KU Outdoor Life

アウトドアおやじの日常冒険生活

南ア・大武川一ノ沢~石空川北沢下降(一日目)

2011年06月04日 | 沢登り

天候:
同行:
タケちゃん(おやぢれんじゃぁ)
行程:中央高速双葉SA10:00-石空川精進滝林道に車一台デポ10:55-一ノ沢出合12:30-二俣15:00-二俣先ビバーク・ポイント15:55
参考:「日本登山体系-南アルプス」

 さて、今週は沢の師匠タケちゃんから誘いを受けて、南アルプスで沢始め。
 甲斐駒山麓の大武(おおむ)川は昨夏の「篠沢」に続いて私はこれが二回目となる。
 今回の「一ノ沢」は上部に6段150mの大滝が控えているとのことだが、事前のネットではどれもこれもアイスの記録ばかり。
 沢登りの記録はさっぱり見つからず、まぁ面白い沢かつまらない沢かは出たとこ勝負。

 都合で金曜夜に出発できず、土曜の午前中に中央高速の双葉SAで落ち合う。
 休日高速料金一律1,000円もいよいよ今月半ばで終わり。
 ラジオからは朝から渋滞予測35km!と流れ、一瞬、これはアプローチで「時間切れ敗退?」と青くなったが、思ったより早い時間に合流できてホッと一息。

 今回の行程は一粒で二度おいしい(厳しい?)、一つの沢を上がってまた別の沢を下降するというパターン。
 なので、まずは下山口の石空川精進ヶ滝付近の林道にタケシ号をデポ。(※沢の付近でホンダ・青のFitを見かけたら御用心。ヤツが来ていると思って間違いなし?)
 その後、私の車で篠沢奥のゲートまで移動し、一ノ沢へ向かう。

 大武川左岸の立派な林道をしばらく行くが、「登山体系」の古いトポでは右岸に道が付いており、「出合には一ノ沢橋がかかっており間違えることはない」と書いてある。
 でも、我々が歩いている道は新道、トポにあるのは旧道で、当然のことながら「一ノ沢橋」が見つからない。

 「おかしいな。この辺のはずなんだけど。」と周りの地形と地図を照らし合わせてタケちゃんが判断。適当な所で林道脇から左手の大武川本流に降りる。
 すると対岸への徒渉点となる大岩に一ノ沢を意味するのか、赤ペンキで数字の「」が記してあり、そこを渡った対岸には「一ノ沢橋」の残骸が、かろうじて土台を残しているだけ。 (「登山体系」も、もはや古典というべきか。)

 

 
で、さっそく遡行開始。

 いくつか小さな古い堰堤を越していくと、まず現れたのが「トンネル滝」、いや「洞窟釜」とでも言った方がいいだろうか。
 敢えて突っ込まなくても何とかなりそうだが、晴れていることだし、話のタネにまずはタケちゃんがトライ。

 

 腰上まで釜に浸かってトンネルをくぐり、怒涛のシャワーを浴びながら登り返すところが滑り易くて、ややボルダーちっく。
 私も一回目は跳ね返され、早くも低体温症になりそうだったが、何とか意地でクリア。

 そこから先、「登山体系」のトポではほとんど滝らしい表示は無いが、実際には5~10m級の美しい滝が間髪入れず続いている。
 全体的には癒し系だが、ところどころスパイスが効いた滝があって、まったく飽きさせない。
 途中、直登困難な滝あり。右手の急なルンゼに半分腐ったようなFIXロープが掛かっているが、釣り人もほとんど入っていないようで、まさに隠れた美渓といった感じ。
 今回はけっこう「当たり」かも。

  

 

 

 途中で鹿クンの角を拾ったり・・・。

 やがて二俣に到着。
 この辺りから滝も小粒なものから次第に中程度の大きさになってくる。

 右俣を少し入ったところにある直登不能の滝。
 ここは左岸の急なV字ルンゼを詰め、上部の脆く不安定なリッジを左に跨いで、再び急なV字状をクライム・ダウンで本流に戻る。
 一日目の「ファイト一発!」はこの部分だったが、マムートの超長~いスリングを駆使して何とかクリア。

 

 予定の二俣は越えたことだし、本日はこの辺で終了とし、右岸の小高い斜面にタープを張る。

 

 薪はほとんど湿っていたが、タケちゃんの匠の技で一発着火。
 沢で冷やした缶チューハイで乾杯となる。
 事前の釣り人情報で大武川の支流はあまり魚影が期待できないらしく、今回は釣りは無し。(確かにここまでの遡行中、一尾の気配も確認できず。)

 その夜の話題の中心は、あの「O西良治」氏。
 某雑誌クロニクルに「称名滝・単独」の記録が載っていて、「えっ?これってB-PUMP荻窪の店長?まさかね。」と思っていたのだが、そのまさかであった。

 タケちゃんもいち早く「SOLOIST」というHPを見つけて、「この人、今までで最強かも・・・。」という感想。
 確かに岩で四段を登り、沢でこれほどの単独遡行をする両刀使いは今まで聞いたことがなく、まったく新しいタイプと言える。
 沢専門の会から要チェック人物?とされているタケちゃんでさえ、「この人の記録は凄過ぎて、読んだ後ドッと疲れる。」とのこと。
(それでも谷川・オジカ沢の記録では「この辺りで飛び降りる人も云々・・・」などと書かれていて、もしかして向こうもウチらの記録を見てたりして・・・)

 

 そんなこんなで夜も更けて、とりあえず一日目は終了。
 タープの下、台湾で買った6,000円の羽毛シュラフでぐっすり眠る。


湯檜曽川ゼニイレ沢

2010年10月17日 | 沢登り

天候:のち
行程:白毛門登山口駐車場5:15-ゼニイレ沢出合6:00~20-最初のスラブ6:50-二段6m滝-奥壁9:00-白毛門頂上9:55~10:55-駐車場12:40
参考:「上信越の谷105ルート」豊野則夫・編(山と渓谷社)

 前日、一ノ倉本谷を終えた翌日。
 相方のタケちゃんは所用ありということで、本日は単独で手軽に行けそうなゼニイレ沢へ。

 白毛門登山口の駐車場で車中泊し目を覚ますと、前日の行動で乳酸MAX、筋肉痛で足がバキバキ状態。
 普通に歩くのさえ辛く、よっぽどこのまま帰ってしまおうかと思ったが、何とか思い留まって出発する。
 今日は一人なのでたぶん使わないだろうと思ったが、念のための保険としてロープやハーネス、ギアは一応持参する。

 湯檜曽川右岸の林道を歩き始める。まだ夜は明け切らず、やたらとある「熊出没注意!」の案内にビビリながら、時折ホイッスルを鳴らしながら進む。

 林道は車が通れる幅から人が通れるほどに変わり、やがて左に回り込む辺りから右の河原に降りると、もうそこはゼニイレ沢の出合。
 あまり美しくないゴーロが末端まで押し出しているので一目瞭然。

  朝のゼニイレ沢出合

 河原でコンビニおにぎりの朝食を済ませ、簡単に身支度を整え、まずは湯檜曽川の渡渉。この時期、水量は少なく足首程度で特に問題なし。

 ゼニイレ沢の行程1/3はゴーロ。何とも歩きにくい。筋肉痛に辟易しながら登っていく。
 時折、振り返って一ノ倉沢方面を見るが、本日は曇っていてあまりハッキリ見えない。

  出だしのゴーロ帯

  振り返れば一ノ倉沢

 やがてゴーロが終わって待望のナメ・スラブ。
 それなりの規模だが、黒っぽいヌルがついてて米子沢や西ゼンほどの美しさは無い。
 「アクア・ステルスでも、まぁ大丈夫だと思うけど・・。」とタケちゃんのアドバイスに従い、出だしは慎重に行く。
 とりあえず緑のヌルは大丈夫だが、黒ヌルや茶色いヌルは要注意だ。

 

 昨日の一ノ倉に較べてば傾斜も緩く、ほとんど気を使う必要はないが、それでも登るにつれ意外と高さも出てきて、調子に乗って適当な所に突っ込むと痛い目に合いそう。
 それでもあまり逃げずに極力、水流沿いに高度を上げていく。
 トポではいくつか小滝が記載されているが、基本的にナメ・スラブの連続だ。

 

  ナメ滝を見下ろす。

 15m「逆くの字」滝というのはどこかわからず、その上の二段6m滝のところで小休止。
 この上から少し沢幅が狭まってくる。曇り空だが、この辺りから周りの紅葉がなかなか綺麗。
 
 6m二段滝の上段はツルツル壁でまず直登不可。左のブッシュとのコンタクト・ラインから潅木掴んで強引に上がるがちょっと悪い。
 
  6m二段滝 (たぶん・・・)

  上部ナメ

さらにひたすら真っ直ぐ進むとやがて三俣。といっても正確には三俣ではなく、まず二俣があったら右、ほんの少し進んで次の二俣を左に取る。
 いずれにしても上の方にはインゼルのような奥壁?が控えていて、それに向かって真っ直ぐ進むのが正解。
 三俣を過ぎるとほとんど水枯れとなるので、1Lほど補給しておく。

 そして、最後は奥壁。
 右のブッシュに逃げることもできるが、ガイド本に「せっかくだからフリークライミングを楽しみたい」とあるので、取り付いてみる。

 ルートはどこでも適当に取れるが、できるだけ正面突破を試みる。
 せいぜいⅢ級ぐらいだろうとタカをくくっていたが、そこそこ高さもあり、ワンポイト緊張する(Ⅳ+)フリーソロとなる。

  奥壁基部より

  登ってみると高さもあってなかなか・・

 一つの壁を過ぎるともう一つ壁があり、基部にはハーケンが打ってある。
 A0用か?まぁ使わないでもボルダー・ムーブで切り抜けられる。ここもⅣ級か?

 ここを過ぎればもう沢は終わり。ほんのひと登りで稜線で、そのまま登山道に出るかと思ったらシャクナゲのブッシュ帯。
 踏み跡もはっきりせず、猛烈な熊笹とシャクナゲに行く手を阻まれるが、こういう時はとにかく高い方へ向かうしかないので、右手の高みへ向かう。

 微かに登山者の声が聞こえたので、そのまま右へ進むとようやく登山道に出る。熊笹をガサガサ漕いでいたので、後でオバサンから「熊かと思った。」と言われてしまった。

  ゼニイレ沢全景

  白毛門
 
 白毛門の登山道は大賑わい。このまま下ってしまおうかと思ったが、せっかくなので山頂まで行くことにする。

 頂上では地元・群馬の中高年ご夫婦にクライミングのことなど聞かれ、四方山話などしているうちに小一時間も長居してしまった。
 なかなか気さくなお二人だったが、オトーサンが目の前でビールのロング缶を一人で2本を飲んでしまうのにちょいと閉口。 (できればCMの菅原文太のように「良かったら飲んでくれ。」と言ってほしかった・・。

 

  笠ケ岳、朝日岳方面

 登山道を下り始めてすぐに沢装備の中高年男女二人組と擦れ違う。聞くと私の後からゼニイレ沢を上がってきたとのこと。
 「いやぁオタク、速いよ。」とお褒めの言葉をいただくが、こちらは筋肉痛で相当スロー・ペースだったんですけど。

 白毛門からの下りは相変わらずダルイが、色づき始めた紅葉がせめてもの救い。

  ジジ岩

 天候に恵まれ久々に充実した二日間だった。
 ゼニイレ沢は出だしのゴーロがイマイチ、その後の一直線に突き上げるナメ滝はスッキリしていて、なかなか良いが、西ゼンや米子沢に行った後だとやはりB級の印象となってしまう。
 上越の入門コースとしてはいいかもしれません。


 で、最後にちょっとケチがつく。
 下山後、例のワンゲル御用達の店「Y」へ行ったのだが、入ったとたん「メタメタ混んでいるので、時間がかかります。」と言われる。
 見たところ客は4組ほど。テーブルも2/3以上空いてるし、いる客の方もほとんど食べ終えている。
 待つ覚悟もできているので、そのまま椅子に座ろうとしたら、一度引っ込んだオヤジが再び出てきて「やっぱメタメタ混んでいるのでお断りします。」と一言。

 はぁ~・・・全然混んでるように見えないんですけど。  (大体「メタメタ」って何?)
 飯屋に「入店お断り」されたのはもちろん初めて。ワンゲル、スキーヤー推奨かしらんが、もう行かん!


