榎本智史さんの「十二音の色彩~シェーンベルク生誕150年によせて~」に行ってきました。シェーンベルクの他はベルク、ヴェーベルン、ハウアー。
聴き終えた直後の率直な感想として「好きを追究した結果生まれた最高の形」ではないかと思いました。自分が演奏するスタイルの音楽ではないので、ご本人的には反省点があるのかも分かりませんが、榎本さんが伝えたいことは今日集まった聴き手の方々には確実に伝わったのではないかと思います。
プログラム構成は聴く側への配慮が大きく、美術館をガイドさんと一緒に周っているよう。榎本さんの「当時この音楽は理解されるのに100年かかると言われていました。今100年経ちました!」という言葉に笑いが起きましたが、本当にその通りだなぁと思いました。まぁ当時そう言った人達は自分が100年後生きていないからそう言ったのでしょう。榎本さんの話したように「それが今でも議論になる」というのはこれ如何に。
十二音技法についての本や著名なピアニストによる演奏は多くあります。しかし、魅力を伝えるためのその中間が無かったように思います。たしかに研究しつつそれを演奏で表現するというのは大変なものでしょう。しかしそのようなことが少なかったというのがこの100年後の結果ではないかとも感じました。
榎本さんがこのコンサートに向けて開催していた「私的演奏協会」やSNSでの発信は面白くて分かりやすく魅力的です、が、それらと同じくらい演奏が素晴らしいです。研究したものが血肉となりイキイキとした音楽となっているようにいつも感じるのです。
コンサートは1本を通してシェーンベルクとその周辺の作曲家たちの十二音への道を旅するものでした。たしかにしっかり理解するのは難しいかもしれませんが、そこに在る響きは紛れもない「音楽」そのものでした。
良いコンサートを聴くと興奮でとてもドキドキします。これは大きな会場のコンサートでもそうですし、直近で言えば加藤綾子さんのコンサートでも同じ感情を味わいました。今日のコンサートでも同じ気持ちになりました。
アンコールにはオブーホフの「互いに愛し合いましょう」。これは私が榎本さんに習った曲でもあり、今もちょくちょく弾いているお気に入りの1曲です。最初の音でなんの曲か分かった瞬間、本編最後のジーグで鳥肌が立っていたのになぜか涙目になるという😂アタシの情緒行方不明(笑)
帰りには思わず拍手したまま榎本さんに「凄かったです!」というはたから見たら変人に。
このような取り組みが遅れた100年を取り戻していくことと思います。100年経って理解され始めていく、その口火となったようなコンサートでした。