日々のメモ帳

日常生活での、ちょっと気になった事や、面白かった事などメモしていきます。

『土木屋』 / 『地図に残る仕事』

2021-07-08 21:12:02 | 品質管理
昨夜遅く、友人の『土木屋』から『Zoom CALL』がかかった。
熱海での『大規模土石流』の映像が、毎日流れることに心を痛め、酒が進んでの事だった。
繋がるやいなや、開口一番、『土木屋の恥や』『地図に残る仕事になっとらん』との『ボヤキ』が・・
このあと、酔いつぶれる寸前まで、一方的に、色々な事を語ってくれた。

彼は、元大手建設会社の『土木技術担当』だったが、大学卒業後『トンネル工事』や『ダム工事』で全国を『転々』とし、定年まで『現場』へ踏みとどまっていた。
『土建屋の大将』ではないが、土を扱うことが多いので、いつも『土木屋』と称しており、今日も『土木屋』君で・・
彼からすると、今回の崩落事故は、『土木屋として責任放棄』としか思えない様である。

『CALL』をかけてきたもう一つの理由に、別 Blogで綴っている『市内散歩』へ、『昭和42年の水害』の記事を残したが、これについての『コメント』もしたかったようである。
<箕面市の防災マップ(最後に張り付け)>

『機関銃』のような勢いで『支離滅裂』にしゃべって来るので、紙きれに『メモ』しながら聞いていたが、『印象』に残っていることを書き留めておきたい。

●何が一番原因か
ちゃんと判る『土木技術者』がいなくなったこと
『建設会社』と共に『官公庁』も・・
今回の『崩落』した土砂の『総量』を見てみると、どこかで大規模な工事をした『残土』としか思えない。小さなデベロッパーの仕事ではなく、大手の不動産会社、その『工事』を受けた大手建設会社が『受注』物件で、その下請け、孫請けが安直に『残土』の処分を引き受けた可能性があるかも。
昔は、大手建設会社が都心部で『再開発』を行う場合など、『残土』については『工事設計』の中で『詳細見積』を行い、『妥当性』を『土木技術者』として判断していたが、最近は、『下請』へ『丸投げ』の感もあり心配である。
バブル後、デベロッパーも新興が参入したり、最近では『中国系』なども入り込み、『開発費用』を抑え込むために『違法投棄』が増えている。
今回は、言葉が悪いが、たまたま『土石流』で発覚したが、テレビで、いきなり田んぼの真ん中に『小高い山』や『奈良のソーラーパネル予定地へ残土搬入』なども放映されており、氷山の一角に過ぎない。
これらは『建設会社』にちゃんと判る『土木屋』がいなくなったのと共に、『官公庁』側の『土木技術者』の力も落ちたため・・とも思うとの事。
最近では、工事後の官庁担当者の『現地確認』すら、人手不足のためか、来ないことが多くなっており、『写真確認』だけも多くなっているようである。そして、あまりにも『監視業務』と共に担当者の『技術力』『判断力』が落ちているようだ・・とも話していた。
彼が、どこかの『現場』で『建設省』の若手担当者に説明するときも、あまりにも『初歩的』な『知見』がなく、『議論』にもならなかったとの事例も・・
小生の『メモ』のどこかで書いていた、『品質管理』『危険予知』などでの『技術の伝承不足』が、今回のような『危険を危険として感じられなかった』事になっていなければいいが・・・とも
『工事完了報告』が『目で確認』されており、『一言でも是正勧告』が出されていたのか。
昔から、役所は『なんかあったら困る』ので、『工事完了』の『判』はなかなかくれない。
『なんやかんや小さいことまで見つけて』、業者に『注文』を付ける。これは、別の見方をすれば『KY(危険予知)』を、さらにさせるためでもあったと・・今思うと。
これが、最近は、確認もしないで『めくら判』が多いような気もしてならない。
あまりにも『杓子定規』『お役所的』で、さらには、『業者癒着』の議員さんなどへの『忖度』であれば、なお始末が悪い・・と辛辣な意見も
そして、まだ『原因調査』段階と言えども、『役所』から『工事関係書類』が見えてこない事も気になる。『開発許可』と共に、『工事写真』なども提供を受けているはずであるが、ひょっとすると『10年』で『廃棄』されている可能性もある。
最近、このような『過去工事』での『確認書類』が残されていないことも問題
『DXはほんまに大丈夫か』『昔やったら青焼きで正副2通出してたで』・・と少し別への展開も