リアル一ノ倉(本谷~4ルンゼ)

2010年10月16日 | 沢登り

天候:時々
同行:タケちゃん
行程:ベース・プラザ4:55-一ノ倉沢出合5:50-幻の大滝7:25-二ルンゼ出合9:50-稜線14:20-トマの耳15:20-登山指導センター17:35
参考:「チャレンジ!アルパインクライミング」廣川健太郎・著、東京新聞出版局

 さて、今回は相方タケちゃんからのリクエストで、一ノ倉沢本谷。
 これまで一ノ倉沢へは何度か出かけているが、本谷というのは知らなかった。
 というのも昔は一年中雪に埋もれて登攀の対象になっていなかったからで、それが近年(地球温暖化の影響もあって?)姿を現すようになったらしい。
 なんでも一ノ倉沢を本谷通しに行くことを「リアル一ノ倉」、そして核心となる滝はなかなか姿を現わさないことから「幻の大滝」と呼ばれているとか。

 前夜のうちに現地入り。
 紅葉シーズンで週末は一ノ倉沢出合まで車で入れないため、ベースプラザ付近からヘッデン点けてトボトボと歩き始める。

 一ノ倉の出合で夜が明ける。
 時代の流れか衰退気味の本チャン・クライミングだが、本日は天気も良く、そこそこパーティーが集まっている様子。
  
 今回は「沢通しで」というタケちゃんの要望で、出だしから水流通しに行く。
 足回りは二人ともアクア・ステルス。念のため、岩の核心部用にフラット・ソールも持ってきている。

 

 出だしは小さな釜が連続する平凡な沢の様相。
 白く磨かれたスラブをペタペタと上がっていく。
 二ノ沢や三ルンゼに行くパーティーもいて、てっきり右岸の巻き道で上がっていくのかと思ったら、彼らも沢通しに登ってきた。で、やはり同じようにアクア・ステルスを履いている。
 
 要所要所にフィックス・ロープがセットされている。結構、新しいものもあり、沢通しも意外と歩かれているようだ。
 タケちゃんはアクアのフリクション性能を確かめるように、極力フィックスに頼らず登ってくる。私はそれほど無理しないで、使えるものは使います。

 

 
 
 「一ノ倉、初めてなんでガイドよろしく!」というタケちゃんに応えて「これが衝立前沢、上に見えるのが衝立岩で・・・。」と、にわかバスガイドになって遡行を続ける。
 ヒョングリの滝まではあっという間。右岸の巻き道を行くより楽だし早い。

 

 そして、ここからが本谷の見どころ。
 どこか日本離れした広大なスラブ帯。ブッシュさえなければ、どこかの星の巨大クレーターの底にいるようだ。
 真っ白いスラブに黒い染み出しが幾何学模様を描くSF映画のような風景。
 テール・リッジからは絶対に見ることのできない「もう一つの一ノ倉」がここにある。

 

 

  

 急峻なスラブの左側面をトラバースするように上がっていくと、左手から二ノ沢が入ってくる。
 ここでタケちゃんは「沢のHPの人ですよね。」と声を掛けられる。
 「犬も歩けば~」じゃないが、「沢を歩けばこの人に当たる」というわけですな。さすが!

 

 そのまま本流通しに詰めていく。2~3の小滝を上がっていくと、いよいよ「幻の大滝」。
 おぉ、これかぁ!・・・しかし、大滝といってもそれほど大きくない。
 せいぜい20m、いや、そんなにもない感じ。
 ただ両側を急峻な壁に挟まれ、悪そうなイメージは十分。
 写真など撮りながら、しばし観察する。

 一息ついたところで、そろそろ行きますか。
 で、タケちゃんに声を掛けると、「やっぱ、ここは通常通り左壁で巻きですよね。」と言う。
 えっ!そうなの?いつもはイケイケなのに相方らしくない発言。ナンか、らしくねーんじゃねーのか(←ルカワか!)

 そこで再び真下まで近づき、幻の大滝をシゲシゲと観察。
 狭いチムニーがそのまま真直ぐ上に伸びて、上の方はチョックストーンが挟まっているが、うまく潜り抜けていけるようにも見える。
 「まさか!それは無理でしょう。」
 何言ってんだ、このおっさんは・・といった顔でタケちゃんは笑うが、まだ時間に余裕はあるし、ここはダメ元でトライしてみることにした。

 で、私のリード。
 いきなり、身体がスッポリはまるチムニーで最初の段差に足が上がらない。
 背中を壁に押し当てて身体を浮かし、何とか一段せり上がると、同じ要領でズリズリと中間地点まで行くことができた。
 ここで上部CSは潜れないことが判明。つーかチムニー自体も狭過ぎてとても入り込めない。タケちゃんの言うとおりだったが、ここまで来て諦めるのももったいない。
 
 カムでランナーを取り、保険としてハーケン1枚打ち足し、さらに上がっていく。だが、最上部、ハングした濡れた岩の部分で行き詰まってしまう。
 「エイリアンの頭」のような黒い岩を避けるため、左右どちらかに逃げたいが、なかなか移れない。
 左の方がホールドありそうだが濡れてて壁が立っているし、タケちゃんが薦める右側は岩が乾いてフリクションは効きそうだが、これといったホールドが無い。
 さぁ、どーする?どーする!・・・考えているうちにステミングしている両足が次第に痺れてくる。

 ジャストフィットではないが、もう一つカムが決まった。もう思い切って行くしかない!
 「(ビレイ)頼むよ!」と声を掛け、「エイリアンの頭」を跨いで右足をチョックストーンへ。届いた!だが、バランスが悪く、しかもロープがチムニーで屈折してしまい、めちゃくちゃ重いっ!
 ヤバっ!落ちる・・・と思いながらも何とかバランスで耐えて核心突破!

  ここまでは何とか・・・

  核心「エイリアンの頭」。ここがシビれる

  YEAH~

  やっほ~ 

 体感グレードとしてはⅤ(Ⅳ+、A0)といったところか。なかなかシビレた。
 フォローのタケちゃんはさすがにスイスイ上がってくるが、それでも最後の部分はちょい力が入った様子。
 で、「いやぁ、これはもしかして大滝初登だったりして?」なんてヨイショしてくれるが・・・まさかね。
 でも、確かにここだけまったく残置が無いし(我々も一本打ったクロモリは回収)、そもそもが岩屋の領域。わざわざ濡れたチムニーに突っ込む物好きクライマーはいないだろう。
 これまでも二人で行った沢では、和名倉沢の「通らず」を通っちゃったり、オツルミズのサナギ滝上段もシャワーで正面突破しちゃったりと、ガイド本無視の掟破り?をしてきたが、また今回も「あいつらアホだ」と言われそうなネタを作ってしまった。
 
 大滝を過ぎると、またまた大スラブ帯。
 しかも、次第に傾斜を増してくる。
 左手、滝沢下部の染み出した黒い壁が何とも悪そうなのが印象的だ。

 

 

 私はできるだけ安易に右側のリッジ状を行くが、タケちゃんは岩に吸い付くようなアクアのフリクションがよほど気に入ったのか「おぉーっ!滑らない。」とか言って、スベリ台のような急峻なスラブをどんどん登っていく。
 うーん・・・こっちから見るとナンかスゴイとこ登っちゃってますけど。

 

 この辺り、ロープを結ぶには中途半端。お互いを信頼してスラブの感触を楽しみながら、それぞれ好き勝手に高度を上げていく。
 烏帽子奥壁や二ルンゼ方面からは、盛んに「ラークッ!」の声や悲鳴とも罵声ともつかないコールが聞こえてくるが、本谷のスラブ帯はいたって静か。

  
 滝沢下部(左)と衝立岩

 で、いよいよ上部、四ルンゼに突入。

 もちろん正面突破の方針で行く。
 トポではFナンバーが付いているが、イマイチ判然としない。
 どれもこれもチムニー状のCS滝って感じだ。

 

 トポにあるF滝、F1はよくわからないまま通過。左手に三ルンゼが分かれる。

  

 すぐにF2(8m)。
 中間部で岩が覆い被さっていて、そこを抜け出す部分がヌルヌル。アクア・ステルスが最も苦手とするヤツだ。
 古い残置スリングが残っていて、だましだましそれに足をかけて突破。抜け出た上もやや悪いが、何とかこなす。

 続いてF3(15m)。
 見た目、ホールド豊富で簡単そうだったが、濡れていて結構悪い。
 残置ハーケンはベタ打ちだが、どれもこれも古く、ハンマーで叩けば崩れてしまいそうなボロばかり。
 何とか凌いで滝を越え、ここでピッチを切りたいところだが、草付が不安定。
 自然と左の草付スラブへ追いやられ、ランナウトしたまま約20m伸ばすが、ここまで来ると明らかにルートミス。
 ハーケン2本で支点を作り、とりあえずタケちゃんを迎える。
 上がってきたところで、そのまま微妙な右トラバースをしてもらい本流に戻った。

 
 
  

  

 ここから本谷は幅が狭くなり、小滝がいくつか続く。右岸のスラブ伝いに一気に越えて行く。

 適当な所で沢筋に降り、7mほどのCS滝にタケちゃんがtry。得意の「突っ張り」で一段上のCSの上に乗るが、ナントこの岩がグラッと動く。
 タケちゃんはすぐに上に逃げ、私は安全のため、お助けロープを出してもらってフォロー。

 

 

 さらに2段10m(F5?)もチムニー状。私が先に取り付き下段までは突破するが、上段がかなり狭い上に右壁がヌルヌル。
 アクア・ステルスが最も苦手とするパターンで、 チムニーに身体を挟んだまま動くに動けず。壁をタップして思わず「ギブ・アップ!」
 タケちゃんがすぐさま右から巻き上がって、お助けロープを出してくれた。(調子に乗ってスミマセン・・

 

 この先も小滝があるにはあるが、そろそろ源頭部の雰囲気となる。
 で、ちょっと開けた所に出ると、そこで「ブンッ!」と何やら大きな蜂が飛ぶような音が聞こえた。
 ん、今の音、何?・・・ってふと上を見ると、大小20個ほどの落石が突然降ってわいたように飛んできた!

 「ヤバイーっ!!よけろ、よけろっ!」
 二人ともまだスラブの途中に張り付いているので、走って逃げるわけにはいかない。
 何とかやり過ごしたが、それでもタケちゃんは飛んできた小石に手の甲を1cmほど切られてしまう。
 落ち着いてから応急処置をするが、先行パーティーがいないこの位置だと、おそらく人為ではなく自然落石だろう。改めて谷川の恐ろしさを実感する。

 午後になると曇って視界が利かなくなってきた。ガスの中を次第に細くなる沢筋に沿って忠実に詰めていく。

 最後は一ノ倉尾根に合流。谷川特有の深い熊笹の詰めとなる。
 何年か前の秋、南稜から一ノ倉尾根を詰めた時はけっこう快適な道だったのに・・。稜線まで詰めるパーティーなど年々少なくなっているのだろう。
 稜線に出てガッチリ握手。お疲れさまでした~。

  我々、こういう趣味はございませんが・・・。

 

 下山は西黒尾根にしたが、四ルンゼの最後の詰めの辺りから私はエネルギー不足で、もうヘロヘロ。
 対して、相方は負傷しても相変わらずタフ。つい最近の健康診断では実年齢40半ばにして身体年齢19歳!という評価が出たとか・・・。マジっ?

