KU Outdoor Life

アウトドアおやじの日常冒険生活

南ア・黄蓮谷(敗退) ニ日目

2009年08月28日 | 沢登り

天候:
 さて二日目。ゆっくり起きると本日は昨日にも増して上天気。
 天候はゆっくり下り坂のはずだったが、これは不幸中の幸いだった。

 とりあえずギアとカメラだけ持ち、テントを残して上部の調査を開始。
 大岩の積み重なる渓相はかなり悪く、ヘタに無理して登ると退路を絶たれる感じ。
 巻こうとするが、この辺り左側は圧倒的なスラブ帯でボルト100本ぐらいないと取り付くシマ無し。
 右手はガレた斜面で、手頃な所から取り付いたが、かなりボロボロであまり心臓に良くない。
 やはり、ここは覚悟を決めて大岩の迷路を突破していくのがセオリーなのだろうが、今回はもうその気は無い。

 
 スケールがわかりにくいが、左上の岩だけで豪邸1戸分ぐらいの大きさである。
 
 ・・・降りるしかないか。

 テン場まで戻り、撤収。
 慎重に下降を開始する。

 

 登ってきた時はそれほどでもなかった滝も下降となると多少は気を使う。
 昨日の記憶を呼び戻しながら、「この滝はどうだったっけ?」と探りを入れながら一つ一つクリアしていく。

  下降途中で振り返る。左手上方が三角岩か?

 残置の下降点があった所はやはり懸垂かと思ったが、うまく巻きながら下降できた。
 傾斜はそれほどではないが、ナメ滝の下は水深どれほどあるかわからない渦巻いた大釜が控えていて、一歩足を滑らせたら一気にウォーター・スライダー。
 身体を打って死ぬことはないが、泳ぎが得意でない自分は水の冷たさと渦に巻かれてショック死というのは十分有り得ると思った。
 
 
 高さ20m、水深も推定10m以上。ブルース・ウィリスだって、ここからは落ちたくないだろう。たぶん・・。

 天気がいいので悲壮感はないが、それでもちょっとしたサバイバル気分で下降を続ける。
 次回のリベンジに向けて周りの様子も確認しながら進んだが、昨日見た「獅子岩」の少し上流で二俣を発見。
 すぐに直登不能の20m滝となり、右側に巻き道らしきものが確認できたので、おそらくこちらが黄蓮谷で間違いないだろう。
 今年はもう来れそうもないので、来年同じ頃にまた再び!
 
  こちらがおそらく正解でしょう。

 その後も「えっ、ここどうやって下るの?」というナメ滝に直面するが、そのたびに両岸のトラ・ロープに助けられた。
 もう「トラ・ロープ目障り!」なんて言いません。ありがとさんです。

 獅子岩、花岩を過ぎ、いくつかのナメ滝を右に左に巻き、あるいは直にクライムダウン。
 そしてワイヤー滝、スベリ台滝とこなし・・・ついにゴール!
 結局、自分のロープを一回も出すことなく、小ケルンのあるスタート地点に無事還ってこれた。
 ・・・ホッ。

 後はフィックスを辿って林道、そして渓谷遊歩道とまぁ安全地帯を行くだけ。
 これだけの天気の良い二日間を棒に振ってしまい、結果を残せなかったのが残念だ。
 まぁ自分の準備不足が悪いのだから反省するしかないのだけれど。
 
 振り返ると、昼下がりの逆光に照らされた甲斐駒が「おととい来なさい。」と語りかけてくるようだった。

 


 ・・・というわけで、久々の?単独黒星となったわけだが、今回履いたキャラバン「柳又アクア」のインプレッションを紹介しておこう。
 ネットでも多くの人が書いているようだが、私も「ん?このソール意外とイイかも。」というのが率直な感想。
 私も最初、それらのコメントを見て「高い金出して買っちゃったんで、負け惜しみで言っているのでは?」と意地の悪い勘繰りを入れてみたが、実際使ってみるとそんなことはけっして無い。
 
 まぁ、今回は南アルプスの明るい花崗岩の沢というのが、たまたま適していたのかもしれないが、「茶色いヌル」以外はフェルトと較べて遜色無く、むしろ磨耗に対する耐久性や細かい岩角に対してエッジも多少は使えること、また草付きなどへの対応はアクアステルスの勝ち!と言ってもいいだろう。
 (その「茶色いヌル」にしてもソールをフラットに強く押すように当てればそこそこ止まるし、逆にフェルトだって滑る時は滑る。)
 奥秩父や丹沢の日陰の暗いヌルヌル沢に履いていくのは今後テストが必要だが、西ゼンのような明るいスラブ系にはピッタリ。
 悪の組織ショッカーの戦闘員ならずとも「イィー!」と声を出してお奨めできる代物である。


