切符

2020-11-05 21:56:00 | エッセイ
学生の頃、青春18きっぷで
よく旅をしていた。

九州の旅もした。

日田彦山線に、夜明けという名の
駅があって、その名に惹かれて
旅に出た。

長閑な駅に降り立ち
記念に切符を買って帰った。

帰ると、クラスメイトが
「もう駄目なのよ」と何度も
ため息をついていた。
何が駄目なのか
分からなかったので
夜明けの切符を渡した。

クラスメイトは、ありがとうと
笑みを浮かべた。


あれから、十数年
体調を崩した私は
夢を諦めこちらで
夫の自営業の手伝いをしながら
暮らしている。

なんとか、続けている
私たちにお客さんが
「いつも助かっています」
と言ってくれることがある。
とても嬉しい。ありがたい。

夜の路地、空を見ながら
作業着のジャンパーに手を入れる。

ポケットには
まだ、青春のきっぷが入っている。

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