 それでも、何とか残業とならずに無事下山。うーん、久々に充実の一本でした!


p.s.今回は不意の落石に見舞われてしまったが、それでも本谷~四ルンゼは烏帽子奥壁や二ルンゼなどに較べて浮石は少なく、いたって快適。
 ただ、長丁場なので体力つけてスピード勝負で臨みたい。
 装備としては今回、我々はアプローチから遡行、登攀、下山に至るまで全てアクア・ステルスの沢靴で通した。またカム(キャメの#0.5~#1)が非常に有効。
 最初から沢登りのつもりで濡れるの覚悟で行けば、「幻の大滝」直登は面白いと思います。


笹子川・滝子沢左俣

2010年09月19日 | 沢登り

天候:一時
同行:山P、コバヤシくん(わが社)
行程:権現橋9:10-50mナメ滝10:10-一条クラック11:00-滝子山頂上12:40~13:00-檜平13:30-林道・駐車スペース14:50(←かなりのんびりペースです)
参考:「東京周辺の沢」白山書房

 この三連休は家の都合で泊まりの山へ行けず。
 しかたなく日帰りで沢登り。子育て中で遠出のできない「イク(育)メン」二人が付き合ってくれた。

 今回選んだのは大菩薩連嶺の南端、滝子山の南面にある滝子沢。
 古いガイドブック「東京付近の沢」にはお薦めの「扇子」マークが付いている。最新の「岳人」にも紹介記事が載っていたので、少しは期待したのだが・・・。

 で横浜を朝5時出発。
 三連休の真ん中だというのに、中央高速下りがなぜか渋滞で、いきなりハマる。
 大月ICで降り、R20号を甲府方面へ。初狩駅を過ぎ、上空にJRの線路を潜った後に最初に出てくる右への道が滝子沢への林道入口だ。
 チェーンで進入禁止のようになっているが簡単にはずすことができる。入口には滝子山への案内図もあり、進入はOK。
 多少悪い道だが愛車FREEDでも何とか上がっていき、駐車場とは言えないほどの林道路肩スペースに車を停める。
 ここまでの道もイマイチわかりにくく、身支度を整え出発したのは9時過ぎだった。

  

 林道をちょこっと歩いて権現橋。ここから入渓となる。
 まずは堰堤を二つ、適当に右から越える。
 権現橋より下流は堰堤だらけらしいので、やはり橋からの遡行がオススメ。

  まずは堰堤を二つ

  しばらくゴーロ帯が続く。

 少し行くと最初の4m滝。
 山P、コバちゃん、私の順で取り付く。
 少し岩が脆いが、山Pと私は水流右を、コバちゃんは水流直登でクリア。

  
 最初の4m滝

 その後しばらくゴーロが続く。
 水は完全に伏流となり、ちょっと単調。

 次の4m滝。
 まぁ問題なし。

  
 二つ目の4m滝

 再び水流が現れ、二俣となる。
 本流は右で、ここにケルン有り。

  二俣を右へ
 
 で、すぐに30mとも50mとも言われる階段状ナメ滝が現れる。
 奥秩父のヌク沢大滝・中段の傾斜をもっと寝かしたような感じ。
 ここでのんびり大休止。

 

 見た感じ、特にロープは不要でしょうと、順番に繋がって取り付く。
 あまりに簡単過ぎて面白半分にルーファイをおろそかにするとちょいと手強かったりするが、まぁ瞬間的にⅢ+ぐらい。

 

 ちょっとした段差のようなナメ滝を過ぎると、先ほどよりやや小粒の30mスラブ滝。
 登っている時はさほど感じないが、落口から振り返るとここも意外と高さはある。
 技術的にはここも問題なし。

 

 

 すっきりしたコンクリ打ちっぱなしのようなスラブ滝を右寄りランペ沿いに越えると、また小さな二俣となり、左手にこの沢の核心(?)と言われる「一条クラック」が現れる。
 思ったより小粒な沢なのでガツガツ急いでしまうとアッという間に終わってしまいそうなため、ここでも大休止。

  一条クラック

 「一条クラック」はガイドブックにはロープ必要とあるが、ここも見た感じ随分寝ている。
 まず山Pが取り付いてみて、大丈夫そうだったら、ここもロープいらないでしょうということで合意。
 二か所ほど瞬間的にスメアに集中するところがあるが(Ⅲ+ぐらい?)、特に問題なくここもロープ出さずに全員クリア。

  
 悪いのは瞬間的にほんの二か所。大したことはない。

 続いて8m滝。
 そこそこ立っていて、ようやくちょっと骨のあるヤツが出てきた感じ。
 で、古いトポを見ると「8mのハング滝は直登不能。右岸から高巻く。」となっている。 書いているのは、あの岩崎元郎氏。
 ・・・直登不能?ちょっと待ってよ、岩崎センセ!

 確かにちょっと立ってはいるが、ハングって感じじゃないし、岩も随分しっかりしていそう。
 ここはとりあえず山Pにリードしてもらって・・と思っていたら、なぜか「お願いします。」とお鉢が回ってきた。
 明日は「敬老の日」なのに、長老の私に石橋を叩いて渡れと言うのか。
 ま、いいけどね・・と、ここで初めてロープを出し、私がリード。

 ガバを探ってまずは下段をヒョイと上がると、ちょうどいい位置にしっかり効いた残置ハーケン。これにランナーを取り、一安心。
 そこから上は確かにちょっと薄被りだが、手頃で大きなホールドは随所にあり、何とか行けそう。

 1ムーブ、水流側の大きなスタンスに左足で乗り込む所がほんの少しボルダーちっくで面白い。
 シャワーもろ被りとなるので、躊躇せず思い切って行く。
 後は慎重に足場を選んで落口へ。
 滝上に転がっている大きな岩と倒木でセルフビレーを取り、コバちゃん、山Pを迎える。

  8mハング(?)滝

 二人ともまったく問題なしでサッサと登ってくる。グレードとしてはⅢ+~Ⅳ-といったところか。

 

 さらに4mほどの小滝を越えると三俣。
 ここは真ん中を選ぶ。

 さらに小さな二俣となり左を選ぶ。

  

 細いルンゼ状となり、適当な所から右手の尾根っぽい林の中を伝っていくと、近くから登山者の声が聞こえてきて、頂上直下の登山道に出る。

 滝子山、1,620m。
 あいにく雲に隠れて富士山は見えず。大菩薩方面や三ツ峠周辺の名も知らぬ山々を見ながら昼飯タイム。

  

 ハイキングの人たちが続々と上がってきたので、いいかげん休んだところで下山を開始する。
 コースは檜平経由で車を停めた林道へ直接降りるルート。
 まだ道がそれほど多くの人に歩かれていないようで、ところどころ踏跡程度の所があった。
 暗いとちょっと迷いやすいし、滑りやすい道なので要注意。

 結局、随分と明るいうちに終わってしまった。気持ちとしてはやや物足りない。
 山P曰く「西丹沢のマスキ嵐沢の「お兄さん」といった感じでしたね。」・・・うーん、確かに。

 帰りはR16号のいつものラーメン屋「夜泣き軒」で〆。
 沢よりも行き帰りの交通渋滞、お疲れさまでした。

 

p.s.車が無いとJR初狩駅からアプローチだけで1時間以上かかってしまい、そのくせ沢の核心部分は短いので、古くから紹介されている割には何だかなぁという感じだった。
 8m滝をシャワー浴びて直登して、どうにか満足といった感じです。で、登るならこの部分だけはロープ使った方が良いでしょう。


奥只見・恋ノ岐川 #3

2010年09月05日 | 沢登り

三日目
天候:
行程:起床3:30-BP出発4:30-台倉清水6;05-ヤセ尾根7:50-平ケ岳登山口8:10


 さて、今日は下山日。
 先週の黄蓮谷でのBPとほぼ同じ標高での一夜だったが、黄蓮谷の方が寒く、思いの他よく眠れた。
 

 そそくさと朝食を済ませ、まだ暗いうちから下山開始。
 帰りは平ケ岳登山口発9:48に乗れば良いのだが、問題はこの下山にどれほどかかるのか。

 というのも、同じS社の「山と高原地図」でも私の2001年版は所要時間3時間10分、M田氏の最新版では5時間超かかることになっている。
 この差は一体何なのか。
 いずれにしても、5時間もかかるようなら、そうノンビリもしてられない。

 

 良いペースでぐんぐん下っていくと、反対側から登ってくる登山者と出くわす。
 で、そのうちの最初のオヤジがいきなりカマしてきた。

 「昨日は上で泊まったのか?上は幕営禁止だぞ!
 「いや、ウチら沢なんで、途中で・・・」と適当に答えたが、いきなり頭ごなしに言われて正直ムッとした。

 たしかに平ケ岳山頂付近は「自然保護のため幕営禁止」という話はどこかで聞いたことがある。
 しかし、我々は実際のところ湿原の中に足を踏み入れたわけでもなく、自然に対しても人工物に対しても一切汚してもいなければ壊したりもしていない。(テントなど無いのでペグすら打っていないし、キジだって我慢した。)
 それどころか、こっちは途中で空のペットボトルやクッキーの袋など、ヨソ様の捨てたゴミまで拾っているんだ。
 ウチらから言わせると、ストックなどをいたずらに突いて草木の根を痛めている百名山フリークの方がよっぽど自然破壊だぞ!と言いたい。

 何となく気分が悪いので、帰ってから地元・魚沼市観光商工課に確認したところ、
・湿原の中には入らないでください。
・その他の場所については「絶対、幕営禁止」というわけではありません。
 自然保護を厳重に守っていただき、あとは登山者の方々の良識にお任せしています。

 ・・・とのこと。
 まぁ、積極的にテント張ってもいいよとは言わないが、「分別ある大人のルール」さえしっかり守っていただければ文句は言いませんというのが、2010年9月現在の見解だ。

 その後にも何人かから「早いねぇ。」「昨日はどこに泊まったの?」と詮索じみた言葉をかけられたが、そのたびにザックにくくりつけたメットを見せ、「ウチら沢なんで、途中で野宿です」と言うと、まぁ納得してくれた。

 

  

 途中休憩を入れながら、結局下山は3時間半ちょっと。
 太陽の方角に向かって下りていくものだから暑い暑い。

 登山口に自販機あるかなと期待したが、ものの見事に無し。
 しかし、ちょうど具合のいいことに乗る予定の一本前のバスが来て、船も一本前のに乗ることができた。

  

 奥只見ダムでは浦佐へのバス2時間待ちとなってしまったが、その分ぐうたらと過ごす。
 土産物屋の水槽に岩魚が泳いでいて、コイツが何ともデカいっ!
 店の若オヤジに聞くと、ここらの岩魚はダム湖で50~60cmはざら。70~80cmで「大物」と言えるとか。
 で、恋ノ岐など上流の沢になるとやはり30cm(尺もの)がいいところ。一昨日、私が釣ったサイズはまずまずということらしい。

  

 帰りは越後湯沢のトンカツ屋「人参亭」のロースカツ定食で〆。
 一時期より気持ち量が適正になったような気がするが、私などは普通盛りで十分満足。
 大食漢のM田氏は「それほどでもないですね」という顔を見せ、「夜は坦々麺大盛りにしようかな♪」などとうそぶいている。(この人のクライミング哲学に「パワー・ウェイト・レシオ」という文字はないのか?)

 

 まぁ何はともあれ、念願の恋ノ岐。十分に癒されました。
 (次回行く時があれば、「恋ノ岐」だけに女性の同行者募集中。岩魚、必ずや進呈します。 


奥只見・恋ノ岐川 #2

2010年09月04日 | 沢登り

二日目
天候:
行程:起床4:30-BP出発6:30-オホコ沢との二俣7:35-50mナメ滝下11:10-池ノ岳1320~14:00-平ケ岳14:20-BP

 朝起きると満天の星。
 M田氏はまだお休み中なので、先に起き出し、焚火の準備。
 昨夜の熾きはきれいに灰と化していたが、本日はいとも簡単に一発着火でビッグ・ファイヤーとなる。

 

 

 準備を整え、本日の遡行開始。
 岩魚の走り泳ぐ中、ナメ、釜、小滝、小ゴルジュと美渓が続く。

 

 

 

 

 

 やがて4m級の滝が四連続。
 オホコ沢手前の地点で、ここらが中盤のハイライト。

 そしてオホコ沢との二俣。
 左手がオホコ沢で、本日は本流との水量比3:2といったところか。まず間違うことはないだろう。
 
  

 右岸の一段高くなったところにビバーク・ポイント。
 つい最近泊まった焚火跡があって、岩魚の食べカスも残っていた。

 恋ノ岐は水量が極端に少なく浅くなったかと思うと、また突然、足も届かない深い釜が現れたりして、なかなか終わらない。
 やはり水平距離11kmというのはダテじゃない。
 正直、もうお腹一杯。十分堪能させていただきましたという感じだが、癒し攻撃(?)はまだまだ続く。

  

 で、しばらく進むと、小ゴルジュの滝に出くわし、そこでいないと思っていた先行者を発見!
 見た感じ女性のようで、M田氏が「おっ、若い!」と色メキ立つ。

 が、どうやらゴルジュの3m滝から抜け出すのに苦戦している様子。
 しばらくゴルジュ手前で遠巻きに見ていたのだが、あと一歩という所でナント落ちてしまった!

