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〈脱原発〉から〈超原発〉へ または関電の節電15%がサバ読み過ぎの件 

2011年06月15日 | 反原発・脱原発・エネルギー
 関西電力による突然の節電15%協力要請。電子力会社・政府・マスコミの悪あがきのような原発存続キャンペーンは停まらない。

 イタリアの国民投票で、原発再開が否決された。投票率は57%に達し、成立条件の50%をクリアし、投票者のうち95%が再開に反対票を投じたという。すでにドイツはすべての原発を停止する関連法案を決定、スイスも既存原発の停止を決めた。

 しかし日本経済新聞6月14日の記事では、「欧州の原発依存変わらず」として、次のように解説している。

 「ドイツやスイスに続きイタリアも脱原発を選択した背景には、電力市場の自由化が進んでいる欧州特有の事情がある。送電網の整備により、不足時には電力を融通しあえるため、原子力政策の違いによる影響を抑えられる仕組みができている」

 すでにイタリアはチェルノブイリ原発事故を、原発をすべて停止。このため恒常的な電力不足を補うために、隣国の原子力大国フランスから電力を購入してきた。このため、「イタリアの産業向け電気料金は100kW時あたり13.7ユーロと、欧州連合(EU)平均の10.2ユーロを大幅に上回り、仏の2倍強の高水準にある」と解説している。ベルルスコーニ政権の「産業競争力向上」も視野に模索した原発再開がとん挫したことにより、「産業界の懸念はくすぶる」と伝えている。

 「日本経済もこうなるぞ。国際競争力もがた落ちで、経済成長もマイナスになるぞ」と暗に言いたいわけだ。

 しかし電気料金は、原発だけでは説明できない。フランスより原発依存度の低い米国・韓国の方が電気代は安いわけだから。
http://www2.ttcn.ne.jp/honkawa/4105.html

 さて、同じ朝刊には「関西電力から節電のご協力をお願いします」と題した全面新聞広告も出ていた。引用してみよう。

 「当社は定期検査中の原子力発電所の運転再開に全力を尽くしておりますが、お客さまから、節電が必要であれば早期かつ具体的に示して欲しいという声も多く寄せられています。こうした状況を踏まえ、供給力不足による停電を回避するため、このたびやむを得ず、お客さまに節電のお願いをすることといたしました。具体的には、7月1日から9月22日の平日9時から20時までの間、すべてのお客さまに15%程度の節電にご協力を賜りますようお願いいたします」

 どこが「早期」「具体的」「やむを得ず」なの? まさか東電の無計画停電と較べて「早期」といいたいのかな? 原発の再開だけは、「全力を尽くして」いるらしいけどね。

 しかし月曜、お昼のNHKニュースに出た関電の安倍川信京都支店長は、とても「お客さま」に「お願い」する人間のものではなかった。
 http://www.nhk.or.jp/lnews/kyoto/2013457852.html

 京都府の会議では、関電の節電要請は総ブーイングで、不調に終わった。NHKのサイトでは、安倍川支店長は「説明に不十分な点はあったが、何とか15%の節電をお願いしたい」とコメントしたことになっている。しかしリアルタイムでテレビを見ていたら、こんな低姿勢な感じではなかったね。横柄で権柄尽く、「だから説明の仕方の問題であってね!  ともかく節電は15%でお願いします!」と、最後はほとんど捨てゼリフ。

 ええ年したおっさんが、これが人にものを頼む態度なのか。東電やJR西でもそうだったけれど、現場を知らないキャリアが、トップに近づくほどばかになる典型例か。現場も事なかれ主義で、「15%削減」なんていえば、どんな激甚な反応があるか、叱責を恐れて報告をあげていなかったのだろう(何も考えていなかっただけの可能性もある)。おそらく会議では責任を追及されまくり、面目丸つぶれだったのだろう。そうした権力者の卑しさや惨めさが、画面を通じてよく伝わってきた。帰社後は部下に当たり散らしたにちがいない。
 
 しかし企業も自治体もみんな怒っているのは、全然、今まで聞いてきた話とちがったからだ。同じNHKニュースより京都府山内修一副知事のコメント。

 「これまで5%から10%の節電という目標を関西電力を含めて合意してきたので、15%は唐突な印象だ。文書で根拠の説明を求めたのでそれを見て対応を判断したい」

 これは私が聞いていたのと一致する。だいたい、関電の社員は仕事をしているのか。直接担当ではないけれど、毎日のように、お願い、ご説明と称してやってきては、1時間も2時間もただダラダラと担当者にタベっていくだけ。おおむね合意もできて、準備を進めていたところに、今までの話し合いは何だったのか。時間を返せ。またシナリオの組み直しだ。一般企業は関電社員とちがって、ひまではないのだ。

 さすがに突然の発表以来、各方面から抗議や苦情が相次いだのだろう。全面広告には、申し訳程度の小さな文字で、※印の注釈が付け加えられている。しかしこの内容がまたアホすぎる。


 「※昨年並みの猛暑を想定した8月の最大電力(需要)は3,138万kWであるのに対し、現時点で予想される8月の供給量は2,938kWと、200万kW(6.4%)の不足となります。それに加え、安定供給には供給予備率が、5%程度必要となります。なお、お客さまごとに節電のご協力が必ずしも同じ曜日や時間帯にならないことを考慮し、15%程度の節電のお願いをすることとしました」

 倍以上サバ読んどったんかい、こら! 

 ばかなの? 死ぬの? 自分が何をいっているのか、意味わかってる? 

 営業マンなら「気は確かか!」といわれるよ。決算の期末まで残り2週間あまりになってさ。「ノルマにどうしても6.4%足りません。しかし未達成で怒られるのはいやですから売上目標15%に落としてください」と、突然ドヤ顔でいわれたような気分だよ。こんな営業がいたら、即刻リストラ。

 「6.4%」だって、まだサバ読んでいるのではないかと思う。実際のところ、何も数字の裏付けは出ていないわけだからね(火力の稼働率とか)。百万歩譲って、それが正しいとして、予備率を入れて認められるのは10%までだ。
 関電の広告には夏の日中(14時頃)の消費電力の円グラフが出ている。エアコン53%、冷蔵庫23%だから、一般家庭はクーラーと冷蔵庫に重点を絞ればいい。冷蔵庫、照明、テレビ、待機電力、こまめに節電できる。どうして今までの話をチャラにして、社会的混乱をあおる必要があるだろう?

 ところで、日本エネルギー研の試算によれば、全原発停止で電気料金は1000円アップするそうだ。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20110613-00000156-jij-bus_all

 この日本エネルギー研は、原発を全停止したら、「産業の国際競争力への深刻な負の影響」「経済成長への悪影響」があるという。

 しかしたった1000円程度で済むんだね。そちらのほうが驚きだった。年間1万2千円を「安い」といえるほど高給取りではないけれど、原発を存続するくらいなら、15%といわずもっとふだんから節電・省エネに励んだほうがいいよ。

 原発をめぐっては、有象無象な経済的・政治的利害が、複雑に絡み合っている。 たとえばクーラーのきいた部屋で、だらだらうだうだ、テレビやらネットやらゲームやらで過ごすのも、われわれびんぼう人には遊びに出かけるお金がないからだ。脱原発を実現していくためには、原発を必要とする産業社会構造の変革もラディカルに問われている。『世界を変えろ』というマルクス、『生を変えろ』というランボー、このふたつのスローガンは、超現実の詩人ばかりでなく、超原発をめざすわれわれにもやはり一つのものなのだ。長文最後まで読んでくれてありがとう。



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