南ア・黄蓮谷(敗退) 一日目

2009年08月27日 | 沢登り

 夏の家族旅行が終わり、懸案の仕事も一つ波を越したので、ようやく自分の夏休み。
 かねてからのお題である甲斐駒の黄蓮谷へ。

 そもそもタケちゃんと知り合ったのも、この黄蓮谷が縁。
 当時Yahooで「黄蓮谷 単独」と検索したら、ヒットしたのは東京の森田さんの記録とタケちゃんの敗退記録だけだった。
 今では単独での遡行記録も何件か見つかるが、彼等へのリスペクトの意を込めて、この沢は北鎌同様、単独で行きたいと思っていた。

 一日目 天候:時々
 横浜の自宅を朝の4時半過ぎに出発。
 7時には登山口の竹宇駒ケ岳神社手前の駐車場に到着。
 平日なのにけっこう車が停まっている。

  
 今回、荷物は約13kg。               吊橋を渡って右手の尾白川渓谷遊歩道へ。

 出発準備をしていると、すぐ後からどこかよそのハイカーおじさん登場。
 そのおじさん、本日は尾白川渓谷の散策が目的らしいが初めてらしく、私が先に出発しようとすると「ちょっと待て!一緒に行こうよ!」と声を掛けてくる。
 は?何でやねんっ
 話し好きのこのおじさんに掴まったら、まず今日一日は確実にツブされるに違いない。
 丁重にお断りし、先を急ぐ。
 神社で安全遡行を祈願し、尾白川渓谷道へ。
 
  おじさんもすぐに追ってこないようなので、旭滝、百合ケ渕、神蛇滝、不動滝と見所をチェックしつつアプローチ。

  
 旭滝                    百合ケ渕

  
 神蛇滝                   不動滝

 2時間弱で尾白川林道へ。

 尾白川林道のゲート先は車が通れるほどのダートかと思ったら、とんでもない。
 もうかなりの部分が自然に還っている有様。
 トンネルを3つほど越えて林道終点となり、そのままフィックス・ロープを辿って急な斜面を下る尾白川の沢床に降りることができた。

  
 自然に還りつつある林道       トンネルは途中3つほど
 
 改めて遡行準備を整え、明るい河原を出発。

  
 林道終点からフィックス・ロープを辿って急下降した所が、ケルンのある河原。 

 少し進むと大きな釜のある明るいナメ滝。

 

 さらに進むとこれまた大きな釜を持つ滝。
 釜の右奥に洞窟を持ち、向かって滝の左側はスベリ台のスラブになっていて、勝手に「スベリ台の滝」と呼ぶ。

  

 さらに左の樹林帯にはトラ・ロープがぶら下がっていて巻き道を示しているが、さっそく今回新調したアクアステルスのお手並み拝見と、敢えて水流左のスベリ台に取り付く。
  
 
 
 足を一歩一歩フラットを置いて慎重に進む。下部は若干ヌルヌルで、上部はそれなりに緊張したが、まぁ何とかクリア。
 フリーソロで体感Ⅳ-といったところか。アクアステルス、まずは合格である。

 大きな釜を持つナメ滝を過ぎるとちょっとした二俣?になっていて、本流の左手へ進む。
 何故か奥の樹林帯から太いワイヤーがぶら下がっている滝。「ワイヤー滝」と命名。

  「ワイヤー滝」を上から見下ろす。

 このワイヤーは元は森林作業用の物だったのだろうか。ちょうど斜めに釜に向かって延びているので、ヌンチャクを架けてぶら下がれば、公園や野外アスレチック施設にあるスライダーのように遊べそうである。
 まぁ、こんなとこで一人遊んでもいられないので、釜を右から巻いて先を急ぐ。

 さらに進むと、またしても深い大きな釜を持つ滝。
 こちらは右側から岩のバンドを伝って最後はマントリングで上がれそうだったが、時間稼ぎのため割愛。右手から高巻く。

 