  「ま、マジっ!?」
 下は浅い釜となっているが、落ちる際にバランスを崩したので一瞬骨折でもしたかと大いにアセった。
 急いで声を掛けると「大丈夫」との返事。でも、本人もまさか落ちるとは思っていなかったようで、若干顔が引き攣っている。
 近くに寄ったら私と同年齢ほどオバチャンで、単独なのかと思ったら相方がいて一足先に行ってしまったとのこと。

 とりあえず私が先に突破し、上からお助け紐を出すことに。
 取り付いてみると滝の出口に格好のガバがあり思い切って上がることができるが、背が低く荷が重いオバチャンにはちとパワー系だったか。
 そうこうしているうちに先行していた相方さんも「すみません・・。」と引き返してきて、三人でオバチャンを一本釣りのようにして(失礼!)、引き上げる。
 とにかく、ご無事で何より。 
 結局、今回我々がスリングを使ったのは自分たちのためでなく、よそ様のために出したこの一回きりだけだった。

 

 

 

 

 
 
 で、ナメを主体に、釜、小滝、小ゴルジュがまだまだ延々と続く。
 今回持参したトポは例のごとく「上信越の谷105ルート」だが、この遡行図は相当省略しており、実際は長い流程の中に「癒し」の要素がこれでもかと繰り返される。

  

 

 

 

 やがて水量比ほぼ1:1の二俣。
 そのまま進むと右俣の方へ進んでしまいそうだが、そちらは15mほどの赤褐色の滝でこれまでになく手強そうな様相。
 明らかに恋ノ岐の趣旨に反する。
 で、左俣の8m二段滝の方が正解。

 とりあえず進むだけ進み、時間に余裕があったら50mナメ滝下で、M田氏にも岩魚の入れ食いを楽しんでもらおうと思ったが、どうやらいつの間にかナメ滝下に着いてしまったようで、残念ながら深い釜は無し。
 
 ナメ滝は50mといえど多段構成で傾斜も寝ており、特に緊張することもなく、ロープ不要でスタスタ行ける。
 強いていえば最上段でちょこっとスラビーなポイントがあるが、右手の熊笹を頼りに左足のフリクションを信じて乗り込めば問題なし。(途中に残置ハーケンも一本有り)

 

 ここを過ぎれば水量もチョロチョロだろうと思うが、実際にはまだその先も足が届かないような深い釜が現れ、ちょっと驚く。一体、いつ終わるんですか?

 それでも、さすがに前方上部に稜線が見えてきて、あとは手元の高度計を確認しながら詰めていく。
 今回事前に参考とした2009年の「賀来さんのHP」の記録で、お二人が泊まったと思われる草地のBPも確認できた。
 この辺りから左手の登山道に上がってしまうパーティーも多いようで右岸の笹薮には踏み跡らしきものがいくつもある。
 
 ここらで標高1,800m。
 今回、我々は百名山の平ケ岳まで行くつもりなので、標高差としてはまだまだ200mはある。とにかく最後の最後まで詰めて行くことにする。

  

 水はなかなか枯れないが、それでも最後まで詰め上がるパーティーは少ないのか、ラストは枯沢に密集した熊笹が覆い被さる。
 眼に突き刺さってきそうな熊笹に注意しながら掻き分けていき、詰まった所で左にちょこっとトラバースすれば、そこは池ノ岳直下、歩いて5分足らずの地点だった。

  

 池ノ岳頂上は池糖が広がり、開放的ながら哀愁の漂う広々とした景観。
 「お疲れさんでした~。」と握手を交わす。

 

 濡れた沢装備を休憩用の板の間(?)に広げ、大休止。
 今ここにいるのは我々だけ。 
 空が青く、広い。

 十分休んだ後、空身で平ケ岳まで足を延ばす。
 ここから見ると随分距離がありそうに見えるが、普通に歩いて20分ほどで着いてしまった。

  

 尾瀬の燧岳や日光、上州武尊らしき山々が延々と連なる。
 まだまだ登っていない山はたくさんあるなぁ。

 
 
 いい加減、飽きるほど休んでから場所を移してお昼寝タイム。
 晴れた日の山の頂上で惰眠を貪るなんて、いつ以来だろう。最高の贅沢、至福の時をしばし過ごす。

  

 その日のうちに下山することもできたが、結局帰りの便が無いので某所で野宿。
 雲一つ無い空の向こうに夕陽が沈んでいく。うーん、バーボンが飲みたくなってきたぞ。

 
 
 夜は360度満天の星空。言うことなし。


奥只見・恋ノ岐川 #1

2010年09月03日 | 沢登り

一日目
天候:のち一時小
行程:JR上越線浦佐駅8:00-(南越後バス・シルバーライン経由)-9:10奥只見ダム9:30-(遊覧船)-尾瀬口10:10-恋ノ岐川出合11:40-F1・13:50-F2・14:30-B.P17:00
同行:M田氏

 さて、今週は土・日にプラス1日年休を追加して癒しの名渓・「恋ノ岐川」へ。
 当初7月終わりに単独で企画したが、時期的にアブとスノー・ブリッジの恐れありということで見送り、今回決行とした。
 同行はいつもフリーをメインに行っているM田氏。これまで岩とアイス専門かと思ったが、さすがにこの夏の猛暑がその気にさせたのか、「恋ノ岐」の名にピンとくるものがあったらしい。
 まさか男二人で「恋ノ岐」になるとは思わなかった。

 装備としては、事前にネットの記録をいくつか漁った結果、(我々の場合)ロープは不要と判断。
 念のためのお助け用に、ハーネスと長めのスリング、ガチャ類を少々。

 今回、車が出せなかったため、アプローチは公共交通を使う。
 横浜を始発で発ち、上越新幹線でJR浦佐駅まで。そこからローカル色豊かな南越後バスでシルバーライン経由、奥只見ダムへ。さらに小さな遊覧船40分で奥只見湖南端の尾瀬口へ。
 
 交通費はチトかさむが、それぞれの連絡は割とスムーズ。これもあの田中角栄氏が為した偉大なる功績というべきか。(ちなみに浦佐駅前には角栄氏の銅像が「よっしゃ、よっしゃ」と手を振っている。)

  
浦佐駅からバスに乗り、シルバーライン経由で1時間10分ほど。まずは奥只見ダムに到着。

 奥只見ダムは小説から映画化されたあの「ホワイトアウト」の舞台となったところ。
 「織田(裕二)くん、いるかなぁ?」とM田氏。 (←いるわけない!

 登山で船というのは、ずっと昔に黒部の渡しで使って以来。
 さすが秘境と呼ばれる奥只見、なかなか新鮮。

  

  

 船の終点、尾瀬口はほぉーーーんとにナンもない所。
 桟橋からコンクリートの階段を上がって国道352線に出ると会津バスのバス停のみがポツンとあるだけ。建物はおろか自販機すら皆無。

 同船した数名はバスに乗って尾瀬方面の沼山峠へ。我々はR352を右に向かってトボトボ歩く。
 ここから入渓点の「恋ノ岐橋」まで約6km。平日なので交通量も少なく、野郎二人を拾ってくれる奇特な車も無し。炎天下の中、しょーもない話をしながら行く。

 

 ようやく恋ノ岐橋。
 駐車スペースがあり、一台停まっていた。
 身支度をして、さっそく入渓。
 橋からすぐに降りることもできそうだったが、左岸に道が付けられていたので、まずはこれを辿る。

 左岸の巻き道を300mも進んだろうか。道はさらに続き、次第に登り調子になってくる。
 どうやら、これは釣り人の帰りのための道のようと判断。適当な所から左側の本流に降りた。

 

 入渓したとたん、何やら天気が曇り気味になってしまったが、それでもさすが名渓。ナメが明るい。

 

 

 序盤はナメと大釜の連続。
 sudoさんの記録ではけっこう泳ぎを強いられたようだが、今回は水量が安定しているのか腰上まで浸かるもののヘツリで充分。

 噂どおり特に難しい所は無く、私は極力、水線突破で行くが、M田氏は水を浴びてコンタクト・レンズが流れてしまうとアウトなので、最初のうちは慎重に巻きモード。

 

 

 

 ナメ、釜、ナメ、釜と続き、キレイなんだけど何か単調だなと思い始めた頃、ようやくF1、10m二段滝が現れる。
 ナメ、釜続きだったので、ちょっとした変化が嬉しい。
 ここで若い三人パーティーに追いつき、追い越す。
 水流右側の丸っこいリッジ沿いにスタスタ行ける。

 

 

 その後も、とにかくナメ、ナメ、ナメ・・・。
 先月行った上州武尊の川場谷も下部はナメが多かったが、ここはそれ以上だし、同じ人気度五つ☆でも格が違う感じ。
 とにかく圧倒的にナメつくされる。(←言い方がヘン?)
 「沢」というより、たしかにこれは「川」だ。

 

 

 ある程度、沢に慣れた人なら細かい説明は不要。
 ブルース・リーじゃないが、ここは「考えるな、感じろ!」。そういった場所。

  ここがF2、5m二条滝か。

  3m幅広滝

  

 
 
 

 水はどこまでも綺麗。
 同じ綺麗でも黒部の赤木沢、上越のナルミズ沢とはまた違った趣き。
 先の二つがどこかテーマパークっぽい、あざとい(?)美しさを魅せるのに対し、こちらはどことなく素朴で原始的な雰囲気の美しさといったらいいだろうか。
 岩魚が素早く水中の中を走るのを見ながら、どんどん進む。

 本日の行程はスケジュール的に三角沢とオホコ沢の中間点と決めていたので、適当な所で打ち切り。
 全行程が長いので、ちょっと時間が押してしまった。
 オホコ沢手前の連瀑帯下の右岸に場所を決め、M田氏はツェルト、私はタープを張る。

 まずは薪を集めて焚火起こし。
 途中、ちょいと小雨が降ったせいか空気がやや湿っぽく、一発着火というわけにはいかなかったが、徐々に火床が出来上がってきた。

 火が安定してきたところで、私はちょこっと釣りなど。
 既に辺りは暗く、場所も一段上の浅場までしか行けないような状態だったので、まぁ今回はとりあえず「竿を持ってきたので釣りのポーズだけしてみました~。」というナンチャッテ態勢で臨んだのだが・・・。

 今回のために新調した安いテンカラ竿にブドウ虫をセットして垂らすこと数分。
 いきなり根掛りしたようで、「チッ!」と思ったのもつかの間、何やらプルプル、ピクピクと不穏な感触が伝わってくる。
 あらら、こんな浅場で釣れちゃいました!しかも、いきなり尺近い良型。
 「げっと~!
 M田氏もこれには驚いた様子。

 それから短時間のうちに、さらに3尾をゲット!
 一投につき、ほぼ一尾かかってくれるのだからタマラナイ。

 ここで一句。
 「秋の宵 垂らせば釣れる 恋ノ岐」

  

  ほとんど子供の釣掘のような浅場で、よくも釣れたものだと思うが、夜の闇でこちらの姿がまるで見えなかったのが幸いだったのかも。
  ヘッデンで水面を照らし続けていたのだが、岩魚たちには月の光とでも思えたのだろう。
  それにしても魚影の濃さは噂どおり。
  まさか釣れるとは思わなかったので塩を持ってこなかったのが痛かったが、自然の恵みに感謝しつつ、ありがたく一人2尾ずついただく。


南ア・黄蓮谷 #2

2010年08月29日 | 沢登り

天候:
行程:奥千丈・最後の滝下BP6:10-奥の二俣7:25-甲斐駒頂上9:55~10:45-竹宇駐車場15:15

 朝4:00起床。
 満天の星、それに月の光が物凄く、眼前の奥千丈・最後の滝を煌々と照らしている。
 夜は思いのほか冷え込み、山Pはほとんど眠れなかったそうだ。

  テン場の夜明け

 昨夜の熾きから焚火を熾そうとするが、やはり火付きが悪い。
 チョロチョロと燃えはするがすぐに消えてしまうので、30分ほどで諦め、6時過ぎには出発。
 昨日に続いて今日も絶好の天気。

 奥千丈・最後の滝は、水流左に残置スリングが2本あり、A0突破。
 ちょっとヌメっていたりするが、クラックにフット・ジャムなど効かせながら登る。
 この辺りもよく見ると、いたる所にハーケンが打ってある。
 水流が激しい時は必要なのかもしれないが、本日の状況では「何でこんなにベタ打ち?」と不思議に思うほど。
 BDのナイフ・ブレード?もあって、ちょっと回収したかった。

  奥千丈・最後の滝

 そこを上がると前方上部にインゼルが立ちはだかる。

 インゼル突破はいろいろなルートが取れると思うが、我々はまず左側のスラブを上がっていき、傾斜がきつくなってきたら中央のブッシュ帯へ、さらに斜め右に移るようにして抜けた。
 特に決まったルートは無さそうなので、視界が利かない時に傾斜のきついスラブに入り込んでしまうと苦労するだろう。
 インゼルの途中にもテン場があるが、ここまで来ると谷も開け、風の影響も受けるだろうし、標高も高いので結構寒いかも?

