「イナフ・イズ・イナフ!」(もうたくさんだ!)
ウォール街の公園に、若者たちの参加者の声がこだました。
「Stop Greed」(どん欲をやめよ)
「Free」
「You See Disorganizatin. We See Democracy.」(混乱だって?これが民主主義さ!)
若者らのウォール街占拠闘争は、9月17日からすでに3週めに突入した。
10月5日には労働組合が参加する初の連帯集会が開かれ、過去最大の約1万人規模になった。
「ウォール街を占拠せよ!」(Occupy WallStreet)
最初に呼びかけたのは、運動家、作家、教育者、学生、起業家のグローバルネットワークの媒体である、カナダの非営利雑誌「アドバスターズ」だった。
しかし、この運動の主人公は、ウォール街に集まり、思い思いの手書きのプラカードを持った若者たち一人ひとりだ。情報共有のためのウェブサイトでも、「リーダー不在の運動」を表明している。
★Right Here All Over(情報共有ウェブサイト)
http://occupywallst.org/
初日の参加者は、約1500人と、比較的控えめだった。しかし今月1日には、ニューヨークで700人以上が不当逮捕されるまでに運動は拡大した。そして5日の1万人集会の成功。
現在は、ニューヨークにとどまらず、ボストン、ロサンゼルス、サンフランシスコ、シカゴのほか、国境を越えてトロントにも拡大した。参加する組織も、権利擁護、労働組合、コミュニティ運動、反核、平和、宗教家などさまざまな人びとに広がっている。
アドバスターズが「9月17日からウォール街を占拠せよ」というプレスリリースを発表したのは、7月13日のことである。9月17日はアメリ合衆国憲法記念日。国内の平穏と福祉、正義、自由をうたった憲法前文の精神に立ち返ることを呼びかけたのだ。
★呼びかけ全文(英語)
http://www.adbusters.org/blogs/adbusters-blog/occupywallstreet.html
http://www.adbusters.org/
「アドバスターズ」の創設者兼編集長のラースン氏は、毎日新聞のインタビューに「行き過ぎた資本主義を警告するためだった」と、その動機を語った。この呼びかけは、ソーシャルメディアを通じて、支持・賛同を集めていった。当初は「米国内の左翼勢力の結集を促し、保守派の茶会運動を抑制できれば」と考えていたという。しかし「予想以上の規模となった」と驚きを隠さない。
アメリカ労働総同盟産別会議(AFL‐CIO)/リチャード・トラムカ会長も、9月30日、次のように連帯を表明した。
「労働組合は全国レベル、地方レベルの双方で『ウォール街占拠』に参加している。米国社会において、輸出入バランス、労使の力関係、実体経済と金融経済のバランスなど均衡が必要なものがある。しかし、今や金融経済は実体経済に対してコントール不可能なほどに肥大化している。そのバランスを実体経済に引き寄せなければならない。」
(ブルッキングス研究所主催のシンポジウム「アメリカの雇用と経済の未来」)
この運動は、既成の労働組合・政治組織が主導したものではない。だからといって、リーマンショック以降の景気後退と失業問題に不満を持った若者が、突発的・自然発生的に行動したわけでもない。
若年層の高失業率の背景にあるのは、企業から「非中核人材」と扱われた非正規雇用の増加である。その下地は、経済のグローバル化の進んだ1980年代以降、企業は中核人材と非中核人材を分けた人事労務管理を行うことに始まっている。
労働組合も労働者を裏切り、企業経営に協力することで、自分たちだけ生き残りをはかった。その結果、「非中核人材」とされた労働者が、労働条件向上や能力育成などの点で置き去りにされてきたのだ。
16歳から24歳までの失業率は、今年4月から6月の平均で17.9%。収入は2009年から1.9%ダウンしている。その一方で、55歳以上の失業率は6.7%に過ぎず、収入は5.1%上昇している。10代だけの失業率をみれば25%にも達している。
さらにアメリカ政府は、連邦・州・市・郡(カウンティ)を問わず、「財政規律重視」と称して、教育、介護、医療などの公共サービスを切り捨ててきた。その一方で、企業や高額所得者に対する減税を継続してきた。
貧困労働者の福祉・住宅・教育など、社会的弱者の支援に関わってきたのは、労働組合ではなく、地域に根ざしたコミュニティ運動だった。
しかし、もう昔のやり方は通用しない。ウォール街で、若者たちと労働組合運動とコミュニティ運動が、再び結びつこうとしている。コミュニティ運動と労働組合の連合体「5月12日(May 12)(http://www.onmay12.org/)」も、このウォール街占拠闘争をバックアップする。この組織名は各組織の運動が結集した日である2011年5月12日から名付けられている。
「99%は私たちだ」
1%の高額所得者に対する税制優遇措置、金融関連企業を代表とする企業減税を廃して、富を残りの99%に分配すること。
介護、教育、医療等への公共サービスの復活と維持。
1%の「富めるもの」に相応の負担させることによる、不平等と格差の是正が、この運動のめざすところである。
9月29日に採択された宣言では、その内容は、格差是正から食品安全、平和への要求など多項目にわたる。
この運動は、アメリカ一国にとどまらず、UNITED FOR #GLOBALCHANGE(http://15october.net/)と連携しながら、さらにグローバルに広がろうとしている。
