『なぜそうなったのか』を考えるための情報としては物足りない場合が多い。
製造時多種の原料を使い生産している場合、原料変更や製造変更などでは、品質に表れるデーターも注視していく必要があり、単に規格幅に入って『合格』だけで済まされない場合が多い。

例えば、TPMで作業環境の改善で粉体を反応釜へ仕込時、釜内を負圧にするような場合があるが、製品のpHを自動調整で管理していると、粉体仕込みのアルカリ成分が負圧でスクラバーサイドへ飛散し、実際の反応物の組成となっておらず、最終製品のpHだけは会っていたなどと言う事などもあり、品質とその裏にある製造での問題事項を考え出すヒントとして、品質データーと共に製造のデーターも重要である。
この品質データーも、製品に思いが無いと、何も管理されないままで、ちょっとした振れだけも問題なしと判断を下してしまうかもしれない。

長くなったが、もう一度『なぜなぜ』問答が真剣に出来る人間力を引き戻さない限り、日本の製造業は強くなれないかと考える。

**
このメモを書いている中で、先のJR新幹線/台車亀裂問題が川崎重工以外での製造でも見つかったとの記事を見つけたが、本質に戻っての究明を急いでほしい。
この説明資料にある通り、外から見える所ではなく内部でも亀裂が起こっており、『なぜなぜ』問答をしっかりしてほしい。


この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« JR新幹線 台車亀裂問題/JR内... | トップ | 日本の製造業 物を見る力の... »
最新の画像もっと見る

品質管理」カテゴリの最新記事