 
 インゼル。前方やや左、奥の方に見えるのが甲斐駒。

 インゼルの上に上がると雪のブロックが僅かに残っていた。
 正面が奥の二俣で、時期にもよるがこの先ほとんど水流は無い。左手の白い岩の方がルートとなる。
 よく迷い込むと言われる烏帽子沢は既にずっと左側で、とにかくインゼルを正面突破すれば、そちらに入り込むことはまず無いと思う。

 奥の二俣にて袋に入ったままのカステラ(さすがに拾って食べる気になれない状態)とボロボロのロープの残骸あり。ここもテン場。

  ロープの残骸とカステラ

 
下山用の水を補給し、奥の左俣に入る。

 奥の左俣最初の滝は立っていて直登はなかなか厳しそう。
 右岸から巻くが、最後はちょいとシビれるコーナー・スラブとなっている。

  奥の左俣最初の滝
 
 人工的に切り出したように左側が直角の壁になっている。
 残置ハーケン、スリングを使ってここもA0突破だが、多少は細かい皺を拾ってジワジワ登っていかなければならない。

  これが噂の(?)コーナー・スラブ

  落ちたらあかんぜよ

 岩が乾いているので、こういう時のアクア・ステルスはなかなか強い。
 せいぜいⅢ+~Ⅳ-といった感じだが、後続の山Pは磨耗したフェルト・ソールのフリクションに不安を感じ、あと一歩が出ない模様。
 おまけにここらは少し岩が脆く、山Pが突破の鍵となる岩を掴んだ途端、グラッと動いた。
 すかさず「それはダメだっ!」と声を掛け、その場で待機してもらう。
 登っている時はさほど感じなかったが、確かにここで落ちたらちょっとヤバそう。
 スラブをツーッと滑って、奥千丈へ一気にダイブだ。
 安定した所まで私が上がって、ロープを降ろし、山Pを回収。ホッ・・・。
 本人もここが一番緊張したらしい。

  一難去ってまた・・・。

  ここは左から回り込む。

  背後に八ケ岳。

 奥の滝(三段60m)。

 下段は左側を上がったかな。よく覚えていない。

 中段(?)は左側が威圧的なコーナーとなっていて、ちょいとクライミング欲をそそるが、一見したところ残置は確認できず。
 クラックも苔で埋まっており、特に上部はホールド乏しくⅤ級以上はありそうだ。
 ちょいとリスキーで時間もかかりそうなので、そそくさと左岸から巻く。

  奥の滝・中段(?)

 上段は2mほどの垂壁が鍵。
 残置がベタ打ちで、古いスリングも残っている。
 念のためロープを出し、A0突破(多少、グラついているので要注意)。
 右上の草付まで上がってビレー解除。

 ロープ使用はここまで。
 我々の場合、出だしの「スベリ台滝」と「二俣からすぐの滝」、そしてココ。
 その他、お助け紐としてさらに3回ほどロープを使ったことになる。(高巻きからの懸垂は一回もしなかった。)

 後はクネクネと続く白ザレと草付の踏跡を左斜め方向、甲斐駒の頂上へ向かって延々と詰めるだけ。
 ガスっていると迷いそうだが、本日は快晴。頂上の人の姿、そして風に乗って時々声も聞こえてくる。

 藪漕ぎこそないが、昨日から登り詰めの足に、このラストはけっこうキツイ。
 黄色い花畑の中を黙々と行き、最後、正面の凹角を左にトラバースすれば登山道に合流。
 頂上まで5分もかからない地点に出た。

  

 本日も甲斐駒の頂上は多くの人で賑わっている。
 ただし、メット姿で現れても北鎌のようなギャラリーの歓待は無し。
 「お疲れさんでした~。」山Pとグー・タッチを交わす。
 ひと月前のシレイ沢の時と同じく、本日も八ツ、鳳凰三山、北岳、仙丈とクッキリとしたパノラマが広がる。

  山P、初めての甲斐駒!

  Yes,We Can!

 

 

 富士山もバッチリ見えているので、本日、引率で(?)登っているはずのM田氏にケータイでメールを送ってみる。
すぐに返事が来て、向こうもちょうど剣ケ峰に立ったところのようだ。

 写真を撮ったりして小一時間もゆっくり休み、ようやく重い腰を上げる。

  

 下りの黒戸尾根はやはり長い。

 三週間前、篠沢から黒戸尾根に上がった際、同行のタケちゃんと「ここには山ガールはいない。」と確認したはずだったが、今回下山時に山スカ女子を2名ほど発見!
 やはり山ガールの勢力は徐々に拡大しつつあるようだ。
 後はトレランの人が多い。
 秋のハセツネに向けてなのか・・・お疲れさんです。

 

 途中二回の休憩をとり、4時間半かかって下山。
 二人とも沢靴のまま下山なので、さすがに最後は爪先が痛んだ。

 下山後は「おじろの湯」ではなく、またまた「藪の湯」へ。今回は元湯・鈴木旅館へ行ってみるが、大浴場が使えなかったのでやや不満。700円也。
 やはり「みはらし」が穴場でオススメ。
 帰りの高速はやはり今日も30km渋滞で、途中、田舎風カツ丼を食いながら、河口湖経由、東名道と繋いで帰る。
 は~、疲れた!


p.s.黄蓮谷は昨年からの宿題、いつか行かなければならないノルマだったので、まずはホッ・・。
 今回は天気も良く、行程もいたって順調。ルーファイに弱い私がここまでうまく行けたのは、やはり直前の「すぎ家」さんのレポのおかげです。
 残置は悪い所には結構あり、自分たちでハーケンを打つことはなかった。また、巻きを失敗しなければ懸垂も無し。
 ネットでも情報が溢れている人気の沢なので、他の上級レベルの沢に較べるとソツなくこなせると思う。


南ア・黄蓮谷 #1

2010年08月28日 | 沢登り

天候:一時
行程:竹宇駐車場6:40-矢立石登山口7:20-錦滝7:55-入渓点8:50-二俣11:10-千丈滝11:50-坊主滝12:45-二俣13:20-奥千丈滝上部BP15:20
同行:山P氏(わが社)

 日本全国猛暑が続く八月最終週。
 今回は昨年単独敗退した(二俣を見落とし、尾白川本谷に入ってしまった・・)黄蓮谷へのリベンジ。
 パートナーは、部署は違うが同じ職場の山P氏。これまで湯河幕や伊豆城山へ一緒に行っているが、黄蓮谷もかねてから行ってみたかったとのことでご同伴となった。

 土曜日未明に山Pをピックアップし、中央道経由、黒戸尾根の登山口まで。
 途中、笹子トンネル辺りで雲行きが怪しくなりちょっとアセったが、現地に着くとこれ以上無いくらいのドピーカン!
 雲一つ無い空の下、甲斐駒の頂上から回りの山までこんなにハッキリ見渡せたのは初めてだ。

 広い駐車場は既に八割方埋め尽くされている。
 ほとんどが黒戸尾根から登る人だろうが、メット姿の四人組も発見。
 我々もそそくさと準備をし、出発する。

  黒戸尾根登山口駐車場

 今回は資料として、顔馴染みの12クライマー夫妻「すぎ家」さんがタイミングよく一週間前に遡行していたので、その新鮮な現地レポをコピーして持参したが、これがたいへん役になった。
 この場をお借りし、厚く御礼申し上げます。

 で、それによると、これまで黄蓮谷へのアプローチとして竹宇の駐車場に車を置いた場合、寂れた尾白渓谷遊歩道を行くしかないと思っていたが、神社手前の売店から日向山方面へ向かう登山道があり、こちらから尾白川林道経由で行くと30分以上は短縮できるようなのだ。

  神社手前売店前の道標

 日向山方面への急な山道は朝一の身体には少々きついが頑張ってこなし(山Pは早くもここの登りで最後まで付いて行けるか不安を感じたそうだ)、尾白川林道へ。
 
  錦滝。水量少なく迫力はイマイチ。

 途中で先行する男女四人組を抜かし、途中の錦滝で挨拶を交わす。
 彼らは東京のR登高会とのこと。
 言わずと知れた、あの「田○井さん」のいた会。
 で、その大御所・田○井さんは今や山ガールの間では神格化され、マイケルに倣って「TJ」と呼ばれているとか・・・。
 私の中学の友人Yもかつてこの会でリーダーを務めたはずだが、聞いてみると知らないとのこと。まぁ、もう50オヤジだからね。とっくに引退したのでしょう。

  尾白川林道を行く。

 さらに進み、「廃道マニア」なら泣いて喜びそうなトンネルを三つ潜って、行き止まりから左手にフィックス・ロープを伝って沢床へ。
 太陽の光と白い砂、そしてどこまでも碧の澄んだ流れ。
 いやぁ、一年ぶりにまた来てしまいました!山Pも憧れの沢だっただけに感慨深げ・・・。
 軽量化のため今回は二人とも沢靴で下山まで通すことにした。メット、ハーネス、少々のガチャ類をサッと身に着け、さっそく遡行開始。

  滑り台滝

 まず最初の大きな釜のある滝を越し、少し行くと写真で良く見る「滑り台のある釜滝」。
 左からトラロープで簡単に巻くこともできるが、ここは準備体操ということで滝の左手・滑り台のスラブをロープを出して山Pにリードしてもらう。
 山P氏、何の戸惑いもなく、スルスルとリード。
 私は昨年、ロープ無しで登っているが、抜け口近くのスラブが滑りそうでチョイ怖いのは相変わらず。まぁ何とか後に続きましたが・・・。

 

  リードする山P。お見事! 

  ワイヤー滝

 ワイヤー滝を越して、次の釜滝。
 ここは右手からバンドを伝って取り付き、水流に近づいたところでマントルでエイヤッと登るらしい。
 昨年はそそくさと巻いてしまったので、一応突破を試みる。

  バンドを伝って水流手前をマントルで越えるのだが、なかなか・・・。

 なるほど指がどうにか掛かるカチと浅い凹みは見つかったが、足を掛けようとする壁に黒茶色のヌルヌルがビッシリ。
 今回、私はアクア・ステルスの「奥利根アクア」を履いてきているが、コイツはこの手の「ヌル」に滅法弱い。
 まだ先は長いし、ザックを背負ったままこの底知れぬ深い釜にドボン!はちょっと恐い!結局、今回も敢え無く巻き。

 

 続いてまたまた深い釜を持つ滝。
 もう見るからに直登不可能。左のブッシュから巻く。

  こちらは取り付くシマ無し

 ここで後続の単独行の人に追いつかれる。何となく、あの森田勝氏を思わせる風貌、いかにも山馴れした雰囲気で、忍者のように我々を追い抜いていった。(もしかして日帰り?)

  
 ナメをジャブジャブと・・・             右上に「獅子岩」

 やがて右手に「花岩」と呼ばれる花崗岩の白い岩壁。
 しばらく癒し系の平凡な流れとなり、さらに右手に特徴のある「獅子岩」が現れる。
 この先が前回間違えた本谷との二俣。
 今回は間違えようもなく、小休止した後、左手の黄蓮谷へ向かう。
 後続の四人組は本谷へ入って行った。

  水浴びする山P

  いい湯加減?です。

  尾白川本谷との二俣

 黄蓮谷最初の滝はやはり直登不能。
 左手に古いフィックス・ロープが見えるが、ここは最近のセオリーどおり右側の巻き道を使う。

  黄蓮谷最初の滝

 しばらく平凡で貧相な流れが続き、やがて「千丈滝」。
 三段になっている。
 右岸(左)から巻けるようだが、何となく行けそうだったので、ロープも出さずそのまま滝の左際に取り付く。

  千丈の滝

 下段は簡単。
 だが、中段抜け口のスラブであと一歩が出せない。
 山Pが後ろから回り込み、別のラインから突破を試みるが、やはりハマってしまう。
 仕方なく私がクライムダウンし、左手の巻き道に上がり、お助け紐で山Pを回収。
 「やれやれ・・まぁ今日のところはこのぐらいで勘弁(?)してやるか。」と千丈滝を一瞥し、セオリーどおりおとなしく巻く。

  千丈の滝中段。この後、ハマる。

 巻き道はそのまま逆S字を描くように左岸(右手)へ。
 上がったところの樹林帯にガイドブックでよく示されているビバーク・ポイントあり。
 ご丁寧に物干し用のビニール紐まで木の幹にセットされているが、一泊二日の行程ではここに泊まるのは早過ぎる。

  トポにあるテン場。物干し場あり

 続いて「坊主の滝」40m。
 ここはもう見るからに取り付くシマ無し。
 左岸の巻き道から上がる。

  坊主の滝

 ガイドブックには「途中から懸垂で沢床へ降りる」とか書かれているが、左手の水流を見ながら素直に巻いていけばそのまま二俣に懸垂無しでドンピシャで到達できる。

 二俣で大休止。
 山Pは釜に飛び込み、泳いでいる。(←元気だねぇ

  実はくたばっていたりして・・・

  二俣を右へ

 そろそろ奥千丈滝(200m)となるが、明日の行程を考えるとその途中の「逆くの字滝」まで足を延ばしておきたい。

 右俣に入り、最初の滝を左から回り込むようにして一段上がり、次の滝。
 右手の岩に残置スリングが2本、古いリング・ボルトも見受けられたのでロープを出して私がリード。
 右側のコーナーにある岩を抱えて一段上がり、そこから左の濡れた壁に移るところがポイント。
 巻くこともできるようだが、ランナーもとれ、それほど難しいわけではないので、ここは直登した方が正解(だと思う)。

 現在地がよくわからないまま、イケイケ・モードで奥千丈滝に突入。

  

 

 

 ところどころヌメっていて残置ハーケンもそこかしこに見受けられるが、概ね快適。ロープ不要で水流右をグイグイ登る。 
 ただ、残念なことに午後になると太陽が隠れてしまい、テン場を探すことに気持ちがいってしまって奥千丈滝を気持ち良く楽しむ余裕はなかった。

  まだまだ続きます!

