ウトピア

真実と欲望が出会うところ

恋愛詩集8

2008-12-15 00:27:32 | Weblog
鉄製のテーブルとイスが置いてあるベランダで
女は満月を眺める。
椅子に座って、飲み物をだして
女は満月を眺める。
一陣の風が風呂上りの体の下腹部を吹き抜けていくのを感じて
女は満月を眺める。
心の中で何か疼くのを感じて
女は満月を眺める。
月の無慈悲な女王になった自分を思い描いて
女は満月を眺める。
無慈悲な女王は男の犠牲者が必要だ、と思って
女は満月を眺める。
携帯電話をとりだしアドレス表をよびだして
女は満月を眺める。
何年も会っていない男のアドレスを選択して
女は満月を眺める。
この男が「結婚しようと」と言ったが、断ったことを思い出して
女は満月を眺める。
男に電話をかけ、男の「はい、なんですか」という声をきいて
女は一瞬、何かに包まれる。
しかし、直ぐに、いつもの習慣に促されて、
無言で電話を切る。
女は男との今までのことを忘れる。
女は久しぶりに、医者から出された睡眠薬を飲まずに眠る。




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