KU Outdoor Life

アウトドアおやじの日常冒険生活

北ア・金木戸川 双六谷

2014年09月15日 | 沢登り

日程:2014年9月13日(土)~15日(祝) 前夜発二泊三日
同行:タケちゃん(その空の下で)、Sさん
参考:「関東周辺沢登りベスト50コース」(山と渓谷社・2002年刊)

 この夏、ケニアへ行っている間にタケちゃんからメールが来て「秋になったら沢へ行きましょう!」のお誘い。
 当初は奥只見・北ノ又川の予定だったが、直前になり目まぐるしく変わる天気予報に翻弄され、南ア、そして北アへと計画変更。結局、双六谷に落ち着いた。

 双六谷はガイドブックで見たエメラルドグリーンの釜が魅力的だが不意の増水を考えると単独ではキツいかなと思っていたので、沢の師匠、タケちゃんがいれば怖いもの無し。
 さらにここ数年、タケちゃんとかなりの沢をこなしているSさんも加わる。
 お二人は昨年、この流域の小倉谷遡行~打込谷下降を経験済みで、何とも心強い。

一日目
天候:/
行程:金木戸林道・車止めゲート7:30-広河原10:10-打込谷出合11:40-センズ谷出合14:00-下抜戸広河原15:10

 松本から上高地へ向かう途中の「道の駅・風穴の里」に朝6時半集合。
 今回は車二台のため、まずはタケちゃんの車を下山口の新穂高温泉へデポし、その後、私の車で金木戸方面へ向かう。

 新穂高温泉「深山荘」の無料駐車場は既に物凄い車の数!
 何とかギリで一台停められたが、危なかった。さすが三連休、うかうかしていられない。
 
 そこそこの距離を走って、金木戸林道の第一ゲートに到着。
 10台ほど停められるスペースには既に4台ほどが先着していて、沢支度を進めているパーティーもいた。

  

 我々もそそくさと用意し、出発。
 ただ、双六谷はアプローチが長い。
 まずは歩きやすいほぼ平坦な林道を約3時間。
 岩をくり抜いた自然のままのトンネルをいくつも越え、時折山側から流れ落ちる清水に喉を潤わせながらひたすら歩く。

 Sさんは観察眼が鋭く、歩いていても常にキノコや野イチゴ、山ブドウなどを目ざとく見つけるが、この日も途中、左側の山の斜面に猿の群れを発見。
 「おっ、いるいる。」などと見ていたら、突然そのうちの一匹が直径1mはあるデカい岩をこちらに落としてきた。
 ウォー!!ヤバイっ!・・・。
 間一髪避けることができたが、猿に気づかず素通りしていたら直撃していたかもしれない。(これがホントの「猿岩石」?)

 林道は途中二俣に分かれ、我々はそのまま右側の川沿いへ。
 しばらく行くと広河原の取水ダムとなり、ここからは右岸樹林帯の中のよりワイルドな旧トロッコ道をさらに小一時間進む。
 この辺りはいかにも熊のテリトリーといった感じで、交互に笛を鳴らしながら行く。

 長いアプローチもようやく終わり、打込谷出合付近の壊れた吊橋に出ると魅惑のエメラルドグリーン釜とご対面。
 長丁場だし、季節も秋で身体も冷えるので積極的に泳いだりはせずに進む。

  

 この辺り、巨岩と淵の連続で、抜け道を探すようにして活路を見い出していくのが双六谷の醍醐味。
 途中の巨岩はちょいとボルダーちっくで、ふだん履き慣れていない沢靴だとけっこう手強いのもある。
 私は二週間前に丹沢で痛めた右手小指が完治せず、岩をプッシュして押さえる場面では力を存分に入れられないので難儀する場面がいくつかあった。

 また、徒渉で飛び石伝いに渡るところでは、沢慣れしている二人には何ともないジャンプも私にはどうにも怖い。
 (あの岩、スベリそう→スベるだろ、たぶん→いや、絶対スベる!→ここでスベったら流される!)と思考回路がたちまち良くない方向へ展開し、ついビビリ腰になってしまう。
 タケシ師匠は水中の岩に飛び移る時は思い切って体重を十分に乗せるようにとアドバイスをくれるが、やはりこういうものは「絶対滑らない!」と思えば滑らないのだろうし、「滑るかも。」と思ったら滑ってしまうのだろう。

  

 それでも落ち着いた天気と美しい渓観に気分を良くしながら、センズ谷出合まで進む。
 ここらで先行の男女二人組に追いつく。(千葉の「まつど岳人倶楽部」)

 入渓前のアプローチでタケちゃんとSさんは青いヤッケを着た先行者をチラッと見かけたので、「その人はもっと先ですか?」と聞いてみたら、そんな人は見かけなかったとのこと。
 いるとしたら、我々と彼らの間にいるはずなのだが・・・・・・これって、もしかして幽霊?

 薄ら寒くなってきたので、これ以上この話はしないことにして先へ進む。
 彼らはこの先、九郎右衛門沢に入り、黒部五郎へ詰め上がると言う。先行してもらって、我々もボチボチ天場探し。

 トポで下抜戸広河原と書かれた右岸の一画に絶好の天場を発見。
 豊富で乾いた流木を集め、豪勢な焚火で一日目の夜となる。


二日目
天候:/
行程:ビバーク地7:00-キンチヂミ7:55-蓮華谷出合9:15-二日目ビバーク地(2,100m地点)15:00

 今回は寒さを見越してタープではなく、タケちゃんが三人用のゴアテントを持ってきてくれたおかげで快適快眠で朝を迎える。
 
 当然ながら朝から焚火。
 タケちゃんがいると、沢ではまずストーブを使うことは無い。

 出だしはしばらく河原が続く。

  

 
 やがて明るく開けたゴルジュのような地形に入るとヘツリと徒渉の連続となる。
 私は沢慣れした二人の後を付いていくばかりだが、無闇に付いていくとこの二人は敢えて厳しい道を選ぼうとするから要注意だ!
 
 次々と現れるヘツリ、徒渉を繰り返し、やがてちょっとした大きさの釜に着く。
 ここは左岸の水線より2mほど上をトラバースしていくのだが、スラビーでちょっと悪い。
 
 途中にA0用の残置があって、これを使ってタケちゃん、Sさん、私とクリアしていくが、私はトラバースが済んだ後のちょっとしたクライムダウンで思わず足が止まってしまった。
 下の着地場所がどうにも斜めに見えて、ここでバランスを崩したら泡立つ深い釜にドボン!なのである。

 「大丈夫!飛び降りちゃってください。」とタケちゃんは言うが、一度不安を感じるとすべてが疑心暗鬼になってしまう。
 後から冷静に考えれば残置にスリングを付け足せば、難なく下に着地できたと思うが、その時は気持ちがそこまで及ばず、タケちゃんに足元をサポートしてもらいながらソロソロと降りる。(あぁ、情けない)
 結局、後から調べてみると、ここが双六谷の核心?の「キンチヂミ」だったよう。

  

 キンチヂミ付近からいくつか右岸からダイナミックな大滝が出合うのを見送りながら進むと、やがて蓮華谷との二俣。
 蓮華谷方面の奥には黒部五郎らしき山頂に白い岩がまばらとなった山頂が見える。
 だいぶ水量は減ってきたが、まだまだしぶとく流れは続く。

 そろそろ行く手の稜線も谷間越しに見えてきた所で小休止。
 ふと見ると、ザックにくくりつけてきたモンベルのフローティング・ベストが無い!

 ここまで泳ぐことは無く、たぶんこの先も使わずに済みそうだが、このまま沢の藻屑にしてしまうのはもったいない。
 二人には申し訳ないが、一人引き返して捜索へ向かう。
 おそらく一つ下のブッシュ、さらにはもう少し下のブッシュをくぐり抜けた所で枝に引っかけてしまったのだろう。

 
しかし、それらしき所を通過しても見つからない。
 もしかしたら徒渉の時に落ちて、もう流されてしまったのかも。あぁ、軽く考えてセルフビレイを取っておかなかったのが失敗だった。

 
いつまでも上の二人を待たせるわけにもいかないので、あの下の岩を越えて無かったら諦めようと思ったら、ふいにソレはあった。
 陽水の歌じゃないが「探すのをやめた時、見つかることはよくある話で・・・」というのは本当だ!

 
上流で待っていた二人は私がなかなか戻らないので、熊に襲われたか、滑って頭を打ち脳しんとうを起こしているんじゃないかと心配していたようだ。・・・どうもスミマセン。

  

 稜線の幕営地より沢の中で焚火でしょうとのことで、標高2,100mより上を目安に天場探し。
 しかし、沢が細くなってきた分、両岸の斜面も迫ってきてなかなか適地が見つからない。

 結局、少し引き返す形で右岸の台地の草を刈り払って三人分のスペースを造成した。
 ただ、この辺りはもう完全なる熊のテリトリー。糞やら草を踏み均した跡などケモノの気配がプンプンする。

 空にはうっすらと天の川。タケシ師匠の焚火は夕食後も長く続いた。


三日目
天候:/
行程:二日目ビバーク地6:25-双六池8:30-鏡平9:20-新穂高温泉12:30

 9月の北アルプスということで、ある程度の寒さを覚悟していたが、気温は思ったほどに下がらずグッスリ眠れた。
 今朝も焚火で始まり、後は沢を標高差500mほどを詰め上げるだけ。

   

 ここまで来るとさすがに不安を感じるような淵など無いが、その代わりにヌメリが出てきて疲れた身体に割と神経を使わせる。
 残雪期の雪の踏み抜きと同じで、ここは大丈夫だろうと一歩置いたらツルッと滑ったりして何度もヒザやスネを思いっきり打ち付けた。もう勘弁してほしい。

 やがて顕著な二俣となる。稜線はだいぶ近い。
 方角的には右の沢だが、一段上がってみると左の沢の方が明らかにスケールが大きく、本流のような気がする。

 地形図でよく確認し、リーダーの判断でここは右を選択。
 少し行くと源流となり、後はほぼヤブ漕ぎ無しの涸れ沢となる。

  

 ただ、最後の詰めになって不穏なモノが。熊の糞である。それも下ろしたてのホヤホヤ!これで、のほほんムードに一気に緊張が走る。
 おそらくヤツらは木の陰からジッとこちらを窺っているに違いない。

 笛を吹き鳴らしながら詰めていくと、そのうち稜線を歩いている登山者の姿が見えてきた。
 あまり笛を吹いていると遭難と間違われるので、このへん何とももどかしい。

 着いた所は双六池のあるキャンプ場。
 さすがタケシ隊長。あそこの二俣でよくこちらを選んだものだ。

 色とりどりのテントが建ち並ぶキャンプ地で、メット、沢靴、ヌメリ取りのタワシを持った我々は明らかに異邦人。
 小屋には近寄らず、遠巻きに双六池の畔に腰を下ろして小休止とした。

  

 下りは小池新道。初めて通る道だけに西側から間近に見える槍ヶ岳の姿が新鮮である。

 それにしても二人の足が速いこと。
 遡行中もしばしそのペースに付いていくのがやっとだったが、下りはなお早い。
 自分が歳のせいもあるが、やはり二人ともほぼ毎週沢に行っているだけあって強い!

 沢靴が慣れなかったのか、私は両足の親指の爪を死なせてしまい、最後はもうヨレヨレ。
 充実した遡行だったが、自分には何とも辛い下山となった。とりあえず無事に新穂高へ下山。


 双六谷は大きな滝は無く、登攀的要素はほとんど無い。(今回、30mロープ&ガチャ類を持参するも一切使用しなかった。)
 その代わり、ヘツリと徒渉の繰り返し、場合によっては泳ぎを強いられ、水量によってはかなり厄介になると思う。総合的な沢の技術、判断力が必要だろう。
 今回は自分にはややハードなペースながら、天気に恵まれ、屈強な二人に囲まれての安心遡行だったので助かった。


裏丹沢・原小屋沢遡行~中ノ沢下降

2014年08月31日 | 沢登り

日程:2014年8月31日(日) 日帰り
天候:時々
行程:早戸川林道魚止橋7:40-雷平9:00-F2雷滝9:35-F4バケモノ滝10:50-F7ガータゴヤの滝11:50-姫次13:20-蛭ヶ岳14:25-中ノ沢下降-伝道-魚止橋18:05(単独)
参考:「丹沢の谷110ルート」(山と渓谷社・1995年刊)
   「山のホームページ・沢登りと山スキー」銀座山の会・森田氏の記録
   「その空の下で」タケちゃんの記録

 今年の夏は天候不順でこの週末も予報は悪く、早々とS師とジムの約束をしていたのだが直前になって天気が好転。
 せっかくなので一人沢へ転進する。
 原小屋沢は、以前から考えているパチンコ遡行のために大事に(?)とっておいた一本だが、なかなかその計画を実行できないため今回日帰りで行くことにした。

 未明に家を出て早戸川林道の終点、魚止橋まで。車で2時間弱。
 圏央道の海老名-高尾間が開通したため周辺道路も整備され、アクセスが少し良くなったような気がする。

 沢登りか渓流釣りか、周辺には既に何台か路駐しており、自分も空スペースに停める。
 魚止橋には、「この先通行止め」のガード柵あり。簡単に手でどけられるが、その先はかなり荒れたダートで普通の車ではまず無理。
 台風の影響か土砂崩れで、現在復旧中である。

  
 (左)早戸川林道「魚止橋」手前                (右)早戸川林道終点の案内板

 20分ほど荒れた道を歩いて林道終点。
 ここから原小屋沢へは右の尾根の「伝道」を通っていけるが、自分はよくわかっていなかったのでここから沢に入る。

 いきなり南アの尾白川本谷のような巨岩越え、そして深い淵のあるゴルジュ突破など、雷平まで結構時間がかかる。
 以前は途中に木橋が二か所ほど渡してあった箇所も、今は増水で流され橋の残骸があるばかり。
 渡渉ポイントにはケルンが積まれているので見逃さずに渡っていく。

  
 (左)渡渉ポイントの橋は増水で壊れたまま           (右)雷平付近

 ようやく少し開けた河原に出て、雷平に到着。
 少し歩いて右岸から中ノ沢と思われる沢を見送り(下からだと涸沢に見える)、さらに本流通しに行くとF1「大岩の滝」。

 正面突破は完全に頭からシャワーを浴びることになり、左側から越えようとするが、ちょいと被っていてボルダーちっく。
 ガイドブックには「岩の下からくぐり抜けるように越える」とあるが、よくわからない。
 まぁ最初から無理することもないだろうと結局、右から巻く。

 続いて沢が左に曲がると、いきなりF2「雷滝」。

  雷滝 15m

 凄い!見事だ!高さは15mらしいが、幅もあり、何より水量が圧倒的。
 花火で言ったら大玉の「枝垂れ柳」か「スターマイン」。これまで丹沢の滝はいくつも見てきたが、その美しさと迫力でベスト10、いやベスト5に入れていいかも。

  
 右の写真は上部1/3辺りからの俯瞰ショット

 一応登れるラインを探ってみるが、滝下へ行っただけで物凄い風圧で、写真を撮るにもたちまちレンズが水滴で曇ってしまう。
 正面突破は水勢に押されてまず無理。左の水際ラインが行けそうだったが、上部がよくわからず結局ここも左側から巻く。
 途中、巻き道から滝へトラバースし、上部1/3だけ登ってみた。

