世界中で中国系住民に反日デモが呼びかけられています。ネット上では重慶市で9月2日に、フランスのパリで9月3日に、サンフランシスコで9月15日に、ニューヨークで9月16日に、ワシントンで9月17日に、反日デモが呼びかけられています。そして、満州事変の発端となった柳条湖の日本軍謀略事件から81年目になる2012年9月18日に、尖閣に不法上陸させた香港の団体「保釣行動委員会」は大規模な反日デモを呼びかけており、すでに香港と広東省広州ではデモの実施が計画されています。
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8月31日付のニューヨーク・タイムズには、半ページの意見広告が出され「釣魚島は太古以来、中国の一部だ」とし「日本の右翼が中国の領土主権を侵害している」「島の日本国有化の動きが右翼に扇動された」とし、アメリカ政府とアメリカ国民に「日本の挑発的行動を非難する」よう呼び掛けています。「もし日本がハワイは日本の領土だと表明したら、アメリカ国民はどう感じ、アメリカはどう行動するだろうか」と問い掛けています。
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意見広告を出した、陳光標は江蘇省政協委員で、東北大震災の際に、全国人民代表大会と中国政治協商会議両会の出席をキャンセルして、急きょ香港経由で日本入りし、被災地救援に乗り出したことでも話題になった人物です。組織したボランティアスタッフなど13人の「チーム・陳」とともに、千葉県、茨城県、福島県を訪れ、「チーム・陳」は、福島県では、廃墟に取り残されていた50歳の女性を救助したほか、福島の水素爆発のあった地点から40キロメートル近くにも近づきマスク以外の防護服なども持たず支援物資を届けました。
陳光標は、中国では震災の復興などの社会慈善事業で有名で、「全国抗震救災英雄模範」として知られています。これまで総額約8.1億元(日本円で約101億円)を慈善事業に費やしたことでも有名な中国の富裕層の実業家です。富裕層の偽善か「売名行為」だろうとの批判や、雲南省盈江県の地震では救命支援をしなかったと反発する一部の声もネットではありますが、権力腐敗に明け暮れる官僚にはとても真似のできない、その行動力を評価する声もあります。
2011年3月10日には、中国雲南省の(ジンポー族)自治州盈江県で大地震が発生し多数の死傷者が出ましたが、陳光標は自国の被災者支援よりも、3月11日に発生した日本の東北大震災の現地救援活動に熱中したのです。しかも4月に雲南省の被災者たちに寄付を行い訪問した際に、被災者達が陳光標からもらった援助金のお札を頭上に掲げたポーズを行って記念撮影をしたことが波紋を呼び、「慈善の暴力」と批判されました。中国人の命よりも日本人の命の救済を優先して、国内で批判された反省でもないでしょうが、今回ニューヨーク・タイムズに自費で釣魚島の愛国の広告を出したのです。
陳光標の所属する中国致公党は、外国から中国に戻ったいわゆる「帰国華僑」の政党で、1925年10月に成立されました。党員数は約2万人で、台湾民主自治同盟に続いて小さな政党ですが、2007年に副主席の万鋼が中国の科学技術部長に就任し、非共産党員の閣僚就任として話題を呼びました。中国には現在、共産党以外に8つの合法的な政党が存在していますが、何れも綱領に中国共産党の指導を受け入れる事を明記させられており、共産党の衛星政党と言われます。共産党の一党独裁政策で政権参加から事実上は排除されています。
中国政府は釣魚台については、日本政府に対して(1)上陸させない(2)(資源・環境)調査をしない(3)開発しない(建造物を造らない)と3条件を策定し、現状維持を求めていく温和な方針を内部決定しています。反日デモ隊を強制解散するなど反日感情の広がりを防ぐために当局は努力しており、反日デモのネットの呼びかけも、当局によって中国国内では削除され続けています。しかし、保釣行動委員会等は海外の中国系住民にも呼びかけを始めたようです。