 さらにこれでもかと釜を持つ滝が連続。
 ここらはとても正面突破は無理そうで、そそくさと巻く。

 
 ここは泳げば、何とかイケるかな。

  ここはさすがに取り付くシマ無し。

 それを越すと、明るく開けたナメ滝。ホッと一息つく。

 右側には特徴のある幾何学模様というか絵画で言えばキュービズムのような岩壁。
 「花岩」というらしい。

  「花岩」
 
 この辺りの流れはいたって平凡。人によっては単調でつまらないと言うが、単独だとそこそこ緊張しながら歩いているので、癒し系は心のオアシス。
 天気もいいし、水も綺麗で、何ならずっとこのまま癒し系でもいいぞと思う。

 

 少し進むと、また右手上方に特異な岩が見え、おそらくこれが「獅子岩」。

  正面右上空に鎮座する「獅子岩」

 ここまでは確認できたのだが、そこから先で痛恨のルートミスをしてしまう。
 
 この「獅子岩」を過ぎたら二俣になっていて、そこが黄蓮谷と尾白川本谷の分岐なのだが、流れの右を歩いていたので、二俣であることをまったく気付かずに通過。
 そのまま、右手の尾白川本谷に入ってしまう。
 今回持参したのはガイドブックの簡単な遡行図ぐらいで、各人のネットの記録は事前にサッと目を通しただけ。
 あまりにも資料に頼りすぎると面白くないし、超人気の沢だから出合もケルンか赤テープでもあってハッキリしているかと思ったが、考えが甘かった。
 もちろん、この時点ではまったく気付かず・・。

  

 引き続きナメ滝となるが、少しずつ傾斜が増してくる。

  
 この滝は水線右側を突破。Ⅲ+ぐらいか。約15mほど。

 
 落ち口に立つと残置のビレーポイントがあった。(後から考えると懸垂用だったのかも?)

 
 この辺りが「千丈滝」かなぁとぼんやり考える。(←違うって!)

 右手には「坊主の滝」と言えなくもない威圧的な黒い涸滝が100mぐらいの落差で落ちているが、どうも向きが違うような・・・。
 
 さらに進んで、また「坊主の滝」と思しき逆層スラブの大滝を左側に発見。

  「坊主の滝」と思い込んだスラブ滝。
 
 腕時計のコンパスで照合すると本流は西向き、こちらのスラブ滝は南向きで一応合点が行く。
 スラブ滝は下部こそそれほど急ではないが、一定間隔を置いて途中が雛壇のように垂直の大きな段差となっており、直登はまずする気が起きない。 
 はっきりしないが、スラブ滝の右手のブッシュ帯にはかすかな踏跡らしきものがあるので、とりあえず行ってみる。

 
 間違えて登ったスラブ滝を途中から見下ろす。三段100m?

 途中、ほとんど自然に還った残置スリングや壊れたアイススクリューの残骸なども確認しつつ、三段100m以上登ってみるが、その先で見たものは高さ50m以上ありそうな巨大フレーク滝。・・・あそこを一人で登るなんてありえねぇ~。

 
 強烈な印象を与える50m巨大フレーク滝。
 
 さすがにここは黄蓮谷では無いと今さらながら気付くが、ではここは一体どこ?
 後から考えると「西坊主沢」辺りか。

 幸い天気が良く、この時期、陽が長いのが助かる。
 2時間以上ロスしたが、何とか慎重に登ってきた道を下り、本流に戻り、さらに遡行を続行。

 そのうち豪邸ほどもある大岩が乱雑に積み重なる渓相となり、ここでやっと「あぁ、これはもしかして尾白川本谷かも。」と気付く。

 
 左手、遥か高い尾根には三角オニギリのような岩山があり、もしかしてあれが「三角岩」というヤツか。

 さすがにそろそろ薄暗くなってきたので、本日はここらで終了。
 ハングした大岩の陰に絶好のビバークサイトを見つけ、急いでテントを張るが、あっという間に頭と顔を中心にウンカの群れにボコボコにされてしまった。

 缶チューハイでホッと一息。
 さて明日はどうするか。本谷の方は現時点ではあまりにも情報持っていないし、心の準備もできていない。
 ここから敗退するにしても沢の下降はできるのか。ロープは30m一本なので、あまり長い懸垂はできないし・・・。
 
 とりあえず明日はここから少しだけ登って現在位置を確認した上で、その先無理そうだったら沢を下降することに決定。
 「中高年単独登山者、沢登りから帰らず」・・なんてことには絶対ならないようにしないと!
 しかたないので飯食ってトットと寝る。