#GLOBALCHANGEは、10月15日に世界的な統一行動を呼びかけている。
10・15-16の脱原発統一行動も、このウォール街占拠闘争が呼びかける反貧困・反グローバリズム・平和をめざすたたかいに連帯していこう。原発を必要としない、平和で持続可能な社会を実現するためにも。仕事も、カネも、未来も、すべてを取り戻そう。この世界の住民の99%である、その他大勢である私たちのもとに。
---
(謝辞)
このエントリの作成にあたり、以下のレポートを参照させていただきました。筆者は独立行政法人の方なので、中立的な立場ですが、非常に充実したレポートでした。記して感謝します。
★「ウォール街占拠運動」が全米に拡大―労働組合、コミュニティ運動も合流
(独立行政法人 労働政策研究・研究機構)
http://www.jil.go.jp/foreign/jihou/2011_10/america_01.htm
---
(資料1)アドバスターズについて
アドバスターズ・メディア・ファンディーション(Adbusters =広告退治屋)は、1989年にバンクーバーで設立。反商業主義、反消費主義、環境問題を掲げ、隔月刊誌アドバスターズ(Adbusters)を、全世界で12万部を発行している。
代表者は創設者兼編集長のカレ・ラースン氏(69)。
この運動の始まりは、森林伐採を正当化する材木会社のイメージ広告に、森林環境保護を求めるテレビCM枠の購入に踏み切ったものの、局側に拒否されたこと。設立の経緯や雑誌の雰囲気は、以下の記事に詳しい。
★広告収入ゼロで世界に12万部を発行する雑誌「アドバスターズ」
http://mediasabor.jp/2009/07/12_1.html
★Culture Jammers jp(日本語紹介サイト)
http://adbusters.cool.ne.jp/
---
(資料2)ウォール街占拠に支持・連帯を表明した労働組合
・全米運輸労組ローカル100(Transit Workers Union Local 100)
・介護・看護労働者を組織するサービス従業員労組1199(1199SEIU)
・SEIU Local 32BJ
・全米鉄鋼労組(USW)
・ニューヨーク市AFL‐CIO
・教員連盟(Federation of Teachers)
・米国通信労働者組合(Communications Workers)
さらにこれらの組合を組織するニューヨーク市中央労働組合評議会(the NY Central Labor Council)が集会への参加を表明した。
ウォール街の公園に、若者たちの参加者の声がこだました。
「Stop Greed」(どん欲をやめよ)
「Free」
「You See Disorganizatin. We See Democracy.」(混乱だって?これが民主主義さ!)
若者らのウォール街占拠闘争は、9月17日からすでに3週めに突入した。
10月5日には労働組合が参加する初の連帯集会が開かれ、過去最大の約1万人規模になった。
「ウォール街を占拠せよ!」(Occupy WallStreet)
最初に呼びかけたのは、運動家、作家、教育者、学生、起業家のグローバルネットワークの媒体である、カナダの非営利雑誌「アドバスターズ」だった。
しかし、この運動の主人公は、ウォール街に集まり、思い思いの手書きのプラカードを持った若者たち一人ひとりだ。情報共有のためのウェブサイトでも、「リーダー不在の運動」を表明している。
★Right Here All Over(情報共有ウェブサイト)
http://occupywallst.org/
初日の参加者は、約1500人と、比較的控えめだった。しかし今月1日には、ニューヨークで700人以上が不当逮捕されるまでに運動は拡大した。そして5日の1万人集会の成功。
現在は、ニューヨークにとどまらず、ボストン、ロサンゼルス、サンフランシスコ、シカゴのほか、国境を越えてトロントにも拡大した。参加する組織も、権利擁護、労働組合、コミュニティ運動、反核、平和、宗教家などさまざまな人びとに広がっている。
アドバスターズが「9月17日からウォール街を占拠せよ」というプレスリリースを発表したのは、7月13日のことである。9月17日はアメリ合衆国憲法記念日。国内の平穏と福祉、正義、自由をうたった憲法前文の精神に立ち返ることを呼びかけたのだ。
★呼びかけ全文(英語)
http://www.adbusters.org/blogs/adbusters-blog/occupywallstreet.html
http://www.adbusters.org/
「アドバスターズ」の創設者兼編集長のラースン氏は、毎日新聞のインタビューに「行き過ぎた資本主義を警告するためだった」と、その動機を語った。この呼びかけは、ソーシャルメディアを通じて、支持・賛同を集めていった。当初は「米国内の左翼勢力の結集を促し、保守派の茶会運動を抑制できれば」と考えていたという。しかし「予想以上の規模となった」と驚きを隠さない。
アメリカ労働総同盟産別会議(AFL‐CIO)/リチャード・トラムカ会長も、9月30日、次のように連帯を表明した。
「労働組合は全国レベル、地方レベルの双方で『ウォール街占拠』に参加している。米国社会において、輸出入バランス、労使の力関係、実体経済と金融経済のバランスなど均衡が必要なものがある。しかし、今や金融経済は実体経済に対してコントール不可能なほどに肥大化している。そのバランスを実体経済に引き寄せなければならない。」