しかし、反日デモを取り締まる一方で、日本の歴史的認識の誤りについては、中国当局の批判姿勢は堅持されています。新華社通信は8月28日報道で、韓国の慰安婦問題について論じ、彼女たちを集団強姦や強制流産で苦しめるだけでは足らず、死後にも屈辱感を日本は与えているとし、「驚愕と怒り、失望を感じる」と激しく批判しました。「1993年に慰安婦動員の強制性を初めて認めた河野談話の発表後、日本の教科書7種類で関連内容を教えたが、2007年以降は消えた」とし、日本の歴史意識の後退を指摘しています。安倍晋三元首相は「宮沢・河野・村山3大談話をすべて修正しなければならない」と主張し、橋下徹大阪市長が「強制的に連行されたという証拠があれば韓国が出せばよい」と最近述べたことも紹介され。慰安婦の歴史を否定する日本の政治家の妄言リレーが続いていると報道しています。
(中国からこれまで慰安婦問題が当局からは出されていなかったため、これに、日本政府は当惑しているともいわれます。韓国のような市民活動による慰安婦批判活動は、中国では起こっていませんが、中国は日本軍による慰安所が最初に設置された地で、日本の裁判所では、賠償請求は棄却されたものの、事実認定を受けた被害者も多数存在しています。)
また、台湾では、台北市の日本の対台湾窓口機関、交流協会台北事務所の事務所の石碑にオレンジ色のペンキがかけられ、石碑には「慰安婦紀念碑」とプリントされたシールが貼られており、8月31日に警察通報されたことが報道されています。領土だけでなく慰安婦をめぐる日本の歴史認識の問題は、韓国だけに留まるものではなかったのです。
また、駐中の丹羽大使の車に掲げられた日本の国旗が奪われた事件で、中国政府は犯人を特定しながら、逮捕・起訴を見送り、日本政府はこの対応をいち早く認めました。日本政府は当初(「大使の車を襲って国旗を奪ったことは、日本に対する侮辱」として当然のことですが)強硬立場を見せていました。しかし、急遽態度を変えてしまいました。
(国内世論を配慮とも、逮捕すると反日デモを煽る、とも日本では報道されていますが、刑事責任を追及せず逮捕しないことは益々愛国無罪の暴動を煽る可能性があるのではないでしょうか?。実際過去にデモで大使館の窓ガラスを割った中国市民は逮捕されているそうです。)中国当局は、突発的な事件とも強調しましたが、捜査時点では、ナンバープレートの偽造もありプロセスが思った以上に複雑であるとも言われました。何か奇妙な事件でした。突発ではなく、丹羽大使の国旗を奪うことは、計画された事件ではなかったのでしょうか。一応計画(そして何だかの目的)は達成されたので、犯人達は、中国社会で英雄の名乗りさえもあげず、刑事責任を免れ罰金だけで事件の幕引きが何故か、静かに図られるようです。
日本政府は、丹羽大使を10月には交代させる方針を固めたとも言われています。 外務省は9月8日に会期末を迎える今国会の閉会後に幹部や主要国大使の人事異動を行う予定で、丹羽氏もその一環として交代させるとも報道されていた時期でした。(丹羽氏が英紙フィナンシャル・タイムズのインタビューで、都による尖閣購入計画について、「実行されれば日中関係に重大な危機をもたらす」と述べたため、東京都の石原慎太郎らは不快感を示し、自民党は、安倍晋三元首相などを中心に議員44人が連名で、丹羽大使に抗議文を郵送し、日本の一部勢力が右翼等を中心に「売国奴」と丹羽大使を非難している真っ最中の事件でした。
丹羽大使の国旗を奪うことが計画されたものだとすれは、この事件で誰が利益を得たのでしょうか。韓国でしょうか、ドイツでしょうか、アメリカでしょうか。中国当局は日本の右翼だとも言っていますが、これはどういうことでしょうか。
