新・私に続きを記させて(くろまっくのブログ)

ハイキングに里山再生、れんちゃん姉妹とお父さんの日々。

PEACH-PIT祭り 『金魚坂上ル』

2013年01月13日 | コミック/アニメ/ゲーム
『ローゼンメイデン』も『しゅごキャラ!』も、しばらくごぶさたのうちに、桃種先生の新作にして新境地。

本屋では表紙を見て、桃種先生と気づかずに手に取っていた。ポニーテールの女子高校生に、白い着物を着て金魚鉢を持ったおかっぱ少女。もうこれだけで物語が始まっている。

そしてタイトルのすばらしさ。金魚が坂を上るなんて! いや、「金魚坂」は地名なのだが、この町は元は水の町で、坂は埋め立てられた水路だったという設定が与えられている。

坂ばかりの深郷町(みさとちょう)にある、都立蛍見坂高等学校。休み時間、鶴の折り紙を折る転入生。クラスでもボッチらしいが、気にする素振りもない。ヒロインの花小野にしきちゃん。

彼女がいま夢中なのは、放課後の人助けのお仕事「すくい屋」さん。買い物代行、猫探し、お留守番と忙しい。お留守番を頼まれた下宿屋さんの小学生の娘・朱(あかい)ちゃんは、おまつりの夜、お稲荷さんの鳥居で出逢い、猫の居場所を教えてくれた少女だった……。

「雪渡り」「猫の事務所」「どんぐりと山猫」と、宮沢賢治へのオマージュがあちこちにある。どれも好きな賢治作品だ。

天真爛漫に、大切な思い出のカケラを集める毎日(恥ずかしいセリフ禁止)。幼なじみの蒼馬の彼女のカナちゃんが、にしきちゃんに嫉妬して、JKと合コンしたいバカ大学生とのカラオケコンパをセッティングする。校歌以外歌をあまり知らないにしきちゃん。ドイツ民謡(だったのか)「子ぎつねコンコン」を激唱するにしきちゃんには、おじさんも思わず「救われ」そうになってしまう。

しかし、ラストシーンには、ギクリとした。なぜにしきちゃんが「カケラ」を集めているのか、紺・朱兄妹は何者なのか、以後明かされていくのだろう。

死んだおじいちゃんの古い自転車で走るにしきが美しい。坂ばかりの町のモデルはどこだろう。

……と思って、「金魚坂」で検索したら、本郷五丁目にあるカフェ併設の江戸時代から続く老舗の金魚屋さんににヒット。もうお亡くなりになり、時効(いろいろね)も成立しているので書けることだが、本郷界隈は若い頃お世話になった人のいた町である。

モデルにしたかどうか別として、本郷が文学史上もっとも有名な「坂の町」であることには、異を唱える人は少ないだろうと思われる。「菊造り坂」という地名は知らないが、「菊坂」なら町名にも残っている。いまは解体されてしまったが、葛葉荘と同じ3階建ての学生下宿で、近代木造建築の傑作とされた「本郷館」もかつてこの町に存在した。あの急な階段には、本郷館よりも、『エクソシスト』を思い出してしまったことも、備忘のため書き記しておく。


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1 コメント

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Unknown (kuro-mac@naniwa)
2013-02-10 00:04:42
拍手コメントありがとう。本当にいい作品ですよね。某所で「高校デビュー失敗」というお題を与えられ、ひとり折り紙を折るボッチのにしきが思い浮かび、胸がキュンとしました。
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