 雷滝の上は台風の影響か、倒木が流れを塞ぎ、ちょっと遡行と景観の邪魔をしている。
 その先しばらくナメや小滝が続く。深い淵を洞窟探検のようにヘツっていくのが面白い。

 この先で顕著な二俣となる。水量比は正面3:左2。
 進行方向、水量ともにどう見ても正面の方が本流のようだし、そのまま先へ進んでしまう。

 しばらく行くと、なだらかだが結構大きな三段のナメ滝が現れる。
 おかしい。原小屋沢だったら次に現れるのは直瀑のバケモノ滝のはずで、ここでようやくカサギ沢へ進んでしまったようだと気づく。
 すぐに引き返して右岸の沢へ入り直す。
 地形図だと原小屋沢は本流から左に折れるようになっているが、「丹沢の谷110ルート」などのトポだとほぼ真っ直ぐの流れで描かれているので注意が必要だ。

 また「110ルート」だと、その先が水量比1:1の二俣となっているから紛らわしい。
 先ほどのカサギ沢との二俣を左に入って次の二俣だが、ここは明瞭。
 右手には豪快に「バケモノ滝」が落ちていて、間違えようもない。

  バケモノ滝。落口の上に大きな倒木がブリッジ状にかかっている。

 このバケモノ滝(F4・10m)も水勢強く、取り付くにしてもドップリ釜に入り込まないといけないのでパス。
 左手の急なリッジから巻いて、落口に立つ。

 次に現れるのがF5、三段20m滝。
 ここは行けそうだったが、やはり最初の滝に取り付くには腹から胸の辺りまで釜の中に入っていかなければならない。
 8月最終日とはいえ本日はちょっと曇りがち。結局、水の冷たさに気持ちが負けてここも左側から巻く。
 側面から見ると傾斜はなだらかだったので、まぁわざわざ冷たい思いをして登るほどでもないかなと思った。

 

 

 さらに進んで行くとようやくクライマックスのF7「ガータゴヤの滝」30mが現れる。
 同じ「枝垂れ柳」系でも「雷滝」は豪快、「ガータガヤの滝」は優美な印象。どちらもどこからこんなに水が湧いてくるのかと思うぐらいの水量だ。

   
ガータゴヤの滝 30m

 ここも巻きかなと思いつつ、登れそうなラインを探ってみる。すると、滝の左端が何とかシャワーを避けて登れそう。
 で、右下から左上へ斜めトラバース気味にまず上がってみる。

 近くに寄って改めて観察すると、正面ど真ん中のラインも水勢激しいが、よく見ると階段状になっている。・・・これはイケるかも。
 そのまま軌道修正し、正面に取り付く。

 途端に物凄い滝つぶてが身体中にバチバチバチッと当たり、その水圧に思わず跳ね返される。だが、これで逆に心に火が付いた。

 一旦下がってゴアのジャケットを着込んで再トライ。
 水モロ被りになりながら中段を突破!
 躊躇してたら負けるので、一気に越える。
 
 最後の上段の所で一息ついたら、汚れたスリング付きの残置ハーケンを発見!
 確かにランナーを取るならここしかないが、しかしこの滝のど真ん中でよくハーケンを打ったな。先人の奮闘に感嘆する。
 こちらはロープ無しなので、ここで足を滑らせたらシャレにならない。
 最後は慎重にホールド、スタンスを拾って無事クリア。

   ガータゴヤの滝、一人でできるもん!(クリックして拡大

 
実際ここは登ってみると滝自体はせいぜい3級+。でもシャワーが5級!
 夏の暑い時期、気合を入れて取り付けばけっして難しくはない。

 そこを越えると左側に鎖の付いた滝。
 何でこんな上部の滝に鎖が?と一瞬思うが、おそらくこれは沢を遡行しなくてもガータゴヤの滝を見られるように稜線から下ろして付けたものだろう。

 この先、大きな滝は無く、丹沢らしくない(?)開けた穏やかな流れが続く。
 驚いたことにこの辺りでも小さいながら魚影がすばやく走るのを見かける。

 ようやく水涸れとなり、そのまま本流通しに詰めれば良かったが、ふと見ると右手に微かな踏み跡を発見。
 ま、どこでもいいかと急な樹林帯を登り詰め、稜線に出てからもさらに踏み跡を西側へひたすら歩いていくと姫次へ出てしまった。

 これが、姫次から直接、早戸川林道へ下りられる道なのだろうか?
 ただ、赤テープも目印も無く、ケモノ道のような踏み跡だけが頼り。
 今回、二万五千分の一の地図など持ってこなかったのでルーファイの悪い自分はまずやめておいた方が無難かなと思い、予定どおり蛭ヶ岳まで行き、そこから下ることにする。

 時間が押してきたので、蛭ヶ岳まではやや早歩きモード。
 長い木の階段をゼーゼー言いながら到着。
 山頂にはトレランらしき単独行者が一人、小屋も閉まっているようで静かだ。

  

 ここからの下山は古い登山地図にはない市原新道というのを使おうと考えていたが、特に標識が無く、降り口がわからない。
 仕方なく、山頂から丹沢山寄りに少し下って「中ノ沢」を下降することにした。

 中ノ沢の上部はかなりガレていて、複数の人数で下る場合は落石に注意。

 しばらく源頭のガレを下っていくと、やがてF4・10m涸滝が現れる。
 110ルートに「登りは快適」と書いてあったので、そのままクライムダウン。特に問題無く下れた。

 続いてF3(8m)。ここもクライムダウン。
 ホールドを選んで慎重に下りていくが、下の方がちょっとビミョー。
 滝の弱点を拾いながらトラバース気味に下っていくが、あと数mという所で突然足下にあった木がメキメキッとスローモーションのように崩れ、転落。
 顔面を守ろうととっさに右手を着いて、小指を思いっきりガレた岩場に打ち付けてしまった。

 一瞬、完全に折れたと思ったが、ヘンな形には曲がっていない。
 手先から肘にかけて派手に擦ってしまったが、大きな出血は無い。頭も足も大丈夫なので良かった。

 その先でさらに悪そうなトイ状の滝があったが、さすがに今度はやめておこうと、脇の斜面から巻いた。
 水流が出てきてからはなるべく沢通しに下り、厄介そうな小滝が出てくるとそこだけは小さく巻くようにしてひたすら下る。

 下りといっても中ノ沢も結構長い。
 夕暮れと共に沢も次第に暗くなり、指の痛さもあって何とも辛い下降となる。
 
 この辺りはあの「ましらさん」が熊と遭遇したエリアでもあり、また沢の下降中は特にバッタリという可能性が高いのでホイッスルを鳴らしながら進む。
 ヨレヨレになりながら、ようやく早戸川本流と合流した時はホッとした。

 だが、ここから車を置いた場所まで、まだ遠い。
 さすがに帰りは沢伝いにゴルジュや大岩を越えて行く気になれず、左手の伝道を使う。

  

 途中、「貞子」が住んでいそうな廃屋の造林小屋など見送りながら、小一時間の山道歩き。ようやく早戸林道へ出て長い一日が終わった。 
 心配していたヒルは今回一匹にちょこっと食われただけだった。
 

 原小屋沢、人気があるとはいえ丹沢最奥の秘境感もあって、やはりいい沢だった。


写真集「裏丹沢・原小屋沢」


西丹沢中川川・箱根屋沢

2013年07月14日 | 沢登り

日程:2013年7月14日(日) 日帰り
天候:
同行:juqcho
行程:箱根橋(出合)9:30-F5・10:50-F8・11:45-登山道13:45-ぶなの湯15:15
参考:「丹沢の谷110ルート」山と渓谷社・刊

 この三連休は不安定な天気予報に翻弄され、穂高→北岳バットレス→丹沢と二転三転。
 毎年のことながら海の日の三連休は梅雨明けしていなかったり台風が近づいたりで、いまいち計画倒れになってしまうのは困ったものだ。
 結局、juqcho氏の提案で西丹沢の箱根屋沢へ。

 小田急線・新松田駅で落ち合い、そこからバス。
 中川温泉を過ぎると自由乗降区間となり、沢の出合の「箱根橋」で降ろしてもらう。
 夏の連休とあって周辺の河原はオートキャンプやバーベキューのレジャー客で賑わっている。
 今回の箱根屋沢、バスを降りたらすぐ目の前なので私はクロックスのサンダルで来た。

  

 沢支度を整え、橋の袂から入渓。
 土砂が堆積し、このところの猛暑のせいか水は少なめ。堰堤を右側にある鉄パイプの梯子を使って越えていく。

 やがて現れるF1(20m)
 ジャンケンで勝った方がリードと決め、まずは私から。後の滝は交互に。
 高さはあるが見た目アルパインのⅢ+程度で楽勝と思ったが、今シーズン初めてのフェルトソール、いつものフリーと違う脆い岩に少々ビビリながら登る。
 一箇所、ちょっとホールドの向きにクセがあり、ロープを出して良かった。

 
 
 F2(5m)
 下部は石積み滝。上は少し立っているが水流右を直登。ロープ使用せず。

 

 F3(8m)
 右側階段状で簡単に登れる。ここもロープ使用せず。

  juqcho氏@F3

 F4(幅広12m)
 juqcho氏リード。
 ルートは水流から離れて右下からクラックを左斜上する(Ⅳ-ぐらいか?)。水流際は難しそう。

  

 F5(8m)
 上部は立っているが、水流左側の壁をしっかりしたガバを頼りにボルダーぽく越えるのが面白い。(ジムの6級程度)
 juqcho氏は右側の落ち葉の詰まったザレ・ルンゼから。ザレの部分がちょっと悪そうで、FIXロープが垂れ下がっている。ロープ使用せず。

  juqcho氏@F5

 F6(8m)
 ほとんど印象に残らないまま通過。

 F7(10m)
 私がリード。見た目ここもロープいらないかと思ったが、念のためとjuqcho氏に言われロープを出す。
 右側から取り付き、途中で乾いた左側にトラバース。左上に柔道着のオレンジ色の帯のような残置スリングがあり、そちらに向かって上がる。
 続いて落口のある右へ移る一歩が滑りやすそうなスラブで、ホールドもあと少しで届かないというプチ痺れモノ。
 オレンジ帯を掴んでしまえば簡単だが、少々意地になってフリーにこだわり、散々逡巡したあげく最後は足のフリクションを信じて突破。ここの一歩だけⅤ-テイスト?

  @F7リード中

 F8(15m)
  人工得意のjuqcho氏がリード。
 トポではF7~F8間は少し間隔が空いているようになっているが、実際はすぐ現れる威圧的に立った大滝。。
 一目見ただけで、水流フリーの直登はまず無理。ルートは滝から少し離れた右壁で、土の詰まったシン・クラックにハーケンが連打されている。
 巻き込み不要のアブミ架け替えで順調に上がっていくが、最後落ち口に抜ける所がハーケンの向きが曲がっていてアブミを回収しにくい。
 残置は古いがグラつきもなく、概ね信用できた。 (2013年7月現在)

  juqcho氏@F8リード中

 F9(10m)
 私がリード。
 とても目の細かい滝で、フェルトソールでフリーで登るのは5.11はありそう。
 無理せずA0、さらに一手が遠いので一回アブミを使わせてもらう。

  @F9

 後は一つだけほんの1mぐらいフリクション頼りに乗り込む小滝があって、そこが二人とも少々冷や汗をかいたが、何とかクリア。

  
  ガマスラブのような小滝

 できるだけ本流を詰めていき、最後は杉の急な植林帯を上がっていき作業道へ出た。

 時間はあるが、屏風岩山まで登るのは「ま、いいか。」ということになり、小休止後、箱根屋沢左岸の急な尾根を下る。
 ところどころヤブに覆われているが、ほぼ鹿柵沿い、豊富な赤テープに導かれ1時間もかからず車道に出た。

 今回の箱根屋沢、部分的に土砂や倒木に埋もれていたり滝自体も黒っぽい岩が多いので美しさはイチイチだが、次々と現れる滝はそれぞれ適度な難度でなかなか楽しませてくれた。
 
 帰りは「ぶなの湯」、さらに新松田駅前の居酒屋へ。
 本日の無事とこの夏控えているお互いの遠征の成功を願い、軽く一杯飲んで〆。


写真集「西丹沢・箱根屋沢」


中ア・正沢川支流 幸ノ川

2012年09月22日 | 沢登り

天候:
行程:前夜発日帰り
木曽駒高原スキー場跡7:25-入渓点7:44-登山道横断地点(最後の堰堤上)8:26-二俣9:40-奥の二俣10:36-終了点13:10-七合目避難小屋13:30-スキー場跡15:30
同行:タケちゃん、やますきーおさん

 今回の計画は天気予報に翻弄され、直前まで二転三転。
 当初の予定では越後の大ビラヤス沢だったが、一日前になって中央アルプスの中田切沢本谷へ変更。
 で、当日になったらまたまた明日の雲行きが怪しくなって、急遽、日帰りの幸ノ川(こうのがわ)に転進。
 気象衛星やらネットの発達のおかげで計画を臨機応変に変えられるのはありがたいことだが、今回のメンバーが栃木の最狂・・・いや最強コンビと共に中田切本谷と、それなりに気合と覚悟で臨んでいただけに少々拍子抜け。
 
 タケちゃんとは昨年の南ア・大武川の一ノ沢以来で一年数ヶ月ぶり。
 昨年は熊に襲われ、今シーズンは沢で滑落しアゴを骨折、前歯も3本折ったというから、さぞかし凄まじい姿では?と正直会うのがちょっと怖かったが、実際顔を合わせると以前と変わらず元気な男っぷりでホッ・・・。
 やますきーお氏とは2008年の赤石沢以来。で、どこで日焼けしているんだか、相変わらず黒いっ!