真相は闇の中です。発表された中国人4名(内女1人、何れも若者)の事情聴取では、安徽省ナンバーのBMW、北京市ナンバーのアウディに乗った犯人は「当初から計画していたのではなく、日本の国旗を掲げた大使の車を見かけて犯行を思いついた」といい。2台の車の犯人たちは面識がなかったといいます。
しかし、三非の外国人排他キャンペーンもあり警戒の厳しかった北京の白昼堂々と行われた事件です。中国では、丹羽大使はあまり有名ではありません。しかも、その車が大使の車とは、一般の人は、まず知りません。(日本でさえ、ファミリーマートを作った商社マンが中国大使になったと話題になった程度でしか知られていません。)
また、BMWやアウディに乗れる階層は日本製品を愛する金持ちです。反日デモに参加する階層とは違うような気がします。富裕層の愚子息の気まぐれでしょうか?。しかし、中国政府はこの事件で世界中で非難され、実際面子が丸つぶれとなりました。中国関係者だとすれば、おそらく北京に打撃を与えたい反体制勢力とも思われます。
ネット上では、大使車を襲撃した男を「民族の英雄」とする書き込みもあいつでいることから、反日デモも含め中国の権力闘争が絡んでいる可能性も十分ありますが、実際は10月の政権交代を控えどの勢力もトラブルは避けたい状況にあるはずです。また、中国当局の自作自演はメリットもなく考えづらいところです。
韓国は、慰安婦問題は解決したいけれど、実効支配している竹島問題では日本にこれ以上騒いでほしくないのが本音でしょう。日中間がさらに悪化すると「竹島不法占拠」への日本の感情の悪化も拡大するため韓国のメリットもあまりないはずです。
サンデー毎日9月9日号の記事では、外務省筋から漏れてきた「竹島・尖閣」で「民主党潰し」を謀る米国の影という報道で、元公安調査庁「菅沼光弘」等のコメントなどを載せ、従来から「竹島・尖閣」をアメリカが対日本政策に利用してきたことを指摘しています。
確かに、アメリカ政府は、尖閣諸島に対する日本の「施政権」(日米安保の対象領域)は認めていますが、日本と中国の「主権」の争いについては態度が不明です。一貫して尖閣諸島の主権問題では中立の立場と強調しており、日米安保とは矛盾する態度をとってきました。
8月29日に、この尖閣諸島のアメリカ政府の対応を巡って、中国国営メディアの記者がアメリカ国務省のヌーランド報道官に激しく意見をぶつける場面もありました。
しかし、丹羽大使の車が襲われたことについて、「駐在国に対して外交官への保護を義務付けたウィーン条約違反」として外交問題にでも発展すれば日米安保の対象領域としながら、一方で尖閣諸島の主権の帰属には中立の立場をとるアメリカのダブルスタンダードが崩壊するでしょうからメリットは少ないと言えるでしょうか?
中国の脅威を煽ってオスプレイ配備を強行するアメリカですから、美国の謀略の可能性も十分にあり得ます。しかも、アメリカには、アジア・太平洋の経済支配を中国・日本・韓国の3国連合からTPP(関税撤廃)をテコに奪い返したい経済状況とあせりがあります。
8月15日には、アーミテージ元米国務副長官ら超党派の外交・安全保障専門家グループが、日米同盟に関する新たな報告書を発表しています。2000年と07年に続く第3弾で来年1月に発足する米新政権が民主、共和両党のどちらになろうと、日米同盟に関する一貫した政策の遂行を求める目的でまとめられました。
報告では、日韓の緊張緩和のために米国として外交努力をすべきだとした上で、日本に対しても韓国との歴史問題に向き合うよう求めるなど、日米韓の関係強化が不可欠だとしていました。また、近隣諸国から差し迫った脅威を受けており、尖閣諸島を事実上の「核心的利益」と位置付け、海軍を増強している中国軍との偶発的な衝突に備え、米軍と自衛隊の相互運用能力を高めるべきだと強調しました。竹島は煽りませんでしたが、尖閣諸島について、アーミテージ元米国務副長官らアメリカ軍事関係者は明確に煽りました。