  

 

 とりあえず手元の高度計で約2,150m地点の左岸に三畳ほどの平たい大岩と砂地のテン場を発見。
 本日の行動を終了とする。
 大岩の脇には「ここにタープを張ってください」と言わんばかりの枯木の支柱が数本立っていて、なかなかのコンディション。

  本日のテン場。岩のWベッド付き

 沢の中でも黄蓮谷はここまで来ると、ケータイのアンテナは三本立つ。
 最新情報を提供してくれた「すぎ家」さんに「奥千丈滝なうw」と感謝の写メを送ったら、すぐ返信してくれた。 (アホなおやじでスミマセン・・)

 その夜の焚火はなぜか火付きが悪く大苦戦。
 でも、何とか最後は豪勢なものになってホッ!
 持ち寄った酒類で疲れを癒し、黄蓮谷の静かな夜を迎える。
 山Pが作った即席おつまみ「サビ入り・チーズ磯辺巻き」が美味!

  

  焚火を見て何想う・・・山P


南ア・大武川篠沢 #2

2010年08月08日 | 沢登り

二日目
天候:のち
 
 朝4時半起床。

 

 タケちゃんは早くも起き出し、セッセと焚火の準備をしている。
 ゆっくりと朝食を済ませ、再び遡行開始。

 本日一本目の滝は逆層のスラブ滝で、朝一から濡れる気になれず、トットと右岸から巻く。

 

 その先には白い砂地の絶好のテン場がいくつかある。しかし、入渓するパーティーが少ないのか焚火の跡などまったく見当たらない。

 大岩の間から水流がほとばしるような小滝をいくつかやり過ごすと、こちらの腕を試すかのように手強そうな10~20m級がまだまだ出てくる。
 二人して「またかよ!」といった感じで顔を見合わせる。まったくなかなか楽させてもらえない沢だ。

 

 

 

 

  

 
 
 で、こちらはジェット水流のトイ状。
 途中、大きな倒木が逆さに引っかかっているのを掻き分けて進み、V字の狭い放水路を行く。

  

 

 それでもさすがに水が減り始め、中央に大岩を控えた二俣を水量の多い方を選んで二つほどやり過ごすと、何やらガスで霞む前方に不穏な雰囲気の中、茶色い巨大ガレが見えてきた。

 

 いよいよ最後の大物「七丈大滝」(三段130m?)である。

  デカい

 たしかにデカいが、ただ最上流部だけあって水量は少なく、迫力・見映えとしては昨日出だしに見た「篠沢大滝」の方がインパクトは上か。
 いずれにしても、この滝も沢登りとしては完全に巻き。
 小休止し、何枚も写真を撮った後、右俣沿いの踏跡を辿って黒戸尾根に上がる。

 ほとんどヤブこぎなしで樹林帯を抜けていくとやがて登山者の声が聞こえてきて、六合目辺りの登山道にポッと出る。
 ここで完登の握手。
 事前の予想を覆し、手応え十分。美しい緑のナメと豪快な滝が連続し、ワイルド感たっぷりの実に中身の濃い沢だった。

   
 小休止した後は勝手知ったる黒戸尾根の下り。
 疲れた身体に鞭打ちながら下山。少々の登り返しにウンザリしつつも、まずまずの時間に横手の駒ケ岳神社に到着。
 (下山時はもっぱらお互いの頻尿やら便潜血の話題で、最終的には「胃カメラと尿道結石だけは避けたい」という結論に至った。)
 いやはやお疲れさんでした~。

 最後は最寄りの「藪の湯鉱泉」に寄ってみるが、奥の方にペンション風建物があって何だかハズレの気配が濃厚。
 思わず躊躇してしまい、定番の「尾白の湯・べるが」に向かうが、こちらは夏休みということでナント満員札止め!
 
 しかたなく、再び「藪の湯」に引き返し、「みはらし」というペンション風にお邪魔すると、ナントこれが正解。

 

 

 風呂自体はそれほど大きくないが、正面に八ヶ岳を望む絶景の展望風呂。ガキんちょがはしゃぐ「尾白の湯」に較べれば全然イイかも。
 鉱泉ではあるが、ハーネスの締め付けでできた私の股ズレのヒリヒリが入浴後キレイに治ってしまったので、効用もそれなりにあると思う。
 料金500円で隠れた穴場としてオススメ!

 
p.s.今回、タケちゃんのチョイスで行ってみた篠沢だが、予想以上に良かった。
 終点が甲斐駒黒戸尾根の中間部のため、黄蓮谷に較べると人気薄なのだろうが、その分、南ア特有の濃い自然が残され、変化に富む沢の内容はまったく遜色ない。
 アプローチなどはむしろこちらの方が楽なので、もっと登られていい沢だと思う。
 ただし、ロープやハーケン、カムなどは必須。巻きは赤テープ皆無で、際どい箇所も多々あり。ちょっとした小滝でもお互いお助け紐を何回出したことか。
 気合を入れてかからないとそれなりにシゴかれ、何より「突破力」が求められる中級以上の沢である。


南ア・大武川篠沢 #1

2010年08月07日 | 沢登り

天候:のち
同行:タケちゃん
参考:「日本登山体系」 
(ただし、あまり参考にならず)

一日目
 さて今回は、南アルプス北部の大武川「篠沢」。
 鳳凰三山のシレイ沢、上州武尊の川場谷に続き、この夏三本目のお泊り沢登り。
 今回は久々にタケシ師匠と行く。

 篠沢は甲斐駒黒戸尾根七合目付近に東南面から突き上げる沢で、特に最上部にある七丈大滝は沢登りよりもアイス・クライミングの対象として有名。
 本やネットでも沢登りの記録はほとんど見当たらず、わずかに「日本登山体系」の解説と逍遙渓稜会の遡行記録があるのみだ。

 朝の5時過ぎに中央高速・双葉SAで落ち合い、車2台で移動。一台を下山口の横手駒ケ岳神社に置き、もう一台で篠沢大滝キャンプ場奥の林道へ向かう。

 ゲート前で沢仕度を整え、林道を歩くこと30分。
 突然、眼前に二段巨大滝・・・ならぬ巨大堰堤が現れる。
 そのまま突破は無理なので、ほんの少し戻って「←篠沢大滝」と書かれた標識を頼りに右手、樹林帯の小尾根に上がっていく。

  
 巨大堰堤に行手を阻まれる            林道を少し戻って「こちらで~す。」

 踏跡に沿って巨大堰堤を高巻き沢床に降りると、そこは白砂の中に澄んだ流れの癒し系。
 さっそく遡行を開始する。

  白い砂浜?

  
   早くもシャワー全開のタケシ師匠                          マイナスイオン100%の滝

  ダイナミックなヒョングリ滝を越えると・・・

 まずは第一のハイライト「篠沢大滝

 
 
 水量豊富で豪快、かつ優美。
 下段が20m弱、上段が40m強といったところか。
 上段はスケール、形ともに西丹沢の「下棚」にどことなく似ている感じ。

 直登はまず無理で、下段から巻きに入る。が、なるべく小さく巻こうと水流左の草付きスラブに取り付いたところ、早くも二人してハマってしまう!

 下から見るといかにも簡単そうなスラブだったがこれが意外としょっぱく、気がつくと二人ともビミョーな位置でセミと化してしまった。
 既にクライムダウンも厳しい高さで 「ファイトぉー!」「いっぱぁーつ!」と叫んだところで何の解決にもなりゃしない。

 (どーする、どーする?考えろ!考えろ!) ←早くも気分は「ダイ・ハード」!?
 外傾した僅かなスタンスの上でジリジリ状態が続くが、そんな中で私が手持ちのハーケンを何とか打ち込み(岩が硬くて半分までしか入らなかった!)、冷や汗モンでA0突破。
 すぐ上のスラブがまた悪く支点が取れないので、そのまま右へトラバース。
 滝の本流を渡るところは、幅50センチほどの平坦なバンドだが水圧凄まじく、思わず真横からハタキ落とされそうになる。
 グッと堪えてそこを突破し、右手のブッシュから回り込んで下段落口に到着。
 大きな倒木を支点にしてようやくタケちゃんにお助けロープを出す。 (ヤレヤレ・・・)

 これに懲りて大滝の上段はセオリー通り左の樹林帯から大きく巻く。
 一応、踏跡らしきものもあるが、いまいちハッキリせず獣道のよう。
 「登山体系」ではこの巻きだけで2時間かかるとなっていて、どれほどのもんか?と思っていたが、そこまではかからずに大滝の落口に到着。

 小休止し、ふと眼下を見下ろすと、遥か下に滝見学の登山者が二人ほど。
 大声で呼びかけたら、向こうも気づき手を振ってくれた。 (もし、写真撮ってくれてたら送ってくださいな。)

  
篠沢大滝の落口から眼下を見下ろす。

 大滝を越えても、すぐにまたまた直登不能な滝がドーンと立ち塞がる。

 
 ここは手前右の緑のチムニーから越える。

 

 

 小さいながらも深い釜。
 タケちゃんは泳ぎ。ザックを担いだ泳ぎの苦手な私は右壁のカチを繋いでヘツリでクリア。

 

 以後、ナメ、釜、チョックストーン滝、ヒョングリ滝などが濃い緑のジャングルの中、延々と続く。
 白い砂地と緑のシダ類がまるで南国亜熱帯のよう。トロピカルな雰囲気が実にイイ。

 

 

  

 

 

  18m滝

  巻道もなかなかワイルド。一部ロープ使用。

 

 ポイントごとにタケちゃんが高度計と地形図で現在位置を確認するが、さすが南アルプスの沢。とにかく長いっ!
 「登山体系」の図はほとんど当てにならず、イイ意味で裏切ってくれる。
 
 で、一日目後半のハイライトは、タケシ師匠の「イッツ・ショータイム!」ならぬ「イッツ・シャワータイム」

  

 一本目は大きな倒木が逆さまに突き刺さった10m級。
 水流激しく傾斜もあり、一瞥したとたん私などは「あぁ、こりゃ巻きだな。」とすぐさま両岸ブッシュ帯の巻道を捜したが、タケちゃんトコトコ滝に近づいて、そのままロープを出す間もなく滝の左端をズブ濡れになって直登してしまった。
 ・・・マジっすか 
 
 こちらはすっかり巻きの気分になっているのに、上から「ザイル出しまーす。」なんて言っている。
 実際、取り付いてみると意外と細かくホールドがあり何とか登れたが、普通の人ならまずこの水量にビビってしまうだろう。
 二人ともこの滝の直登で全身ビショ濡れ。
 齢と共に冷え性の私は、このシャワークライムで一気に低体温症寸前に追い込まれる。

  

 

 さらにしばらく進んで二本目。やはり10m級で、今度はナメ滝。
 こちらも水量多く、特に下段がツルツルの壁で厄介だ。

 今度は最初からロープを出し、右下の方からやはりタケちゃんが取り付く。
 さすがにここのツルツル壁は厳しく、これは諦めるかと思ったら、まず右側に一本ハーケンを打ち、それに長いスリングを掛けて足場とした。
 さらに左側にもカムを決め、ここにも短いスリングを掛け足を入れる。

