ただのサッカーブログ

世間知らずの人間が書くサッカーを中心とした個人ブログ。2020年からはサッカー以外の事も少しずつ。

表彰台での抗議禁止 正当 読売新聞文字起こし

2020-03-26 | Weblog
2020年令和2年2月9日、日曜日、読売新聞朝刊スポーツ面

表彰台での抗議禁止 正当
IOC最長老委員寄稿
政治・宗教・人種 五輪 人の価値尊重

国際オリンピック委員会(IOC)で最長老となる
ディック・パウンド委員(カナダ)が、
五輪での選手による抗議の禁止について本紙寄稿した。


芸術でも、世の中でも、事をせくあまり、思慮や正確さが
失われることがある。例えばIOCの、五輪憲章第50条。
それは五輪会場などでの政治、宗教、人種的な宣伝活動を
禁じている。表彰台での抗議も禁止だ。これには正当な
理由があるのだが、規定は選手の言論を不当に侵すと、
強く批判する人々がいる。

事実を整理しよう。1、五輪には現在206の国・地域が参加、
約40の国際競技連盟と、夏季大会で約1万1000人の選手を擁する
2、206の国・地域の間では、複雑な緊張関係が多く存在する
3、五輪は、国際社会の分断をよそに、世界の若者が集まり、
平和裏に競技を行うオアシスのような場だ。もちろん
五輪「バブル」は永続しないが、五輪が開かれるたび、
小さな希望が刻まれる。たった17日間とはいえ、
もし五輪で共存が可能なら、いつかは世界だって、と
4、今日の世界において、五輪以上の国際平和と親善の機会を、
提供できるすべがあるだろうか。何十億人もの心に届き、
感情を揺さぶる力を持つ何かを。

憲章第50条に戻ろう。これは新しい規定ではなく、政治や
宗教、人種等の違い、を超える、五輪の基本原則を
反映している。表彰台での抗議禁止は、IOC選手委員会が、
選手の意見を広く聞き取り作成したガイドラインで定めた。
抗議行為は他選手の、メダル獲得のために生涯訓練を
積んできた瞬間を、台無しにすることになりかねないからだ。

人には政治的な意見を持ち、それを表現する自由がある。IOCは
その原則に全面同意し、選手が記者会見やインタビュー、
ソーシャルメディアで意見を発する自由を明確に認めている。
ただし、自由な社会においても、権利には一定の制限が伴う。
第50条は、権利そのものの侵害ではなく、この権利を
行使する場面と場所を規定しているのだ。

違いに満ちた世界に生きる我々には、多様さを非難するのではなく尊重し、
共生のための意識変革を志向する義務がある。IOCはスポーツを通じ、
人々が平和のもとに一つ集まり、人間性を育み、違いを超えた出会いを
得ることを目指している。

五輪は、社会問題を解決する万能薬ではない。しかし大会を
支えてきた理念は、我々が進むべき、人の価値を尊重する道を照らす
ことができる。報復、特に見当違いの遺恨を断ちきることは、
その素晴らしい一歩になる。より良い社会を作る礎石として、
五輪という特別な体験を大切にしたい。

ディック・パウンド氏(Dick Pound)
元カナダ五輪委会長。1978年からIOC委員、副会長などを歴任。
世界反ドーピング機関(WADA)初代会長。弁護士。77歳。




3月25日(水) 閲覧数680PV 訪問者数370人

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