10年間にわたって日韓中の交渉が続けられてきた日中韓自由貿易協定(FTA)の協議がようやく進み、新たな貿易区が世界経済の成長の原動力になると予想されていた最中でした。
日本と韓国は、欧州金融市場の不安定化に対応し2011年10月から1年間、日韓通貨スワップ協定の限度額が総額130億ドルから総額700億ドルに増額し外貨準備高の少ない韓国の金融市場安定を日本が支援する体制を組みました。
(1997年宮沢内閣がアジア通貨危機の際に構想された「アジア通貨基金」はアメリカやIMFから反対され潰されましたが、昨年日本と韓国は通貨支援体制を実施してしまいました。)
日本と中国は、2012年6月1日からドル換算を通さない円と人民元の直接交換(ドル換算手数料の節約・コストダウンと、利便性の向上、ドル相場の変化の影響回避)を東京と上海の通貨市場で開始し始めドル支配を離れようとしています。
対外純資産で世界1位の日本と2位の中国は、米国債保有でも(世界1位が中国8.1%で2位が日本6.4%:2011.6時点)世界最大規模で、ドル市場を実質上支えている2国です。その2国がドル支配から離れ始めることは、実際アメリカにとって死活的問題であり脅威でもあります。
(オバマ政権元高官の回顧録は、2009年鳩山政権が提唱したドル抜きの「東アジア共同体構想」は当時の日米関係の最大の懸念だったと指摘し、米国側は水面下で「全く容認できない」と日本側に伝えて反対したことも暴露していますが、今年日本と中国は、ドル抜き取引を実現し始めてしまいます。)
しかも、東京都の尖閣諸島購入計画が発表される前までは、中国政府は、東シナ海のガス田共同開発と東シナ海での日本との協力関係構築を目指し「海洋の環境保護」分野で日中共同事業実施を提案し、日本側も基本的にそれに応じる方向であると今年4月初めには日中の協力関係が報道されていました。(2008年に日中合意に至った東シナ海ガス田の共同開発がようやく動き始めようとしていた矢先でした。)
日本にとって韓国は中国、アメリカに次ぐ第3位の貿易相手国で、韓国にとって日本は中国に次ぐ第2位の貿易相手国です。(2011年の二国間の貿易総額は対前年比6.0%増の約8.44兆円。)投資額でも現在日本は、世界1位の対韓国投資国です。
日本にとって中国は第1位の貿易相手国で、中国にとって日本はEU、アメリカに次ぐ第3位の貿易相手国です。(2011年の二国間の貿易総額は前年比14.3%増の28兆円。)投資額でも現在日本は、香港を除けば世界1位の対中国投資国です。
日中韓三カ国が世界経済に与える影響はすでに大きく、日中韓のGDP(名目2011年)は世界の約21%(EU欧州連合25%、米国は22%)を占めており、もうアメリカ経済の規模を追い抜こうとしています。しかも、アメリカ経済の実態は貿易収支面でも最悪の状況です。アメリカは(1970年代末から長く経常赤字の状態を継続し1986年に純債務国に転落)世界最大の貿易赤字の債務国家です。
アメリカ議会予算局(CBO)の今年夏発表では、来年のアメリカの実質GDPの成長率は-0.5%と予想されました。オバマ政権は議会に来年から緊縮財政をとり財政再建を約束していますが、これが実行され、ブッシュ政権以降の減税も終了するとアメリカは長期の財政デフレの不況(財政の壁)に陥りGDP成長率は来年から毎年マイナスとなることが予想されています。IMFの調査によると、アメリカの財政の崖で、2013年の政府支出は大幅に減少すると予測されています。その減少額は米国の現在のGDPの4%にも相当します。アメリカ経済の全面的な衰退が始まる危険性がすでに予測されているのです。
その正反対に日中韓三カ国は基本的に貿易黒字の経常黒字国です。(日本を除いたアジア全体の経済規模で評価しても(購買力平価ベースで)アジア経済は2009年からEUもアメリカのGDP規模も上回っています。しかも、EUとアメリカのGDP比率は毎年のように減少する反面でアジアのGDPは増加し続けていきます。)