彼は、定年前、『技術伝承』のため、下請けへ志願して出向したようだが、最近の『大手ゼネコン』では、この『技術の引継ぎ』が出来ていない事も『危惧』される。昔は『工事現場』は『男くさい所で、何年か同じ釜の飯』で『KKD(カン・コツ・ドキョウ(判断力)』を教え込んできたが、
最近では『労働環境』や『働き方改革』が『優先』され、『工程』も『IT化』されるなどしてきたが、『工事』という『技術』はこれだけではできないような気もしている・・・と。
ただ、彼は、まだ多くの『土木屋』は、学校で最初に教えてもらった『地図に残る仕事』という『プライド』は持っているはず。この中で『正しく、安全を全うする』・・・と思っているようである。

●『土木技術者』の技量
今回の『崩落』を受けて、だれが『残土投棄』を『設計』したのか。
普通の『土木技術者』であれば、『開発前』に『山』へ分け入り、『鉄の棒』で『沢筋』くらいは探すとの事。少しでも『水道(みずみち)』が見えれば、パイプを入れるとか、仮設での『残土処理』であれば『シート敷』などは行うはず。
テレビの画像だけを見ていると、何んにもせずに、ブルで押し込んだだけのような気もしている。
宅地造成で山を切り出す時でも、谷筋への『擁壁』の『設計』は、今の『土木技術』でもなかなか大変。切り出した所から、水が出てくるときもあるし。
隣の『ソーラのはげ山』も、谷一つ向こうかもしれないが、尾根の上はつながっている。たぶん保水性が変わり、『水道』が違ってきているかも・・・専門的でよく理解ができない所もあったが。

こんな事を言うたら、『古いおっさん』と『若い技術者』には煙たがられたが、『設計前・現場100回』を『信条』にしていたとも話してくれた。
山奥の『ダム計画』が入ると、『設計前』、『年間フルシーズン』『現地』を訪れ、何日か『滞在』し『地元の人』の話を聞いたり、山へ入り『調査』をしたとの事。
夏は夏で『川筋』が出来るが、冬は『雪道』となり、春は、雪解け時『洪水』を引き起こすこともあり、立っている樹木の傾きから『土地』の性質も判るとの事。
村の人からは、過去の『歴史』を聞くとともに、どの沢の『石』が『どんな形』『どんな色』が多いのかも、自らの『調査』と共に『検証』することが、まず第一歩であった。
最近は、『環境破壊問題』もあり『発電用や治水用 大型ダム』の開発が少なくなったが、『土木屋』は『体力勝負』と『豪語』している。さすがもと『ワンゲル』である。

この『土木屋』の『勘・感に基づいたフィールドワーク』が、『建設現場』での『第一歩』であり、この『勘・感』『見るべき所』の数が、『技量』と、いまでも思っているようである。
最近では『ドローン』などでの『事前調査』も進んでいるようであるが、彼は、まだまだ、自らの足での『事前調査』を行わないと、『良いもの』はできないと信じているようである。

話の中に、東京外環道の『シールド工法』での『陥没事故』の話も出てきたが、『地図』や『地質図』だけでなく、『工事着工前』や『工事中』、実際に『現地探査』『確認』をしていれば、あれほど大規模な事にはならなかったのでは。すぐそばに『小さい川』があり、当然『水道』があるはずなので『危険予知』行えたはず。掘っている途中の『土質』でも、何か『変化』はあったはず。『シールドマシン』の『センサー』だけを頼りにしていると『危ない』。『黒部の太陽』のように、『ドリルの音』から、『人的・感性』を働かせないと、とんでもないことになるとの事。

こんな『土木屋の技量』は、実地で教え込まないとだめな時もあるとも話していた。クレーン車の『転倒事故』の話である。(だいぶ前にも何度か聞いた話だが・・)
最新型のクレーン車は、『画像認識』で『旋回範囲』に引っ掛かりそうなものがあれば『警報』がなり、『停止』もさせてくれるようである。しかし『アウトリガー(外への足)』の固定だけは『事前』の『経験』でしかできないかもと話していた。彼の経験では、造成地で、硬そうだった地面へ踏板だけで足をかけ、荷物をつり出したとき、地面から水が噴き出し『大慌て』したこともあり、この体験から、『足場』の確認、『鉄板敷』など、重要な『技量』として『会得』した事を、後輩たちへも『伝授』したとも話してくれたが、このような、ちょっとした『技量』『伝授』がおろそかになっている可能性もある。

