
来年参院選の公約に憲法改正を掲げると明言した安倍首相は、国防軍の創設も図る意向と言われていますが、安倍政権は10月23日からおよそ2万5000名の自衛隊員を参加させる大規模な軍事演習を開始しました。今回の軍事演習は10月23日から22日間の日程で、鹿児島市の港には奄美群島や沖縄に部隊を展開する訓練を実施、地対艦ミサイル部隊の車両などおよそ150両が次々と運ばれました。
国政においては、野党5党が、10月21日に(衆参いずれかの議員の4分の1以上の要求があれば内閣は国会召集を決定しなければならないとする憲法53条の規定に基づき)125人の衆議院議員と84人の参議院議員による臨時国会開催の要求書を国会に提出したのですが、安倍政権は、この国会議員達の臨時国会開催要求を完全に無視して、秋の召集を見送る予定です。大筋合意されたTPPの国会承認手続きも必要なはずですし、この秋に安倍政権は新閣僚で再スタートしたはずなのですが?新閣僚の国会デビューの機会も遅らせるようです。この時期に臨時国会を召集しないのも平成17年以来10年ぶりの異例事態だそうです。違憲立法の安保法制の強行成立に到った憲法クーデター政権は、引き続き憲政を無視する暴挙の政治を継続して行くようです。
先立つ10月18日に安倍首相は、神奈川県相模湾で行われた自衛隊観艦式等に出席し巡閲した後、訓示を行い、護衛艦「いずも」を視察した後、新規に配備された原子力空母ロナルド・レーガンの見学も実施しました。自衛隊員を前にした安倍首相の訓示は美辞麗句の中に巧妙に戦後の歴史を偽る言葉も鏤めていました。
(アメリカ海軍の原子力空母ロナルド・レーガンは長さだけ333メートルでデッキ面積はサッカー場約3倍にの広さで約80機の戦闘機などを載せ20年間燃料供給なし運航できます。船内には、2基の原子炉を備えています。原子力艦船が首都圏近くの横須賀に常駐するということは、約3千万人が暮らす日本の首都圏に原発が設置されているのに等しいリスクとも批判する人もいます。実は、原発に比べても原子力艦船は危険性が高いことも指摘されています。アメリカ軍の原子力艦船はこれまで数々の事故を起こしていますが、秘密主義が徹底され、事故の実態はほとんど明らかにされていません。)
「残念なことに、諸君の先輩たちは、心無い、多くの批判にさらされてきました。中には、自衛隊の存在自体が憲法に違反する、といった議論すらありました。」と安倍首相は訓示で憲法改正を煽るような言葉を述べました。しかし、1946年6月第90帝国議会衆議院帝国憲法改正案特別委員会で吉田茂首相は、「・・第9条第2項に於て一切の 軍備と国の交戦権を認めない結果、自衛権の発動としての戦争も、また交戦権も抛棄したものであります。 従来近年の戦争は多く自衛権の名に於て戦われたのであります。満州事変然り、大東亜戦争然りであります。・・」「・・国家正当防衛権による戦争は正当なりとせらるるようで あるが、私は斯くの如きことを認むることが有害であると思うのであります。近年の戦争は多くは国家防衛権の名に於て行われたることは顕著なる事実であります。故に正当防衛権を認むることが偶々戦争を誘発す る所以であると思うのであります。又交戦権抛棄に関する草案の条項の期する所は、国際平和団体の樹立に あるのであります。国際平和団体の樹立によって、凡ゆる侵略を目的とする戦争を防止しようとするのであ ります。併しながら、正当防衛による戦争が若しありとするならば、其の前提に於て、侵略を目的とする、 戦争を目的とした国があることを前提としなければならぬのであります。・・」と述べています。そもそも日本政府自身が自衛権そのものを否定したのが戦後の出発点の歴史です。決して、心無くなどありませんでした。憲法制定当時には、自衛隊なるものが想定されていなかったのが歴史の真実です。