アメリカにしてみれば、世界の憲兵と自国の繁栄を維持するためには、あらゆる手段を講じても、この三国を分断し、アジア経済の再支配をアメリカ中心に図る必要があります。(実際、アラブの石油ラインの利権確保と軍事産業の大利益を得て景気高揚したときには、戦争理由を捏造までしました。結果として旧アフガンと旧イラクは滅亡させられました。過去10年間に中東の戦争に大きな国力を消耗してきたアメリカは昨年イラクから撤退しました。次に軍事力を背景に経済覇権を図るのはアジアと位置づけています。)
アメリカはGDPだけでなく世界最大の軍事大国です。ソ連なきあとはもう世界で独占状態です。アメリカが煽る中国の脅威など問題にならない規模です。年間の軍事費でみると、世界第2位になり毎年大幅に増額する中国の軍事費はまだアメリカの5分の1で、日本はアメリカの12分の1規模です。世界の年間の軍事費の41%が(2011年)がアメリカによる軍事支出です。アメリカは年間のGDP(名目)の4.7%を軍事費に費やしています。
一方、安保体制の下自衛隊しか持たない日本の軍事費はGDPの1%です。また、中国は、毎年軍事費を拡大していますが、かつて小平の時代に大幅な軍縮を行った影響もありGDP比では1.28%程(名目GDP比で1.96%)です。(日本も中国も軍事費を抑えて高度経済成長を成し遂げた点では共通しています。)
軍事費は平和時においては全く付加価値を生まない負の費用です。戦争で収奪を行うことでしか付加価値をもたらさないのです。一般に軍事が海外にまで展開して利益を得る機会とは、基本的には自国の利権を守るときか戦争で収奪を行うときです。
戦後、日本の貿易シェアの約40%は対アメリカ貿易で、アメリカが日本を軍事面だけでなく、経済も完全支配していました。
その構造は1990年まで続き、日本経済は完全な対米従属の構造でした。それが、2011年には、アメリカの日本貿易のシェアは11.7%にまで落ち込む一方で、中国は20.6%、台湾やシンガポールのような中華圏でみると30%になりました。そして、(中国、韓国、インドネシア、インド、フィリピン、ベトナム、タイ等のアジア圏でみると)今日の「貿易立国・日本」の貿易総額の50%を、アジアとの貿易が占めるようになりました。
今日の日本は、アメリカの経済支配を離脱して、アジアを中心として、日本経済は自立してしまいました。これに対して、アメリカはTPPで猛烈に巻き返しを画策していました。かつて、江沢民政権が「抗日戦争」を「反ファシズム戦争」と評価し、アメリカや台湾の国民党の融和を打ち出したときも、2005年の「反日デモ」のきっかけもアメリカとアメリカ華僑からの働きかけであったと言われています。
(しかし、謀略は昔は、日本のお家芸でもありました・・・。戦前に川島芳子が中国人の殺し屋を雇い、1932年1月18日に上海の日本人日蓮宗僧侶を襲わせて日本軍の軍事拡大を図った第一次上海事変を連想する人もいるようですが・・。戦後の日本では、謀略は考えにくいところです。また、1999年に江沢民の命で発足された中国の秘密諜報部も有名で、法輪功への迫害や台湾やチベット、ウイグルの反中国組織の監視などや北京オリンピックの際の工作や情報操作などを行ったとも言われますが、工作はまだお粗末です。また、今年は、日中国交正常化40周年にあたる年で中国当局では、数多くの記念行事も企画されていました。実際、尖閣問題が顕在化するまで日中の当局間には関係悪化のメリットは何もなかったはずです。)
丹羽大使襲撃事件の翌日、8月28日に中国では右翼として有名な東京都の石原慎太郎知事は、アメリカのウォール・ストリート・ジャーナル/ダウ・ジョーンズ経済通信とのインタビューで、「私は日本を第2のチベットにしたくない。」と中国批判をし、青嵐会の仲間と一緒に尖閣に灯台を昔作ったことを自慢しましたが、「アメリカは、日本が強い意思表示をすることに反対して、『穏やかにやれ、話し合いでやれ』と言って、あくまで日本に力を貸さなかった」と、アメリカの過去の対応を批判しています。また、通信基地を作り、港を作り、気象観測所みたいなものをやらないと、実効支配にならないと思う、とまで言い、現状の日本政府の実効支配が不十分だとも指摘しました。
