コニタス

書き留めておくほど重くはないけれど、忘れてしまうと悔いが残るような日々の想い。
気分の流れが見えるかな。

チャンスでは無かろうか。

2011-03-01 11:51:01 | 
取りあえず報道を眺める限り、大学や文科省は、携帯電話などの新しい情報機器にどう立ち向かうか、と言う“不正防止”策に傾注する模様。
いつものようにマスコミもそれに追随。

これから先、IT技術はもっとずっと進化する。
視線や思念までもが入力装置になるかも知れない時代に、感染症まで気にしながら密室に隔離して行う入試に未来があるとは思えない。


前の記事にも書いたことだけれど、大学入試そのものを問い直す必要があるんじゃないか。

ニューズウィーク日本版に掲載されたコラム「京大入試ネット不正事件」に見る入試制度の限界(冷泉彰彦 2011年02月28日(月)10時43分)や、知り合いが教えてくれた茂木健一郎さんのツイッターでの発言が、ちゃんと問題を認識している人たちの思いだろう(ただ、お二人とも“日本の大学の入試”をひとまとめにしてしまうところがあって、個別の現場でどんな工夫がされているか、ということを余りご存じないんだろうなぁ、と言う印象はぬぐえない)。


と言うわけで、現場から。
言語文化学科の入試問題は、推薦も含め、そう言う思いに基づいて作られている(後期日程はセンター試験重視だけれど面接は行っている)。

ところが、大学は、“教科・科目”型の問題を“シンプルに”共用する方向で、何度も圧力を掛けてきている。

茂木氏の言うように、基本的な学力はセンター試験で十分なはずで、それ以外は、募集主体(大学ではなく、学部・学科など、同じ試験で定員を設定している最低の単位)ごとに作るべきだ。
それが出来ないなら、センター試験(あるいは+面接)だけにすればよい。


何度も言うように、人文学部では、社会学科と法学科が国語を課している。
センター試験の国語では測れない“国語力”を問いたいという“気持ち”は解らないではないが、社会学科と法学科の教員に、センター試験の国語と個別試験の国語の違いを説明できる人が何人いるだろうか。そして、現在の国語の問題が、教育学部(共通・選択)・社会学科・法学科と言う異なる募集単位にとって必要な“国語力”の測定装置として万全なのだと言い切れる人がいるのかどうか。

しつこく言うが、言語文化学科が“国語”を課さなくなったのは、国語力が必要ないからではない。
我々は、基礎学力をセンター試験で測った上で、私たちと一緒に学ぶにふさわしい準備の出来ている人を見つけるために、総合問題を課している。

険しい道なのは解っている。
毎年同じような質や傾向にすることは難しいし、逆に対策を立てやすくするから、毎年毎年の試行錯誤、烈しい議論か交わされる。結果的に“穏やか”な問題に落ち着いてしまうことに私はいらだつこともあるけれど、それでも我々が入試を通じて受験生に何を伝えたいのか、ということは、少なくとも合格して入学してきた学生達には伝わっているという実感がある。


大学がこうした“個性的”入試にシフトできないのは、古典的な学力観に縛られ、偏差値的序列における“良い学生”を取りたいと言うところにしがみついているからだ。
冷泉氏も茂木氏も、そもそもそれがおかしい、と言っている。

実際、“ユニーク”な試験で入った学生の学力が一般的な入試で入った学生より劣っていたと言う話も聞く。
AO入試を取りやめる大学もかなりあるようだ。
一芸入試や一部のAO入試には色々問題があったように思うが、一方で、センター試験的学力とは異なる“才能”を開花させている学生も確かに存在する。
問題は、入試問題を新しい学力観にあわせて改革しても、授業が古いままではそう言う新しい才能を評価できないというところにある。
基礎学力が必要なのは言うまでもないけれど、その上で、何を伸ばすか、と言う問題は大学の責任であるし、それを受け容れる社会の責任でもある。
受け入れ側が、古い学力観の序列に目を奪われずに採用について考えること、大学が、そういう知のあり方を自信を持って示すこと。
そこに向けて、大学入試はあるはずだ。

そして、冷泉氏の言うように、大学はもっと成績評価を厳しくして卒業しづらくするべきだ。
除籍というカードが妙な権利意識の圧力で切れないまま、定員管理の締め付けで無責任に卒業させてしまう事態はどう考えてもおかしい。


言語文化学科もそろそろ統計的なデータが意味を持ってくる時期に入っているのではないかと思う。


一度、冷静に様々な要因を分析して、カンニングごときに悩まされないような強靱な教育組織を構築して欲しい。

これは、チャンスだと思う。

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