「・・先人たちは、変転する国際情勢のもと、平和を守るために、そして、平和を愛するがゆえに、自衛隊を創設したわけであります。」と安倍首相は嘘までも平然を織り交ぜて語りました。事実としては、1950年の朝鮮戦争時に、アメリカが占領政策を変更し、GHQの指示(ポツダム政令)で警察予備隊が総理府の機関として組織されたのが、陸上自衛隊の始まりとされており、日本が平和を愛するがゆえ創設したのではなく、アメリカが朝鮮戦争準備のため日本に押し付けたのが、その創設の歴史でした。その後、1954年の自衛隊法で海上保安庁の警備隊が海上自衛隊に編成、航空自衛隊が新設されました。
「アジア太平洋地域における諸君の確固たるプレゼンスが、米国や、志を共にする民主主義諸国とともに、冷戦を勝利へと導き、そして日本の平和を守ってきた。そのことは、歴史が証明しています。」と、今回に限らず、70年安倍談話でも「冷静勝利」と言う言葉を安倍首相は使用しましたが、これも大きな嘘です。冷戦はドイツの壁が撤去された東欧革命で終結し、ソ連の崩壊は、軍拡の経済疲弊と統制経済の失敗とチェルノブイリ原発事故等による自滅であり、決して、勝ったとか負けたとか言う認識はなかったと思います。
事実としては逆で、アジアでは、世界対戦直後にソ連・中共が台頭し、アメリカが介入した朝鮮戦争は、多くの犠牲をもっても、北朝鮮の覇権策謀をアメリカは阻止できず、その後の朝鮮半島の悲劇の分断は今日も続き、アメリカと同盟関係にあった国民党は中国大陸を追われ中国大陸は共産化しました。
むしろ、アメリカが世界対戦後最大の力を注いだ共産主義との冷戦と言う意味では、1962年にはキューバ危機が発生し、アメリカ本土の真下に冷戦の敵国・ソ連の同盟国として共産化したキューバの軍事基地が固定されたのです。アジアで米ソの覇権争いの戦闘が具現化したベトナム戦争では、アメリカは撤退を余儀なくされ、南ベトナムの共産化等、
仮想敵国(ソ連)は自己崩壊しましたが、冷戦下でアメリカは常に実質敗北してきたのが歴史の真実です。 そして、かつて、東欧だけでなく、アフリカやアジアなど、世界中で共産国家が成立する気配に、怯えたアメリカが、アジアの共産化を防止するための、共産主義の防波堤としての主要な軍事拠点の一つが沖縄であり、日本でした。現在、世界の独立国の中で、他国の軍隊がたとえ防衛名目でも軍事占拠を継続してしている国は、半植民地化しているアフリカの一部を除き、日本ぐらいではないでしょうか。これが安倍首相の言う「希望の同盟」の真実です。
(日本に限らず、いつの時代も信頼を失いかかった権力は嘘で民衆をコントロールするのが常でもあるようです。)
中韓における安倍外交の失政も際立ってきました。
韓国の朴槿恵大統領の名誉をコラムで傷つけたとして在宅起訴された産経新聞の加藤達也前ソウル支局長に対する第10回公判が10月19日、ソウル中央地裁で開かれ、結局検察側は「コラムは(朴大統領らを)誹謗する目的で書かれた」として懲役1年6月を求刑しました。判決公判は11月26日に行われますが、本来は韓国司法の判断に委ねられるまえに安倍外交が政治決着させるべき言論事件でした。検察主張は「産経新聞は、被告がコラムを書いた12日前に別の報道が原因で大統領府から出入りを禁じられており、抗議の意味で報道した」「被告に反省も見られない。」としています。
中国については、スパイ容疑での日本人拘束についての交渉は進めているのでしょうか?むしろ、安倍政権は火に油を注ぐ驚きの外交を展開する様子です。10月に中国がユネスコも申請した「南京大虐殺」に関する資料が世界記憶遺産に登録されたことを受け、安倍政権は、こともあろうに、ユネスコに対する日本の分担金や拠出金の「支払い停止」を言い出しました。まるで、対中国の安倍外交の失政をユネスコの責任に転化させるような行為です。戦前に国際連盟を脱退した日本は「1億火の玉」と国民を煽って戦争に突き進みましたが、安保法制で集団的自衛権の戦争を解禁し「1億総活躍」社会を国民に提唱し、一億総背番号のマイナンバー制度を導入し民衆の税や動向をも監視しようと言う統制国家を目指している安倍政権の突き進もうという道とは、実は戦前のかつて来た道と同質なのだと言う人もいます。戦前に日本は満州に進軍し、国際連盟で、満州国の傀儡が批判されると、反発した日本は国際連盟を脱退し、全世界を敵に回し、世界戦争にも進みました・・・。当時の狂った歴史の再来にならなけれないいのですが・・・・・。