実は、石原慎太郎が4月16日に「尖閣諸島を購入することにした」と最初に発表したのも、日本ではなく、ワシントン市内のシンクタンクに招かれての講演でした。招いたのは共和党系のヘリテージ財団で、 チェース・マンハッタン銀行、ダウケミカル、フォード、ゼネラルモーターズ、モービル、P&G、グラクソ・スミスクラインなど100近くのアメリカの大企業から継続的な長期の寄付を受けている組織です。
そのワシントンの講演で石原知事は「東京が尖閣諸島を買うことで米国が反対することはないでしょう」とアメリカ当局への牽制まで石原知事はしています。それは用意周到で計画的なものでした。石原知事の4月16日講演の直前の4月8日には、フィリピン海軍が尖閣と同様に中国と領有権を争っているスカボロー礁近くで中国の漁船8隻が停泊しているのを発見し、フィリピン海軍がそれを拿捕したのを受け、中国の監視船が現場に急行し、フィリピン軍と中国軍が睨み合っている真っ最中の状況での発表でした(昨年フィリピンは、アメリカと日本に支援を要請しフィリピン国軍とアメリカ軍は、過去最大規模の合同軍事演習をしています。今年4月28日、日本は、フィリピン、マレーシア、ベトナムの3カ国を対象に、巡視船供与などを通じ海上保安機能の強化策を支援する方針「戦略的ODA」を中国の脅威に対抗して決定し、5月にフィリピンは日本から巡視船10隻を導入することを発表しました。
7月27日に、石原知事は東京都民の税金での米紙「ウォールストリート・ジャーナル」に尖閣購入への理解と支持を求める政治主張の意見広告をアメリカ人向けに掲載しました。意見広告では「中国と対峙するアジア諸国を支持しなければ、アメリカは太平洋の全てを失いかねない」とまで主張し、東京都は(都民の意思は別にして)アメリカ世論に働きかけています。そして今回、世界中で中国系住民に反日デモを呼びかけた陳光標の広告も何故かアメリカでした。日中間の領土紛争を煽る挑発行為はなぜか、4月も7月も8月もアメリカの地で始まっているのです。
石原知事も陳光標もアメリカ世論で政治は動いて、平和に領土問題が解決するとでも思っているのでしょうか。事態は全く逆に日中関係は悪化の一方です。逆説的な見かたをすれば、アメリカ(民間やメディアを問わず)が日中関係の悪化を煽っているかのようです。石原知事も陳光標も利用されたと見る人もいます。
今回、中国公安当局は、捜査の途中で状況を明かすという極めて異例な対応をし、日本政府も、急遽当初の方針を変更しこの不逮捕の対応をいち早く承認したようです。なにか、中国・日本両国が避けたい大きな勢力が、この事件の背景にはあるのではないかと推測する人もいます。事件は東京都と日本政府の交渉が行き詰まった数日後の事件でもありました。
犯行があった8月27日、日本政府は、尖閣購入に向けて東京都が提出していた上陸申請を許可しないと回答しました。それに対し、石原慎太郎は10月には自身が尖閣に行くと公言し「逮捕するなら 結構」と法律を無視することまで宣言して、政府に憤慨したことも象徴的でした。何故かすべてがタイミングよく、事態は全て日中悪化を煽っています。
しかも、中国では来月政権が交代予定です。日本も民主党政権が行き詰っています。4月時点では、日中関係が悪化することの両国のメリットは何もなかったのです。最悪化させた日中をアメリカが和解させ両国の新政権に対して外交上のイニシアティブを取る構図があるのではないかと推測する人もいます。
実際、今回の事件で一番勢いづいたのは、日本の右翼勢力で、メリットを受けたのは実はアメリカだけだといえるのかもしれません。