 挨拶もそこそこにとりあえずスタート地点の木曽駒高原スキー場(跡地)へ移動。廃屋となってしまったレストハウスがうら寂しい。
 福島Bコースの起点ともなる登山口には既に6台ほど停まっていた。
 我々も日帰りの沢仕様となって出発。

 

 開けた高原状の場所から幸ノ川左岸の林道を進んで行く。
 このまま林道を進んでいってしまうと幸ノ川の1/3ぐらい進んでしまいそうだったので、適当なところから林道をはずれ左手の沢へ入った。

 
 
 だが、しばらくは堰堤続きで、これをいずれも右側から4つほど越えていくと登山道の横断点に突き当たり、ここからが実質上の遡行となる。
 キノコに詳しいやますきーお氏はここで早くもサンゴハリタケ?とやらを見つけてGET。素人にはそんな不気味なオガ屑みたいなの食べられるんですかといった感じだが・・・。

  

 出だしは7mほどの斜瀑で落口付近は大きなチョックストーンが覆い被さっているように見える。
 で、昨シーズンから不運続きのタケちゃん、近頃はさすがに少し控えめかと思われたが、相変わらずアグレッシブに水流攻め。うーん、やっぱそう来ますか。

  相変わらず強気のラインで攻めるタケちゃん

  F2

 さらに2~3、小滝を越えると次は7mほどのトイ状滝。
 やますきーお氏を先頭に順次ツッパリで越えていく。見た目よりも簡単で、なかなか快適。

  7mトイ状滝を登るやますきーお氏

 その後、5~6mぐらいの段差が続く連瀑帯となる。

 

 タケちゃんに倣ってなるべく瀑芯に沿って直登で行く。
 ガバが乏しいカンテ状をだましだまし登り、その上のナメ滝ではけっこう細かいカチを拾っていったり、なかなか楽しめる。
 もちろん、このメンバーでは基本的に自己責任。よほどの泣きが入らなければ、お助け紐など出てこない。
 特別美しい沢ではないが、単調なゴーロや鬱陶しい倒木などが無く、小さな滝がポンポンと小気味良く続き、飽きさせない。

  
 
 やがて顕著な二俣。
 水量比はほぼ一対一。右俣の方がちょっと滝が険しいか。
 南向きの沢なので陽射しは当たっているのだが、ここまでなるべく水線通しで来たため、けっこう身体が冷えてしまった。
 陽射しで暖をとりながら、しばし右俣へ行くか左俣へ行くかで作戦会議。
 急な転進のためトポなど一切無く、持っているのはタケちゃんのエアリアマップのみ。

 で、少しは沢も開けて車を停めたスキー場も下に見えているので、やますきーお氏のドコモで沢の記録をネット検索しようと試みるが、さすがにそれは無理だった。
 まぁ、何となく右でしょうということで進むが、後で確認するとやはり正解だったよう。

 二俣から後半戦。
 出だしの8m滝はちょっとキツそうに思えたが、近づくとそうでもなく、ここもシャワー突破。

 
 
 続いて12m滝。水流左右どちらからでも可。

 

 

 やがて、奥の二俣。
 水量3:2で、多い方の左へ進む。

 

 幅広7m滝。
 何の変哲も無さそうな滝だが、右側から先に上がった、やますきーお氏がフイをつかれたように足を滑らせ、4~5mほど滑落。

 

 うまい具合に満点着地を決めたが、途中で手を着いた拍子に指の付け根を傷めたよう。
 まぁ大事に至らず、良かった。
 タケちゃんと私は水流左から右へと細いバンドを斜めトラバース気味に突破を試みるが、水流の中の一歩が細かく、手の位置もバランスが悪くてフンギリがつかず、ここは諦めた。

 幅広15m滝を越えると、そろそろ源頭部となり、水枯れとなる。
 ここまでずっと水流沿いに来たため、濡れた身体がけっこう冷える。で、時間も十分にあるので焚火タイム。

  

 上越辺りの沢だと、この時期まだそれほど寒さを感じないが、標高のせいかアルプスの沢はけっこう寒い。
 残念ながら焚木が湿っているようで、ビッグ・ファイヤーとはならなかったが、まぁ少しは暖まって最後の詰めへ。

 ガレたゴーロ滝を進み、ヤブこぎ無しで登山道が横切る終了点へ。

 登山道を左へ進んでいくと、まもなく福島Bコースの七合目避難小屋に到着。
 無人小屋のようだが、太陽光バッテリーなどが設置され、小屋の中もこざっぱりしていてなかなか快適そう。

 

 

 木曽駒は1990年の冬以来登っていないが、その翌年に千畳敷カールで雪崩事故があってから伊那側は山岳監視員が常駐し、積雪期の単独はやりにくくなってしまった。
 もし、この小屋が冬も使えるなら、また木曽駒に登りに来てもいいなと思う。

 やけに大きなザックを背負った一般登山者の面々としばし談笑し、下山する。
 沢が大した困難もなくあっという間に登り詰めてしまったわりには、下りの一般路は長く感じた。
 熊の話やら健康診断で引っかかった話などいつもの四方山話をしながら、出発点のスキー場跡へまだ陽が高いうちに到着。
 タケちゃんとはいつも残業もやむなしのハードな沢が多いので、たまにはこういうのもホッとする。

 幸ノ川はコンパクトながら手頃な登れる滝が連続し、アプローチも楽なお手軽沢。
 谷川がダメな時の子持山獅子岩みたいな感じで、急な転進にはなかなかイイと思う。

 帰り道が違うお二人とは伊那IC近くで別れ、私は地元の「大芝の湯」で渋滞の時間調整。

  

 営業時間内なら時間無制限で、大人料金500円。
 露天はもちろんサウナ、ジェットバスも付いて、この料金はリーズナブル。
 施設も新しくてキレイなので☆☆☆☆

 帰りの中央高速で小淵沢や双葉PA辺りでけっこう強い雨。天気予報どおりで、日帰り転進は大正解だった。


【中央アルプス・幸ノ川】


仙台・二口山塊 大行沢と二口沢 #3

2012年08月27日 | 沢登り

三日目

天候:
行程:起床4:20-出発5:50-稜線-神室岳(仙台神室)7:50~8:10-南沢二俣10:00-南沢出合10:50

  二日目のテン場

 昨夜、濡れた服は全て焚火で乾かしたつもりだったが、半乾きだったのか、夜半に少し寒い思いをした。
 おまけに寝ている間に虫に刺されたようで、朝起きると左まぶたが腫れている。・・・やれやれ。
 で、朝からまた焚火をして虫を蹴散らし、熊除けのためホイッスルを吹き鳴らして出発。

 テン場から小滝や釜はまだいくつか続くが、銚子大滝を越えてしまうと源頭部は近い。
 最後まで忠実に詰めず、稜線が近そうな適当な枝沢を選んで進む。

   枝沢の上部もナメ滝が続く。

 やがて水は涸れ、藪の中の微かな踏跡を辿るが、少しの藪漕ぎで済むかと思ったらここで大いにハマってしまう。
 上越のシャクナゲ地獄ほどではないが潅木と熊笹の中をもがくこと20分。
 真っ直ぐ南へ進めば絶対に登山道にぶつかることはわかっているのだが、なかなか抜け出せないのでちょっとアセった。

  ヤブの中から見る神室岳。遠い・・・

 ようやく道に出て、左手、東側にある神室岳を目指す。
 ここものっぺりした山容だが、その割には急な登りで頂上直下はお助け用のトラ・ロープがFIXされていた。

  
 トラロープを伝って神室岳山頂へ。疲れました・・・。

 しばらく展望を楽しんだ後、最後の南沢下降に移る。

 ここから先、道は無く、頂上の標識裏から熊笹に隠された僅かな踏跡を辿る。
 しかしタケちゃんレポのとおり、踏跡は10mほどで忽然と消えてしまう。
 眼を凝らして捜してみると、少し左にずれてまた踏跡が見つかったが、それもすぐに消え、再び藪の迷宮に突入。
 先ほどの沢の詰め同様、赤テープの類は一切無し。

 しばらくもがくが、方角はわかっていても背丈を越す藪の中を一人で進んでいると本当にこっちでいいのか、実は少しずつズレて違う方に向かっているんじゃないかと思えてくる。
 沢らしい所に出る気配がまったく無い。

 一旦、仕切り直そうと周囲を見渡すと、左手斜め後ろに5~6mの露岩を発見。まずはそこまで行って現在位置を確認することにする。

  ヤブの中でランドマークとなる岩場

 苦労しつつも何とか岩に辿り着き、その上から周りの地形を改めて頭の中にインプット。
 
 で、露岩の裾からまっすぐ藪斜面を下っていくと、ほんの少し藪が開け、そこから今度は左に曲がる形で微かな踏跡が延びていた。助かった・・・か?
 目印としてその分岐点の木に昨日拾った青いぼろスリングを結び付けておいた。(今後行かれる人の助けになれば幸いです。)

  ほとんどこんな感じ

 やがて踏跡は涸れ沢となり、少しずつ水も現われ、まずはホッと一息。

 自分にとっては大行沢のゴルジュや銚子大滝を登るより、神室岳周辺の藪漕ぎの方が核心だったかも・・・。
 
 下っていくにつれわかったが、自分のとった下降路は南沢の左俣のさらに左の枝沢だったようで、神室岳からは随分余計な藪漕ぎをしてしまったようだ。このあたり、まだまだ要修行。

 
 南沢も下部はナメ。ここまで来れば一安心。

 藪漕ぎで泥の染み付いたフェルト・ソールはズルズル滑り難儀したが、あせらず下降を続け、ようやく昨日の二口沢本流に戻ることができた。

 
 二口沢本流に戻ってきた。最後までナメ。

 ここから本流を行き、林道を通って二口温泉までせいぜい1時間半。
 バスの時間まで多少の時間が残っていたので、最後の悪あがきで釣りタイムとする。

 南沢出合から少し下の大きな釜に良いポイントを発見。上から覗くと25cm級だが、けっこう多く泳いでいるのがはっきり見える。
 最後に一発逆転の豊漁で締め括りたかったが、なぜかここでもまったく釣れず。
 一応、ブドウ虫に反応して近づいてくるのだが、目の前まで来るとなぜかプイと方向転換して食いつかない。「何でだろ~、何でだろ~

 時間も迫ってきて、結局打ち切り。はぁー、情けない。
 昨日ヤな汗かいて登ったスラブ滝を左岸の巻き道で下り、最後のナメを堪能した後、林道に上がった。

 
 スラブ滝を左岸の巻き道から下る

 安全圏に着くとそれまで我慢していた爪先の皮が剥がれたところが一気に痛み出し、まともに歩けない。
 平日だが、少しは一般車も行き来しているので、誰か親切な人が乗せてくれないかと願うが、皆さんサッサと素通りしてしまう。

  二口林道から見る磐司(ばんじ)岩

 ま、しかたないか・・と足を引き摺りながらトボトボ歩いていると、少し行ったところで写真を撮りに来ていた熟年夫婦が声を掛けてくれた。(ラッキー!)

 このお二人は主に動物写真を撮っているようで、帰りの車の中で野生のクマタカやらツキノワグマを至近距離から収めた見事な写真を見せてくれた。
 
 で、話は自然とイワナに移っていくのだが、ここで初めてショックな事実を知る。

 「現在、この周辺の岩魚は例の原発事故の影響でセシウムが検出されたので釣り(捕食)は自粛せよ。」と、お達しが出ているらしい。

 「ま、少しぐらいなら大丈夫だと思うけど。却って元気になったりしてね。ハハハ。」
とおじさんは笑うが、でもイワナがダメなら当然、沢の水も良くないってことでしょう?
 けっこう飲んじゃったけど、ホントに大丈夫なのかっ!?


 まぁ今さらジタバタしてもしかたない。
 きっと今回、釣れなかったのは、そんなイワナを私にたくさん食べさせまいとする山の神の思し召しだったに違いない。(←涙目)

 親切なお二人は「帰り道なので仙台まで送るよ。」と言ってくれたが、帰りの深夜バスまでのんびりしたいので途中で降ろしてもらう。まずは温泉。

  磊々(らいらい)峡の「ホテル華乃湯」・湯テルメ

 900円とちょい高めだったが、川沿いと林の中、二つの趣の違う露天風呂があって
 濡れた装備も乾かし、ゆっくりくつろいだ後、夕方になって仙台へ戻り、生ビールと牛タン・シチュー。
 デザート?は地元の「末廣ラーメン」で締め。

  
 牛タン食って、ラーメン食って・・・。

 最後がちょっとショックだったが、二口山塊・名取川のナメは関東や奥秩父ではけっして見ることのできないスケールで見事だった。
 横浜からだと東北の山はどうも遠いイメージがあるが、高速バスだと交通費も時間も北アへ行くのとそう変わりなく、これからもイワナを求めていろいろ出かけてみようと思う。


仙台・二口山塊 大行沢と二口沢 #2

2012年08月26日 | 沢登り

二日目

天候:晴れ一時曇り
行程:起床5:00-出発6:30-樋ノ沢-南面白山9:10~20-石橋峠11:20-糸岳11:55-風ノ洞橋13:15-17:20銚子大滝17:45-テン場18:30
参考:「その空の下で」byタケちゃん

 

 今日は長丁場。早出するつもりがぐっすり寝てしまい、また朝から焚火などしてついのんびりしてしまう。
 小屋に泊まった高校生らを見送ってから、火の始末をしてスタート。

  

 大行沢本流はここから樋ノ沢と名を変え、その名のとおり軽く一跨ぎできるほどの細い樋状となって流れるが、それでも釜は背が立たないほど深かったりする。
 相変わらず平たいナメの岩床を水流に浸りながらペタペタ歩いていく。

 

 途中、釜を抱えた小滝を1つか2つ越えると、もう水はチョロチョロ流れる程度。
 それでも東側の大東岳に向かっていつまでもしつこく続いている。

 このまま源頭まで詰めても、沢としてはあまり面白くない。
 途中、赤布と小さなケルンが目印となる分岐があって、そこからは稜線も近く、たぶん樋ノ沢の遡行はここで終了でいいのだろう。

 

 涸れ沢を10分ほど登って登山道へ。
 トレラン・シューズに履き替え、ストックも出してここからは縦走。
 南面白山-石橋(しゃっきょう)峠-糸岳と繋ぎ、二口沢へ継続だ。

 まずは最初のピーク、南面白山への登りだが、さっそくキツい。
 ここらの山は見た目のっぺりしているのだが、実際歩いてみると登りも下りも「何で?」と思うぐらい傾斜を感じる。

 涼しい沢から草いきれでムンムンする山道を大汗かきながら、まずは南面白山の頂上に立つ。
 展望は良く、周りの山々、山形の街並みまで良く見えた。

  あまり面白くなくても「面白山」?

 そこから登山道をアップダウンを繰り返しながら南下していくが、風の無い夏の低山歩きはなかなか辛い。
 晴れた日曜だというのに他に登山者の姿はまったく無く、特に石橋峠から糸岳間などは草の成長が激しく、一般路と言いながらヤブこぎになるほど。
 
 とにかくガーッと登ってはガーッと下るの繰り返し。
 どうせ濡れているからと渓流ソックスの上からトレランシューズを履いて歩いたが、これが失敗。
 足の皮がふやけていたので、急な下りで一気にズル剥けになってしまった。

  糸岳山頂。この付近、虫が多く、一般路もヤブ多し。

 ヘトヘトになりながら、何とか二口林道へ。
 あまりの疲れで、もういっそ二口沢の遡行はやめてここらで釣りに専念するのもいいかなと、チラッとヒヨリ案も浮かんだが、いいや、せっかくなんで行けるとこまで行きましょう。

 着いた所が風ノ洞橋でここに駐車スペース、すぐ先でゲートが閉まっていた。
 現時点では山形方面へ抜けることはできないようだ。

 

 二口沢へは林道をもう少し歩いてから入渓してもよいが、他の記録によると実はこの風ノ洞橋下から少し先の南沢出合までのナメが素晴らしいようだ。
 で、ゲート脇から下降、二口沢遡行を開始する。

 橋の下が8mほどのちょっと迫力ある滝となっていて、まずはここを水流左の階段状から突破。

  橋の下に滝!

 その先、沢幅いっぱいに平らなナメが広がる。うーん、たしかにこのナメも素晴らしい!

