今日も新作です。
文学少女「くろまっくくん、今日のお題は『松』『切符』『CMのあともまだまだ続くよ』よ!」
安倍元首相の国葬が、国会の議論を通すこともなく閣議決定だけで決まったと聞いて、ちょっとブラックなお話になりました。
「松の内でお正月気分の皆さーん!ウェーイ!今日は『新春政治討論会』改め『次は誰を国葬にしたいかクイズ1億人に聞きました』の時間でーす。当選者には地獄への片道切符が当たるよ♪それでは準備のためCM入るね。おい、停波したら今度は二人殺すからな。じゃ、CMのあともまだまだ続くよ!」
うーん。今日のお題はむずかしかった。
アナログをこよなく愛する私ですが、『切符』を使うのは、今やICOCAを忘れたか、出張で特急に乗るときくらいです。『CMのあともまだまだ続くよ』なんて、テレビを捨てて4半世紀になる私には遠い昔の話を聞くようです。その上に、『松』? 東日本大震災の大津波で、紙はもちろん、インキの原料のレジン(松脂が主成分)も流されて、本が作れなくなって苦労した話でもしたらいい?
全く何も思いつきませんでした。
文学少女アプリは、名前に紐づけて出題するのですね。「kuro_mac」と名前を打ち替えて、ズルをしようとやり直ししてしまいましたよ(こちらで出たお題も、いずれ消化します)。
でも、やっぱり、悔しいじゃないですか?
9年前の私は、〈死にたがりの姫〉のために、即興の芸で、どんなお題が出ようとチャレンジしていたわけですから。逆『千夜一夜』で、私の書くものがつまらなかったら〈姫〉が死んじゃう可能性があるわけで、いくらプロとはいえ、これは結構なプレッシャーでした。
突破口は、最もやりづらいお題の『CMのあともまだまだ続くよ』でした。
このお題は、今は私が見ることもないテレビ局関連の話題に限定されてきます。
いまの日本は、安倍の狙撃事件なり、参院選の結果なり、自民党と統一協会との関係なり、いろいろ考えなければならない問題があるはずです。しかしテレビのトップニュースは羽生結弦選手の引退問題だそうで。
羽生選手の引退を惜しむこと、悲しむことは、ファンにとっては自然な感情であり、当然のことでしょう。
しかし憲法が改憲され、日本が戦争になってしまったら、フィギュアスケートを楽しむ自由も余裕もこの国からなくなってしまうのではないですか?
いま差し迫る民主主義の危機も知らず、羽生くんの引退問題で一喜一憂するみなさんの姿が、私の目には、松の内のお正月気分でテレビを見て喜んでいるように見えてきました。
戦争や殺し合いばかりしてきた人類の長い歴史から見たら、憲法とか民主主義って、ついこないだ生まれた赤ちゃんみたいなものなのです。人はだれでも平和に生き、自由に生きていく権利があります。この可能性をみんなで守っていきませんか。新左翼最左派で、「生まれついての過激派」といわれ何度も活動停止処分された私が、こんなことを書かねばならない時点で、この国は終わっているというほかありません。しかし民主主義の可能性はまだ始まったばかりです。
>政治討論会
これ最近、テレビを見ていてもさっぱりわからないといいますか、何が言いたいのか言葉の内容を聞き取るにも理解に苦しみますよ。かつてマルクスは言いました。
「自分自身の内容をはっきり理解するために、死にたる者に死にたる者を葬らせなければならない。以前には文句が内容をこえていたが、いまでは内容が文句をこえている」(「ルイ・ボナパルトのブリュメール十八日」)。
さらにデリダは言っています。
「コロック〔討論会〕はいつも、冒された危険を忘れることに熱心である。ある一般的主題をめぐって人々が和気あいあい講演や口頭発表を並べ合うだけの、あの見せ物の一つにすぎなくなってしまう危険を。たとえば、コロックはまさに《文化的な》見せ物もしくは興業になってしまう。もしもそれが、『文化』というかくも曖昧な言葉で呼ばれているものについてのレッスンであり続けるのでなければ。そして、つねにアクチュアルであり続けるであろう問い、ヨーロッパについてのレッスンであり続けるのでなければ」(デリダ「他の岬・P.3」みずず書房 一九九三年)
マルクスの亡霊とか共産主義の亡霊とかは百年以上前からよく口にされていたようです。けれども今度ばかりは民主主義の亡霊が出てくるかも知れませんね。
ではでは。
私はポスト・モダン思想に興味を喪失しています。だからあまりお相手できずに申し訳なく思います。
しかし自民党の弾除けに「大活躍」の東某が、「昔は優秀な哲学者だったのに」という声に、「東の問題はその哲学そのものに内在していて、1980年代以降のデリダを認めないことにある」という知識人サイドの批判を見かけました。アクチュアルな問題としては、東のようなインチキを退場させていくためにも、そのあたりを掘り下げていただけると嬉しく思います。
日本という国は滅ぶかもしれませんが、民主主義はまだまだこれからですね。ラストには、希望の言葉を追記しました。