逸翁美術館『蕪村 時を旅する』鑑賞メモ(3) この蕪村展には、前期・後期2回訪ねた。 このエントリを含め8本の記事を書くことになってしまった。蕪村展も良かったけれど、池田の町そのものもよかった。 最後に取り上げたいのが、呉春画『白梅図』である。 この絵は逸翁美術館の図録の表紙絵にもなっている。蕪村、呉春、そして逸翁を結ぶ、この美術館のシンボル的な . . . 本文を読む
蕪村の話は、もう少し続きます。 今回は俳句について。 今回の展覧会には「相伝証文」という蕪村の書簡が出展されていた(全期)。 「自分は蕪玉(未詳)、月渓(呉春)、江森月居の三人の弟子に書・画・俳諧を伝えることができて、思い残すことはない」 と、記されているらしい。 書・画・俳諧のすべてで名作をものにした蕪村は、まさに天才だっ . . . 本文を読む
逸翁美術館『蕪村 時を旅する』の会期は6月26日(日)まで。 残り10日になってしまったが、なんとか会期中に鑑賞記を書き終えることができた。 時を旅した蕪村さん 始まりの物語です…はぃ! https://blog.goo.ne.jp/kuro_mac/e/c954c8cb3ee1243a82f83043498f7054 時を旅した蕪村さん 永 . . . 本文を読む
「たしかに今の郵政のあり方は本当に問題ですね。まぁ時代の趨勢と言えば確かにそうで、私も封書を書く機会とにかく少なく、メールが実に簡単で、便利で、重い封書で原稿を送らずに済んで、本当に助かっていますが、ただ若い人たちがペンを執る機会が少なくなって、文章の進展という点で、いささか懸念を覚える次第です」 あるお方から頂戴したメールに、そんなお言葉があった。このブログも、私が編集する小冊子もご愛 . . . 本文を読む
宇能鴻一郎『姫君を喰う話』「ほぅ」本書を読み終えた私は、あの箱入り娘のように情けないため息交じりの声を漏らすだけだった。本書の読後感を、言葉にするのはむずかしい。あるクライアントに、おまえの文章は長過ぎる、優秀なプログラマーほど短い行数でまとめるものだとお叱りを受けたことがある。たしかに、ダラダラ書くことはかんたんで、一言で的確にいいたいことをまとめることほどむずかしいことはない。まして本書の感想 . . . 本文を読む
オバマの2019夏の読書リストに、村上春樹の短編集『女のいない男たち』があった。この本には、雑誌掲載時に「炎上」した、『ドライブ・マイ・カー』が収録されている。「炎上」の原因になったのは、次の一文である。 「(みさきは)小さく短く息をつき、火のついた煙草をそのまま窓の外に弾いて捨てた。たぶん中頓別町ではみんなが普通にやっていることなのだろう」 本作の雑誌掲載時のこの記述について、中頓別町(なかとん . . . 本文を読む
「小説というのは、基本的にマイノリティを代弁するものだ。社会に受け入れられない人々の声にならない声を翻訳して、人間の精神の自由と社会の公正さを訴える、それが文学である。だから文学は回答を示すものではない。本質的な疑義を提出する。ただ、就職留年やサービス残業とうつ病、自傷癖、通り魔などは、人間の精神の闇を象徴しているわけではない。……そういったわかりやすい病理を担当するの . . . 本文を読む