 ナメを堪能しながら進んでいくと、やがて前方に圧倒的な岩壁が聳え、沢は右へ直角に曲がり、そこがすだれ状のスラブ滝となっている。
 たけちゃんレポでは10mとなっていたが、いや、ここ20m、ヘタすりゃ25mはありますよ。

  右から入る25m滝
 
 傾斜は緩めの滑り台だが、スラブなのでホールドが乏しい。水流の間は特に滑りそうで、とても取り付く気がしない。
 それでも、良く見ると水流右側の黒い部分が何とか行けそう。

 薄いカチと浅い凹凸を拾って登っていくが、落口に近づくにつれ、なかなかシビアになってくる。
 最後1~2歩、微妙に悪い箇所があり、ちょっと躊躇。
 気合で突破しようかとも思ったが、冷静になって1~2歩クライミングダウンし、より安定しているさらに右寄りの苔の部分を繋いでTopOut。
 うーん、タケちゃんはⅢ級程度だと書いているが、いや、ここワンポイントⅣ級はあるような?(一応、左岸に巻き道あり)

 そのままナメを進んでいくと右岸(左側)から今回、下降路とする南沢が出合う。
 そばの木の幹に黄色い「保安林」の看板。左岸の台地には古びた無人小屋が見えるのでこれが目印となるだろう。

 

 さらに進むと今度は左岸から10m滝が出合い、片や本流は5mほどの多段滝の二俣になっている。この多段滝がなかなか美しい。
 そのまま水量の多い多段滝を左側から直登。階段状で問題なし。

 
 美しい多段滝

 さらに進むとまた二俣で右が桂沢(実際には正面に延びている)、左に折れるのが本流のようだ。水量比は1:3なので、ここも間違えることはない。
 
 昨日からほとんどナメばかりなので、この辺り、変化があっていいのだが、残念なことにちょっと倒木が煩わしい。
 ネットでは評価が高く、ナメと個性ある滝の連続でデート沢に最適ともあるが、2012年の夏現在、けっこう荒れたところもあって私は大行沢の方が「癒し度」高くてイイなと思った。
 ちなみに魚影はこちらの方が濃く、途中で竿を出したり手掴みを試みるがGetできず。

 水流は次第に細くなり、右岸の小松倉沢を分ける。
 二口沢本流もこの辺りから小松原沢と呼ぶのだろうか。
 ちなみに国土地理院の地図や「日本登山体系」では二口沢本流は「禿(かむろ)沢」と表記されている。
 
 「禿」とはハゲではなく昔のオカッパ頭のこと。この周囲の山々がオカッパ頭のような形なので、元は「禿岳」だったのに当て字で「神室岳」にしたのではないかと思う。
 (北アの五竜岳も元々は「後立山」を音読みして「ごりゅうさん」、それが転じて五竜の名になったとか・・・。)

 で、この辺りから滝が連続してきて、小松原沢のハイライト。
 出てくる滝はできるだけ直登していくが、銚子大滝手前の15m直瀑はちょいと厳しい。
 
  銚子大滝手前の15m滝。直登は厳しい。
 
 右岸から小さく巻いて、いよいよクライマックスの銚子大滝50mの下に出る。

 大滝は写真で見ると水流細めの樋状で迫力乏しそうだったが、やはり間近で見るとけっこう立っているし、50mのスケールを感じる。
 タケちゃんのレポを見て一応その気にはなっていたが、ヒェー、ここ登るんですか!(もちろん巻きも可)

  銚子大滝50m

 既に夕暮れ近いが、明日の帰りのバスを考えると、ここは何とか今日中に越えておきたい。 
 とりあえず行けるとこまで行ってみますか。   
 
 大滝はパッと見、四段構成。
 50mといっても一段一段休める形になっているし、いざとなれば途中から右側の乾いた緩傾斜の岩場にエスケープできそうなので、精神的には楽だ。
 で、登るラインを確認し、「リポD登攀」開始。
 
 一段目、水流の中のホールドを拾い、左上方、斜めに走るバンドに取り付く。
 このバンドまで上がるとホールド豊富で、それなりに立ってはいるが安心して二段目上まで一気に行ける。
 途中、チョックストーンもあるので、万が一滑っても下まで落ちる不安はない。
 中間部まで上がった辺りに古びた残置ハーケンが2本打たれているが、うち1本は折れ曲がって今にも抜けそうになっていた。

 ここから右の安全地帯へ移ることもできるが、まだ余裕なので、そのまま三段目は水芯を渾身のシャワークライム。

 ラスト四段目はちょい悪く見えるが、水流すぐ右のクラック状になったフレークが行けそうなので取り付いてみる。
 足元がやや外傾気味だが慎重に数歩上がり、上のガバをキャッチ。
 最上部は黒光りしたヌメった岩でホールドも細かくなってくるため、ちょいとリスキー。
 どうしようか迷うが、見ると落口はすぐそこ。ここから水流の中に移れば却って傾斜は緩くなる。

 ワンポイント「手に足ハイステップ」を要したが、こういう時、ジムでのコソ練が役に立つ。
 で、そんなに嫌な汗をかくことも無く、無事完登。(たけし師匠、やりましたよ。)
 ほぼ水線通しにイケて、これは満足!

 グレード的にはたしかにアルパインのⅣ級程度。残置は中間部以外無いけど、できればロープ使った方がいいでしょう。(あくまで自己責任でお願いします。)

   ←Click!

 さらにその先も滝は続き、すぐ上の8m滝は水流左を直登、釜を持った5m滝は右から胸まで水に浸かって突破する。

 で、そろそろ今日のテン場を探さなければ・・・と思って周囲を見てたら、ありました。
 左岸の一段高くなった台地に平坦な焚火跡。さらにもう一段上がるとこれまた平坦で大きなテントが2~3張りOKの極上物件が。

 で、本日はここまで。
 タープを張って焚火をして・・・。イワナが釣れなかったので今日の晩飯はレトルトの釜飯のみ。
 しかたない。残りの酒をあおって横になる。
 
 明るい月が森の中を微かに照らし、沢の音しか聞こえない静かな寝床。
 最後に熊除けのホイッスルを何回か吹き鳴らしてから、深い眠りに落ちた。

仙台・名取川二口沢本流(小松原沢)


仙台・二口山塊 大行沢と二口沢 #1

2012年08月25日 | 沢登り

一日目

天候:のち
行程:二口温泉10:20-大行沢ゴルジュ終点F1・12:00-F2(8m)-カケス沢出合15:20-樋ノ沢避難小屋16:50
行動:単独
参考:「その空の下で」byタケちゃん

 今シーズン第二弾の沢は、仙台の二口山塊。名取川源流の大行沢(おおなめさわ)と二口沢(ふたくちさわ)へ。
 前者は地元・東北大のワンゲル部により「天国のナメ」と紹介され、片や後者は沢の師匠・タケちゃんをはじめ、ネットの記録でも大行沢より高評価となっており、どちらにしてもこれは一度は行かなければなるまい。

 現地までの交通手段は深夜高速バス。
 今回、トイレ付きバスを予約してみたのだが、三列独立式の広角リクライニング・シート、枕やブランケットも付いて飛行機でいえばビジネスクラスのよう。
 ほとんど同じ料金なのに「ナントカ信州号」とはえらい違いで、実に快適だ。
 
 早朝の仙台駅に着き、まず朝飯。
 さすがにこの時間から開いている牛タン屋は見当たらず、しかたなく「吉野家」の牛丼で済ます。
 その後、JRと市営バスを乗り継ぎ、二口(ふたくち)温泉へと向かう。

  
 JR仙山線「愛子(あやし)」駅からバスで二口(ふたくち)温泉へ。みちのく一人沢旅?

 ビジターセンターで登山届を書き、少し歩くと大東岳への裏コース登山口。この登山コースはこれから行く大行沢と並行しているとのこと。 
 車が数台停まっていて、地元の釣りのおじさんに聞くと、「魚影はあるけど釣果無し」とのこと。
 ちょっと前に引率付きの高校生らしきグループが沢に入っていったと教えてくれた。
 
 途中から沢へ入れるというので最初は登山道を行くが、次第に沢から離れてしまうので引き返す。
 ふと脇を見るとふつうのファミリーキャンプ客がナメをピチャピチャ歩いているのが見えたので、そこから入渓。

 

 一応メット被って沢仕様となるが、そんなオッサンが半ズボン、ビーサン姿の子どもたちの横を通り抜けるのはちょっと気恥ずかしい。
 が、しばらく行くとゴルジュ帯となり、ファミリー軍団はそこまで。
 一人、ゴルジュに入っていく。

  ここからゴルジュ

 
 易しそうに見えるけど釜はあくまで深く、側壁はツルツル。 

 ゴルジュといっても他の沢と違って側壁が高く切り立って暗い雰囲気なわけでもなく、ここのゴルジュは何とも明るい。
 すり鉢状の釜が連続してウネウネと続き、釜は背が立たないほど深い。
 そんな中を傾斜したツルツルの縁を微妙なバランスでヘツっていくのだが、これがけっこう厳しい。

 途中、残置スリングなどもあり、それらも使ってヘツっていくが、潔く水の中に入って泳いだ方が早かったりする。
 でも釜の中に入ったはいいが、今度は縁から上がるにもツルツルでジタバタもがいたりして出だしからシゴかれる。

 やがて池のような大きな釜に着き、そのどん詰まりが4mほどの小滝(F1)。
 見た感じ右からも左からもヘツって滝に近づけそうもなく泳いで取り付こうとしたが、ここまでで水を目一杯吸ってしまったザックはめちゃくちゃ重い。
 何ともバランスが悪く、元々泳ぎのヘタな私は水勢に押し戻されて釜の中をもがくばかり。
 
 ・・・オイオイ、もし、ここ突破できなかったら、どーすんだ?

 全身ズブ濡れになったまま一瞬途方にくれてしまったが、落ち着いてよく見ると左岸の急な苔付き斜面にわずかなステップを発見。それを使って巻く。
 後で調べたら、ふつうにヘツってそのまま小滝を突破した記録もある・・・うーん、自分にはとても無理そうに思えたが。まだまだ要修行か。

 4m滝を越えると、ようやくゴルジュから開放され、ホッと一息。
 見ると左岸に踏跡があり、なるほど、ここまでのゴルジュを割愛して登山道から沢へ入ることもできるうだ。
 でも、沢ノボラーならここのゴルジュを突破してこそ面白い。

 

 しばらくナメとなり、流れの中に無造作に巨大な丸い大岩が鎮座し、なかなか面白い風景。
 見事な球体となっている黒い岩は、まるでマンガの「GANTZ」のよう。
 
  ここにもGANTZ、あそこにもGANTZ・・・。

 しばらく癒しの渓相が続いた後、やがてF2(8m)が突如目の前に現れる。
 左側に圧倒的なハングが被さり、その部分が影となり、対して陽射しを浴びた滝は輝いている。
 何とも見事な光と影の演出で、まるで大掛かりな舞台セットのよう。
 ここまでナメと釜の平坦なイメージだったので、F2のダイナミックな造形美には思わず「おおっ!」と声を上げてしまうほど。

 
 奥の方にF2が隠れている。

 で、ここどーやって抜けるんだ?と思ったら、左側のハングの下、洞窟の間を抜けるようにして意外と楽に突破できた。

 やがて岩は乱雑に積み重なり、他の記録では「ここの突破が骨が折れる」とか「長くてウンザリ」という声も多い。
 しかし、一々岩の間を越えていかなくても、それを避けるように左岸に踏跡が続いており、私はそんなに嫌気が差すほどには感じなかった。

  
 幾何学模様をした岩もなかなか美しい。

 巨岩帯を抜けるとそこからは噂通りのナメ、ナメ、ナメ・・・・。

 水は深い所でスネぐらい、浅い所では岩床にヒタヒタ程度で、これが沢幅いっぱいにどこまでも続く。
 奥秩父の釜ノ沢が千畳のナメなら、ここは一体、何万、いや何十万畳になるんだろう。

 ただ残念なことに、ここの岩は全体的に茶褐色で、それが残念というかマイナス・ポイント。
 陽射しの加減によっては、雨上がりの田んぼのように映ってしまって、これが「天国のナメ」と言われると正直、うーん・・・と考えてしまう。
 これがもし上越の沢のように真っ白な岩床で、釜がすべてエメラルドグリーンだったら、赤木沢もナルミズもまるで比較にならない、とびきり極上の沢になっていただろう。

 でもナメのスケールとしては、たしかに凄いね。

 

 いつまでも続くナメを堪能していくうち、やがて乾いた岩のあちこちに先行組の濡れた足跡が目に付くようになってきて、ロックオン。
 で、カケス沢の出合辺りでようやく高校生らしきグループに追い付き、引率の先生と軽く挨拶。

 全部で8人ぐらいか。これまで魚影がほとんど見えなかったが、なるほどこれだけの人数が歩いていたら、さすがにイワナも隠れてしまったに違いない。
 聞くと、樋ノ沢避難小屋までは、まだ1時間はかかるとのこと。
 
 そろそろ疲れてきたが、もう少し頑張ってナメとナメ滝の遡行を続ける。

 やがて両門ノ滝のような所に出て、水量の多い右側の傾斜緩めの8m滝を越えると、その先は流れが一気に細い樋状となる。
 辺りも暗くなってきて、いいテン場はないかと振り返ったら、左岸の高くなった所に樋ノ沢避難小屋があった。

 
 避難小屋下にある8mナメ滝
 
 やっと着いたか。とりあえず本日はここまで。

 ずっと天気は良かったが夕方になり遠くで雷が聞こえ、また小さな羽虫がまとわりついてうっとうしいので、小屋もいいなと思ったが、既に沢で出会ったのとは別の高校生グループに占拠されており、満員御礼。
 しかたなく防虫ネット、防虫スプレーで防御しつつ小屋脇の焚火スペースにタープを張る。

 焚き木を集め、体勢が整ったので、日没まで釣りタイム。
 小屋の裏手にある先ほどの8m滝の釜に糸を垂らす。

 途中、足首までも浸からない洗濯板のようなナメも通過してきたので、もはやここまでイワナが遡ってきているとは思えなかったが、まぁやってみましょ。
 で、しばらく待つとビビビ・・・とアタリが。
 しかし食いつくことなく、もしかして気のせい?

 で、再び糸を垂らすと、今度は来たっ!
 25cm弱でやや小振りだが、まずは一尾Get!

 真っ暗になってきたのでこの一尾で打ち切り、テン場に戻って焚火と酒と塩焼きで夕餉とする。
 
 すぐそばの木でカサカサ音がすると思ったら、ムササビが幹に張り付いてこちらの様子を窺っていた。

  
 ワイルドだろぅ?

大行沢の記録


楢俣川・前深沢~狩小屋沢下降 #2

2012年08月05日 | 沢登り

二日目

天候:晴れ、朝のうち一時曇り
行程:BP7:50-50m大滝8:35~50-二俣-稜線11:05-至仏山山頂11:10~20-狩小屋沢下降点11:35-F13二段20m滝-狩小屋橋16:00~15-林道起点駐車スペース19:05

 タープの下、快適に眠れたと言いたいところだが、ペラペラのシュラフカバーとフリースのシーツだけでは朝方若干寒く、けっこう早く目覚めてしまった。
 ・・・で、さっそく釣りである。

 数多くやっているわけじゃないが、これまで恋ノ岐、黒部東沢、上越サゴイ沢・・・と沢に恵まれてきたおかげで、少なくともボウズは無い。
 竿も折られて、このまま釣果なしでは帰れない。

 で、昨日の15m滝まで下って再び糸を垂らす。
 しばらくポイントを変えながらアタリを待つが、魚影は確認できず。
 今回はもうダメか・・・と思いかけたところ、ようやく小ぶりなのがヒット!
 とりあえず一矢報いることができて、ホッ。
 いつもだったらリリースするサイズだが、今回は自然の恵みに感謝しつつ朝の韓流カップ緬と共においしくいただいた。合掌・・・。

 

 グズグズしていたら8時近くになってしまったので、急いで出発。

 少し進み、トイ状19m滝。
 見た目、手強そうだが、タケちゃんレポでは濡れてても意外とフリクションが効くとなっていたので、そのまま水流左を直登。
 ホールドも固く、足をしっかり置けば特に問題なし。
 それにしても、何でここだけ19m?測ったのか?

