摩耶山から帰ってきました。
泉鏡花の『峠茶屋心中』を読んだ後だったので、れんちゃんとの会話も弾みました。
この作品を知るきっかけは、女性向け文豪転生シミュレーションゲーム 『文豪とアルケミスト』(文アル)と神戸市立文学館のコラボイベントでした。このイベントでは、『文アル』に登場する神戸ゆかりの文豪と、神戸を描いた作品がパネル展示で紹介されていました。以下は泉鏡花。
こんな美少年です。
ちなみに、いまひとつの文豪もののライトノベルの『文豪ストレイドッグス』(文スト)では、泉鏡花はこんな美少女です。角川文庫とのコラボ表紙。
『文学少女 五十鈴れんの冒険』で、いわゆるオタバレを防ぐため、「五十鈴先輩」の父親が知らないであろう『文スト』を持ち出した御園かりんちゃんが、実はおじさんが劇場版を観ていることに慌てるシーンがあります。れんちゃんいわく、気難しい父親は、『文スト』劇場版鑑賞中、眉間にしわが寄りまくりだったようですが、泉鏡花と中島敦のふたりのシーンだけは、ほほえましく見守っていたようです。
『文アル』には小林多喜二も登場するようです。日本共産党の『赤旗』が、このことを好意的に取り上げたところ、『文アル』ファンから、「多喜二の政治利用はやめてください」とコメントが上がり、炎上してしまったのだとか。
私は苦笑いしていました。
多喜二が日本共産党員だったこと、最後まで転向を拒否して、特高警察に虐殺された革命家だったことを、その若い人は知らなかったのでしょう。それも仕方のないことです。それはすべてわれわれ左派の宣伝不足、情宣不足です(おまえなんか、たんなるニセ左翼暴力集団?)。
同時に、文アルの多喜二に反応した日共の中の人が、ネット社会やオタク社会の作法を知らず、配慮に欠いていたことも指摘せざるをえません。親や友人、学校や職場の人に、「オタク」と知られたくないのに、「現代の若者に多喜二が再評価されている!」なんて、脳天気に大きな声で喧伝されたら、『文アル』の多喜二を愛する女性たちの反発を招いて当然のことです。あくまでBLはファンタジーなんですね。まあ、『文アル』だって、すでに故人で、ナマモノならぬ「ヒモノ」「カワキモノ」とはいえ、関係者の目の留まるところで公然と二次創作を楽しんでしまっているルール違反を犯しているわけですが。
しかし、泉鏡花のように、男性なのに美少女化されてしまう『文スト』とちがい、『文アル』は、男性ならあくまで男性のようです。
梶井基次郎本人の風貌は、作品のイメージと合わないという意見も一部あるようですが…
『文アル』では、この美少年ぶりです。
さて、鏡花に関していえば、泉鏡花は代表作の『夜叉ヶ池』『天守物語』を読んだくらいで、『海洋発電』『夜行巡査』は知らず、『外科室』は映画で観ただけです。
だから、鏡花に、神戸、しかも私たちが毎週通っている摩耶山を舞台にした作品があることを知って、大変驚きました。
しかし、コラボイベントのパネルの紹介文を読む限り、私が好きなタイプの作品でないであろうことは、予想がつきました。摩耶夫人堂を訪ねようと摩耶山に登った青年が見かけたのは、若いころに出会った、あの運命の女(ひと)で……という、「母恋ものがたり」のようです。
母恋い物語は、鏡花に影響を受けた谷崎も残していますが、私は、母恋ものは、そんなに好きでないんですよね。
今日は、摩耶山を舞台にした小説の構想について、れんちゃんと語りながら降りてきました…。いつか発表できたらいいですね。
タイトル画像は、れんちゃんの「妹」たちが大好きな、大阪の「ひみつきち」の写真です。『峠茶屋心中』にも出てくる青谷道にも、彼女たちのお気に入りの「ひみつきち」があるようです…。