裏丹沢・矢駄(やた)沢

2009年08月23日 | 沢登り

天候:時々 単独
行程:日陰沢橋7:12-矢駄沢橋(出合)-15m二条大滝10:00-稜線11:50-檜洞丸12:20~50
    -日陰沢橋13:42

 この週末も家の都合で遠出ができないためインドアでお茶を濁そうかと思ったが、ジムも場所によっては意外と暑いので、涼を求めて丹沢へ。
 今回行くのは神ノ川流域の矢駄沢。
 ガイドブック「丹沢の谷105ルート」では、「人気度☆☆、滝のグレード2級」と何ともショボイが、ネットで調べるとけっこう記録が出てきてそこそこ楽しめるようだ。
 ロープも不要、天気も安定しているようなので、オスプレーのトレラン用ザックに行動食、トポ、カメラ、ヘッデンにメットという必要最低限の物だけ持って出かける。

 自宅から車で2時間弱。
 神ノ川林道終点の日陰沢橋へ着くと、けっこうな台数が停まっている。が、既に人影無し。
 まだ朝の7前なのに、皆さん早いのね。

 駐車スペースから沢靴を履いて出発。
 ゲートを越えて林道をほんの少し歩いて最初の橋が矢駄沢の出合となる。

  矢駄沢出合

 いきなり堰堤が4つほど続くので、右手の伐採作業道から越す。
 適当な斜面から沢床に下りると、小振りながら綺麗で深い釜が迎えてくれる。
 釜を越えると巨大CS二条の滝。ここは右手の水線突破。

  
 
 早くもゴルジュ状となってくる。
 このところ、そんなに雨は降っていないと思うが、意外に水量は豊富。
 人の多い表丹沢と違って、ワイルド感が強い。

 

 30分ほど進むと、最初の大物F1(12m)。
 滝は鋼鉄のような岩の間を轟々と落ちており、直登は不可。
 登るなら人工になるだろうが、残置のかけらさえ見当たらない。
 左手から小さく巻く。

  F1(12m)

 抜けると、すぐにF2(10m)。
 こちらも見事な滝で、やはり登られている形跡は見えない。
 F1が男性的なのに対し、F2はどことなく女性的な優しさを感じる。
 こちらも左手から簡単に巻ける。

  F2(10m)

  左の巻きの途中から見たところ。

 この先でゴルジュ状となり、F3(二段10m)が現れる。
 水量多く、正面突破はキツそうだったが、何とか水線左際を、取れそうでしっかりしたフレークを頼りに突破。
 途中、X字状の小滝が現れるが、こちらは正面からだと水どっカブリとなるため、無理せず巻く。

  
 F3。水流左際から越える。             X字状の滝

 さらに進むと右から涸沢が入り、奥に大きな堰堤が見える
 本流はやや左にそのまま延び、Y字状の滝(F4?)が立ち塞がるが、こちらがまた水量が多く厳しそう。
 トポで確認するが、どうも実際の地形とトポの記述が違っているようで、しばし悩む。
 念のため右手の堰堤の真下まで近づいてみると、こちらは平成14年造成で「丹沢の谷105ルート」の時にはできていなかったようだ。
 仕方なく、覚悟を決めてY字滝に取り組む。巻き道は見当たらず。

  
 Y字滝(F4)。水流右際から越えるが意外と厳しい。右は落口から見下ろしたところ。

 釜から近づき水線右際の薄被りの壁に取り付く。
 乾いたボルダーなら何てことないが、ホールドも濡れて滑りやすく、ロープによる確保もないので、そこそこ緊張。
 ガイドブックでは滝のグレード2級となっていたが、Ⅳ-はあるように感じ、私としてはここが一番の核心だった。

 その先で、沢は「く」の字で右に折れ、快適なスダレ状ナメ滝が続く。

 

 やがて二俣となり、右手は涸沢の中に堰堤が続く大笄(おおこうげ?)沢となり、本流は左。
 石積堰堤を脇のハシゴ段を使って越え、橋の下を二回潜る。

  

 中間地点でこれらの人工物は何とも興醒めだが、小休止がてら橋の上の林道に上がってみる。
 林道の脇には土砂崩れ防止のため膨大な量のセメントで固めた壁があり、野田知佑氏ならずとも公共事業の無駄遣いには言葉も出ない。
 車の通れない舗装された林道、水がすっかり涸れた沢の中に延々と連なる堰堤。これはもはや文化的価値のない「遺跡」としか言いようがない。
 セメント壁は高さ50m超。壁のあちこちにある排水抗にカムを咬ませれば世界最大級のスラブの人工壁として楽しめるし、林道だってサイクリング・ロードとして整備すれば、かなりの観光資源となるはずである。
 ま、夢物語はこのへんにして後半戦。