  トイ状19m滝

 この先、明るいナメとナメ滝が続き、ちょっとプチ赤木沢雰囲気。
 次第に流れも細くなり岩魚も見なくなってきて、ホントにこの先、大滝があるんだろうかとちょっと不安になってくる。

 が、しばらくすると前方にどぉーん!と50m滝がついに登場。
 これまでせいぜい10~20m級の滝ばかりだったので、これはなかなかの迫力。

  前方に突如現れる50m大滝

 今回は単独だし、タケちゃんたちもリポD登攀でヤな汗かいたというので、ここは当然「巻き」のつもりでいたが、進行方向から見ると斜めに落ちているせいか意外と壁が立っていないことがわかる。
 真下まで行ってとりあえず写真を、などと言いながら、気がつくと無意識のうちに目で登るラインを探ってしまっていた。

  植木さんは左の水際、タケちゃんは滝の右壁を登ったようだが、見たところ左端から取り付き下から1/3ほどのところで右斜めに水流を横切り、そのまま右壁の段々になった階段状がイケそう。
 あまり無理せずクライムダウンできそうな所まで行ってみようと決め、取り付く。

   ←登攀ライン(Click)

 読みは当たり、特に問題なく割とスイスイ登っていける。
 途中から右壁に移ると、古いがしっかりした残置ハーケンを確認。
 下を見下ろすと既に結構な高さに来ているが、岩が乾いていることもあり、アクアステルスとの相性はバッチリで、不安は無い。
 ビビることもなく快適に段々岩のカンテを越えていく。
 核心は最後のスローパーの部分だが、ここは指の腹にグッと念を込めて慎重に突破する。
 最後はまた左の水流際に戻って、無事、落口に着いた。

 このラインでアクアステルスならグレード的にはせいぜいⅢ+。
 初見フリーソロなのでメンタル的にはⅣ+ぐらいか。
 タケちゃんらはフェルト・ソールだったろうから、岩の部分は1ランク厳しかっただろうし、植木氏の登った左の水流沿いは上部のホールドが磨かれて何ともイヤラシそう。
 改めてあの二人とんでもねーなと思った。

  大滝の落口から
 
 そういう自分も「リポD」してしまったが、高さがあるのでホントはきちんとロープ出すか、巻いた方がいいでしょう。 (あくまで自己責任でお願いします。)
 
 今回は釣りが不調で気分がイマイチだったが、この大滝を登り切ったことで大満足。
 やっぱり巻かないで良かった。

 その後もキレイなナメとナメ滝が続く。
 うーん、やっぱり中間部の土砂や倒木で埋もれた部分が実に惜しい。

 稜線が近づいてくるとそれまでの明るい癒しの渓相から、赤茶けた岩が連なり、ちょっと荒々しい雰囲気になってくる。

 水流も細くなり二俣。右俣には大きなチョックストーンの岩が確認できるのですぐわかる。

 当然、水量の多い左俣を選ぶが、後でネットの他の記録を見たら右俣上部はゴミやキジが散乱していてひどい状態だとか。間違っても右俣へは行かないように。

 最後の詰めは藪漕ぎこそないが、赤茶色の岩がいつまでもしつこく続き、意外と疲れる。
 しかも気を抜いていると、とても動きそうもない大きな岩がゴロンと動いたりする。

  源頭部から前深沢を見下ろす。

 最後はヘロヘロになりながら稜線に出て、右手、目と鼻の先の至仏山の頂上へ向かう。

 「・・・・・・

 先週の剱も凄かったが、ここも中高年の原宿状態。ヘタしたら100人近くいるんじゃなかろうか。
 一応、お約束の山頂写真を撮っておきたいが、順番待ちがあったりしてけっこう時間がかかる。
 これが槍だったら「北鎌ですか?」と声の一つもかけられるだろうが、ここ至仏山でメット、ハーネスなど身に付けていても完全な異邦人。
 そそくさと下山に移る。

 

 下降の狩小屋沢への降り口だが、たしかにそれとわかる表示があるわけでなく、わかりにくい。
 幸い天気が良くて周りの地形がよく見渡せるのと、事前にネットで「至仏山から小至仏山に向かって下ること約10分、最低鞍部まで行く手前、二本のポールにロープが張っている所から明瞭な踏跡が延びている。」という情報を得ていたので、たぶんここだろうとすぐ見当がついた。

  
 狩小屋沢への下降点

 しかし最初のうちはっきりしていた踏跡もすぐに怪しくなり、しばらくは這松の中のガレを拾って適当に高度を下げていく。

 30分ほどでチョロチョロと水流が現われ、二段20mの大滝らしい所に出る。
 狩小屋沢は大きめの滝には必ず巻き道があるという話だったがよくわからず、ガイドブックに書かれた登路伝いに岩のカンテをクライムダウンしていったが、途中2か所残置ハーケンもあったりして意外と悪かった。

  狩小屋沢上部の20m大滝。滑る黒ヌルに注意!

 また、前深沢と違って、こちらは上部のいたる所に黒っぽいヌメリがあり、アクアステルスにとっては大敵。
 結局、ロープは使わず下まで全ての滝をクライムダウンで済ませたが、熊笹やシャクナゲの枝に頼る所もままあり、登りよりも神経を使う。

  中流部の二段7m滝

 ガイドブックでは遡行タイムが4時間10分となっていたので、下りでは当然そんなにはかからないはずと踏んでいたが、ヨレてきたこともあってスピードも上がらず。
 トポ図と照らし合わせながら、まだかまだかと下っていき、もういいかげんイヤになった頃にようやく待望の狩小屋橋にたどり着いた。

  やっと戻ってきた狩小屋橋

 時間に余裕があれば、懲りずにまた釣りをしたかったが、既に夕方の4時。
 これからさらに林道を3時間歩くと思うとウンザリするが、しかたがない。
 再びi-podで気晴らしをしながら、長い道をトボトボと歩いて二日間の沢旅を終えた。

  夕暮れ迫る楢俣湖

 今回の前深沢~狩小屋沢下降は、ネットでたくさん記録を見かけるが、体力的にはなかなかハード。
 楢俣川流域は長い林道歩きがネックだが、その分俗化してなく、秘境的雰囲気が気に入った。
 そのうち、あの知る人ぞ知るススケ沢へも行ってみたい。


楢俣川・前深沢~狩小屋沢下降 #1

2012年08月04日 | 沢登り

行動:単独
参考:「その空の下で」 byタケちゃん(前深沢)
    「上信越の谷105ルート」(狩小屋沢)

一日目

天候:
行程:楢俣ダム駐車スペース8:50-狩小屋橋11:50-前深沢出合14:00-20m滝14:50-15m滝15:00-BP16:00

 剣から帰って一週間。今週は涼(=漁?)を求めて沢登りへ。

 今回行くのは上越と言うのか裏尾瀬と言おうか奥利根・楢俣川流域。
 2003年「岳人」にも紹介され、ネットで検索するとけっこう記録の多い「前深沢遡行~狩小屋沢下降」。
 タケちゃんのサイトでも満足度最高の☆4つが付けられ、これはやはり「must沢」なんだろうなと目星をつけていたものの、駐車スペースから沢の出合まで3時間超!
 これはありえん!ということで二の足を踏んでいたが、行った人の感想ではそれを差し引いてもことごとく好印象なので、これは行ってみるしかないなと思い立った。
 
 関越道・水上ICで降り、奈良俣ダムへ。

 石積みの巨大ダムで、先週見たコンクリート造の黒部ダムなどとはまた違った労働者の力の結晶のような迫力がみなぎっているが、調べたところこのダム、何とあの昭和の特撮番組「ウルトラQ」でガラモンが登場した場所だそうである。
 我が人生の原点(?)でもありトラウマともなった「ウルトラQ」の話を始めるととても終わりそうもないのでここでは省くが、ほぼ半世紀を経てこの地を訪れることができたのはちょっと感慨深い。 (←アホ)

 土地勘が無いのでとりあえず突き当たりのオートキャンプ場まで行き、その手前の二俣、ゲートが閉まったところがアプローチの楢俣林道入口だと確認する。

  現在の楢俣林道入口。キャンプ場への分岐の標識有り。

 今回シューズは長いアプローチも含めてアクアステルスのものを使用。
 他の記録を見ると使わなそうだったが、単独なので念のため7mm×30mのロープ、ハーネス、スリングなどを持参した。 (結局、使わなかったけど・・・)

 ゲートの脇から林道に入り歩き始めると、すぐに舗装路が大きく崩壊した場所があり、その後もいたる所で土砂に埋もれたり陥没した所があった。
 これらは近年の地震や集中豪雨によるものらしい。

  歩き始めてすぐの崩壊場所

 3時間の林道歩きは大きく3つのセクションに分けられ、前半が樹林帯の舗装路、中盤が湖岸沿いの気持ちの良い道、後半がワイルド感溢れる藪道となっており、丹沢や奥多摩のような単調な林道を覚悟していた身には変化があってそれほど辛くはなかった。
 それでも長い道のりなので一人で行く場合はi-podなどで好きな曲を聴きながら行くのがオススメ。

  湖岸の気持ちの良い道

 とにかく3時間と見当をつけて歩き続けるが、やがて道は林道から藪に覆われた踏跡程度になって、どこまで進んでいいのかちょっと不安。
 熊除けの笛を鳴らしながら進んでいくと、そのうちガードレールの取れた小さな橋にたどり着いた。
 地面に落ちたガードレールの端を確認すると「狩小屋橋」のプレート。どうやらここが狩小屋沢の入渓点らしい。
 シューズはそのまま、軽く沢支度をし、狩小屋沢とは反対側の流れに入っていく。

  ガードレールの取れてしまった狩小屋橋

 初めての楢俣川だが、天気が良いこともあって、その水流の美しさは目が覚めるよう。
 黄色っぽい岩盤を流れる水はあくまで透明で、こちらの足元を尺をゆうに越える「大物」がすばやく横切ったりする。
 最近の若い連中はイイことも悪いことも全てひっくるめて「これ、ヤバイよ!」などと言ったりしてオヤジ世代としては辟易するのだが、今ここにやってきて一言感想を上げるとしたら一言。
 「・・・この沢、ヤバイよ!」と言うしかない。 (もちろん絶賛の意味で

  
 美しい楢俣川本流

 いっそ今回は沢登りはやめて釣りに専念しようかという思いをグッと堪えて、前深沢へ。

 タケちゃんレポにあるとおり、すぐ右岸(左手)から中深沢が15m滝を懸けてくるので間違うことはないだろう。
 
  
 (左)中深沢出合の15m滝           (右)前深沢出だしの二段8m滝

 癒しのナメ床、さらに二段8m滝を過ぎると、最初の手強そうな滝20m。
 ここはシャワーを浴びつつ滝を横切り左壁を登れるとあるので、そのとおり行く。
 夏の好天が続き、水は少なめなのだろうが、それでもシャワーをもろに被るところは寒さで一気に震えが来る。
 たしかに見た目ほどの悪さはなく、水流左から簡単に登れた。

  シャワーを潜り抜けて突破する20m滝

 続いて15m滝。
 これもそこそこ立っているが、水流左手がホールド豊富で階段状。
 ザックが重くなければ、特に苦労せずロープ無しでいけるだろう。

  15m滝。水流左際を直登。

 全体的には明るく開けた美渓なのだが、中流部が土砂や倒木で埋まっている。
 階段状のナメ滝などちょっと赤木沢にも似た雰囲気なので以前はもっと良かったのだろうが、自然の沢だけに復旧は無理。とても残念である。

 途中、右岸にビバークポイントとして使える乾いた平らな岩床をチェック、もう少し先まで進みトイ状19m滝まで行き、現在位置を確認する。
 他に良いビバークポイントも無く、また上流に行くに従い魚影が薄く小ぶりになってきたので、先ほどの場所で手を打つ。

 前後にパーティーもなく、本日は前深沢を独り占め。
 タープもきれいに張り、なかなか快適な泊まり場となった。

  乾いた岩床の快適な泊まり場

 で、焚き木を集めた後、いよいよ待望の釣りタイム。
 竿を持って少し下流まで戻るが、魚影はイマイチ。
 15m滝の滝壺が良さそうだったので竿を持ったままクライムダウンしていったのだが、ちょっとした拍子に竿の先端をポッキリやってしまった。

 ・・・・・・
 
 まだ一尾も釣っていないのに。
 おのれのドジに大いに凹むが、気を取り直し、テーピングのテープで無理やり補修し、糸を垂らす。
 
 一回、ビビビッ!と強烈な当たりがあるが、気が焦ったか合わせるのが早すぎてバラしてしまう。
 その後、もう一回小さなアタリがあったが、結局この日の釣果はゼロ。
 サバイバル登山というわけではないが、晩のおかずは現地調達のつもりで来ていたため、今夜の飯はレトルトの釜飯のみという寂しいものになってしまった。

 ささやかな焚火で濡れたウェアを乾かし、あとは家から持ってきた老酒と行動食の残りのナッツを食べて、そのままフテ寝となる。


上越・清津川サゴイ沢 #2

2011年09月11日 | 沢登り

二日目

天候:、夕方少し
行程:起床5:00-ビバーク・ポイント出発7:00-15m三段滝8:55-二俣9:15-稜線-赤倉山直下分岐-赤湯16:45-車止め20:00

 昨夜はその後、雨もそれほど降らず、不整地ながら快適な睡眠を得た。
 普段だと山で早寝すると夜中の0時前に目が覚めて、それからは目が冴えてなかなか寝付けず、半分寝て半分起きているような中途半端な状態が続いたりするが、今回は最初に目を覚ましたら既に朝の4時過ぎ。
 マムートの中綿ジャケットに雨具上下、それにシュラフカバーだけだったが、寒くはなかった。

  左岸に見つけたテン場

 朝のラーメンを食べて、サゴイ沢の後半戦に突入。
 最初のうち雲が張っていた空も見る見るうちに晴れてきて、絶好の沢日和。

 昨日のうちに既に上流部の連瀑帯に入っていたかと思われたが、実はまだまだ手前だった。
 もしかすると、トポの地図と多少ズレているかもしれないが、以下、主だった滝を一つずつ紹介。

 7m二条滝?
 
左壁が登れる。Ⅲ級(以下、アルパイン・グレード)

 
 
 
 8m滝。
 水流左が階段状のフェースで、Ⅲ級。
 手前に深い釜が控えており、私は釜の左側からヘツり(Ⅲ~Ⅳ-)、残りはメンバーは右側から滝の裾をトラバースして取り付く。
 Y岡が何を血迷ったか、無意味なシャワー・クライム。  

 
 
 
 
 
 10m二段滝。
 これも左壁。下段はⅢ級、上段は狭い岩の隙間を通って小さく巻けるが、Y岡がここでも無意味な泥壁を直登(Ⅳ+?)。
 目が一瞬マジになって、ちょっとプルプルしていたような・・・。
 
 その後、小ゴルジュ。

  うりゃ~!
 