 両足、簡易アブミに乗り込んだ形で強引にツルツル壁を乗越すと、さらに上部にハーケンを一本打ち足しランナーをとって今度は怒涛のシャワー・トラバース。
 その上は滝の弱点を突いて、そのまま落口へ抜けてしまった。
 「歳と共に気が弱くなってる。」なんておっしゃいますが、相変わらずアグレッシブ

 

 で、こちらも仕方なくフォロー。
 一本目のハーケンは一段上がってしまうと回収が難しいので、已む無く最初に抜いてしまう。
 これでカムの方のアブミ一個で乗り越さなければならなくなり、この後が一苦労。
 テンションかけて仕切り直した後、上からの確保を頼りに最後は気合で爪先を強く壁に押し当て、落ちる前のコンマ何秒かの間にサッと次の足を出す「瞬間接着スメア?」で強引に上がる。
 ホッと一息つく間もなく、左へ水流トラバース。滝に洗われたガバカチを頼りにエイヤッ!と越え、何とかクリア。

 
 
 後で確認したら「逍遥」パーティーもこの二つの滝は空身やらショルダーを駆使して突破したようだが、なかなかシビれました。

 で、本日はもうお腹いっぱい。
 時間も押してきたので、そろそろテン場を探しながらもう少し先まで進む。

 ちょい気合が入りそうな10m級スラブ滝を前にし、もう今日はここらでいいだろう(実はカンベンしてください?)ということで左岸の草地をビバーク地とする。

 タケちゃんが手馴れた動作でタープを張り、例のごとくビッグ・ファイヤーを熾してくれて濡れたパンツなどをセッセと乾かす。(毎度お手間かけます。

 

 平坦な草地ですこぶる快適だったが、軽量化のため薄手ダウン・ジャケットとシュラ・カバーだけの私は八月とはいえ、さすがに夜半は少々寒かった。


川場谷から武尊山 (単独) #2

2010年08月01日 | 沢登り

二日目
天候:のち
行程:ビバーク・ポイント6:10-中ノ岳分岐8:50-武尊山9:30~50-手白沢避難小屋11:10-久保バス停13:54

 朝4時半過ぎに起床。
 夜は月と星が出ていた。

 カップ麺とカフェオレという妙な組み合わせの朝食を済ませ、昨日の続きで左俣を進む。
 少し行くと左岸に、私が泊まった所よりもさらに広い良いテン場が見つかる。
 
 そこを過ぎると、ようやく水涸れ。
 ふと足元を見ると明らかに鋸で切った焚き木?の束がまとめてある。
 やはり、こちらで間違いないようだ。

 

 そこから草に覆われた涸沢を少し進むと怒涛のヤブ漕ぎ。
 ここを行くしかないのだろうなと思うが、踏跡がまるで無い。
 左に支尾根が見え、なんとなくそこに登山道があるようにも思えるが、無いようにも思える。

 回りは2~3mを越す熊笹と潅木のブッシュで、赤テープも踏跡もない。
 コンパス頼りに北へ進めば良いはずだが、手元の高度計ではまだ1,800mに満たず、たぶん1時間は笹藪と格闘しなければならない。
 うーん、このまま進むべきか。大いに悩む。

 ふと見ると、ブッシュの切れ間から右遥か上方に稜線が見え、丸いなだらかなピークの直下まで沢筋が延び上がっているのが確認できた。
 このまま当てにならないブッシュに突っ込むより、あちらの方が正解かも。
 しばし考え、再び昨日の二俣まで戻る。(我ながらホント優柔不断)

 で、またまた昨日のトイ状二段滝を際どい藪漕ぎトラバースで越え、右俣へ進む。
 こちらは思った以上に水流が続く。

 

 どこまでも途切れることが無い水を追って遡っていくと、4~5m級の黒い小滝が間隔を開けて立ち塞がる。
 黒滝は全部で5つほどあり、どれもホールドはあるがこれまでの小滝より立っている感じ。

  
 黒滝No.1                        黒滝No.2

 特に2番目の滝は(ハイライトの8m滝をⅢ級とするなら)Ⅳ-ぐらいあり,ここを突破してしまうとロープを持たない自分は退路を絶たれることになる。
 その他の滝も大きな岩が浮いていたり、ちょっとヌメり気味で滑りやすかったりで慎重に登った。
 残置の支点も無く、巻くほどでもないので、いずれも直登するしかないだろう。

  
 黒滝No.3                        黒滝No.4

  黒滝No.5

 
 振り返れば剣ケ峰山

 やがて水涸れ。
 目立たない小枝にボロボロの白テープを発見。とりあえず、こちらの沢もルートとしては正解なのだろう。

 

 左トラバース気味にヤブ漕ぎすると、頭上に脆そうな岩肌を見せる小ピークの真下に出て、ふいに一人の登山者が姿を現わす。
 毎度のことながら「ここはドコですか?」状態。

 聞くと、「あれは中ノ岳」との答え。どうやらガイドブックのトポのルートをはずし、ずいぶん右寄りに詰め上がってしまったようだ。

 

 すぐに登山道に合流し、とりあえず中ノ岳分岐で小休止し、自分の採ったルートを分析した。
 最初、「家ノ串上ノ沢」という枝沢を詰めてしまったかと思ったが、どうやらそうではなく、トポで「水流ほとんどなし」と書かれた沢のようだ。
 しかし、結果から言うとこちらの方が水流はどこまでも続き、ヤブ漕ぎも結局5分余りで済んでしまったのでルートとしては正解なのかもしれない。
 (帰宅して確認してみたら、偶然にもJuqcho氏と同じルートを採っていたようだ。)

 

 中ノ岳分岐からは溜池のような「三つ池」をつないで武尊山の山頂へ。
 山頂は犬連れの人を含め10人ほどで賑わっていたが、残念ながら雲が広がり展望が利かず。

  

  誤差2m!

 10分ほど待ったが、天気は好転しそうもないので藤原口へ下山開始。

 この先、4箇所ほど鎖場など急な下りが続く。
 さすがに百名山だけあって反対側から中高年が続々と登ってくる。

 

 最短距離の下山路を選んだつもりだが、けっこう長い。
 途中、手白沢避難小屋の辺りで休憩。
 小屋といっても、谷川の国境稜線にあるのと同じ、例のドラム缶を横にしたようなカマボコ型のヤツで、敢えて泊まる気にはなれない。

 

 そこから先はほとんど人と擦れ違うこともなく、熊も不安なので、時折手元の笛わ吹き鳴らしながら進んでいく。
 やがて道は沢沿いのグチャグチャ泥道となる。
 
 途中の分岐が紛らわしいが道標に従い、左斜め下に進路を採るとやがて藤原口登山口に出る。

 

 後は宝台樹スキー場の前を通って車道を小一時間歩くと、何も無い「上の原」のバス停に到着。

 途中、木イチゴの群落を見つけたので、イチゴ狩りもした。

 

 交通機関が不便なところなのでけっこう時間がかかると思ったら、10分ほどで水上行きのバスが来て、さらに10分ほどの待ちで水上発上野行きの特急に接続。

 

 行きも帰りもトントン拍子で、何ともラッキー!

 思いのほか早く帰ることができ、夜には自宅の屋上から地元・横浜の花火を楽しんだ。

 
p.s.川場谷は最後になって二俣に分かれる。
 「上信越の谷105ルート」のトポが示す左俣が標高1,800m弱で水が涸れ、その後1時間は怒涛の藪漕ぎとなる可能性があるのに対し、「水流ほとんどなし」と書かれた右俣は今回1,900mを超えても水流が途絶えることはなく、藪漕ぎも実質5分ほどで済んでしまった。
 というわけで、私としては中ノ岳に突き上げる右俣の方が絶対お薦め。
 滝は多少ヌメっている場合があるので、アクアステルスより、ノーマルなフェルト底の方が良いと思う。
 技術的には初級レベルの沢だが、広いビバーク適地、巻きの場合の踏跡や赤テープなどは期待しない方が良い。


川場谷から武尊山 (単独) #1

2010年07月31日 | 沢登り

一日目
天候:のち
行程:桐ノ木キャンプ場9:30~10:00-獅子の牢11:20-8m滝14:00-二俣先ビバーク・ポイント16:30

 さて、今週は日本百名山、上州・武尊山に突き上げる川場谷へ行く。
 グレードは初級、ガイド・ブック「上信越の谷105ルート」によれば人気度五つ星となっているので、とりあえず押さえておく必要がある。

 今回はマイカーを女房に取られてしまったため、アプローチはJR&バス。
 横浜市内を始発で発ち、高崎まで新幹線、そこから沼田までは上越線各駅停車の旅。さながら気分はテレビ東京の旅番組のよう。

 

 東京駅ではトレッキング風情の若者が目に付き、最近現れ出してきた「山ガール」らしいのもチラホラ。
 で、私が観察した「山ガール」の特徴は・・・、

 ①帽子を被っている。(キャップでなく、ハット)
 ②小型ザックのメッシュ・ポケットには"ナルゲン"などの半透明ボトル。(ペットボトルをそのまま持ったりしない)
 ③もちろん山スカ。
 ④ウェアはアースカラーだが、靴は派手な目立つ色を好む。
 ⑤単独行が意外と多い。
 
と、まぁこんな感じ。今後、その生態について観察を続けていきたい。・・ま、どうでもいいけどね。

 さて、ようやく沼田駅に着くと、鄙びた感じは相変わらず。
 それでも何も無いと言われていた駅前にコンビニが出来ていたのには、若干の驚きと共に時代の流れを感じてしまった。
 ワンゲル盛りでお馴染み「山彦」も、もちろん健在。

  

 40分ほど待ってバスが到着。
 3人ほどの乗客も途中ですぐに降りてしまい、「川場温泉口」のバス停で降りたのは私一人。

 さて、ここからがまず第一の鬼門だ。
 ここから川場谷の入渓点、桐ノ木キャンプ場までは距離にして約6km、1時間20分ほども歩かなければならない。
 林道や登山道ならまだしも炎天下の車道というのが何とも辛い。

 
 
 しかたなくトボトボと歩き始めるが、交通量もグッと減り、胡散臭いオヤジを乗せてくれる奇特なドライバーなどまずいるわけもなく、車は無情にも通り過ぎるばかり。
 と、思ったらものの10分もしないうちに一台の車が近づいてきて「乗っていきますか?」のお言葉。

 乗せてくれたのは地元の若いクライマー氏で、私のザックにぶら下がっていたメットが気になって声をかけてくれたとのこと。
 今、岩場の開拓中らしい。
 何とも気さくなニイちゃんで、「そこに友だちがいるからついでに。」と言って、わざわざ桐ノ木キャンプ場まで送ってくれた。いやぁ助かりました!ありがとう。

 

 キャンプ場の左手にはもう川場谷が流れていて、そそくさと着替えて、さっそく遡行を開始する。
 本日は既に1パーティーが先行中とのこと。

 川場谷は樹林と苔の緑が美しい穏やかな流れ。
 「沢登り」というよりも「沢歩き」といった雰囲気だ。

 

 しばらく行くと第一の滝。
 ヒョングっているので直登不可。左から巻く。

 

 穏やかな流れの中、第二の滝が現れる。
 ここはちょいと釜にザブザブと入って、水際の右壁をうまく抜けていく。

 

 エメラルド・グリーンの釜を胸まで浸かって左からヘツっていくと・・・

 

 まず第一の景勝「平滑」となる。

 

 

 緩やかな岩畳の上をサラサラ、ザブザブと水が流れ、その中をヒタヒタと歩いていく。

 その先が第二の景勝「うなぎの寝床」と呼ばれる所なのだが、ここはどうやら気が付かずに通り過ぎてしまったようだ。
 その名称から湯檜曽本谷にあるようなトロリとした流れの廊下を想像してしまったが、こちらの「寝床」は水勢が激しく、水流通しの突破は困難なようだ。

 やがて右岸の台地に電力会社の施設小屋のようなものを見送り、しばらく行くと第三の景勝「獅子の牢」。

 

 洞窟のようなゴルジュで、たしかに岩陰に獅子でも隠れていそうな雰囲気。ただ、水深はそれほどなく、怖れることもない。
 出口に5mほどの滝が控えているが、右側をトラバースして越えていける。

 

 この先も小ゴルジュが続くが、両岸がそれほど高くないので、威圧感はあまり無い。
 2~5m級のチョックストーン滝がいくつも続くが、どれも問題無し。

 

 

 途中、Ⅲ~Ⅳ級程度のちょっと際どい苔壁トラバースを試みる。しかし、これは余興で安全なルートはいくらでもある。

 それでも、二年前の夏、この谷で遺体が見つかったらしい。
 と、言っても沢登り(あるいは渓流釣り)での事故ではなく、三月に稜線で遭難した人がその後、雪崩れでこの谷まで流されてきたとのこと。
 それを夏になってから沢登りのパーティーが発見し・・・ここでは敢えて書かないが、かなり痛ましい姿だったとか。
 単独で沢を歩いていて、そんな状況に出くわしたらと思うと、故人には申し訳ないがゾッとする。

 山では絶対死にたくない。

 

  右岸に特徴のある岩峰

 スラブ滝。
 左側から簡単に抜けられるが、敢えて滑り台のようなスラブにチャレンジ。
 フリクション勝負で瞬間的にⅣ-の体感だが、なかなか楽しめる。
 落ちても大したケガもしない高さで、パーティーで行くなら笑いのタネになりそうな所。
 登り切った所に古い残置(ハーケン&スリング)があるが、ここはノーロープで楽しみたい。

  

 さらにナメと小滝が続く。
 とにかく飽きるほどにナメ、ナメ、ナメである。(まったくワシをナメとんのか!
 