最近『コンピューター制御』や『センサー』の発達で、人が『確認』すべきことが『省略化』されてきているが、この『クレーン事故』のような事例が、『新名神工事』でも『死亡事故』として報じられていた記憶があると、思い出してしまった。

●『若手』『土木技術者』の育成
彼は、定年後『下請』で『工事監理』をしていたが、『膝』を悪くしたので、一昨年『引退』し、悠々自適の生活をしている。
今日も、こんな『グタグタ』を言うのなら、大学や、土木系の専門学校で『若い人』の『教育』をしてはどうか・・と振ってみたが、『もう無理』との事。
『ナゼ』と聞くと・・『フィールドで教えられない』からとの事。
確かに彼らしい『解答』なのかもしれない。
今日、話していた中でも、いくつかこの事が見えてきている。
彼曰く、ここ数年の『土石流災害』を見ても、『大学の研究力』が低下している。
ここ何年か『大規模水害』が発生しており、『発生後』『現地・立入究明』は行えているが、『発生しそう』と『事前検証』で『現地確認』を行い。『やはり起こりました』と『答えた学者』は少ない。
今回の『熱海の現場』も、だれか『ちょっとでも気になる』『土木屋』がいなかったものであろうか。
彼は、若いころから、あえて『学会』へは『入会』せずに、学友から『年次大会資料』などを借りて『勉強』していたようであるが、最近は『IT』や『新工法』での『新提言』はあるが、古臭い『**川の治水対応』のような『研究テーマ』が少なくなっていることを危惧していた。

そして、各大学の建築や土木学科は、『SDGs』や『環境対応』の『注目されるテーマ』と共に、直近の『被災』での『回避策』などの『目立つ研究テーマ』が多く、地方大学でも、地元の『急峻河川の解析』などは行うが、市内に、あたりまえにある『川』、さらには『崖』などへは目が向けられていない。
大学が『独立法人化』し『研究テーマ』として『スポンサー』がつかなくなる事が影響しているのでは・・とも
そして、若い先生と、古参の教授陣との『年代ギャップ』も心配との事。どちらか言うと、彼くらいの『名誉教授』は、今でも『山歩き』で『危険個所』を巡っているが、若い先生方は『パソコン画面』で『シュミュレーション』に明け暮れ、実際の『フィールド作業』が少ないようだとも笑っていた。
これは、大手の『建設会社』でも言えるようである。
こんな事から、経験豊かな『土木屋』が育たない。育てられない事なのであろうか。

彼の『膝』とが、ここでつながった気がする。『現役プレーヤー』として活躍できなくなり、『後進指導』をあきらめたのかもしれない・・

●『土木技術者』の経過が足りない事での危険性
話がどんどん『深入』してきたが、
『土木屋』が育たなかった、もう一つ大きな『原因』は、『最近のJV(共同体)』かも。
昔から大規模工事は『JV』を組んで取り掛かることが多く、高度成長期は『JV』で、相対する会社でも、その時期だけは『同胞』として成果を上げてきたが、『最近のJV』では、『幹事社』と共に『道路公団』などの『意向』が強くなり、お互いの『技量』や『ノウハウ』。さらには『経験則』『危険感性』などが出しにくくなっているように思える。『JV』そのものが『上下』『元請・下請的』となり『一体化』されにくい。『お金』『予算』問題が『先行』する事が最も大きいかもしれないが・・・
これらから『工事の厳格監理』や『品質管理』『安全管理』に『ひころび』が出てくる。
テレビで『東京スカイツリー』の『大林組』が時々放映されるが、これくらい『自社工事』に近くないと『工事監理』は難しい。最近の『高速道路』の様に、誰が『工事主体』かわからなくなると、『工程』まで遅れ遅れになるのではと・・

