ウトピア

真実と欲望が出会うところ

神風特攻隊

2010-08-16 09:52:14 | Weblog
「老師よ、私のつたなき問いにお答えください。今日は8月15日で終戦記念日ですが、そのーずーとこの時期はテレビや新聞でよく先の戦争について番組や記事が出るのですが、いつも少々おかしく思うのです。その報道の扱いというか。特に特攻隊についてですが。明らかにあれはおかしいですよ。作戦として国家が推進する戦術とはおもえません。単なる狂気の沙汰です。とおもうのですが」
「ほう、よくみておるな。そのとうりと言える」
「なぜ、テレビやメデイアやいわゆる有識者と言う方はそれをいわないのですか?」
「それは彼らにとってその真実を言うことが著しく不利になるからであろう。まず、多くの特攻隊員の死が反面教師としての無駄死にの例ということになる。遺族としてはそれは認めがたい。彼ら遺族もそして当時の日本国民の多くは心の底ではどう思っていたかわからぬが、公の場所では特攻隊員を称賛し、お国のために死ね、といっていたから。これも狂気の沙汰だ。つまり日本国民の全体が表向きはみな狂気の沙汰であったことを認めることになる。その狂気の国民が自分たちの親、祖父母で今の我々はその親に教育を受けて育ったのだからね。親兄弟に精神に障害者がいたことは隠したいのが人情だ。それをばくろされては多くの国民の恨みをかうことになる。だから、重要なことはいわない。お涙ちょうだいの物語や戦争の悲惨さをえがいたり、国民を戦争の被害者として描く番組や意見を述べれば四海皆おさまるということだ。ただし、これによって、真実は虚飾よりより意味がないということが、多くの国民人間の深層心理に刻まれ、本音と建前のかい離はやがて人間関係をうわべだけのものにしていく。」
「大変なことをおっしゃっているように思います。戦争の時代、日本人は皆狂気の沙汰ですか?理性と言うものがない国民でしょうか、日本人は?」
「そんなことはない。日本人は理性があるが、情に流されやすい。さらに、反逆の精神を失っているというか、忘れてしまったのじゃろう。江戸時代のなかで、反逆の歴史を忘れて、農民たちは苦し紛れの一揆をおこしても封建体制変革を要求しなかった。少しばかりの年貢の減額等が実現するとなると、指導者の首をさしだし、おしまいとなる。奴隷根性が身に付いてしまったといえよう。鎖国体制は見事に反逆の精神を消し去っておる。すくなくとも社会的な反逆精神はきわめてうすくなったといえよう。」
「そうですか、でも、明治大正昭和とそれなりに日本も近代的、合理的精神の発達があったはずですが」
「もちろん、鎖国はなくなったからね。いろんな思想の書物も日本に入ってきたし、中江兆民のような外国留学で人間性尊重や民主主義の精神を伝えるものもいたし、日本人の近代科学の習得は外国人教師の驚きでもあった。しかし、和魂洋才だから、西洋で発達した理性を軽視した。それは理屈だ、は日本では現実的でない、軽蔑の意味でつかわれる。『知は力なり』は成立しないのが日本だ。わずかに希望が持てる兆候としては、つまり、先の大戦中においてだが、海軍の軍人の中にも、この特攻作戦に公然と反対したものがおることだ。なかでも、一海軍航空隊長でしかない美濃部正少佐などは自分の部隊から一人の特高志願者も出させなかった。それでいて、彼の部隊はそれなりの戦果をあげている。彼はヒューマニストではないが、軍人としての合理的精神で特攻を否定したのだろうが、もっと、このことは日本のメデイアで取り上げられるべきなのだろうに。NHKで一度ぐらいしか見ておらんのう。この種のものは。このようなメデイアのたいどは 戦争や政治に対して『一億総白痴化』推進に役立っておる面もある。」
「何か絶望的ですね」
「そうでもない。常に歴史、真実を知ろうとすること、有力になる政治意見に反対の原理、思想を考えることを忘れないで感情と理性を分離して、考えてみることだ。ただし、無条件に発展性のある人間性の尊重ということを忘れないこと。また、豊かな感性も理性を支えるものとなる。理性のない感情に訴えるものが安易に放送されている。宣伝されやすい。戦争の責任は指導者にあることは言うまでもない。それを隠ぺいするために『一億総懺悔』等メデイアは並べた。戦時中はその同じメデイアが『一億玉砕』を喧伝しておったのう。日本国民はこれで、日本人自身による戦争責任追及を忘れたようだ。勤勉で能力も高い国民でこんなに支配しやすい国民も珍しい、と日本の支配階級はほくそ笑んでおることじゃろうて。故に、民主主義と人権尊重は民衆のために実現せねばならぬ。われわれがそれを意識し続け、行動する限り希望はある。40年くらい前に、『力を合わせることさえ忘れた』とうたわれた我々であっても。」
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