新・私に続きを記させて(くろまっくのブログ)

ハイキングに里山再生、れんちゃん姉妹とお父さんの日々。

百年の恋・千年の都 『路地恋花 2』

2010年09月14日 | コミック/アニメ/ゲーム
『路地恋花』2 麻生みこと (講談社)


 ろぉじこいばな。京の路地に集う若き職人たちの恋物語。

 カバー絵が美しい。和紙風合いのエンボス模様紙もいいね。




 第1巻では、何と言っても元作家の喫茶「夏菊」主人と、ゴスロリ少女ナオミの年齢差ラブストーリーだった。

 本を読むナオミに声をかけている和装の女性が、「布小物屋佐倉家」のヒロイン・佐倉(気に入りました)。カバー見返しに描かれたトルソーの、意味ありげなドレスの作者でもある。





 クールビューティ。少しアンニュイな感じもいい。
 このセリフは「えきすぱぁと」とひらがな表記してみたい。京女ぽくてグッとくる、

 ……が、実は生まれも育ちも、丹後の山奥(うまく化けたね)。
 その実態は、友禅職人の師匠に、弟子入り志願のストーキング娘。

 高校の体験学習で友禅に出会い、その美しさに取りつかれた佐倉。
 卒業直前、美術系学校に進路変更。
 師匠に弟子入りを断られ続けて、もう3年になるらしい。
 一人で友禅染の練習するうちに、染めた布が山ほどたまり、
 この路地で布小物屋を開業。
 (ブ○イスやド○フィーのお洋服も置いています!)


 

 
 えきすぱぁと目指して、新作を持っては、師匠の意見を求めて追い続ける。
 「100年早い!」といわれても、佐倉はめげない。
 師匠の娘さんを情報源に、行きつけの居酒屋、カラオケスナック、競馬場、あらゆる場所に出没する。



 
 しかしかたくなに「帰れ!」と追い払い続ける師匠。
 「花札の会社」「体温計の会社」やらに入って、
 給料をためて、ばんばん着物を買ってくれた方がいいのだ。
 この師匠のせりふには、苦笑い。
 (その他、陶器の会社。下着の会社。くちさがなきものは京の人なりけり、か)
 
 あきらめの悪い佐倉に、師匠はあきれ顔でいう。

 「あんさんもこんなやもめにストーカーするより
 もっと他に見るモンあるやろ
 そやな 海外行き 海外
 視野を拡げといで」

 すると、佐倉は……




 この天真爛漫な佐倉に、笑ってしまった。
 ほんまにこの娘は。
 師匠も負けた。初めて工房に上げてもらえる。

 なぜ、師匠はかたくなに弟子を取ろうとしないのか。
 その理由は、少しせつない。

 しかし佐倉も負けていない。
 絶望するには、百年早い。
 師匠をまっすぐに見つめ返す、佐倉の表情がいい。
 この作者は、瞳を描かせると本当にうまい。

 ストイックな趣のこの師弟物語が、全編中最も美しく、胸を締め付けられるラブロマンスに仕上がっている。目も腕も手も、すべて自分のものにしたいという佐倉の一途な願いを、「恋」と呼ばずに何というのだろうか。

 『夏菊』が『痴人への愛』へのオマージュなら、この作品は川端康成『片腕』へのオマージュかもしれない。佐倉は文字通り、師匠の「片腕」になるのだから。百年の恋は、惜しみなく与える無償の愛に至る。

 佐倉の親友、ヒキコ・ニート・キリンさんな万華鏡作家もいい感じだ。(路地の住人も、住んでいることを知らない)。おっとり育った京女と、なにわ男(ガラス職人)のデコボコぶりが楽しい。





 大阪人にオチのない話は禁物?
 
 考えたこともないし、いわれたこともないが、そんなところは事実ある。(東京の方は、オチはつけなくてもいいので、お話は簡潔にお願いします)

 「金魚鉢の万華鏡」は、あったら欲しいね。最後になるが、全編を通じて、京ことばの美しさも特筆に値する。

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