  コバちゃん、行ってらっしゃ~い


 7m滝。
 釜の左側をヘツり(Ⅲ+)、そのまま逆層気味の左壁を登る。(Ⅲ)


 

 
 
 

 10m滝。
 おそらく、ここがネットの記録などでシャワー突破している滝だろう。
 水流右がたしかにハイステップで登っていけそうだが、今日のところは水量が多くて無理。
 一応、取り付いてみるが、凄まじい水の勢いに目を開けていられず、雨具を着ていても一気に体温を奪われてしまった。
 
 そうこうしているうちに、山Pが釜を泳いで右岸から攻め、コバちゃんも後に続く。

  
 10m滝。泳ぐ山P

 私とY岡は左岸をヘツって水流際の立った壁に取り付き、落口へトラバースする。
 右岸は何とも心細い草を掴んで脆い泥壁、左岸は張り出した岩が胸につかえてちょいとボルダー・ムーブを要した。いずれもたぶんⅣ+。
 ここで一回だけロープを出した。
 トポでは左岸から巻けるらしいが、よくわからず。

 

 

 
 15m三段滝。

  
 
 これもパッと見、立っていて、う~んどうしたもんかと思っていたら、山Pがスルスルと滝に近づき、水流右をたやすく登ってしまった。
 取り付いてみると、凹角状で意外と簡単に行けた。Ⅲ+。

 その先でようやく二俣となる。
 トポではテン場があるようだが、それほど快適な場所は見当たらず。
 この辺りでもまだしつこく岩魚の影がビュンビュン走り、一体どれほどいるんだと呆れてしまう。

  二俣

 二俣は左へ進み、3mほどのちょっと立ったスラブ滝が二つ。
 いずれも左側を熊笹AOのスメアでクリア。

  スラブ滝。釜は深い。

 ようやく水涸れとなり、そのまま詰めていくと、最後は踏跡も怪しくなり怒涛の藪漕ぎとなる。
 私が先頭でルートを選んだのだが、熊笹が全身を突き刺すように立ち塞がり、なかなか進まない。
 もしかしてこれはコース・ミス?
 後ろのメンバーから「もしかして間違えてんじゃねーの?」という疑惑の視線をビシバシ感じながら、かといって他にこれといった踏跡は見つからない。
 結局、熊笹地獄と格闘すること一時間半。気持ちと体力が尽きようとする頃、ようやく見晴らしの良い草付き露岩帯に抜けることができた。ホッ・・。
 他パーティーの記録では、ここの藪漕ぎに2時間半~3時間なんてのもあったから、まぁそんなにルートを間違えたわけでもないだろう。(弁解?)

 

 稜線に出て小休止。
 ここから苗場山を経由して下山する予定であったが、けっこう時間がかかるようなので割愛。もっと近い赤倉山経由で下山することにする。

 
  
 赤倉山まではよく踏まれた道だったが、その先、直角に折れて赤湯までの下りはあまり使われていないのか、かなり藪に覆われている。
 下りだからいいもののとても登る気はしない。
 疎らにある赤テープを頼りに下っていくが、夕暮れ時になったらまず下らない方が良いだろう。

 下りに入ったところで、コバちゃんが遅れ気味。どうも右膝を痛めてしまったらしい。
 残りのメンバーで荷物を手分けして、夕闇が迫る中、下山を急ぐ。

 赤湯の山口館を過ぎ、鷹ノ巣峠を越えた辺りで完全に日が暮れ、ヘッデン残業となる。
 サゴイ沢は帰りが長い。辛いだろうが、コバちゃんには頑張ってもらうしかない。
 全員次第にヨレてくるが、頑張って歩く。

  立つんだ!ジョー!

 駐車スペースに着いたのは夜の8時。
 何とか無事に帰り着いたのはいいが、今度はなぜか我が愛車のエンジンがかからない。
 「えぇーっ?こんな夜に発車できないなんて!」 ・・・頼むぜ、清志郎!
 結局、JAFを呼んだりして何だかんだで横浜に着いたのは月曜夜中の2時を回ってしまった。

 そんなトラブルはあったが、サゴイ沢は予想以上に良い沢だった。
 高さはないが豪快な滝、明るいゴルジュに深い釜、そして岩魚がウヨウヨ・・・。
 谷川南面のオジカ沢を「ミニ・オツルミズ」と例えるなら、このサゴイ沢は「ミニ赤石沢」(南アルプス)と言っていいかも?
 アプローチが長い分、人気が無いのか、ガイドブックでは☆二つだが、沢の内容としては☆☆☆☆あげていいと思う。


[サゴイ沢(二日目)・写真集]


上越・清津川サゴイ沢 #1

2011年09月10日 | 沢登り

一日目

天候:のち、夜少し
同行:軟式クライミング部(山P、コバちゃん、Y岡)
行程:苗場プリンス先車止め6:30-林道車止め7:45-サゴイ沢入渓点9:25-熊ノ沢出合11:20-ビバーク・ポイント17:00
参考:「上信越の谷105ルート」山と渓谷社・刊

 いつもは近場の外岩かインドアが多い「軟式クライミング部」。
 今回は山Pのかねてからの希望で、苗場山に突き上げるサゴイ沢へ。
 
 前夜、横浜から車で現地入り。
 サゴイ沢へのアプローチは本来、清津川沿いの赤湯林道を進み棒沢手前のゲートまで車で入れるのだが、道が悪くなっているようで、今回は苗場プリンスホテルから少し奥に入ったところが第一の車止めになっていた。
 脇の広い空き地にテントを広げて仮眠。

  前夜現地入り。第一の車止めにて仮眠。

 翌朝、赤湯林道をタラタラ歩き始める。
 今夏の大量の雨のせいか地盤が緩み、奥のゲート手前で林道が一部崩壊していた。
 棒沢出合から鷹ノ巣峠へかけてひと登り。その後、下ったところにある鉄の橋がサゴイ沢の入渓点。
 車を止めた所から2時間半の長いアプローチだった。

  鷹ノ巣峠への登り

  Are you ready?

 空は気持ち良く晴れている。さっそく沢支度をして橋の脇から出発。
 水量の多い平凡な流れを右に左に渡りながら進むと、やがて5mCS滝。
 ゴルジュの幅いっぱいに勢いよく水が落ち、とても直登は無理、微かな踏跡を辿って右岸巻きとする。
 滝を巻いて沢床へ降りる部分は細いFIXロープが設置してあった。

  気持ちE~!

  最初の5mCS

  巻き道にはFIXがあった。

 
さらに行くと5m五重滝。
 この辺りの滝はたかだか5mといっても、水量が多く堂々としていて、それ以上の高さと迫力を感じる。
 丹沢の5mと同じに考えてはいけない。
 ここは左岸巻き。

  五重の滝

  
 うぉ~た~・すらいだぁ~っ

 ここまでの間で既にサゴイ沢の一部分に触れた感じだが、実はまだサゴイ沢は始まっていない。
 その上で右から入る熊ノ沢を分け、ようやくスタートとなる。

 サゴイ沢に入って最初の8m滝。
 ここも直登は無理で左岸を高巻く。下りはちょっとガレていて、途中の潅木にまだそう古くない懸垂用のスリングが残置されていた。
 Y岡は今回が三回目の沢(前二回は丹沢の初級クラス)なので、もうこのあたりでアドレナリンが出ているかなとも思ったが、そのままクライムダウンさせる。
 (かの星一徹氏によれば「百獣の王ライオンは我が子を千尋の谷に突き落とし、這い上がってきた子だけを育てる」というので・・・。でも考えてみるとライオンってサバンナに棲んでいるので何かヘン?)

 右岸の大きなガレを過ぎると、深い釜のある小滝が連続。
 ウォーター・スライダーができるナメ滝、そしてこの辺りから沢のいたる所で魚影がビシビシ走る。
 そのうち浅瀬にいた岩魚を私が手掴みでゲットやや小振りだが、いただいとく。

 しばらく行くと8m二段、10m二段滝。
 ここは登ったのか右岸から巻いたか、よく覚えていないが、そう苦労せずに突破。

 

 その先で流れが一旦穏やかになると、もう我慢できませんとばかりにまず山Pが竿を出し、全員で釣りモード。
 「軟式クライミング部」転じて「魁!岩魚塾」となる。

 

 
 「ワシが岩魚塾塾長、山Pであーる」。 ジムでは「とえるぶ」も登ってしまうが、元々釣師。

 
 「こんなん取れましたー。」 尺(由美子?)を釣り上げ、どや顔のY岡。

  長老の私メも・・

 午後になると少し曇ってきて、空模様が怪しくなってきた。
 他のメンバーが岩魚に血マナコとなってしまったので、長老の私は先行して本日のテン場探し。
 快適な場所はなかなか無いが、少し上がった所の左岸にタープ二張り、四人が泊まれる焚火スペースを見つけることができた。
 雨が降る前にとりあえず薪を拾い集め、タープの下に確保したところでポツポツ降り始める。

 結局、この日の釣果は、
・山P → 8尾(その他、リリース多数) 現地調達・川虫使用。
・私  → 2尾(うち1尾は手掴み) 二週間前に買ったブドウ虫の残りを使用。
・Y岡 → 1尾(尺!) ルアー(ミノー)使用。
・コバ → 1尾  ルアー(ミノー)使用。

 時間が押して雨も降ってきたので、今日のところはこのへんで勘弁してあげたが、釣りに専念してたら大変なことになっていただろう。

 で、夜は山Pが「炎の調理人」となって、刺身、蒲焼、そして塩焼きと岩魚づくし。
 小雨が降ったりやんだりの天気の中、意地で焚火を起こし、宴を強行した。

  岩魚づくし

  
 炎の調理人 食う人

  サゴイ沢の夜

[サゴイ沢(一日目)写真集]


裏丹沢・早戸川鳥屋鐘沢遡行~太礼沢下降

2011年08月28日 | 沢登り

天候:一時
行程:鳥屋鐘沢出合9:45-20m二段大滝10:35-終了点の尾根13:00-本間ノ頭
    14:15-太礼ノ沢源頭15:15-太礼ノ沢出合16:45-鳥屋鐘沢近く駐車ポイント
    18:00 (釣りをしながらなので、かなりゆっくりペースです)
参考:「丹沢の谷110ルート」山と渓谷社・刊
単独

 ここ二週、インドアジムの週末が続いたので、今週は外へ。
 当初、奥多摩の大雲取谷を予定していたが、東京より神奈川の方が天気が良いらしいので、近場の丹沢へ変更。
 先月に続いて、またしても裏丹沢の早戸川シリーズ。ほぼ一ヶ月半ぶり。

 しかし、この日の朝はどうしたわけか寝坊してしまい、現地に着いたのは9時半頃。
 本日行く鳥屋鐘沢は早戸川国際マス釣り場の少し先。
 出合の直近には駐車スペースが無いため、さらに林道を奥に進んだ幅の広い場所に車を停める。 (早戸川林道は落石が多いため一般的には駐車禁止だが、まぁ自己責任で。)
 沢への入口は特に目印があるわけではないが、マス釣り場方面から左手を見て最初の大きな山の切れ込みだから、まずわかる。
 ガードレールの切れ目から明瞭な踏跡があり、早戸川本流の浅瀬を渡って入渓。

  左のガードレールの切れ目が入口

 出だしは幅の広いナメ滝。
 ペタペタと歩いていくと、小ゴルジュとなり、しばらく釜の深い小滝が続く。
 濡れずに脇から巻き上がることもできるが、特に難しいわけでもない。この沢はクソ暑い日になるべく水流通しに行くのが楽しい。

 
 最初に現れる幅広ナメ滝

 しばらく行くとF1。トポでは8mとなっている。
 右岸にはちょっと不気味な「お化けポスト?」があり、水を吐き出している。これはマス釣り場の取水口となっているとか。

 で、F1。
 登れそうな所は右側の浅い凹角で、途中、残置スリングの垂れたハーケンも確認できる。
 一応8mm×30mロープを持ってきたが、ロープ無しでも何とか行けそう。
 左側のフレークも使いながらそのまま取り付くが、ラスト落口へ抜けるところが高さもあって少々固まる。

 
 F1、8m(右奥)。

  お化けポスト

 そのまま直上しようとすると緑のコケにスメアしなければならず、これがズルむけそうで、踏ん切りがつかない。
 で、よく見ると足元のバンドがそのまま滝中央の落口に繋がっているのに気づき、頭上のスローパーに指先を集中させたまま慎重に足を左に送ってクリア。
 まぁ落ち着いてやれば何てことない。Ⅲ+程度か。

 
 F1。右隅の陰になっているルンゼが登ろうと思えば登れる。

 その後、すぐに小ゴルジュとなり、2mトイ状滝。
 トポでは最狭50cmとなっていて、他の記録では「ツッパリで中央突破」なんてことも書いてあるが、実際にはけっこう幅が広く、股関節固めのオヤジにはギリギリな感じ。
 とりあえずツッパリで攻めてみるが、中間辺りからちょいと際どい。

 両側の壁はヌルヌルと黒光りしていてフリクションが甘く、何より水流が物凄い。
 落ちても溺死することはないだろうが、巨大洗濯機の渦に揉まれてモガくこと必至。
 何とか落ち口までツッパリ通したかったが、結局、途中から右側の浅い凹角を使って逃げてしまう。
 上から確認すると、出口はかなりツルツルで、おまけに下から見る以上に水流がヒョングっていたので、今日のところはチキン・ハートで正解だったかも。

  
 2mトイ状滝(左)。                  同じく上から見下ろしたところ(水勢が凄い!)

 その先で流れの中に一瞬、魚影が走ったので、テンカラ竿を出してみるが、残念ながら「当たり」無し。

 少し行くとF2二段20m滝。
 沢筋いっぱいに横に大きく広がった滝で、右の滝はスラブのすだれ状、左は一筋の直瀑となっている。

 
 F2、二段20m。

 トポでは「右端のクラックを使って・・」とあるが、見たところ残置アブミ(縄梯子?)がぶら下がっているだけで、どこがクラックなのかよくわからない。
 それよりも滝のど真ん中にクラックが走っていて、こちらの方が登れそう。

 
 上の写真、私のすぐ後ろ、斜めに走ったクラックが登れる。 

 よく見たら途中にランナー用の鉄釘?も2つ打たれていて、さらに近くに寄って見ると取付の位置にとんでもないモノが・・・。

  「なんじゃこりゃあー

 
優作もビックリの特大アンカー。たしか三ツ峠の中央カンテ途中のテラスにも似たようなのがあったが・・・。
 
 で、ここもノーロープで取り付く。
 概ねⅢ級程度。ただ二本目のランナーから落ち口までの数メートルが足の踏み替えでヘンな体勢を強いられ、いやらしい。
 少し悩んだが、こぶし大のチョック・ストーンにハイ・ステップで立ち込み、後は水流の中の細かいカチを拾って何とかクリア。
 フリーソロだと、ここはⅣ級テイスト。下段の滝の落ち口にはハンガーボルト2本でビレイ用の支点が作られていた。上段は傾斜も緩く、問題無し。
 先ほどのツッパリ滝は途中で挫けてしまったが、このF2は完全フリーで中央突破。さっきの
チキンはこれでチャラだろと一人納得する

  右の巻道には残置アブミ

  一段目中央落口にあるビレー支点

 さらに進むと、深い釜を持った小滝がいくつか続く。
 F3(5m)は高さこそないが、深い釜の奥にゴォゴォと水を落としてまず直登不能。
 右岸にテレビの平型アンテナ線?のフィックスが有り、高巻くことができる。