 惜しいのはそのナメが標高が低いために樹林に囲まれ、単調に感じられてしまうことである。
 これでもしナルミズ沢のように周りが草原状で、特徴のあるピークの望めるロケーションなら好感度はピカ一。赤木沢に並ぶ癒し系の沢となったかもしれない。

 

 気がつくと乾いた岩に先行パーティーの足跡がクッキリと濡れて残っているのがわかる。
 で、ふと沢筋を曲がると男女4人組と出会う。 (「男女7人夏物語」ではなく、「男女4人沢物語」か?)
 小休止していたので、二言三言挨拶をし、そのまま先に行かせてもらった。

 で、いよいよハイライトの8m滝。
 せいぜい8mだが、これまでナメと小滝の繰り返しだったので、さすがに堂々とした風情。

 

 ルートは水流の左手、凹角気味になっていて、そのまま落口まで階段状に繋がっている。
 先ほどの4人がすぐ追ってきたので、そのまま先に取り付く。
 全体的に濡れていて思っていたよりもヌメるが、滑って落ちるわけにはいかないので、慎重にクリア。
 まぁⅢ級ぐらいか。

 

 すぐに向こうのリーダー氏も追ってくる。
 彼らのうち女性一人はまだビギナーのため、一応ロープを張るようだ。
 そのまま先に行かせてもらう。

 次の4mスダレ状滝はド真ん中直登を狙うが、半分上がったところでよく見ると落口が水流で洗われた苔のスラブでちょっと厳しそう。
 はたして滑りやすいのか、フリクションが効くのか、さっぱりわからない。
 タケシ師匠ならファイト一発、気合で突破しただろうが、ビビリの私は迷ったあげく自重して左から巻く。
 しかし、この巻きも急な草付で結構悪い。

 

 さらに登れない小滝があり、左から小さく巻くが、人気があるという割には踏跡がはっきりしない。
 それだけ熊笹の生育が早いのだろう。

 突然、前方に入道のような黒い滝が出合う。
 これが剣ケ峰沢15mスダレ状の滝だろう。のっぺりしたスラブ滝であえて登るとしたら右側ブッシュとのコンタクト・ラインか。

 

 右の本流に進むと、この先、似たような「入道」スダレ滝がいくつか続く。

 

 
 
 そろそろトポにあるビバーク地点で、それらしいスペースが左岸にあったが、あまり広くはない。
 川場谷は無駄なゴーロや河原が無い分、大人数でのビバーク適地は少ないようだ。

 この辺りだったか。なぜか温泉のような匂いがしてきて、見ると一部沢筋の岩が白く変色している。
 水温こそ冷たいが、明らかに硫黄の成分が含まれている感じ。
 この辺に天然の露天風呂があったら最高だろう。
 
 相変わらずナメと小滝が続き、いくつか枝沢が入り込んでくるが、できるだけ水流の多い方を選んで先に進む。

 で、二俣。
 水量はほぼ1:1だが、右俣の方が若干多いか?
 なので右俣を選び、一段上がって奥を覗くと、2~3段の急なトイ状滝が控えている。
 ホールド乏しく、左のブッシュ帯を強引にトラバースして小さく巻く。ここも踏跡はハッキリしない。

 それからしばらく進むが、先ほどの笹薮トラバースが意外と悪かったし、トポにもそんな記述は無い。
 もしかしてこれは枝沢では?と思い返し、結局また悪いトラバースをこなし二俣へ戻り、左俣へ進んでみることにした。

 夕暮れも近づいてきたし、そろそろ泊まりの場所を探さなければ。
 少し遡った左岸にかろうじて二人分のスペースを見つけ、ここを今日のテン場とする。
 テン場というより、まさにビバーク地といった感じで、斜めだし、流れも近く焚火もできない。

 

 一人用シェルター「ライズ1」を張って、のんびり夕食。
 持って来た缶ビールは明日の山頂までとっておこうか迷うが、ぬるくなっても不味いし、軽量化のため沢の水で冷やし直して飲んでしまう。
 不安定な斜面であったが、下はフカフカの熊笹クッションだったため、思ったより快適に眠れた。


一人夏山合宿2010

2010年07月17日 | 沢登り

 故障していた左足のリハビリを兼ねてこの三連休、南アへ行ってきました。(←南アフリカではない

 テーマは「沢と尾根と岩稜と・・・」

 7/17 シレイ沢-鳳凰三山-白鳳峠
 7/18 早川尾根-甲斐駒-中ノ川乗越
 7/19 鋸岳-戸台

 久々に疲れました。レポは後ほど。

 


沢ラン 【丹沢】

2010年04月25日 | 沢登り

天候:  単独
行程:大倉9:00-セドの沢左俣10:00-表尾根12:30-書策新道-源次郎沢13:30-花立15:30~45-塔ノ岳16:00~15-大倉17:20
参考:「丹沢の谷110ルート」山と渓谷社

 仕事の疲れで本当は一日ウダウダと寝ていたかったのだが、あまりに良い天気でもったいなく、無理して(?)出かける。
 本日はGW直前体力トレとして、トレイルラン+沢登り=沢ラン

 
 
 足回りは卸したての「Nikeエアズーム・ストラクチャーTriax」。(アウトレットの旧モデル)
 マムートのザックの中には行動食の他、簡易ハーネス、ヌンチャク及びスリングを2セットずつ。(ロープ無しでも、残置ハーケンの多い表丹沢の沢ではこれだけでもかなり安心できる。)

 まずは大倉をスタート。
 ハイキング姿に混じって、ファッション重視(?)のトレイル・ランナーの姿もチラホラ見える。
 「風の吊り橋」を渡って、戸沢までの林道をマイペースで行く。
 けっして速くは走れないが、このところ家の近所をちょこちょこクロカン走していたので、思ったほど息が切れず、戸沢出合まで八割方歩かずにジョギング・ペースで行けた。
 一時期は荒れた路面だった戸沢林道も、多少整備されたようで未舗装ながら随分良くなっていた。
 水無川本谷F1手前の堰堤は、左端に古い残置ロープがあるが、さらに左側に新たな鎖が設置されていた。

  「風の吊り橋」

  戸沢出合

 本谷F1手前で沢仕度。他にもこれから沢へ入ろうとする人たちが何組かいる。
 これまで水流左際を直登していた本谷F1は、このところの雨続きのため、通常より水量が多め。
 もろシャワークライムとなるので、今日は鎖のある左側のランペから簡単に上がる。

  水流多い本谷F1

 すぐに二俣となり、まずは午前の部「セドノ沢」へ。
 F1~F4までは特に問題なし。でも、けっこう水が冷たく、シャワーを浴びない程度に水流通しに行く。

  F3・・かな?

核心とされるF5(13m)で、先行の二人組に追いつく。
 しばしリードが取り付くのを見物するが、出だしから慎重で、ちょっと上がったところで動きが止まってしまう。
 結構悪いようで、こちらも一人であまり無理はしたくないため、さっさと見切りをつけ左手から高巻く。(しかし、大きく高巻き過ぎたようで、こちらも悪かった。)
 沢筋に戻ると、先ほどの二人組はまだセカンドが上がってこなくて、どうやら予想以上に悪戦苦闘しているようだ。

  先行の二人組

 少し行くと、スッキリとした直瀑のF7。
 トポでは8mとなっているが、車を縦に2台繋げたぐらいの高さは十分にあり、10m以上はあるだろう。
 結構立っていて一瞬ひるむが、右壁がほぼ垂直ながらもしっかりしたガバの連続なので、思い切って取り付く。
 インドア・ジムの一番簡単なレベルだが、確保無しの濡れた壁、当然ながら下にもマット無しで絶対落ちられないとなると緊張してちょっとリキんでしまう。
 これまで沢ではタケちゃんといくつも「リポD」登攀をしてきたつもりだったが、ちょっとブランクが入るとけっこうビビリが入る。やっぱ沢は場数と継続がモノを言う。

  
 F7は右の垂壁から                 「白竜の滝」

 その先で書策新道が沢を横切り、左手には「白竜の滝」。
 近くにはパイプが組んであり、水が汲めるようになっていた。
 小休止した後、最後の詰め。
 下流の方でやけに水が冷たいと思ったら、上部にまだ残雪があった。

  どおりで水が冷たいと思った・・・

 半ば涸れた小滝をいくつか越えて表尾根へ到着。
 賑わう登山道を沢靴、ヘルメット姿で小走りに抜け、ヤビツ峠方面へ少し下った所から書策新道を一気に下り、再び水無本谷出合へ。

  表尾根

 行動食のドーナツを食べてから、午後の部「源次郎沢」。
 F1、F2を簡単に越す。F3は右手から越すが、ほんの一歩滑りそうな所があったが、そんな箇所にはまるで痒い所に手が届くようにお助けスリングが掛かっていた。

  F2

 F4(8m)は水流左の乾いたカンテから。
 出だしは何てことないが、上部でトラバース気味に落口へ抜ける辺りは濡れていて高さもあるので、やや緊張。
 まだ新しいペッツルのハンガーボルトが2本打たれていて、ヌンチャクでセルフビレーを取りながら慎重に越える。

  
 F4は左の乾いたカンテから。              落口手前のトラバース箇所

 その先で二俣となり、本流の右俣へ。

 次が源次郎沢の核心となるF5(10m)。
 水流沿いにも残置ハーケンが確認できたが、冷たい水浴びはしたくないので、左壁から。
 ここもけっこう立っていて、トポのとおり中間と落口辺りがちょいホールドが甘くなる。
 ただ、残置ハーケンがベタ打ちでA0までいかなくてもスリングとヌンチャクでセルフを取りながら何とか行ける。

  F5。これも左壁から越す。

 この先で水が涸れ、岩の残骸のような所にもFナンバーのついた看板が掲げられ、何だ侘しくなる。
 F8辺りは小ぶりなゴルジュでトイ状の涸滝が連続し、ちょっとしたボルダリング気分が味わえる。

  上部の涸滝群

 源次郎沢でも上部には残雪が残っていた。
 このところすっかりヤワになりつつある太ももは最後の詰めでピクピク痙攣し始めるが、だましだまし行く。
 そんな時に予期せぬサプライズ(←心臓が悪い方はご注意!)
 実はセドノ沢でも二つほど見かけたが、この時期けっこう多く見かけます。

 上部ではトポには無い枝沢がいくつかあるが、本流らしき所を忠実に詰めていくとやがて岩がボコボコした源次郎尾根に突き当たる。

  源次郎尾根

 そのまま左に尾根伝いにひと登りすると、花立と呼ばれる地点のすぐ下に出た。

  時間も押していたが、せっかくなので最後の〆として塔ノ岳まで足を延ばす。
 沢靴から再びトレラン・シューズに履き替え、軽くダッシュで15分ほどで到着。
 
  

 夕暮れも迫り、人気の山頂もこの時間になると人影もまばら。鹿が三頭、寂しげに辺りの草を食べていた。

 

 塔ノ岳山頂からは大倉尾根を小走りに駆け下る。
 これまでハネツネにしても富士登山競走にしてもロード用のランニング・シューズを使ってきたが、今回改めてトレラン・シューズの威力を実感。
 地面へのグリップが全然違って、安心感がある。
 登りでも下りでも普通のランニング・シューズではけっこう滑って余計な神経を使ったり、パワーをロスしたりするが、やはりトレイル・ラン専用のものはそれだけの意味があるようだ。

 山頂から大倉バス停まで1時間を切るつもりだったが、沢2本の後ではなかなかスピードが上がらず。
 まぁ、それでも一日、良いトレーニングになった。
 明日も仕事だ、ガンバロウ!