 この先しばらく見事な渓相と快適なナメ滝が続き、

 

 やがて15m二条大滝となる。

  15m二条大滝

 「~105ルート」ではF5となっているが、こちらのトポではよく見るとF3が二つあり、本来、二条大滝はF6とすべきだろう。
 登れそうなルートは三通り。
 ①左の水流脇、②正面やや左寄りの階段状、そして③右側水流のシャワークライム。
 酔狂の私はあえて滝を浴びる③番の苦行を選択。
 おかげですっかり身体が冷え切ってしまったが、気持ちよく突破。
 Ⅲ級程度で、先ほどのF4よりは簡単。

 ここを超えると急速に水が涸れる。
 右手の岩から滴り落ちる岩清水で最後の補給をする。
 
 その先、稜線に至るまでのゴーロがけっこう長く、沢の全行程の1/3ぐらいを占める。

  上部の巨岩ゴーロ帯
 
 矢駄沢の人気度☆☆というのは、人工の残置物がやたら目に付くのと最後のゴーロの長さに起因していると思う。
 前半2/3の滝の見事さ、沢の美しさはけっこうイケてるだけに実にもったいない。
 ようやく稜線に出て、静かなブナ林と木の階段を30分ほど歩いて檜洞丸へ。
 晴れた日曜日だというのに、この日は途中の道も含めて三人ほどしか出会わなかった。

  

  

 下りは熊笹ノ峰から神ノ川へ下る。
 一応、地図では登山道とされているが、途中ちょっと不明瞭な箇所もあり夕方遅くやガスの時は注意した方かいいかも。(赤テープは有り)
 とりあえず下界の暑さを逃れて震えが来るほど涼を味わえ、満足でした。

 帰宅後、計ってみたら体重59.4kg、体脂肪率8.7%


西丹沢・下棚沢

2009年05月31日 | 沢登り

天候:/
同行:タケちゃん、ju9cho氏

 2005年夏の西沢本棚の帰りに視察してから、ずっと宿題になっていた下棚沢。
 本日は西丹沢の「山開き」ということで、登山口の自然教室前で厳かに式典が行われていた。
 神主さんの「山の安全祈願」に便乗して、我々もちょこっと手を合わせてから吊橋を渡る。
  西丹沢山開き

 道標に導かれ、沢沿いの道を30分。いきなり眼前に本日のハイライト「下棚」50mが現れる。
 隣の西沢本棚に較べると威圧感は一歩譲るが、その存在感は堂々たるもの。
 で、ルートとなる滝の左壁にはロープがぶら下がっている。もしかして先客あり?
 しかし、誰も登っている様子はない。さらに基部に近づくと黒いポロシャツがビショ濡れのまま「残置」されている。
 何とも不審な気配に「おいおい、まさかその辺に血だらけで誰か倒れていないだろうな・・・。」と恐る恐る釜に近づくが、とりあえず何も無いようでホッ!

 それにしても、前回見た時は夏の真っ盛りで水量少なく、ルートとなる左壁も「白く乾いたスラブ」だったが、今日の「下棚」はほぼ全面が茶色くビショ濡れ。前日までのまとまった雨でひどく御機嫌ナナメのご様子である。
 とりあえずコイツを片付ける前に、三人のうち誰がリードするかという重要な問題を片付けなければならない。
 ju9cho氏は「今シーズン、初めての沢なので・・。」という大義名分?を盾に早々と脱リード宣言。
 タケちゃんと私がジャンケンをし、勝った方がリードということになる。・・・で、結果は、タケちゃんの勝ちっ!
 もしかしたらやる羽目になるかなぁと覚悟していたが、これはこれで神の思し召しなのでしょうがない。  
 で、さっそく登攀開始。

  「下棚」をリードするタケちゃん

 トポでは下1/3がⅣ+、真ん中が「階段状」で、上1/3がⅤ-となっている。
 しかし、いつもだったらイケイケのタケちゃんが、今回は出だしからいつになく慎重。よほど濡れて滑りやすいのか早くもA0を駆使している。
 階段状になって多少は余裕を見せるものの相変わらずジンワリとしたペースが続く。
 そして、中間部からやや上が浮石帯になっており、しばし「大掃除」。スイカ大の岩がボンボン釜に叩き落される。
 こんなにボロイなんてトポにもネットの記録にも書いてなかった。・・・ジャンケンに負けて良かったとつくづく思う。
 