(実は、これもアメリカの意向にそった様子です。ユネスコの最も新しい加盟国はパレスチナですが、2011年10月31日に総会が開かれ賛成107、反対14、棄権52でパレスチナは国家としての正式加盟が承認されました。しかしアメリカ、イスラエルなどは反対を表明し、日本などは棄権しました。アメリカは、この決議案採択への対抗措置として、ユネスコ分担金の停止を実行している最中なのです。しかし、国連もそうですが、多数決できまるのです。その多数決の背景は、いかに大儀があるか、友好国が多いかによるものです。拠出金に比例して発言権があるわけではないのです。)
昨年度のユネスコ予算の日本の分担金は、トップのアメリカ22%に次ぐ約11%ですが、これで、日本が抜けると、中国などの発言が益々強くなりますが、中国外務省の華春瑩副報道官は10月12日の記者会見で、ユネスコの世界記憶遺産への登録が、今年は見送られた慰安婦問題について、今後は他国(韓国等)と共同での再申請を検討するとも述べているのです。既に、ユネスコ国際諮問委員会からは、今回の中国の登録見送りに関して「慰安婦問題の他の被害国との共同申請を勧められ、2017年に行われる次回会合で審査するとの説明があった」とされているのですから、今後の日本の分担金や拠出金停止のまねく結果とは、むしろユネスコ加盟国の反発も招き、逆効果になるだろうとも言われます。
安倍改造内閣の新閣僚は人気狙いの布陣の様子です。
過去に住居侵入の上で下着泥棒をした疑惑(高木)や暴力団交際疑惑(森山)や違法献金疑惑(森山、馳)、公職選挙法違反疑惑(島尻)のスキャンダルがあろうが、コメディのような意味不明な発言(丸川、馳、島尻)が多々あろうが、大臣なのです・・。
民衆は決して怒らず、マスコミに登場して話題になるだけ、逆に妙に人気が出るのが日本政治の不思議です。
(日本の民主主義はやはり恥じらいがあるので怒らない?)
恥じらいと言うより、忘れ安く、嘘の政治、国民を侮辱した政治にも悪慣れしたと言うべきでしょうか??福島の汚染水や汚染土処理・事故終息や原発の安全神話もそうですが、マンションの性能データ偽装も、悪慣れが影響していないでしょうか?「みんなで靖国神社に参拝する国会議員の会」が10月20日に衆参両院の国会議員71人を伴い参拝し、安倍内閣からは、高鳥内閣府副大臣、土屋総務副大臣、武藤外務副大臣、渡嘉敷厚生労働副大臣、井上環境副大臣のほか、政務官3人が参拝しました。先立って、安倍首相は10月17日に真榊を奉納し、高市総務大臣と最も宗教的中立を守るべき立場の岩城法務大臣までが10月18日に参拝していますが、悪慣れした日本国民の多くは、もう怒りもしません。あたり前の政治が憲政の原則が踏みにじられて、公平・潔癖な価値観が忘れさられていくようです。)
民衆の運動が政治を変えた経験は実は日本ではまだ一度もありません。日本のデモクラシーは初心そのものです。P
初心の恥じらい(矜持)と言えば王菲の透明な歌声が好きですが、姚貝娜も聞かせます。
(矜持はPrideや誇りと言う意味もあります。欧米では、Prideは何かを達成する満足と喜びの感情、自尊感情、コンピテンス、自信、誇りなど肯定的感情で語られますが、北東アジアでは、Prideを構成する屈折した内面心理の意味でも語られます。うぬぼれ・傲慢・虚栄心など屈折した心理が過剰な矜持をもたらすのです。内心にコンプレックスがあるから自分を守ろうとして羞恥心や恥らいを覆い隠すために過大な自尊心(Prideや誇り)が生まれもします。それは、儒教的道徳観の社会性の影響もあると言うひともいますが、その内面にあるこだわりとは、日本人は恥、中国人は面子、韓国人は恨と、やはりその何れも屈折した内面的な感情です。)