そして、最近、日本での『大規模工事』が少なくなったこともあり、大手ゼネコンも『海外』へ展開しているが、これも『土木技術者』の『技量』を上げる事ができない『要因』のように思える。
『ダム』や『大型橋梁』の工事を進める場合、『掘削』した段階で『地盤』の『良否』が見極められ、『強度見直し』などの『設計変更』が必要となる場合もあり、このようなビックプロジェクトでの『OJT』で『経験』『技量向上』が行えなくなっており、心配である。

過去、タイなどで、高速道路や橋梁などを受注し、最近では、中近東やアフリカまで『工事』を展開し始めているが、『事前調査』『設計』が十分にできない問題がある。
『現地コンサル』が作成の『設計図書』などを基に『本格設計』に入るが、橋梁足場の『ボーリング調査』や『周辺調査』などが十分に行えない場合もある。ましてや、『環境アセスメント』はどこか飛んでしまっている・・・
中国がODAと引き換えに、アフリカなどで『橋梁』や『高速道路』などを『受注』をしているが、広大な『中国』の真ん中を通すこととは異なり、『設計』『不十分』などで、『無理』が起こり、『橋梁』完成後数年で『崩落』する問題が起こっているが、日本の『土木技術者』も同じようなことにならなければ・・とも心配していた。

やはり、この『メモ』のどこかで残した、『技術の伝承』を途切れさせない事が、これからの『日本の安心・安全』を得るためには、最も『重要』であろう。

●『ドローンより自らの足で』
最後に、酔いがまわる中で、最近の『政府政策』『国家強靭化計画』へ話が及んだ
だんだん『支離滅裂』になりつつでの話であったが、『国家強靭化計画』や『政府の諸施策』はあまりにも『IT』や『ドローン』に頼りすぎ。
今回の『土石流』でも『センサー』がない限り『無策』
そして、『目で見ての確認』が出来ていない
たとえ『ドローン』で『常時監視』が出来ていたとしても、『過去』の『歴史』からの『問題点』は出てこない。『沢筋』をさがすため『足』で分け入る必要もある。

例えば、最近『橋脚クラック』を『ロボット』を『上下』させて『老化度』を測定しているが、『クラックの流れ』『クラック端』『深さ』など、まだ『打診』での『診断』より劣る事もある。
『勘だけ』と『よく怒られるが』、単に『クラック度合』だけでなく『橋脚』の『足元状況』や『流水圧負荷』なども『総合的』に『検証』しておかないと、『洪水時』『橋脚破壊』もありうる。こんな事も『IT』『ロボット』『検査』から『抜けるもの』として想定しておく必要がある。これが『土木屋』の『技量』で『感・勘』である。

彼は『ドラクター』から『CAD』への転換をいち早く取り入れた『IT先駆者』ではあるが、やはり、今でも『フィールド検証』の方を『重要視』しているようである。
『IT化』は否定はしないが、『もしも』のためには『自らの目で集めた情報』を『優先』させることが要であると・・感じているのかもしれない。

『国家強靭化計画』でも『DX』や『IT化』『ロボット』『ドローン』を『推進』させるのはいいが、『人の目』ほど『鋭いものはない』・・・と最後に話したことが結論かも

何れにしても、今回の『土石流』は『人災』であることは間違いない。
『不法投棄』した『業者』には『大責任』があるが、これを『監視』できなかった『行政』にも問題があり、彼の様に『フィールド』を大切にしている『技術者』にとっては、『指摘できなかった事』が心に痛むのであろう。
『土木屋』が『地図に残す仕事』をすれば、地震などの『天災』が起こらない限り、100年経っても、200年経っても『崩落』せずに残ったのかもしれない。
ただ、最近の『豪雨』は、『天災の域』となってしまったのかもしれない。

このためにも、さらに『土木屋』の『技量』を上げていく必要がある。
彼の望みは、『IT』に頼ることのない、『フィールド重視』『現場主義』の『土木屋』が『育つ』事なのであろうか。

***+*
今朝、昨夜の『話題』の『追加資料』として、下記 URLが送信されてきた。
建設省、近畿整備局の『新技術・紹介資料』であるが、たしかに『IT』に頼り切っているような気がしてきた。どこまで『フィールドワーク』の『積み上げ』であろうか。 
もう少し詳しく読み進めてみたい。

そして、『質問』しようとしていた『わが町の防災・ハザードマップ』は、次回、詳しく議論してみたい。


とりあえず、今日はいったん終了・・
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