 滝見見物のギャラリーが入れ替わり立ち代わり3~4組やってくる中、タケちゃん決死のリードで上部のカンテもじんわり突破し、落口に到着。 

 セカンドはju9cho氏。けっこうソツなく登っていく。で、ラストは私。
 トポでは上部が核心となっているが、実際登った感じでは下部は濡れたスラブで滑りやすいし、中間の階段状はボロボロ、むしろ上部の方ががっちりしたカンテを使えて(アンダーホールドが有効)、安定している気がした。
 単純に技術的なグレードとしてはⅣ+、A0が妥当だと思うが、「濡れて」「脆くて」「支点が信用できない」ことを考えると、総合的にはⅤ級テイスト。
 落口にたどり着くまではけっして気が抜けず、毎度、タケちゃんには頭が下がります。
 
  
 中間部で余裕を見せるタケちゃん        フォローのju9cho氏

 動画はこちら(撮影:ju9cho氏)

 一息ついて、続いてF2(10m)。
 選手交代で、私がリード。右壁から取り付く。
 釜から滝に取り付く所がホールド細かく、ちょっと取り付きにくい。
 トポには「途中ハーケンが3本」とあるが、リング・ボルトも含めて都合5本。
 最後の小ハングは正対でなく横向きで。足をステミングしながら上げていくと、落口にご褒美のガバが見つかる。
 既にF1でオール・フリーにはこだわっておらず、ここはⅣ、A0といった感じ。

  F2をリードする私

 続いてF3、二段7mは、ju9cho氏にリードを頼む。
 左壁のクラック沿いに登る。
 ラストの私は油断して一回釜にドボンしたが、それよりも上半分のグズグズのステップをステミングで上がっていく方がイヤラシイ。Ⅲ+~Ⅳ-?
 
  F3リードはju9cho氏

 F4(5m)を過ぎるとゴーロっぽい癒し系となり、その間に2mほどのチョックストン(CS)滝が現れる。
 特に巨大なベロ(舌)が突き出したようなCS滝はその左側をすり抜けていくのだが、バランス課題でちょっと面白い。
 滑りそうになるのを両手ツッパリで堪えながら足を前に出していくのだが、まさかここでヒール・フックを使うとは思わなかった。

  CS滝

 さらに、この辺りの浅い淵で素早く走る魚影を発見!
 後ろから回り込んで一気に岸に追い上げると、尺には届かないが立派なヤマメ。
 こんな上流の細い流れにいるなんて・・・。
 ところが、いざ逃がしてやろうとしたら、つい今しがたまでピチピチしていたのに急にグッタリ。
 そんなに強く掴んでないのに・・ちょっと可哀想なことしたなぁと思っていると、しばらくしてまた元気を取り戻し、流れの中に消えていった。

  ヤマメくん

 続いてF5、三段15m。
 タケちゃんが水流左から、私が右から攻めるが、出だしがちょっと立っていて苦戦する。
 それでも見つけたガバを頼りに思い切って上がろうとしたところ、いきなり手元の岩が根こそぎもげて、私が背中から落ちる。
 下は砂地の釜で高さもほんの1m強のため尻餅で済んだが、右手を着いた際、岩で手首を切ってしまう。
 けっこうパックリいっちゃって手首という場所が場所だけに、ちょっと青くなる。(まさか、こんな所でリスト・カットするなんて)
 後から思ったが、これは先ほどのヤマメが「下棚の主」で、文字通り「その逆鱗に触れた」祟りではあるまいか?

  F5
 
 この頃から雨足も激しくなり(下界では雷雨だったとか)、撤退しようと意見が出たが、ここまで来て自分のせいで中途敗退では二人に申し訳ない。
 タケちゃんに応急処置をしてもらい続行とするが、F5はそのまま左岸から巻く。
 この左岸の巻きは踏跡とピンク・テープが目印となるが、沢床に戻る下りがグズクズの細い土尾根でけっこう悪かった。

  F6(水流左からA0で上がる方が良い)

  F6(上から見たところ)