  
 F3。深い釜のゴルジュ滝で正面突破は厳しい。左の巻き道にはアンテナケーブルのFIX。

 その先の、やはり深い釜を持った4mCS滝は右から巻けるが、敢えて右側壁を水際ギリギリでヘツると面白い。イナバウアー・ムーブでボルダー4級ほど。
 
 この辺りで上流から若いニイちゃん二人組が降りてくる。挨拶をすると彼らは釣りが目的なようで、いろいろ情報を聞くことができた。
 一応、下流はヤマメ、上流はイワナがいるようだが、サイズはそれほど大きくなく、けっこう釣り人が入ってしまっているので魚もだいぶスレているよう。

 
 上流から引き返してきた釣りのニイちゃん

 彼らとすれ違った後で再び良さげなポイントを見つけ竿を出してみるが、やはりヒット無し。

 鳥屋鐘沢のハイライトはここまで。
 この先、しばらくゴーロとなり、堰堤が4つほど続く。

 やがて顕著な二俣。トポのとおり左俣へ進む。
 すぐに見栄えのする大滝(20mぐらい?)。
 最上部が堰堤になっているのが興醒めだが、人工物と自然滝のMix、いわばハイブリッド滝か。

  左俣最初のハイブリッド滝。割と楽勝。

 
高さもあるので一人だとちょいと緊張するが、案ずるより生むが易し。
 水流右側、岩とのコンタクトラインに取り付いてみると意外と簡単。ちょっとシャワーを浴びて冷たい思いをするが、せいぜいⅢ級-ぐらい。

 その先で再び堰堤を4つほど。
 水量も減り、やがて水涸れとなるが、ここから稜線までの詰めがけっこう長かった。
 藪漕ぎがまったく無いので助かる。もう季節は秋なのか、源頭部に多いマイクロ・ブヨも今日はまったくいない。

 さらに稜線に出てから本間ノ頭までの距離がやたら遠く、一時間半以上かかってしまう。
 この辺り、伐採のための作業道が多くあり、境界用の赤杭や赤テープが随所にあるので不安はないが、それにしても長い。
 ガスのかかったブナの林の中、忠実に赤杭と踏み跡をたどっていくと、ようやく丹沢三峰の正規の登山道に合流。ほどなく本間ノ頭に到着する。

  ブナ林の中を進む。

  本間ノ頭

 今日は最初からのんびりモードだったが、途中、釣りもしたのでけっこう時間がかかっている。
 簡単に行動食を摂って、先へ進む。

 アップダウンを繰り返し、もう一つの本間ノ頭、円山木ノ頭、太礼ノ頭まで進む。 (本間ノ頭は二つあることを改めて知った。)
 今回下る太礼ノ沢は円山木ノ頭のすぐ先にあり、太礼ノ頭まで行ってしまうと行き過ぎなのだが、前回、沢を間違えたこともあり、今回は一つ先まで確認した上で引き返すルート取りにした。
  
 太礼ノ沢源頭部は急なガレがしばらく続く。
 下るにつれ水流が現れ、小滝も出てくるが、クライミングダウンできる程度でロープ不要。
 二俣を過ぎ、F2とされている8mトイ状滝も前向きツッパリで降りられた。

  太礼沢下降中

 ラストF1、20mは左岸から簡単に巻いて降りられる。
 全部で三段構成になっており、下から順に3m、12m、5mといったところか。
 ガイドブックでは「滝の登攀グレード2級」となっているが、これは左岸を巻いた場合。
 直登となると、もちろんビレーが必要でけっこう手応えあると思う。

  太礼ノ沢F1

 さらに水流の中を快適に下っていくと、ようやく早戸川の本流に合流。
 ここでも一応竿を出してみるが、釣果無し。
 今日はダメですな。

  早戸川本流

 そのまま登山道と林道をダラダラ歩いて車のデポ地まで。これがまたけっこう長い。
 まぁザックは軽く、ほとんど緩やかな下りなので、それほど苦ではなかったが・・・。

  途中にある廃屋(貞子が住んでそう・・・)

 車に着いて着替えると、今回は大丈夫だと思っていた丹沢ヒルズが足に2~3匹張り付いていた。
 渓流スパッツでしっかりガードしていたと思っていたが、やはりダメ。
 一匹は皮膚の中に入り込みそうなぐらいピッタリ密着していてなかなか剥がれず。オヤジの血がそんなに旨いか。
 「必殺!塩まぶし」で、お引取りいただく。

  おのれ!丹沢ヒルズ

 鳥屋鐘沢は上部の堰堤、水涸れ部分が長いのがイマイチだが、下部の小ゴルジュ帯はどっぷり水流通しに行けば楽しめる。
 釣り人がかなり入っているようで、巻き道ははっきりしている。


【写真集】


丹沢・日帰りパチンコ遡行(早戸川・編)

2011年07月09日 | 沢登り

天候:のち
行程:本間沢(遡行)約2時間30分→円山木沢(下降)約1時間50分→瀬戸ノ沢(遡行)約1時間40分 【単独】
 本間橋7:50-本間沢F9トイ状15m9:10-本間ノ頭10:30~40-円山木沢下降開始11:10-円山木沢大滝下11:45-伝道13:10~20-瀬戸ノ沢出合13:50-太礼ノ頭15:40-本間ノ頭16:05-本間橋17:10
参考:「丹沢の谷110ルート」山と渓谷社

 今回はフラっと裏丹沢へ。
 10日ほど前のモロクボ沢同様、今回行く本間沢は既に一人で遡行済み(1997年5月)だが、けっこうイイ沢だった記憶があり、改めて再遡行。
 ついでに、できればもう一本と継続遡行を思い立った。

 いつもは天然ボケ?を発揮する我が車のナビだが、今日は新しい抜け道を選んでくれて、スムーズに目的地へ進む。

 本間沢の手前、早戸川国際マス釣り場の所に「この先、落石多いため一般車両進入禁止」の看板あり。
 「・・・。」
 ここに車を置くと沢の出合まで1時間以上歩かなければならなくなる。
 ゲートが閉められているわけではないので、まぁここは自己責任でと勝手に解釈しスルーさせてもらう。実際、何台も一般車両が(自転車も)入っていた。

 本間橋を渡ったすぐの空きスペースに駐車。
 そばには相当ヨレた、いや走り込んでいる自転車(ロードレーサー)が一台。
 こんなところに放置自転車?いや、ヘルメットも付いてるし・・・。いや、これはもしかしてもしかすると、あの人かもしれない。
 これまで何度かメールはやりとりさせてもらったことはあるが、まだ面識は無い。会えるとしたら楽しみである。でもあの人、速いからなぁ。

  丹沢観光センター
 
 で、さっそく後を追って、丹沢観光センターの奥から入る。
 こちらは現在使われているのかどうか知らないが、丹沢には往年のレジャー人気を思わせる廃施設がけっこう多くて哀愁が漂う。

 植林帯を右にトラバースする感じで小沢を一つ跨ぎ、さらに右の本間沢へ。

 本間沢は、5~10m級の滝が続き、ほとんどがロープ無しで直登できる気持ちの良い沢。岩も硬く、快適そのもの。
 おそらく、この沢が表丹沢にあったら源次郎や水無本谷と並ぶ人気の沢になったに違いない。
 車で無いとアクセスが不便な分、汚されてないのはありがたいことだ。

  F1(12m)

 今回は単独で初級の沢なのでロープ無し。とにかく、出だしからどの滝も気持ちよく登っていけるので、詳細は省く。
 ガイドブックで、この滝は右から?左から?などと一々確認せず、自分の感じたまま取り付けばいい。
 それでも右側に大きな岩がある滝(F5?)は、直登だとシャワーもろ被りになるので左から巻いた。

  右側の大岩が目印。F5(10m)

 沢が左に折れるところにあるのがF7(8m)。
 水飛沫を派手に上げているが、ここも取り付くとほぼ階段状。

  F7(8m)。階段状で快適。

 やがて、本間沢のクライマックス。
 ゴルジュっぽくなったところを少し進むと、F9トイ状の滝が現れる。
 トポでは三段25mとなっているが、これはおそらくその上の10m滝まで含めた勘定。細いトイ状15mと水量多いトイ状10mと別物として区切った方がいいだろう。

 
 トイ状滝下段15m。水流通しにまっすぐ行ける。水は友だち?

 細いトイ状15mは立っていて高さもあり、やや威圧的に見えるが、これは前回確認済み。
 一筋の水流の中に格好のホールドが隠されていて、快適なシャワークライムができる。

 その上の幅広トイ状は、けっこう手強いようで、滑落事故も多数起きているとか。
 sudoさんレポを見て状態が良ければトライするつもりでいたが、本日は水量多くヒョングリ状態。中間部分では目も開けていられないほどの水圧になること必至。
 「無茶修行」はせずに左の乾いた所から取り付き、最後のワンポイントだけ剥がれそうなクラックをビクつきながら利用して水流通しに落ち口に抜けた。

  トイ状滝上段10m。こちらはちょいとデンジャラス

 続いてF10逆さ扇状の滝10m。
 トポでは沢がまっすぐ延びているようになっているが、実際には左に折れるようになっている。

 先ほどのF9上の滝を中途半端な形で登ったため、ここは直登を試みる。
 三角形に広がる滝の左辺がガバ豊富で登りやすそう。
 実際、出だしは簡単。だが、落ち口付近がホールド乏しく、また水をバシバシ受けるのでやや苦戦。
 ここで落ちたらタダではすまない。古い錆付いたハーケンがあったが、躊躇しているとシャワーでどんどん体温を奪われてくるし、ちょいとアセる。
 結局、最後は落ち口にある小さなチョックストーン状のホールドを見つけ、エイヤでずり上がったが、力を入れた途端にホールドが欠けるんじゃないかとヒヤヒヤした。

  
 F10逆さ扇の滝(10m)。左辺がガバガバなのが見てのとおりわかるが、ラストが曲者。

 さらに、その先も三つぐらい適度な5mぐらいの滝が連続し、まったく楽しめる沢である。
 しかし、「丹沢の谷110ルート」に書かれている「滝の登攀グレード2級、基本装備のみ」の記述にはちょいと意義有り。
 実際、すべての滝を直登しようとすると4級-ぐらいには感じるし、初心者を連れていくならF9、F10などロープあった方がいいかも。

 水が涸れ、稜線までの詰めはヤブ漕ぎ無しは嬉しいが、小蝿のようなマイクロ・ブヨが顔の周りにまとわりつき、閉口。
 7月の裏丹沢、特に沢の詰めの部分に多く発生するようなので、要注意!
 今回は蚊帳マスク(モスキート・ネット)を被ってやり過ごすが、それでも非常に身体の小さいコヤツは網の穴を潜り抜けてきそうな勢いだ。

  霧に包まれた幻想的なブナの小径。

 ピークに到着。標識に「○○ノ頭」と書かれているが、○○の部分が削られていてハッキリせず。
 何となく、「本間ノ頭」と書かれているように思えるが、それを削ってあるということは違うのかも?
 で、よく確認もせず、右手の丹沢山方面へ少し行った崩壊地の所から、そこが下降予定の太礼沢だと思い込み下っていく。

 最初のうちは深い落ち葉の絨毯に埋もれた涸沢で、どんどん下っていけたが、次第に傾斜が急になり、ちょいとゴルジュ状になってくる。
 トポでは太礼沢はほとんど悪い所はない下降用の沢に見受けられたが。

 そのうち、どんどん悪くなり、これはもしてしてもしかすると・・・ルート・ミス?
 で、そのうちまともにクライムダウンできそうにない落差のある滝にぶつかる。あぁ、いつものようにやっちまったか?これはやはり想定外の円山木沢。

 円山木沢のトポは持ち合わせていないが、たしか20m級の滝が二つあって、滝のグレードも4級、A0と書いてあったような・・・?
 そんなとこ自分がロープ無しで下れるわけもなく、よほど登り返そうかという思いがチラと浮かんだが、たぶん巻き道もあるだろうと踏んで、とりあえず行ける所まで行くことにする。

 ゴルジュ状になっているので、あまり高巻きで逃げてしまうと沢に戻れなくなってしまう。 
 滝とガレの弱点を探り、それを目で追い、頭の中で繋げながら、際どい下降を続ける。
 ちょっとした手抜きとアセリが命取りになりそう。 
 それでも、これまで沢ではタケシ師匠にそれなりに鍛えられているので、平常心で対処できた。

 20m大滝は左岸から、その下25m大棚は一瞬行き詰まるが右岸に涸れた枝沢を見つけ、そちらを繋いで何とかクリア。

 
 円山木沢大滝20m(たぶん)。左岸(写真向かって右側)を際どくクライムダウン

  15mナメ滝?よーわからん。

  F1(5m)?ここまで降りてこられてホッと一息。

 大きな本流にぶつかり、現在地を確認するためさらに下流に降り、ようやくそこが早戸川本流、下ってきたのが円山木沢と確定。

  ←沢もご利用は計画的に。地図はよく確認しましょう。(クリックして拡大)

 想定外の沢を下ってきたため、気持ち的には疲れたが、まだ時間は十分。
 気を取り直し、予定通り瀬戸ノ沢へ進む。

 ここでいきなり若い男女二人組と遭遇。一応メット・沢靴は身に着けているが、今から沢登り?
 聞くとここから少し奥にある雷平までの沢ハイキングとのこと。
 この辺、あまり詳しくなさそうなので案内してあげても良かったが、自分も詳しいわけじゃないし、カップルの間にオヤジが割り込むのもナンだしね。
 で、先を急ぐ。

 早戸川本流に沿って大岩が乱立する流れの中を適当に左右に渡りながら30分ほど遡り、流れが急に穏やかになるところで左手から二本の沢がほとんど双子の沢のように入ってくる。
 下流側が太礼ノ沢、上流側が瀬戸ノ沢。
 瀬戸ノ沢の手前には小さなケルン、そして朽ちかけた木橋が残っている。

  瀬戸ノ沢出合。

 瀬戸ノ沢は特筆すべき滝は、特に無し。
 かといって、けっしてつまらない沢というわけではなく、3~10m級の小滝が連続する。
 もちろんすべてロープ無しで直登可能。ミニ・ゴルジュもあったりして沢の初心者にはイイ沢だと思う。

  小粒だけど、意外とイイ沢です。

 
 
 詰めはまたしてもマイクロ・ブヨに悩まされつつ、太礼ノ頭に到着。
 
  マイクロ・ブヨには参りました。

 ここから円山木ノ頭を経由し、本間ノ頭へ。先ほど本間沢を詰め上がって最初にたどり着いたピークは、やはり本間ノ頭だった。

 下山はもう一度引き返し、太礼ノ沢を下れば一日4本片付けられたが、時間も少し押してきたし、こうした欲が不運を呼ぶのはよくある話。
 で、予定どおり本間ノ頭から直接、本間橋に降りる尾根(一般登山道ではない?)を選ぶ。

 ピークからまっすぐ南に進路を取るが、間隔を置いて木の幹に赤テープはあるが、道は思ったより細い。
 たしか14年前に来た時はもう少しハッキリした道だったが・・・。裏丹沢も最近は人があまり歩いていないのかな?と思いながら下っていく。
 まだ日が高かったから良かったが、もう少し遅い時間だったらテープも見つけにくく危うかったかも?