(ブルッキングス研究所主催のシンポジウム「アメリカの雇用と経済の未来」)
この運動は、既成の労働組合・政治組織が主導したものではない。だからといって、リーマンショック以降の景気後退と失業問題に不満を持った若者が、突発的・自然発生的に行動したわけでもない。
若年層の高失業率の背景にあるのは、企業から「非中核人材」と扱われた非正規雇用の増加である。その下地は、経済のグローバル化の進んだ1980年代以降、企業は中核人材と非中核人材を分けた人事労務管理を行うことに始まっている。
労働組合も労働者を裏切り、企業経営に協力することで、自分たちだけ生き残りをはかった。その結果、「非中核人材」とされた労働者が、労働条件向上や能力育成などの点で置き去りにされてきたのだ。
16歳から24歳までの失業率は、今年4月から6月の平均で17.9%。収入は2009年から1.9%ダウンしている。その一方で、55歳以上の失業率は6.7%に過ぎず、収入は5.1%上昇している。10代だけの失業率をみれば25%にも達している。
さらにアメリカ政府は、連邦・州・市・郡(カウンティ)を問わず、「財政規律重視」と称して、教育、介護、医療などの公共サービスを切り捨ててきた。その一方で、企業や高額所得者に対する減税を継続してきた。
貧困労働者の福祉・住宅・教育など、社会的弱者の支援に関わってきたのは、労働組合ではなく、地域に根ざしたコミュニティ運動だった。
しかし、もう昔のやり方は通用しない。ウォール街で、若者たちと労働組合運動とコミュニティ運動が、再び結びつこうとしている。コミュニティ運動と労働組合の連合体「5月12日(May 12)(http://www.onmay12.org/)」も、このウォール街占拠闘争をバックアップする。この組織名は各組織の運動が結集した日である2011年5月12日から名付けられている。
「99%は私たちだ」
1%の高額所得者に対する税制優遇措置、金融関連企業を代表とする企業減税を廃して、富を残りの99%に分配すること。
介護、教育、医療等への公共サービスの復活と維持。
1%の「富めるもの」に相応の負担させることによる、不平等と格差の是正が、この運動のめざすところである。
9月29日に採択された宣言では、その内容は、格差是正から食品安全、平和への要求など多項目にわたる。
この運動は、アメリカ一国にとどまらず、UNITED FOR #GLOBALCHANGE(http://15october.net/)と連携しながら、さらにグローバルに広がろうとしている。
#GLOBALCHANGEは、10月15日に世界的な統一行動を呼びかけている。
10・15-16の脱原発統一行動も、このウォール街占拠闘争が呼びかける反貧困・反グローバリズム・平和をめざすたたかいに連帯していこう。原発を必要としない、平和で持続可能な社会を実現するためにも。仕事も、カネも、未来も、すべてを取り戻そう。この世界の住民の99%である、その他大勢である私たちのもとに。
---
(謝辞)
このエントリの作成にあたり、以下のレポートを参照させていただきました。筆者は独立行政法人の方なので、中立的な立場ですが、非常に充実したレポートでした。記して感謝します。
★「ウォール街占拠運動」が全米に拡大―労働組合、コミュニティ運動も合流
(独立行政法人 労働政策研究・研究機構)
http://www.jil.go.jp/foreign/jihou/2011_10/america_01.htm
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(資料1)アドバスターズについて
アドバスターズ・メディア・ファンディーション(Adbusters =広告退治屋)は、1989年にバンクーバーで設立。反商業主義、反消費主義、環境問題を掲げ、隔月刊誌アドバスターズ(Adbusters)を、全世界で12万部を発行している。
代表者は創設者兼編集長のカレ・ラースン氏(69)。
この運動の始まりは、森林伐採を正当化する材木会社のイメージ広告に、森林環境保護を求めるテレビCM枠の購入に踏み切ったものの、局側に拒否されたこと。設立の経緯や雑誌の雰囲気は、以下の記事に詳しい。
★広告収入ゼロで世界に12万部を発行する雑誌「アドバスターズ」
http://mediasabor.jp/2009/07/12_1.html
★Culture Jammers jp(日本語紹介サイト)
http://adbusters.cool.ne.jp/
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(資料2)ウォール街占拠に支持・連帯を表明した労働組合
・全米運輸労組ローカル100(Transit Workers Union Local 100)
・介護・看護労働者を組織するサービス従業員労組1199(1199SEIU)
・SEIU Local 32BJ
・全米鉄鋼労組(USW)
・ニューヨーク市AFL‐CIO
・教員連盟(Federation of Teachers)
・米国通信労働者組合(Communications Workers)
さらにこれらの組合を組織するニューヨーク市中央労働組合評議会(the NY Central Labor Council)が集会への参加を表明した。
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