  滝はまだまだ続く

  森に埋もれた巨大タマネギのようなF7


 さらに、その先ももうそろそろ終わりだろうと思っても、次から次へと意外と歯応えのある滝がF9まで続く。けっこう長い。
 それらを登ったり巻いたりして先を急ぐと、ようやく水も涸れ、そのまま詰め上がると木に赤ペンキで印された獣道のような細い登山道にぶつかる。
 右手にひと登りすると、やっと畦ケ丸の山頂。
 雨降る中、上から下までグショグショに濡れたまま、とりあえず完登の握手を交わす。既に辺りは薄暗い。

 行動食を忘れたというju9cho氏にドーナツを分けたりして(←なんか最近このパターン多いような?)小休止後、自然教室へ小走りに駆け下り、無事帰還。
 お疲れさんでした~。

 帰りは「ぶなの湯」で汚れを落とし、新松田駅前の焼肉屋(2F)で飯食って〆。
 私が頼んだ「カルビ麺」(800円)は☆☆☆☆。まぁオススメ。

  
 


丹沢 日帰り3本(その2)

2009年05月23日 | 沢登り

丹沢・継続遡行(沢パチンコ)  後編

 さて後半戦である。
 堀山ノ家から杉の植林帯の道をガンガン下って、再び二俣へ。

小草平ノ沢 (Ⅲ)☆☆
・F1は水流右側の浅い凹角を直登。少し立っているが岩は堅くホールド豊富。
  F1 5m、Ⅲ

・F2は三段12m。水流の左側から。特に問題なし。
  F2三段 12m、Ⅲ-
 

・その先、ちょっとしたゴルジュとなる。途中、流木が沢筋を埋めていたりして、あまり美しくない。
 ちょこちょこと小滝を越えていく。4mチョックストン滝はボルダーの要領で正面突破。

・石積み堰堤を越えるとやがてスッキリとしたF4(7m)。
 Ⅲ級とのことなので、正面突破。
  F4 7m、Ⅲ
 
 小草平ノ沢は結局ロープは出さず、一気に駆け上がる。
 トポでは参考遡行タイム1時間20分となっていたが、30分強で終了。これで残り時間に貯金ができた。

 堀山ノ家から再び大倉尾根を少し登り、途中の分岐から戸沢出合に降りる。
 この道はけっこう急で、疲れたヒザにはちょっとコタえる。
 戸沢出合からさらに林道を下り、左手の新茅ノ沢の反対側(右側)へ降りる。

 降りた所がモミソの「懸垂岩」。
 かつてはクライミングのゲレンデとして使われていたが、今は閑古鳥だろう・・・と思っていたら、高校生の岩登り教室なのか大変な賑わい。
  賑わう「懸垂岩」
 その左端の隙間から沢に入る。

モミソ沢 (Ⅳ)☆
・とにかく、ひたすらゴルジュの中、凹角の小滝が続く。
 しかし、ガイドブック「丹沢の谷110ルート」の中では、人気度4つ☆となっているが、はたしてどんなものか。
 私としては、
 「暗い(ゴルジュで陽が射さず)」
 「汚い(水流少なく、泥が溜まっている)」
 「ショボイ(パッとしない小滝がほとんど)」といった印象。

・とにかく陰鬱で一人だとよけい気が滅入ってくるので、そそくさと先を急ぐ。

・最後の大滝F4(12m)
 滝下に立つと、緩やかな半円形のドームの底にいるような感じ。
 傾斜も緩く、簡単に取り付けそうな印象。
 ただトポではⅣ級となっており、「気軽に取り付くと落口近くで身動きできなくなる」と書いてあるので、敬意を払って左側のカンテから巻いてトップ・ロープをセット。(落口にリング・ボルトが3つ打ってあったが、古いので、支点は潅木の方が安全)
 懸垂で降りて、また登り返す。
  F4大滝 12m、Ⅳ
 
 厳しいのは最後の1ポイントのみ。手はガッチリしたフレークに頼れるが、足が無い。
 ヌルヌルのスラブにフェルトソールのスメアがまったく効かず、ちょっとビビリが入り、仕方なくペッツルのハンガー・ボルトを踏み台にしてしまった。
 こんな思い切りの悪さで、来週の「下棚」はこなせるのだろうか?・・やや不安
 
 後は単調なゴーロを詰めて大倉尾根へ。
 服と靴を着替えると、またしても丹沢ヒルズ!
 ちょうど満腹になっていたようで、私の足からコロリと離れたところを「こいつめ!」とカカト落としで一撃!黒澤明の時代劇のようにプシューと血飛沫を上げる最期の姿はなかなか圧巻であった。(皆さんもお試しあれ)