 で、1時間ちょっとで車の停めてある本間橋にドンピシャで到着。
 でも、よくよく考えてみると降り着いたのは本間橋の上流側で、トポの下山路は本間橋の下流側に行き着くようになっている。
 どうやら、これもルート・ミス?
 本来の下山路は本間ノ頭から宮ケ瀬寄りにやや下った所からスタートしているようで、そちらにはもっとハッキリした指導標があるはず。

 地図もよく見ず、我ながらホントいい加減。
 どうも丹沢辺りだと情報よりも自分の勘を頼りに行動してしまう。まぁ歳も歳なので、これからはもう少し慎重に行きますかね。

スライド・ショーはこちら
本間沢

円沢木沢(終了点から出合順になっています。)

瀬戸ノ沢


西丹沢・中川川「水晶沢」(左俣)

2011年06月29日 | 沢登り

天候:一時
行程:用木沢出合10:00-モロクボ沢出合10:50-稜線13:25-加入道山14:30~45-  
    
白石峠-用木沢出合15:15
単独

 このところ梅雨の合間にクソ暑い日がやってくる。しかも平日に・・・。
 で、今週末も早々とマークなので、日帰りでサッと行ってこれる丹沢へ。

 今回の水晶沢はモロクボ沢の支流?で、モロクボ沢自体は今から13年前に一人で遡行済みである。

  用木沢出合、現在の白石沢キャンプ場の駐車スペース

 西丹沢バス停のさらに奥、用木沢出合の林道ゲート前まで車を入れるが、ここでいきなりつまづく。
 今回のトポは「丹沢の谷105ルート」(山と渓谷社・刊)のモロクボ沢のコピーを持参したのだが(この本では水晶沢は紹介されていない)、それによるとモロクボ沢は白石沢キャンプ場のある地点から始まっている。
 しかし、2011年現在、白石沢キャンプ場はモロクボ沢出合のもっと手前、用木沢出合のところに存在する。
 つまり、「丹沢の谷105ルート」にある白石沢キャンプ場と現在のキャンプ場とは別物なのである。

 地図で確認すればすぐわかることなのに、この古いトポの記述に惑わされて、結局小一時間ほどタイム・ロス。
 途中で会った釣り人などに確認しながら、ゲートを越えてそのまま林道を20分ほど歩き、白石峠への登山道と分かれる所から左手の沢へ入る。

 今では使われていないキャンプ場の跡地を抜け、モロクボ沢方面へ続く赤布に導かれるようにして進む。
 堰堤を越えてほんの少し河原状の所を進むと、やがてモロクボ沢の大滝とも言えるF1(35m)がドォーンと現れる。
 水量が物凄く、とてもまともに突っ込める気がしない。

 

  モロクボ沢F1(35m)
 
 ここはセオリーどおり滝の左側、凹角状のルンゼから。
 段差がやや高いが、初心者以外はロープ不要。アルパインの3級程度?
 出口の所には泥に汚れたお助けスリングが垂れ下がっているが、しっかりした潅木もあり、特に必要ない。

 ここから少し深い釜を持つナメ滝がF2~5まで続く。

  F2(三段15m)

 どれも傾斜の無いナメ滝なので、適当に簡単そうな所をペタペタと登る。F5(8m)だけ釜の中にどっぷり浸かって左から右に泳ぎ渡って取り付いた。
 ラストの堰堤がやや興醒めだが、ここまでがモロクボ沢のハイライト。

  F5(8m)、その上に堰堤。

 それを過ぎると、穏やかな流れ。

 沢はトポのとおり右へとカーブし、二俣となる。左は黒いスベリ台状のやや傾斜のある滝、右は穏やかなナメ。
 水量はほとんど同じ。木の枝に赤テープ有り。
 この左から入ってくるのがモロクボ沢だろうか。

 試しに左のスベリ台滝を登ってみると、その先に直登はかなり厳しいと思われる20mほどの立ったスラブ滝が現れる。
 巻くにしても両岸とも傾斜のあるズブスブの土斜面で、一歩足を上げるごとに足元が崩れ、けっこう厳しい。
 トポで確認するが、こんな滝はモロクボ沢には無いようだ。

 諦めて降り、右手の水晶沢へ進む。すぐにまた左から枝沢が入るが、結局、モロクボ沢の後半入口がどれだかわからず・・・。

 水晶沢へ入ると、やがて4mほどの直瀑が現れる。
 右側は見た目ややホールドが細かく厳しそう。
 左壁に取り付く。

  水晶沢F1(4m)。ちょい悪!

 しかし、こちらも意外とホールドがなく、細い木の枝など掴んで騙し騙し登る。
 さらに落口へのトラバースも不安定で、何ともビミョーな木のツルなどを頼りにヒヤヒヤしながらクリア。
 ほんのワンポイントだが、4級-ほどの緊張感を味わう。

 その先で二俣となる。(水晶沢の二俣?)
 右はやや傾斜のある階段状の黒い滝。左はナメ滝。
 今日の気分は「癒し系」なので、左へ進む。

 やがて、二段10mほどの美しいナメ滝が現れる。
 スケールは小さいが、こんな所にこんな洒落た滝を隠しているとは、丹沢もなかなか。

  水晶沢F2(二段10m)。美瀑。

 その先で再び二俣となり、小さなケルンが積んである。
 どちらでも良かったが、右を選び、水量の少ない滝状ルンゼを上がっていくと水が涸れ、そのままヤブ漕ぎ無しで稜線へ。

 朝のうちに晴れ過ぎていたので、登山道に出た時は雲に包まれ小雨がポツポツ落ちてくるが、既に沢で濡れているのでどうってことはない。
 霧に煙るブナの林の中の登山道を北へ進む。

 

 白石峠付近で休憩しているおっちゃん二人組に挨拶し、せっかくなので加入道山まで足を延ばす。
 加入道山の頂上は自分一人だけ。
 そういえば、子どもたちが小学生の頃、梅雨空の暗い日にここまで連れて来たことをふいに想い出す。
 あれから10年以上経ち、娘も息子も今ではもうまったく別の自分の楽しみを見つけているのに、オヤジだけが相変わらず山ばかり・・・まったくしょうもない、と我ながら思う。

 

 下りは白石峠経由で、車をデポした用木沢出合まで。
 ほとんど疲れていないので、沢靴のまま走って下る。
 今回は下山まで一足で通すつもりでアクア・ステルスの沢靴にしたが、やはり丹沢や奥秩父などは通常のツェルト底の方が良さそう。
 特に不具合は感じなかったが、やはり茶色い「ヌル」の上ではゴム底は滑る。

 加入道山から用木沢出合まで登山地図のコース・タイムで1時間50分のところ45分で駆け下る。

 

 この辺りの沢はヤマメがそこそこいるとか。 
 時間が余ったので竿でも出してみようかと思ったが、本日は周りでもあまり釣れてる様子は無かったので、そそくさと帰って家でビールとする。


南ア・大武川一ノ沢~石空川北沢下降(二日目)

2011年06月05日 | 沢登り

天候:
行程:起床4:30-出発5:55-6段150m大滝下7:50-大滝落口9:15-稜線12:10-下降開始-北沢大滝-南沢出合17:15-林道終点18:50-精進ヶ滝林道デポ地19:20

 先週が仕事でかなり神経を擦り減らす日々だったので、夜は思いのほかよく眠れた。
 タケちゃんが焚火を起こしてくれ、ラーメンで朝食。

 一発目にいきなり50m級の滝が控えていて、朝から冷たいシャワーかよと覚悟していたが、それほど濡れずに越えることができた。

 

 しかし、二俣を過ぎてからいよいよ一ノ沢も本性を現わしたようで、滝が次から次へと出てくる。
 岩も硬いのばかりでなく、掴んだ途端にガバがボロボロ崩れたり、まったく気が抜けない。
 イヤらしいところはタケちゃんがリードし、上からロープを出してもらう。

 滝の大きさも次第に大きくなってきて、やがて前方の遥か上、とんでもないのが木々の間に見え隠れし始める。
 
 6段150m大滝!

 
 
 でかいっ!
 昨年行った篠沢の大滝、黒戸尾根直下の七丈瀑も大きかったが、こちらもなかなかのスケール。まさに天から水が噴き出し、流れ落ちている感じ。
 アイスではよく登られているようだが、無雪期の大滝直登はよほどの時間と周到な準備、それによほどのクソ度胸が無ければまず取り付く気はしない。
 威圧的な巨大な姿に、ただ「いやー、参りました。」と言って笑うしかない。

 しばし大滝を眺めた後、右岸のガレ・ルンゼから大高巻き開始。
 ガレを詰め上がってもまだ大滝の半分ほどの高さしか届かない。
 途中から右手の落口目指して斜めトラバース気味に上がっていくが、途中にハーケンが打てそうも無いボロい壁があったりして結構悪い。
 ここもタケちゃんがフリーで越え、上からロープを出してくれた。Ⅳ級ぐらい?

 本流に戻る手前は深く切れ込んだ枝沢があり、側壁が立っていて安易にルートを選べない。
 それでも、うまく獣道を繋いで行くと、ドンピシャで大滝の落口にたどり着くことができた。
 「登山体系」のトポではこの大高巻きだけで1時間半はみておきたいとあるが、たしかにそれだけの時間はかかる。

 さらに登山体系では「大滝の上は一変しておだやかになる」などと書いてあるが、これはウソっぽい。
 実際は10m前後の滝がもういい加減にしてくださいと思うほどにまだまだ続く。

 

 無雪期はあまり人が入っていないせいか、この辺りはもう野生の王国といった感じで、流れの角を曲がると巨大な鹿がビュンビュン飛び跳ねていたりする。

  

 やがて、ようやく水涸れとなり、獣道らしき微かな踏跡を上がっていく。
 藪漕ぎはないが詰めは長く、やがて木々の幹に間隔を置いて赤テープが確認できるようになる。
 おそらくアイスの人たちが使っているのだろう。
 地図と地形と赤テープを照合しながら東の方角へ歩を進めると、途中、「カミュ」の空瓶が転がっている岩小屋などがある。

 

 だいぶ登って、さらに次のピークへのギャップへ差し掛かるところで、そろそろこの辺だろうと見当をつけ、今度は南側の谷筋に向かって下降開始。
 この辺りだったか、先を行くタケちゃんが前方に熊の姿を確認!
 離れていたので良かったが、かなりデカいヤツだったらしい。
 それからは二人して声を出しながら進む。

 そのうち突然、斜面が切れ落ちてきた。
 樹林に覆われてはっきりしないが、どうやら岩峰の上にいるようで、ここから懸垂開始。
 幸い支点となる太い木はたくさんある。

 まずは一回目の懸垂。木の枝で引っかかりやすいのでピッチは短めに切る。
 で、一本降りてロープを回収。しばらくはスルスルと引けたが、突然、ビクとも動かなくなってしまった。 
 ・・・マジ?
 もう一度、引っ張る。やはり動かない。ウソでしょう、どーして?
 ロープは1本の折り返しだし、もちろん末端に結び目など作っていない。

 とにかくビクともしないので、しかたなく私が登り返す。
 壁は岩というより脆い土とブッシュのミックスで、ホールドは良いのが無く、足を置いても自分の重みでスタンスがズブズブ崩れてしまうイヤらしさ。
 思った以上に不安定でランナーを取る余裕も無い。
 タケちゃんに下でビレーしてもらい、後はロング・フォール覚悟のゴボウで上がる。

 やっと登り返すと、ロープがプルージック結びのように途中の枝に絡みついていた。
 濡れていたので、予想以上に摩擦が効いてしまったのだろう。
 これで時間を30分以上ロス。 

 その後、懸垂をさらに2ピッチ。これ以上、引っかからないよう、ロープは慎重に回収する。
 そういう意味では、一回目でミスをしたのは不幸中の幸いだったのかも。
 その後の登り返し不可能の箇所で引っかかっていたら、二人とも完全にアウトだっただろう。

 

 やがて水音が聞こえてきて、北沢に合流。
 時間はだいぶ押してきているが、後は沢筋に沿って下るだけだからと安心したのもつかの間、やがて今度は前方に明らかにそれとわかる光景が見えて唖然とする。

 落口・・・?それもかなり大きな滝であることが容易に想像できる空間が前方にある。
 北沢の50m大滝!
 当初の予定では、大滝の下で北沢と合流し、沢の下りは簡単に済むはずだったのだが、我々がいるのはまだ北沢の上流のようだ。
 安心していたところで、いきなりのドンデン返し。さすがのタケちゃんもこれはマズイ!と思ったようだ。

 50m大滝は右岸から懸垂、途中トラバースも交えて2ピッチで何とか下に下りることができた。

 

 その先は右岸にけっこう歩きやすい巻道を見つけて、しばらくは安心して高度を下げる。
 だが、実際にはまだまだで、次第に夕暮れが近づいてくる。

 やがて、ようやく北沢と南沢の分岐が見えてくる。
 ハーケン1本打ってゴルジュ滝を懸垂で降りる。すると、今度は束ねておいたロープの一方の端が釜の下の倒木の根に引っかかって取れなくなってしまう。
 うぅーっ、もう勘弁してほしスな気分で、ズブ濡れになって回収。・・・寒い。

 

 行動時間も10時間を越え、ヘタレな私はちょっとした小滝を横にジャンプして飛び移るところも思い切りが無く、タケちゃんの肩を踏み台にさせてもらう始末。 (えらいスンマセン。)
 さらに最後は短いが足の届かない釜まであって、まさか夕方5時過ぎに泳がされるとは思わなかった。
 歳と共に体温調節が鈍くなっているので、マジ低体温症になりそう。

 

 沢が一瞬落ち着いたところで、ようやく右岸に巻道らしきものが見えてくる。
 ここから車をデポしてある精進ヶ滝林道へは不明瞭な山腹をトラバースしていく。ここが最後の難関。
 目印となるテープを木の幹に見つけ、それに導かれて下山を急ぐ。

 しばらくはテープを確認できたが、途中で道を見失ってしまう。
 本日は曇りで樹林帯の中は薄暗い。
 これはもはや本日中には下山不能、明日は無断欠勤か?といった状況になってきた。
 たぶん他のメンバーとだったら、これ以上ヘタに動くと本当に道に迷いそうなので、行動中止してビバークしていただろう。
 しかしながら、ここはリーダーに全幅の信頼を寄せて、ヘロヘロになりつつも付いていく。
 おそらくタケちゃんにしてみれば、もう一泊延長という事態は何としても避けたいという、それ相応のプレッシャーを感じていただろう。

 踏跡も無い滑りやすいブッシュの斜面を延々とトラバースし、最後は高度計と二万五千の地形図を頼りにタケちゃんが判断、涸れた沢筋を下っていく。
 本当にこの方向で合っているのか。 (全幅の信頼と言いながら、最後は大丈夫かいなとけっこう不安だった・・・。)

 で、やがて先を行くタケちゃんから意味不明のコールが届く。
 追い付いてみると、もう薄暗くてよくわからなかったが苔に覆われた石垣があって、それは確かに人が造ったものだった。
 最後の最後で人工物を見つけて驚くのは、まさに映画「猿の惑星」のラスト・シーンのよう。こちらはハッピー・エンドなので良かったが。

 疲れた身体に鞭打って林道を進み、ようやくデポしてあったタケシ号に再会。愛しのFit!
 一日延長せず、何とか無事に下山できた・・・。

 

 その後、私の車も回収し、最後は地元の「ガスト」でガス欠となった胃を満たす。
 お疲れさんでした。

 私にとっては今シーズン一本目の沢始め。
 「来週は(休みたいから)雨でもいいかも。」とタケちゃんが言うぐらいだから、十分に濃過ぎる内容で完全燃焼。一ノ沢自体は思いのほかイイ沢でした。
 とりあえず、次回はぜひ「癒し系」でお願いします。 (たぶん聞いてもらえないだろうけど・・

 
 
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