日本では9月1日は防災の日です。89年前、関東地方南部に大きな地震が起こり、東京、神奈川に大被害が出ました。死者・行方不明者は10万人を超え、日本社会は大混乱しました。
1923年9月1日当時の日本は、1919年3月1日に起こった朝鮮独立運動の鎮圧事件が日本でも知られ始めた時期であったため、地震の混乱の中で日本の民衆はパニックの暴動を起こしました。
1919年3月1日に、ソン・ビョンヒをはじめとした民族代表33人が、パゴダ公園(現在のタプコル公園)で独立宣言書を読み、朝鮮民族の自主独立を宣言しました。これをきっかけに、日本からの独立を求めるデモが全国に広まります。しかし、このデモを抑えようと、日本政府は武力弾圧を行ない、多くの朝鮮民衆が無差別に殺害されました。7,509名にものぼる民衆が命を落としました。日本でも知られるアリランの歌を広めた映画は1919年独立運動で逮捕された男のその後の悲劇でした。
関東大震災では「地震の火災は朝鮮人がもたらした」「朝鮮人が日本で暴動を起す」「井戸には毒薬を投げ込んだらしい」「強盗、強姦、殺人を犯している」と、デマばかりが当時広がりました(実際暴動を起こしたのは日本人の側でした)。軍隊・警察、在郷軍人会、消防団、自治青年団が中心となって組織した自警団は関東各地で数千人の朝鮮人と数百人の中国人と一部の日本人さえ無差別に虐殺しました。(虐殺者総数は当時の集計で6,661名という数字があがっています。)日本の自治体レベルでは多くの虐殺記録が記録として残されましたが、日本政府は、当時この虐殺事実を隠蔽しました。
しかし、震災の翌年、「賀川豊彦」らが発起人となり、「朝鮮人および中国人虐殺懺悔祈祷会」が行われて以来、日本では毎年9月1日にはキリスト教団体等が合同祈祷会をひっそりと行ってきました。また、犠牲者の中に日本人(社会主義者や無政府主義者や東北訛りで朝鮮人に間違われた人々)も含まれており、虐殺事件は戦後の日本の民主化の中で詳しく解明されていきました。それは、戦争行為でもなく、日本国内で、地震でパニックになり、当時の軍国主義と風評で洗脳された日本民衆自身の手によるホロコーストでした。
竹島問題で韓国との歴史認識の相違が話題となりましたが、天皇が来るなら「韓国の独立運動家に、謝罪するといい」と言った李明博大統領の発言を歴史を教わらなくなった最近の日本の若者は理解できなかったそうです。(天皇陛下に対する非礼な謝罪要求だと日本では戦前の如く感情的な反発ばかりが相次ぎましたが、実は韓国が解決に向けて発した、日本政府のベストプラクティスのサゼッションでもあったと思います。)
アリランや3.1が韓国の休日なのを知っている人さえ、朝鮮独立運動を多くの日本人は実際ほとんど知らないと思います。
(中国の見解)
日中間の争いは将棋であり、匹夫の勇に頼っては中国は何も成し遂げられない。中国には西太平洋で日本やその背後の米国と駆引きをする大きな勇気と知恵が必要だ。この地域では厄介なフィリピンとベトナムもあり、中国の台頭を抑え込もうとする様々な野心がある。乗用車から日本国旗を引き抜くのはいたずらっ子のままごと遊びのようなものだ。われわれが引き抜かなければならないのは、某勢力が中国周辺地域で振り回している目に見えない旗なのだ。 中国の発展はすでに多くの外部勢力が不愉快に思い、危機感さえ抱く段階に達している。中国の対外摩擦は今後増加し、一部は先鋭化する可能性が高い。中国の大衆は観覧席で気をもむばかりで手を出せない観衆ではもはやなくなる。われわれの参与は事実で、しかも重みのあるものだ。われわれは外交競争の背後で世論の雰囲気を形作る重要な存在なのだ。
中国が外国との肝要な駆引きでより主導的になり、より優勢に立つこと。これは圧倒的多数の中国人の願望であり、われわれにはこうした局面の出現を促す力もある。われわれは揺るぎなく団結し、いかなる時であれ相手に中国を攻撃する弱みを握られたり、口実を与えないようにしようではないか。(「人民網日本語版」2012年8月28日)