 下山は、タケちゃんに倣って前方を行くビスターリ族を次々と「ロック・オン」しては抜き去り、17時半に大倉着。

 このところ山といえばクライミングで、指、腕、肩ばかり疲れていたが、今回、久々に大腿四頭筋を酷使しました。疲れた~。


丹沢 日帰り3本(その1)

2009年05月23日 | 沢登り

丹沢・継続遡行(沢パチンコ)  前編

天気:/  日帰り、単独
コース:勘七ノ沢-小草平ノ沢-モミソ沢

 来週の西丹沢「下棚」に備えて、半年ぶりの沢靴慣らしをしておこうと丹沢へ。
 当初は土・日で沢5本を繋いで西丹沢へ抜ける沢パチを考えていたのだが、日曜が雨ということで日帰りとする。
 電車、バスを乗り継ぎ、朝7時半には登山口の大倉着。さらに林道を一時間ほど歩いて二俣へ。

 ここで沢仕度を始めたところ、足首の辺りが何だかムズ痒い。
 見てみたら、六本木ヒルズ、もとい丹沢ヒルズにさっそく食いつかれている。
 濃厚で熱いキッスは、手で取ろうとしてもまったくダメ。
 近くにいたオジサンにタバコに火を点けてもらい、近づけると呆気なくコロリ。
 そうこうしているうちに、他パーティーに出し抜かれ、最後尾になってしまった。

勘七ノ沢 (Ⅲ+)☆☆☆
・今回が19年ぶりぐらいなので、あまり印象が残っていない。
 特にF1はこんな感じだったっけ?といった感じ。先行二人組(Aパーティー)の後に付いて水流左から取り付く。
 1ポイント細かく、残置スリングでA0できるが、カチを拾ってフリーで突破。
  F1 5m、Ⅲ+

・F2は右壁から。ちょっと脆い感じ。
  F2 7m、Ⅲ-

・F3は斜め滝。ここでAパーティーに追いつき、先に行かせてもらう。
 深い釜を右から回りこむが、ドボンしないようにヘツるのが腕試しのようでちょっと面白い。回りこんだら、そのまま滝の右側を越えていく。

・F4は二段12m。
 ここで単独ノーヘル、登山靴のオジサンに追いつく。ちょっと躊躇している模様。
 ロープで手助けしてあげようかとも思ったが、ここで手を貸すと最後まで面倒見にゃならんし、悪いけど自分で進退を判断してもらうことにする。上・下段とも水流の右から越える。
  F4 二段12m、Ⅲ

・その先、堰堤が5つほど続く。
 最初は左から。二番目の低いのは立てかけてあった流木を使って直登。後の高さのあるのは右から越える。途中、堰堤越えで足をすべらせ、ひっくり返っているBパーティーに遭遇。
 一瞬、足が捩れているように見え、こりゃ搬出手伝いかと思ったが、落ち着いたら膝の屈伸はできるし立てたので大丈夫とのこと。先に行かせてもらう。

・そして、いよいよ勘七の大滝F5(15m)。
 下から見上げると立ってはいるもののホールド豊富でⅢ+とのことなので、このままフリーで行っちゃうかと思ったが、高さがあるので、万が一、足を滑らせてもつまらない。
 左の落ち葉の詰まったルンゼから巻き上がり、落口のボルトを利用し、懸垂下降。そのままアッセンダーでセルフを取りながらトップロープで登ることにした。
  F5・勘七の大滝 15m、Ⅲ+

 後続のAパーティーも追いついてきたので、私が登った後、彼らを順番に上からビレーしてあげた。
 Aパーティーにはそのまま先に行ってもらい、落口で小休止していると、先ほどのオジサンが巻きルートから上がってきたのでちょっとビックリ。
  
 大滝をフォローするAパーティーのお二人
 
・その先はちょっとしたゴルジュと5~6mの小滝が続く。
 途中で休んでいたAパーティーに先ほどのオジサンの話をすると、彼等も驚いていた。
  ゴルジュ

  F8二段 
6m


 そろそろ水も涸れてきた。最後の三俣はちょっとわかりにくかったが、よく見たら真ん中の沢筋の立木にボロボロのスリングが垂れ下がっていたので、それが目印。
 さらに進み、トポのとおり2本目のザレの所にも立木に赤テープが巻いてある。
 そのまま詰めて大倉尾根へ。
 ちょっと下って掘山ノ家で小休止。勘七ノ沢だけで午前中いっぱい使ってしまった。
 ノルマの後2本が消化できるか、ちょっとアセる。